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アニコム ホールディングス株式会社8715

東証プライム

保険業

経営方針

【動画流れる】

野田真吾氏(以下、野田):みなさま、本日はアニコム ホールディングス株式会社の会社説明会にご参加いただきまして、誠にありがとうございます。専務執行役員の野田です。

我々は2000年に創業しました。東京海上火災保険(現 東京海上日動火災保険)出身の3人のメンバーが独立し、ベンチャーとして起業した会社です。ただいま動画をご覧いただきましたように、我々は25年前にペット保険を世に生み出し、日本のペット保険市場を切り開いてきた保険会社グループです。

経営方針は「飼い主のみなさまの『涙』を減らし、笑顔を生み出す『予防型』の保険会社グループを目指します」としています。飼い主さまは、愛する我が子が病気になったりケガをしたりした結果、保険金を受け取っても、うれしい人はいないでしょう、飼い主さまは涙を流しているだろうと思います。

一方で、保険会社には大量の病気のデータがあります。例えば、ゴールデンレトリバーちゃんでしたら、8歳以降にがん、腫瘍になる確率がものすごく高くなります。

そのようなデータから未来を予測して、保険金を払うだけではなく、病気を未然に防ぐような予防型の保険会社を創出して、会員さまと動物の笑顔を生み出していきたいというのが、創業の思いです。

会社紹介

野田:グループのご紹介です。グループの事業会社は5社あります。ペット保険事業を中心に、例えば遺伝子検査や再生医療といった医療のところまで、予防型保険を実現するために、動物が生まれてから亡くなるまで、一生涯の健康をサポートするさまざまな事業を展開しています。

会社紹介

野田:グループの連結業績の状況です。スライドのグラフのとおり、売上・利益ともに順調に成長中です。昨年度は売上高が676億円、経常利益が49億円です。利益については、直近5期連続増益を達成しています。

上場企業の中で、ペット保険専門、なおかつペット関連事業を展開するという企業は見当たりません。株主のみなさまからも、「比較対象が見当たらない」というようなお声をいただくこともあります。

したがって、本日は我々アニコムのペット保険事業を中心に、今後の事業展開についてご説明したいと思います。

目次

野田:目次です。第1部でペット保険に関する拡大戦略や、ペット保険市場における立ち位置などについてご説明します。この第1部で、少し時間をかけてお話ししたいと思います。

第2部では、真の予防型保険会社を目指して、今後特に注力する新規事業についてご説明します。さらに、今後の経営計画や株主さまへの還元方針についてもご説明します。

1.商品概要・契約数

野田:ペット保険事業についてお話しします。はじめに、我々のペット保険の商品をご説明します。コンセプトは、動物のための健康保険です。人の健康保険と同じように、「どうぶつ健康保険証」という保険証を発行します。

写真付きの保険証で、飼い主のみなさまからも非常にご好評いただいており、「家族の証ができた」とよろこんでいただいています。補償内容について、ペット保険は医療の保険で、病気・ケガをした場合の診療費を補償します。

2つのプランがあります。「70パーセントプラン」と「50パーセントプラン」です。「70パーセントプラン」の場合は、人の健康保険と同じように、飼い主さまは自己負担3割で済むというシンプルな商品内容になっています。

対象となる動物は、ワンちゃん・ネコちゃんが、だいたい契約の9割を占めています。ワンちゃん・ネコちゃんを中心に、うさぎさんや鳥さん、フェレットさんといった多様な動物をお引き受けしています。

保険期間は1年なのですが、毎年更新していただくと、年齢制限なくご継続いただくことができます。

1.商品概要・契約数

野田:アニコムの契約数です。おかげさまで保険契約数は毎年増加しており、直近で134万件を突破しました。これは、ペット保険業界No.1の契約数です。

2.競争環境の変化

野田:ペット保険業界や、アニコムを交えた競合環境が現在どのようになっているのかという点についてご説明します。

ペット保険への参入企業は年々増加しており、現在19社あります。ベンチャーあるあるというわけではないのですが、ベンチャーが市場を作って、その市場の好成長が見込めるという場合に、やはり大手の会社が参入してくるケースが多いです。

