「馬車馬のように働く」高市総裁の経済政策が日本を変える? 日経平均5万円突破への道筋
マネックス証券のチーフ・ストラテジスト、広木隆氏がマーケットのトピックや見通しなどを語る「広木隆のMonday Night Live」。今回、広木氏は自民党総裁選で高市早苗氏が選出されたことを受け、単なる「高市トレード」ではなく、日本が変化へ踏み出す第一歩だと強調しています。また、金融緩和を志向しつつ現実的な財政政策を掲げる「サナエノミクス」は、日本経済に追い風となる可能性が高いと語りました。(※2025年10月6日収録のマネックスオンデマンドYouTube動画に基づく内容です)
日経平均史上初の48,000円台、総裁選結果を受けてマーケットは当然の反応 | 広木隆のMonday Night Live 10/6
佐々木真奈美氏(以下、佐々木):みなさま、こんばんは。今夜も「広木隆のMonday Night Live」をご視聴いただきありがとうございます。今夜のMCは佐々木真奈美が担当します。広木さん、今夜もよろしくお願いします。
広木隆氏(以下、広木):マネックス証券の広木隆です。よろしくお願いします。
佐々木:本日(2025年10月6日)は、東京市場は歴史的な日となりました。日経平均も史上初4万8,000円台に乗せる場面がありました。自民党の総裁選で高市早苗氏が選ばれた影響も少なからずあるのではないかと言われています。
本日はそちらに関連するご質問が一番多く寄せられていると思います。広木さんには、今回のこの自民党総裁選の結果を受け、どのような印象を持ったかをうかがってもよろしいでしょうか?
広木:いつも月曜日の朝に「今週のマーケット展望」を配信しており、そこで書いたとおりです。10月4日土曜日に総裁選があり、実は北海道の札幌で、リアルタイムでマネックス証券のセミナーがありました。
佐々木:コメントも来ています。
広木:たくさんの方にご来場いただき、ありがとうございました。総裁選がリアルタイムであったため、みなさまが結果を見て「ああでもない、こうでもない」などと言っていました。僕の講演中には結果が出なかったため、その後のパネルディスカッションの時に、自民党総裁選を受けてということで、コメントをしました。その時は土曜日だったので、「週明けの月曜日に、日経平均は5万円いってしまうのではないか」ということを言いました。
値幅制限などもあるため半分冗談ですが、そして今日書いた相場展望では「4万6,000円、4万7,000円と、みんな少しケチくさいこと言ってるな」となりました。「最低でも4万8,000円をワンタッチすることはあるだろう」ということを書き、実際そのとおりになりました。「やはり5パーセントぐらいは吹き飛ぶだろう」と考えていました。
4万5,000円台にあった日経平均は、5パーセント上がれば2,200円から2,300円です。それは4万8,000円台には届くだろうということでした。
本日、取引終盤に4万8,000円台をワンタッチして乗せ、終値では届きませんでした。今晩のアメリカ市場次第ですが、為替も150円台のため、当然の反応と言えば当然の反応です。こうなってくると、明日に5万円ということがあってもおかしくない数字だと思います。
「高市トレード」ではない、「日本社会」の大きな変化の第一歩
株式相場だけではなく日本経済、あえて「日本社会」と言いますが、非常に良い総裁選の結果になったと思っています。それをトータルで表したのが、本日のこの株高ではないでしょうか。
これは単に「高市トレード」とか、そういったつまらない話ではないと思います。本当に大きい、日本の社会の明るい第一歩です。
もちろん、変わっていないこともいっぱいあります。派閥の政治が変わっておらず、麻生太郎氏の一声で選ばれたという部分もあり、「派閥政治、長老政治は変わっていないのではないか」という声もあります。政治と金の問題も、問題があった議員を要職に起用するなど、「結局変わっていないのではないか」という批判はあるでしょう。
しかし、そうは言いながらも、高市さんは初の女性総裁です。本来はそこで「女性云々」と言ってはいけないのかもしれませんが、これまでの日本社会を見れば仕方ないです。そのくらい、すごく大きな変化の第一歩なので、マーケットがこういう反応をしたのは然るべきことなのだと思います。
日経平均5万円は「慎重すぎた」、次は5万5,000円が視野に
佐々木:今のお話と関連するところで、質問が来ています。「日経平均5万円予想は、お気持ちは変わらないでしょうか?」というご質問です。