その結果、ゲームチェンジが起こり、大手の資本のほうが強くなるということも往々にしてあると思います。

ペット保険もご多分に漏れず、例えば日本生命や第一生命のような大手の保険会社が参入するとともに、楽天、SBI、Amazonといったような低価格路線のインターネット系の保険会社も参入しています。

保険業界の中でも稀に見る、日本では見たことがないような競争激化市場になっています。特にAmazonは、日本だけではなく、世界でも保険という商品を販売していませんでした。初参入したのが日本で、さらにペット保険からと、我々も非常にガードを上げて対応してきました。

しかし、参入から数年過ぎ、どうやらゲームチェンジの可能性は相当低いのではないかと分析しています。今日は、その内容を少しお話しします。

2.競争環境の変化

野田:ペット保険の市場規模です。参入企業は毎年増加していますが、ほぼすべての参入企業が売上を拡大し続けています。したがって、マクロ的には市場を奪い合うというよりも市場の拡大が続いています。

増井麻里子氏(以下、増井):こちらで、少し質問してもよろしいでしょうか? 市場が拡大しているとのことですが、どこかの時点では、拡大が頭打ちになるかと思います。それは、いつ頃になるとお考えですか?

野田:頭打ちになる上限というのは、我々もわかりません。後ほどご説明しますが、ペット保険の普及率はだいたい2割ぐらいです。市場でいうと1,500億円ぐらいなのですが、その3倍前後、4,000億円から5,000億円ぐらいまでは、十分に到達する可能性は高いかと考えています。

その根拠は2つあります。1つ目は、ペット保険は欧米が先行している市場であり、特にヨーロッパでの普及率が非常に高いことです。最も歴史が長いスウェーデンでは、ワンちゃんの普及率が9割、ネコちゃんが5割と相当高い普及率です。

2つ目は、我々のマーケットで保険に加入していただける加入率です。特にペットショップを中心に、我々が強化しているマーケットは0歳です。我々がカバーしているマーケットの中で、0歳の6割ぐらいがアニコムの保険に入っていただけます。

したがって、先行事例や現状を考えても、今よりも3倍ぐらい普及すると考えています。

増井:0歳で加入すると、それを毎年更新していくようなかたちになるのでしょうか? 

野田:おっしゃるとおりです。

2.競争環境の変化

野田:競合他社の状況をご説明しましたが、その中でアニコムのシェアは4割以上を占めています。2番手の会社を含めるとシェア7割となります。ペット保険市場は、実はこの2社で寡占しているような状況です。

さらに、参入企業の増加とともに、少しずつシェアを減らしてきましたが、2023年からは反転して我々のシェアを上昇させることができています。

3.アニコムの強み (4)高い継続率

野田:スライドは、競合他社への流出率の資料です。実際に、アニコムをやめて他社に流出するお客さまは一定数います。しかし、我々も継続して調査していますが、競合が参入し続けているにもかかわらず、他社への流出率は増加するどころか、明らかに減少する傾向になっています。

2.競争環境の変化

野田:他社比較が続きますが、収益性という観点で、一般企業の原価にあたる損害率は、保険会社にとって安定経営に欠かせない重要な指標です。その損害率をご覧いただきたいと思います。

アニコムの損害率が安定的に一定水準を保っているのに対し、各社は上昇傾向であるように見えます。

増井:御社の損害率は、変動幅がすごく小さいように見えるのですが、その理由は何でしょうか?

野田:これも2つあります。1つ目は、ペットショップを中心に、0歳のマーケットへの販売を強化していることです。ペットショップも元気な子、健康な子を販売されるため、病気のリスクがまったくない状態です。

いわゆるホワイトリスクの状態からお引き受けするため、安定して低い損害率を担保できます。人の健康保険と同じように、特に若い人が多いと、保健財団の財政は安定します。

増井:IT企業の健康組合が潤っているというような感じですね。

野田:おっしゃるとおりです。2つ目は、どうしても普及率が低いため、言い方が悪いですが、ペット保険は保険が必要な方が入るケースが多いです。明らかに、「明日病院に行くから保険に入っておこう」というケースです。

やはりそのような方々が多いと、損害率がどうしても上がってしまいます。しかし、我々はペットショップだけではなく、対面販売を中心にしています。いわゆる病気になっていない子をしっかりと見た上で、お引き受けしています。

そのような努力の結果、損害率が安定しているのではないかと思っています。

2.競争環境の変化

野田:利益率についてもアニコムは一定水準を保っており、健全な保険運営を実現できていると思います。

3.アニコムの強み (1)窓口精算システム

野田:なぜペット保険において、アニコムはトップシェアを維持して、さらに健全に成長を続けることができているのか、アニコムの強みを3つご紹介します。

1つ目の強みは、使いやすさです。アニコムは人の健康保険と同じように、「窓口精算システム」を導入しています。動物病院の窓口で保険証を見せるだけで、保険金の手続きが完了します。

国内のほとんどすべての動物病院である7,000病院以上と提携しており、窓口精算を利用することができます。窓口精算を全面導入している保険会社は、我々と2番手の会社の2社だけです。これも高い競争優位性の一因になっていると考えています。

3.アニコムの強み (1)窓口精算システム

野田:窓口精算が強みとなる理由についてご説明します。動物医療は、極めて少額かつ高頻度に利用されるものです。アニコムにおいては、1年間に約6割のお客さまに保険を利用していただいています。

窓口精算ができる使いやすさが、非常にご好評いただいています。新規でご加入いただくお客さまに、「アニコムを選んだ理由は何ですか?」とアンケートをとっているのですが、理由として一番多いのは「窓口精算ができるから」「使いやすいから」とお答えいただいています。

そのようにたくさんのお客さまが保険を利用されるため、保険金の支払い件数は年間450万件以上です。これは、大手の生命保険会社よりも遥かに多い件数です。

3.アニコムの強み (1)窓口精算システム

野田:窓口精算は、保険会社にとってもメリットがあります。450万件以上もの大量な保険金支払いを1件1件対応して、振込手数料を払ってお支払いするというのは非常にコストがかかります。

しかし窓口精算の場合は、まとめて月に1回動物病院と清算するだけです。事務コストを大幅に圧縮することができるため、高い業務効率性を実現しています。

増井:「窓口精算システム」が、利用者や御社にとって非常に効率的だというのはわかるのですが、動物病院にとってはどのようなメリットがあるのでしょうか? 

野田:アニコムの契約者は、保険が使える病院に行くので、集客につながります。

創業した時には、動物病院さん1軒1軒に「提携してください。お願いします」と営業していました。しかし最近は、動物病院から電話がかかってきて、「アニコムに対応できるようになりたい」とご連絡いただけるようになりました。

お客さまに選んでいただけるため、動物病院も集客のためにアニコムと提携していただいているということだと思います。

増井:「3社ともハッピー」というシステムですね。

野田:おっしゃるとおりです。

3.アニコムの強み (2)多様な販売チャネル戦略

野田:2つ目の強みは、多様なタッチポイントです。お迎え時から飼育中まで、多様なタッチポイントで新規加入を増加させる販売チャネル戦略です。

アニコムは販売チャネルを大きく2つに分けています。

1つ目は、ペットショップなどでワンちゃん・ネコちゃんを家族にお迎えするNew Bornチャネルです。2つ目は、すでにペットを飼っている方に対して、ペット保険をご案内させていただくセカンダリーチャネルです。

ペット保険の競合他社の大半が、インターネット販売に専念している中で、我々は対面での販売にこだわっていて強化しています。自動車保険・火災保険と比べて、ペット保険は2割程度と普及率が遥かに低い状況です。