広木:「今週のマーケット展望」でも書いたので、確認してください。私は「年末に5万円」と言ったわけではなく「年末までに5万円」と言いました。明日5万円になったとしても「年末までに」ということですから、当たったことになります。
私は日経平均4万円の時も、4万2,000円の時も、マーケットや業界で一番最初に言いました。5万円という予想も一番最初でしょう。多分これが5万円に到達したら、それも一番乗りです。とにかく当たり続けています。
なぜ当たり続けているかというと、投資の日に書いたレポートをもう一度読んでいただければわかります。「株というのは上がっていくものだ」と、もう100万回ぐらい言っていますが、結局それに尽きるのです。それを知らない人が多すぎて、やたら弱気な人とか、「株が下がる」と言う人がいますが、まったくわかっていないので、1から勉強し直していただきたいです。
そのため、「5万円になるというお気持ちは変わりませんか?」というご質問に関しては、「少し慎重になりすぎたな」と感じています。「年末までに」と言ったことに対して反省しています。「10月末までに」と言えばよかったなと思っています。
「押し目待ちに押し目なし」、ついていくしかない相場
佐々木:そのくらい急激に上昇している日経平均に対し、「スピード違反のような気もしますが、調整局面、押し目買いのタイミングはないのでしょうか?」というご質問です。
広木:ないのではないでしょうか。以前から「押し目待ちに押し目なし」と言っていますが、今回はあまりにも急騰しすぎたので、調整はあると思います。しかし、結局みなさまが押し目を待っていたのは、4万円割れというレベルの世界でしょう。
そのため、振り返れば、結局そんな水準では全然買えなかったということになってしまいます。そうすると、多分4万5,000円割れも、ほど遠い水準になってしまいます。
「押す」というのは今の水準を基点にして、上も下もありながら動くため、ここから下はもちろんあります。しかし、よっぽどの「押し目」というのは多分ないので、少し厳しいのではないかと思います。買ったほうがいいと思います。こういう相場は、ついていかないと話になりません。
「アベノミクス」より現実的で有効な「サナエノミクス」
佐々木:ついていけていない方は少し焦るほどの上昇ピッチです。
「組閣等が進んでいる中で、今後、『サナエノミクス』のようなことが実現していくのでしょうか? あるとすれば『アベノミクス』との違いは何でしょうか?」というご質問です。
広木:実は「アベノミクス」とあまり違いはなく、安倍晋三氏の継承者であり「アベノミクス」の継承者であることから、名前が変わったということです。
ただ、安倍さんの時は経済環境が非常に悪かったです。そのため、大規模な金融緩和、主に黒田日銀総裁(当時)との連携によって「アベノミクス」とも言われましたが、「クロダノミクス」のような異次元緩和があったわけです。ところが、今は異次元緩和をやりきった後なので、日銀の金融政策としてはこれから正常化に向かっていきます。
あの時は緩和をどんどん進めました。今はその後なので、むしろ正常化に向かう日銀に対して待ったをかけているのが高市さんです。その金融政策のところは、ある意味真逆です。完全に真逆というわけではないですが、金融緩和を志向している点では一緒です。
しかし、安倍さんの時代は金融緩和を「実行」してどんどん進めるというのが「アベノミクス」で、その金融緩和で上がったのが「アベノミクス」相場でした。今回はそこが全然違います。
日銀は一歩間違えると金融政策の正常化を急ぐわけですが、「急いではいけないよ、それは間違いだよ」と止めにかかっているのが高市さんです。金融緩和のスタンスは一緒ですが、実行のレベルが違うということです。
もう1つの違いは財政です。安倍さんの時は、積極的な財政出動というものの、具体的に何をするのかがあまり見えない部分がありました。それに対して今回、よりクリアなのが財政です。だからこそ、長期金利の上昇や、日本版トラス・ショックのようなことがすでに懸念されている、そこがまた非常に大きな違いです。
安倍さんの時は経済が非常に弱かったため金融緩和も思いきり実行でき、財政を拡大すると言ってもそれほど問題にはなりませんでした。逆に成長戦略が骨抜きになって弱かったのが、「アベノミクス」の弱点でした。
今回は逆に、金融政策のところは日銀を抑えるということで、実行的なものは出てきていません。給付金付き税額控除やガソリンの価格引き下げ等、財政はピンポイントで、野党と組んだら状況は変わってくるかと思いますが、かなり現実的な財政政策が見えています。
そしてもう1つ、成長戦略に大きく舵を切っていて、これが後押しになります。私は、ここが一番重要な点だと思っています。