ペット保険自体をご存じない飼い主さまや、「興味はあるのだけれども、よくわからないからまだいいか」というような飼い主さまが非常に大勢いらっしゃいます。

だからこそ、お客さまにしっかりとタッチして、見えないかたちのペット保険をご説明して、ご案内させていただくという対面の販売が必要だと思っています。

New Bornチャネルは損害率の安定にも重要であり、保険加入率も非常に高いです。我々の新規加入の7割ぐらいが、New Bornチャネルからご加入いただきます。

ペットショップにおいても加入率が非常に高く、こちらの面でも高い競争優位性を保持できているのではないかと考えています。

3.アニコムの強み (2)多様な販売チャネル戦略

野田:New Bornチャネルについては、これまで以上にブリーダーとの提携を強化しています。昨今、ブリーダーからワンちゃん・ネコちゃんを迎えるケースが増加しています。

アニコムでは、日本最大のブリーダーマッチングサイトである「みんなのブリーダー」をグループ化しました。このようなかたちで、ブリーダーチャネルの拡大も進めているところです。

3.アニコムの強み (2)多様な販売チャネル戦略

野田:もう1つの販売チャネルについてご説明します。国内の生命保険会社や損害保険会社との提携も拡大しています。スライドをご覧のとおり、ソニー損保にアニコムのペット保険を商品提供して、11月4日から「ソニー損保のペット保険」として販売を開始していただいています。

アニコムのペット保険を各社のブランドと販売網で展開していただくことで、我々のシェアアップの大きな力となっていると考えています。すでに提携している8社で、生命保険・損害保険マーケットの約半分を占める規模となっています。

多くの保険会社が1つの保険会社の商品を販売するのは、前例がありません。それだけ、アニコムのペット保険がプロからも認められる、揺るぎのない地位を確立できていると考えています。

3.アニコムの強み (3)入って健康になるペット保険

野田:3つ目の強みである、入って健康になるペット保険についてご説明します。我々は、病気を未然に防ぐ、予防型の保険会社を目指しています。

飼い主さまの中には、病気になっていない段階で、「ペットのごはんはどうしたらいいのだろう?」「しつけはどうしたらいいの?」「なにか様子がおかしいのだけれど、病院に連れていったほうがいいのかしら?」というような悩みやご相談ごとを抱えている方がたくさんいらっしゃいます。

そのようなご相談ごとに、アニコムの獣医師がお答えするサービスをご提供しています。我々の強みは、獣医師がグループに150名以上在籍していることです。グループの1割以上を占める最大派閥です。

業界の中で、圧倒的に最大規模の専門家集団が、飼い主さまに安心を提供することで、飼い主のみなさまからも「病気になる前でも使えるね」とご好評いただいています。

3.アニコムの強み (3)入って健康になるペット保険

野田:ペット保険のサービスとして、健康状態を見える化する「腸内フローラ測定サービス」を、保険に無料付帯しています。

人の分野でも、体の免疫のバロメーターとなるのは腸内細菌だと注目されています。アニコムでは、多くの動物たちのうんちを独自に採取し、腸内細菌の研究を行ってきました。

その結果、ワンちゃんにはワンちゃんの腸内細菌、ネコちゃんにはネコちゃんの腸内細菌と、動物種に応じて常在する腸内細菌が異なることがわかりました。

それぞれの腸内細菌データと保険の病気のデータをぶつけて分析したところ、腸内環境の多様性と多くの病気に相関があることがわかりました。スライドのグラフのように、腸内環境の多様性が高いと病気になる確率が低く、多様性が低いと病気になる確率が高いです。

病気全体だけではなく、腎臓病や胃腸炎などのさまざまな病気に相関していると分析しています。飼い主さまにうんちを送っていただき、このデータを利用して、ワンちゃん・ネコちゃんの健康状態や病気のリスクを測定しています。

例えば、腸内細菌の多様性が低いという残念な結果になった場合、「食べ物を変えませんか?」「生活習慣を変えませんか?」などのご提案や、無料で血液検査のご提供などもしています。

自宅で健康診断ができるということで、飼い主さまに非常にご好評いただいています。少なからず、病気の予防にお役に立っていると実感しています。

3.アニコムの強み(3)入って健康になるペット保険

野田:「入って健康になる保険」としてサービスをご評価いただき、昨年、ペット保険で初めてグッドデザイン賞を受賞しました。

単に保険金を払う保険会社ではなく、常に動物の健康のことを考えて守ることが使命だと考え、それをサービスに展開していることが、アニコムの1番の強みなのかもしれません。

3.アニコムの強み(4)高い継続率

野田:ペット保険は1年契約で毎年更新されるのですが、お客さまからご評価していただいた結果、継続率は9割近くの高水準となっています。

継続契約が高水準で維持できると、ストックが溜まっていきます。その上に、新規契約を含めて契約数が加速度的に増加し続けるという、まさにストック型のビジネスモデルが成立します。その結果、アニコムの業績拡大につながっています。

4.ペット保険のマーケットサイズ

野田:ここからは、ペット保険の市場規模についてお話しします。スライドのグラフは、ワンちゃん・ネコちゃんの飼育頭数と、15歳未満人口との比較です。

ご覧のとおり、子どもの人口は世帯数の減少とともに少しずつ減少傾向ですが、ワンちゃん・ネコちゃんは1,600万頭とだいたい横ばいです。実質的には、増加しているかたちではないかと考えています。

ペットが家族や子ども同様の役割を果たす時期になってきているのではないかと考えています。

4.ペット保険のマーケットサイズ

野田:ペット産業全体では2兆円ほどの規模で、停滞する産業が多い中では、数少ない成長産業となっています。ワンちゃん・ネコちゃんの飼育頭数は横ばいですが、産業自体の規模は右肩上がりです。簡単に言うと、飼い主さまがペットにかける費用単価が上がっているということです。

4.ペット保険のマーケットサイズ

野田:ペット保険普及率を見ると、ペット保険会社全体は2割ほど、アニコム単体では約9パーセントです。ペット産業の拡大やペットの家族化に伴い、成長を拡大する余地は大いにあり、今よりも2倍、3倍の規模になる可能性が高いと考えています。

飼い主さまに「入ってよかった」「健康でも使えてよかった」「予防ができてよかった」と喜んでいただけるように、今後もサービスを強化して、さらに成長スピードを高めていきたいと考えています。

1.保険会社の役割

野田:アニコムは、ペット保険を通じて飼い主のみなさまに安心を届けてきました。しかし、我々が目指しているのは、その先にある、動物が健康で長く幸せに生きられる社会の実現です。その思いをかたちにした、保険を超えた新たな事業展開についてご紹介します。

これまでの保険は、病気・事故が起こった後にお金を補償するという、いわば事後対応型の保険でした。事後対応型の保険を保険1.0とすると、保険会社の次の役割の1つに、病気や怪我を予防する保険2.0という、真の安心を提供することがあると考えています。

しかし、すべての病気を予防することは不可能です。そこで、次のステップである保険3.0は、保険会社が医療の質にも責任を持つことだと我々は考えています。我々のデータからも、同じ病気でも治療期間や治療成績、特に手術の質にばらつきがあることが見えています。

万が一、病気になった場合に、痛みや後遺症がない手術、偶然ではなく必然に成功する手術・高度医療を保険会社が担保して提供することが、今後の役割なのではないかと考えています。

2.保険2.0「予防」への取組み

野田:予防に関しては、これまでお伝えしたとおり、多くのデータがあります。さらに、病気の真の原因を探求するため、「どんなごはんを食べさせていますか?」という食事や生活環境など、さまざまな動物に関するデータを飼い主さまから収集してきました。

2.保険2.0「予防」への取組み

野田:それらのデータを多角的に統計分析し続けた結果、ペットの健康に大きな影響を与えるのは腸内細菌の多様性や、ワンちゃん・ネコちゃんに非常に多い歯周病であることがわかりました。つまり、ごはんと歯磨きが重要だということです。