一言で言えば、「『アベノミクス』よりも現実的で、より有効的で、より日本経済のためになる政策」になるので、非常に期待されていると言えます。
高市新総裁は日銀の拙速な利上げを許さない
佐々木:確かにそれは期待感があります。総裁が高市さんになり、金利の行方がどうなるのかを心配するご質問も来ています。
「今後の金利の行方について、どの程度上昇すると予想されますか?」「日銀の利上げを懸念する声がありますが、利上げの幅が小さくスローペースなら相場への影響は限定的でしょうか? 広木さんの考えを知りたいです」というご質問です。
広木:日銀の利上げについて、高市さんは非常によく理解されています。真っ先にコメントされたのは「責任は政府にある」という点です。「考えていくのは政府であって、日銀と政府とでよく話し合って実行したい。実行の主体は日銀だが、方向性を決めるのは政府だ」という趣旨です。
つまり、利上げをするのは日銀ですが、その判断の主導権を政府側に引き寄せているということです。
高市さんは、今の日本経済はまだそれほど強くないということを非常によくわかっています。僕が拍手喝采したい発言として、高市さんは「需要が強く、物価が上がるような経済に持っていきたい。そうなるまでは利上げはするべきではない」とおっしゃっており、そのとおりだと思います。
今は見た目のインフレが問題になっていますが、これはディマンド・プル・インフレとはまったく違います。供給制約によって起きているインフレに利上げで対抗しようとしても、目的と手段がまったく噛み合っていないということです。
高市さんはその点をよくわかっていて、「日銀にバトンを渡したらやりたい放題になってしまう。責任は政府にあって、日銀はあくまで手段として実行する立場だ」と言っています。これは、非常に素晴らしい考え方だと思っています。
日銀の金融調整の主な目的は、物価の安定にあります。その物価はどうかというと、今は米などの食料品が値上がりしているため、見た目の消費者物価指数は高く見えますが、それは食料品の価格要因によるものであり、国内の景気が強くて物価が上がっているわけではありません。
だとすると、こういったところで利上げをするのはナンセンスです。米価も落ち着き、来年になるとさらにインフレペースがスローダウンするというのが、「今週のマーケット展望」「ストラテジーレポート」でも挙げている日銀の見通しです。
その後、経済がしっかりしてきて徐々に物価が上がり、日銀の物価安定の目標である2パーセントに近づくという見通しを示していますが、それはさらに先の話です。一度ここから、またインフレは弱まってしまうというのが日銀の見通しなのです。そういう中で、なぜ利上げをするのかということです。
現状も、米とエネルギーの価格を除いたら物価は1.5パーセントから1.6パーセントしか上がっていません。サービス価格なども全然上がっておらず、2パーセントには届いていません。世間一般の言う「インフレだ」「値上げだ」という発言は、「米の値段が高くて買えない」というだけの話です。日銀がその発言に便乗し「金融政策を正常化しないといけない」と言っています。日銀が言っているのは「実質金利が海外に比べて低いため、是正したい」ということです。
「あくまでも海外対比で低いから」とばかり言っていますが、これはおかしいだろうと思います。日本経済がそれだけ弱いから日本の金利が低いのであって、海外がどうかは関係ないのではないかという話です。
そこで、日銀は「ずっと日本だけが異常な政策をしてきたため、海外と比較してセントラルバンカーとして恥ずかしい」みたいなつまらないプライドがあって、是正したいとずっと言っているだけです。
海外に比べて実質金利が云々というのは、結論、「それは円安だ」という話です。海外対比で金利が低いため円安が進むと、輸入経由で物価が上がるといった話をしていましたが、そんなことにはなっていません。
100歩譲ってそうだとしても、日銀だけで金利を調整して為替をコントロールできるでしょうか? 無理でしょう。米国のほうがはるかにパワーが強いためです。
米国が今利下げ方向を向いていますが、それで日銀の売り上げが遅れ、そうしているうちに来年になれば、米国は利下げを打ち止めにします。そうすることでドルがさらに強くなり、為替が150円、155円、160円と値上がりしたら、日銀が利上げできるようになります。
しかしそれは、結局米国の金融政策とドルの為替レート次第でしょう。そうすると、国内の物価情勢を見ながら金融政策するという日銀の方針とはまったくかけ離れてしまいます。