2.保険2.0「予防」への取組み

野田:そこで、アニコムはペットフードと口腔ケア用品を独自に開発しました。保険会社がフードやケア用品を開発するのは他に前例がなく、非常に変わった取組みです。

「腸内フローラ測定サービス」で多様性が低いという結果になった場合に、飼い主 さまから「じゃあ、どんなごはんに変えたらいいの?」というご相談をいただくことが多数ありました。

そのような場合に、我々のフードケア商品をご提案して、今、多くの飼い主さまにお試しいただいている状況です。今後も、予防を実現する健康イノベーション事業として、商品のラインナップを増やし、保険の健診と予防ケアが循環する仕組みを拡大していきたいと考えています。

3.保険3.0「高度先進医療」への取組み

野田:保険3.0における医療への取組みとして、東京の品川に、高度医療専門施設である「JARVISどうぶつ医療センター Tokyo」を開院しました。国内で初めて、おそらく世界でもほとんど初だと思いますが、動物医療に手術支援ロボットを導入しています。

手術支援ロボットは、人の医療の分野ではすでにかなり普及しています。患者にとっては痛みが少なく回復が早い手術ができる、医者にとっては術野が広がって成功率が高まるというメリットがあります。

我々は、手術支援ロボットで高度医療の発展を実現していきたいと考えています。

3.保険3.0「高度先進医療」への取組み

野田:今後は、医療分野でもAIの活用が欠かせないと考えています。AIの進化は、AI 1.0の論理的思考から、AI 2.0の視覚を経て、AI 3.0の触覚まで発展すると考えられています。論理・視覚・触覚は手術に必要な要素であり、AIが医療手術を進化させる可能性は十分に高いと考えています。

3.保険3.0「高度先進医療」への取組み

野田:我々は、視覚のAIを活用して、動物の感情や健康状態を解析する特許取得などを進めています。ロボット手術においても、触覚AIの実用化に向けた研究を進めています。

価値創造戦略に関する詳細

野田:価値創造の新しい戦略については、時間が少なく、詳しいお話ができませんでした。ホームページに戦略概要を詳しく掲載していますので、ぜひご覧いただければと思います。

『個人投資家様向け アニコムグループ 経営戦略説明会』12月開催のお知らせ

野田:個人投資家向けに品川の医療施設にて、12月3日(水)10:00-11:00、12月9日(火)10:00-11:00に経営戦略説明会を開催します。スライドのQRコードは申し込みフォーマットになっていますので、QRコードを読み込んでご覧いただくか、アニコム ホールディングスのホームページからお申し込みください。

ワンちゃん・ネコちゃんの同伴も大丈夫ですし、病院の内覧会や手術ロボットの体験会も行いますので、ぜひご参加いただきますようお願いします。

4. 経営目標 2030年度VISON

野田:今後の経営目標についてお話しします。アニコムグループは、第二期創業期を迎えています。25年前、ペット保険を世に出し、ペット保険市場を切り開いてきました。

これからの25年は、保険を超えて健康を作る会社にすべく、「保険と予防」「保険と医療」と価値を創造するシナジー事業を拡大していきます。

4. 経営目標 2030年度VISON

野田:中期経営計画でも公表していますが、5年後の2030年には、経常収益1,000億円超、経常利益100億円超をターゲットにしています。

増井:2030年度のターゲットとして経常収益1,000億円超とありますが、こちらの目標を達成するためには、M&Aなども考えているのでしょうか? 

野田:おっしゃるとおり、考えています。具体的にはお伝えできませんが、これまでにも動物病院事業では動物病院のM&Aを進めています。

ペット保険においても、アクサダイレクトがペット保険を撤退されるということで、アクサダイレクトの契約をアニコムに移管していただいています。M&Aとは違いますが、そのようなかたちで業績を拡大していきたいと考えています。

増井:同じ業種やその周辺といったところですね。

野田:おっしゃるとおりです。

5.株主還元方針(中期経営計画2025~2027)

野田:株主還元についてご説明します。株主の方にも、配当や自社株式取得を通じて、しっかりと還元していきたいと考えています。

5. 株主還元方針 (中期経営計画2025~2027)

野田:具体的な配当については、中期経営計画の中で、配当性向30パーセントという水準を基本方針としています。自己株式についても、本年度はすでに10億円を取得しました。今後も、安定的かつ持続的な株主への還元を進めていきたいと考えています。

きみが、心の発電所。

野田:本日のご説明は以上です。ペットが家族の大切な存在となり、我々の市場は、今後も成長余地が大きく見込まれると考えています。

保険を超える新たな戦略を創出して、成長をしっかりと収益につなげ、株主さまのご期待にも応えていきたいと考えています。今後も、アニコムの歩みにご期待くださいますようお願いいたします。本日は、ご清聴ありがとうございました。

質疑応答:ペットフードの売上と海外進出について

荒井沙織氏(以下、荒井):「ペットフードの売上について、今後の勝算を教えてください」というご質問です。

野田:四半期ごとの決算説明でも公表しているのですが、ペットフードを含む健康イノベーション事業については、売上収益は計画を若干下回って推移していますが、ほぼ想定どおりです。

ただ、売上が足りないところは、顧客単価が若干低いことが原因です。今後、商品ラインナップを増やし、お客さまに複数の商品をご購入いただくことで、顧客単価アップはできると考えています。しっかりと単価アップを進めていきます。

増井:今、ペットフードはかなり注目されている商品だと思いますが、いろいろな業界が中国に輸出しようとしています。将来的には、海外進出を考えていますか?

野田:もちろん、考えています。保険を海外に持っていくことはなかなか難しいのですが、ペットフードや動物医療は、海外展開も十分に可能性があると考えています。

質疑応答:アニコムのシェア上昇の要因について

増井:「新規参入企業が増える中で、アニコムのシェアが2023年から再び上昇していますが、その要因をどのように分析されていますか?」というご質問です。

野田:我々の強みがしっかりと効いているのだろうと考えています。アニコムの保険は窓口精算で、お客さまにとって使いやすいという理由から選んでいただいていると思います。

販売チャネルの強化についても、ペットショップだけではなくセカンダリーチャネルでも幅広い展開ができていることなどが、シェアアップの一番大きな要因ではないかと考えています。

先ほど損害率のグラフをご覧いただきましたが、他社が保険料を低価格路線で進めているのですが、その戦略に誤算があったのではないかと考えています。その結果、損害率が上昇して、他社が販売をセーブしていることもあるのかもしれません。

損害保険には、いろいろな保険会社から事故や病気のデータを集めて、基準となる参考純率を決めている損害保険料率算出機構という団体があります。損害保険の場合は、自動車保険と火災保険の2つだけが対象になっていたのですが、ペット保険が新たに追加されることになりました。

増井:ついに、目をつけられてしまいましたね。

野田:やはり、安売りしすぎではないかということですね。

増井:高すぎるものや、逆に低いものの両方を規制する意味がありますね。

野田:おっしゃるとおりです。アニコムのペット保険は高いとおっしゃるお客さまも一部いらっしゃいましたが、今後は、そのような保険料の格差はどんどん緩やかになってくるのではないかと考えています。

増井:保険料はだいたい同じようなところに収まっていくのでしょうか?

野田:おっしゃるとおり、サービス勝負になると思います。

質疑応答:「JARVISどうぶつ医療センター Tokyo」の手術支援ロボットについて

荒井:「2025年10月に『JARVISどうぶつ医療センター Tokyo』で手術支援ロボットが導入されました。これによる実際の収益貢献は、いつ頃から本格化すると見込んでいらっしゃいますか?」というご質問です。

野田:手術ロボットについて、今はまだ研究実験段階で、医療分野では具体的にしっかりと使えていません。おそらく来年には、手術支援ロボットを使えるようになると考えています。

それ以外にも、「JARVISどうぶつ医療センター Tokyo」では高度医療を多く行っていますが、スタートは順調で、想定以上のお客さまにご利用いただいています。

高度なオペ技術を持っている経験豊かな多くの獣医師にメンバーに加わってもらったため、保険契約者にかかわらず、全国から先生方を目当てにお客さまが来ていただいている状況です。

「JARVISどうぶつ医療センター Tokyo」では、11月に夜間救急診療も開始したため、今後は近隣の飼い主さまも含めて、ご利用者が増えてくると考えています。手術支援ロボットだけでなく、高度な医療をしっかりと展開していきたいと考えています。

荒井:保険加入者だと、優先的に予約を取れたりするのでしょうか?