今度はいつ為替をターゲットに金利を調整するのかと言っても、どこまで上げていけるかには限界があります。日本の潜在成長率が低く、中立金利の水準は1.5パーセント程度なので、いわゆるターミナルレートも低いわけです。
米国が来年には利下げ打ち止め、再来年には利上げのようなフェーズに入っていった時に、日銀の利上げはついていけないです。仮に日銀が利上げして円安を止めることが一時的に成功するとします。それでみんな「日銀が利上げして円高になるから、円を売るのをやめよう」と思います。
仮にそういったルールができたとして、今度は日銀がもう利上げができなくなってしまったらどうですか? そうしたら今度は「円売りしなければいけない」という話になってしまいますが、市場は待ってくれません。日銀の利上げの限界なんて、今この段階で先の先まで見通せるわけがありません。
日銀が為替をターゲットに金融政策を動かす素振りを見せようものなら、その瞬間にもう円安は止まらなくなります。非常に危ないですし、そういうスタンスは絶対に出すべきではありません。
そもそも日本銀行単独の金融政策で為替をコントロールすることはできないため、しようと思うべきでもなく、そういう発言をするべきでもありません。日銀の政策委員には釘を刺したいぐらいです。どういうつもりでそんなことを言っているのだろうと思います。
海外対比で低い実質金利を是正する云々は、意見でも出てきています。何のために言っているのだろうと思います。要は全部為替ですが、そんなことをターゲットに金融政策を考えていたら、大変なことになります。高市さんはそれをわかっているため、そういう政策を日銀に取らせないためにも、非常にポジティブだと思います。
金利のまだら模様と銀行株への追い風
金利をどう考えたらいいかという話ですが、ここで難しいのが、「金利って何ですか?」という話です。「株もどうすればいいんですか?」といった時に、日経平均の水準だけで「株」に一括りするわけではありません。株の中には高市総裁関連株や防衛関連株もあれば、金融株、AI関連半導体株もあります。いろいろな銘柄や業種があるのと同じで、金利と一言で言っても、国債の利回りには年限があります。
今日のような日は非常に顕著ですが、高市さん効果で株は大幅高、為替は円安になり、一般に言われるのは「積極財政によって日本の財政悪化が懸念されて長期金利が上がる」ということです。
ところが、実際の長期金利と言われる10年債利回りは、ほとんど上がっておらず、変わっていません。一方で、20年債や30年債といった超長期の金利は非常に上がり、売られています。
いわゆるイールドカーブのスティープ化です。長期金利が上がる一方で、短期金利は逆に下がっています。なぜかというと、総裁が高市さんになったことで日銀が利上げできず、利上げが遅れるからです。
真ん中にある10年債はほとんど変わっていません。最も流動性があるのが10年債なので、結局そこが金利の見通しになりますが、それは「日本の財政悪化懸念」と「日銀の利上げの遅れ」で相殺されてフラットであるというのが日本の金利の現状です。
超長期投資はプレイヤーがほとんど限られているので、そういう人たちが「財政悪化だ」と言っているだけの話であって、深刻な話ではありません。
それで銀行株が売られるかと言ったら、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)などは、逆に本日後半はプラスでした。銀行株は別に売られていません。
銀行の商売は短期で調達して長期で運用することなので、むしろイールドカーブが立つというのは、本来は銀行経営にとって非常に良い状況です。銀行株をもっと買われてもいいはずですが、日銀プレイのようなものがあるので、買いづらいというだけです。売られているかというと、まったく売られていません。
そのため、日本の金利の上昇はそんなに深刻に考えなくても大丈夫です。経済が積極財政で高圧経済になり、それにしたがって金利が上がるという、健全な金利上昇になると思います。
それで円安のスピードに若干歯止めがかかるなら、なおのこと良いです。自然体で経済が良くなって活気づき、それで金利が上がり、円安のスピードも緩やかになります。こんなに良いことはないでしょう。極論でいうとすべてはバランスなので、金利の上昇が来ると少しは危険ですが、大丈夫だろうと思います。
成長戦略こそが最大の財政再建
佐々木:いくつかの銀行株の質問についてご回答をいただきました。お話にも出ていましたが、「本日円安になって、為替の面もどうなっていくんだろう」「円安になったものの、日本は内需が良くなって海外投資が増えたらそれほど円安にならない気もしますが、どう思われますか?」というご質問も来ています。