野田:今のところ、加入者にかかわらず、幅広くご予約を取らせていただいています。もちろん保険は使えます。

荒井:人気が出そうなので、予約のキャパシティなどがどうなのかが気になりました。

野田:キャパシティいっぱいになるようにがんばりたいと思います。

質疑応答:アニコムの独自データのサービスへの反映について

増井:「腸内フローラや遺伝子検査など、アニコムが保有する独自データは非常に価値が高いと感じます。これらのデータを今後、どのように保険料設定や予防サービスに反映させていく予定でしょうか?」というご質問です。

野田:非常に多くのデータを持っており、食べているごはんや生活習慣による腸内細菌の多様性から、病気の状態や未来になりうる病気の予測がある程度できるようになってきています。

今後は、そのような健康状態から、例えば保険料に差分をつけたり、飼い主さまとワンちゃんががんばって健康になろうとしている努力を保険料に反映したりできたらと考えています。

まだ具体的にはプラン化できていないのですが、そのようなサービスができましたら、あらためてご案内します。

質疑応答:触覚AIの実用化に向けた課題について

荒井:「AIについて、AI 3.0で触覚AIを目指すとありましたが、実用化に向けた主なハードルや課題は何でしょうか?」というご質問です。

野田:ご説明の中で、AI 3.0を触覚とお伝えしました。例えば手術用ロボットの場合、挟むようなかたちで行いますが、操作している人間は手を開いたり動かしたりと、飛行機のパイロットのように操縦しています。

今回導入した手術用ロボットは、触覚の部分が非常に敏感で、しっかりと人間の手の動きに合わせて、微妙な力加減を実現します。その動きを機械にAIで覚えさせて動かすことにより、半自動的に手術を行うことが可能になると考えています。

ただし、手術をする時に身体の中のロードマップが必要となります。「ここに動脈がある、ここに静脈がある」というナビゲーションを、機械自身に覚えさせなければいけません。今後、体内のナビゲーションのデータを集めて、AI化したいと考えています。

荒井:それらにより、保険料や継続率も伸びていくと見込んでいるのでしょうか?

野田:もちろん、保険等のシナジーはかなりあると考えています。

野田氏からのご挨拶

野田:我々アニコムは、動物と飼い主さまの幸せな未来を創出する事業を、これからも続けていきたいと考えています。12月3日(水)10:00-11:00と12月9日(火)10:00-11:00には、個人投資家向けの経営戦略説明会を品川で開催しますので、ぜひご参加くださいますようお願いいたします。本日は、誠にありがとうございました。

当日に寄せられたその他の質問と回答

当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。

<質問1>

質問:ペット保険市場は年々拡大し、普及率も約20パーセント前後とうかがいましたが、今後アニコムとして普及率をどこまで引き上げられると見ていますか? そのための最重要施策を教えてください。

回答:市場全体の普及率は将来的に30パーセント以上が見込めると考えており、ペットが家族として認識され医療・予防への意識が高まる中、当社は予防型保険や先進医療のカバーなど一歩進んだ価値提供を強化することで、飼い主のみなさまに「保険に入っていて良かった」と感じていただけるサービスを追求し、市場拡大をリードしていきます。

<質問2>

質問:今後も連続増配を予定されていますが、配当性向30パーセントは中長期的に維持するお考えでしょうか?

回答:中期経営計画でお示ししているとおり、配当性向30パーセント水準を当面の目標とし、それ以降もさらに上を目指せるよう検討していきます。

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