広木:海外投資が増えたら、日本から外にお金を持ちだすことになるため、円安につながります。海外投資は円を外貨に換えて行うので、海外投資が増えるほど円安要因になります。
内需については、為替には影響しないでしょう。インバウンドがもっと増えればいいですが、インバウンドは逆に輸出と同じです。しかし、これもなかなか難しいかもしれないという懸念はあります。
日本には、一部のインバウンド観光客による弊害みたいなものも出ています。例えば、鎌倉の江ノ島電鉄が通っている、スラムダンクの聖地などです。今はちょうど国慶節で中国がお休みのため、たくさんの観光客が来ることにより、地元の方には弊害も出てしまっています。外国人対応の問題も含め、そのあたりを抑制しなければいけないという日本政府の厳しい対応が今後出てくるとすると、少しトーンダウンしてしまう恐れはあります。
せっかく観光業を盛り立てていこうという流れがあるので、牛の角を矯めないように、しっかりとした政策を望みたいと思います。
佐々木:「トランプ大統領が来日予定ということで、どういった会談になるのでしょうか。防衛関連等、さらに前進する展開になるんでしょうか?」とも来ています。
広木:そこはトランプ大統領の要求としっかり合致するところで、少なくとも石破茂氏よりは積極的に話してくれるのではないかと思います。高市さんのキャラクターは、トランプ大統領受けをしそうな気がします。
トランプ大統領は安倍さんを盟友として尊敬しており、親しみを持っていたと思うので、安倍さんの後継者ということで非常に良い関係が築けるのではないかと僕は思います。
佐々木:どういった会談になるのか楽しみです。
「この『高市トレード』という上昇の相場を受けて、年末に向けての日経平均の予想レンジでもし何か更新した面や、変わった面があったら教えてほしい」というご質問です。
広木:5万円はもうすぐ行ってしまうので、上方修正しなければいけません。もう1割ほど、5万5,000円あたりでしょうか。「55」ですね。仲間であるイェスパー・コールがいつも言っている「Go, Go」ですが、それに手が届くような水準になってきてしまうのではないかなと思います。
佐々木:確かに「『55』いけそうですか?」とコメントにも来ていますね(笑)。
広木:行ってしまうのではないかと思います。
佐々木:「55」と同時に、「いつが利食いのタイミングで、いつが買い時なのか?」というコメントもかなり来ています。
広木:相場のあやということで、細かい予想は難しいです。あまりここからの売りは考えないほうがいいと思います。少々急激に上がりすぎたため、もちろん下がるところはありますが、そこはすぐ買い戻される気がします。
相場ですから、多少行き過ぎた分というか、テクニカル的に走り過ぎた分の調整は当然ないとは言えません。ですが、それがどこまでかはわからないし、けっこう押し目は拾われるような気がします。
今回高市総裁になったことで、日本経済にとって非常に良い面しか出てこないように思います。積極財政というと財政悪化や金利上昇が懸念されますが、そんなことにはなりません。そこまで過激なことを言っているわけではないし、首相の座につくとトーンダウンしてマイルドになるものです。変なことにはなりません。
いわゆるトラス・ショックのようなことを言う人やメディアもいますが、そんな馬鹿なことをするわけがありません。「結局それって市場が勝手にそういう思惑に走っているということ?」という疑問も出てきますが、マーケットもそこまでエキセントリックではないので、そんなことは起きません。結局マイルドな路線で進んで、なるようになって、非常に良い政策になってくると思います。
こういう状況で、変に今までの一部省庁による過度なプロパガンダや、政治的な動きによって、財政健全化の話になってしまうことがあります。財政健全化はもちろん重要なテーマではありますが、今はそちらへ強く舵を切るべき局面ではありません。
高市さん自身が、インフレを含めて日本経済はそれほど強い状況にあるとは考えていません。だからこそ、しっかり財政を出していきたいという発想です。今はそれができる状況にあります。
財源をどうするかという話ですが、過去数年間ずっと税収は上振れし続けており、今や80兆円といった水準に到達しています。もちろんそれですべてのパッケージを賄えるとは言いませんが、その一部を使いながら、強い経済を作っていけば良いと思います。
一方で、高市さんが以前から提唱している給付金付き税額控除も、すぐに実施するわけではなく、これから制度設計していく段階です。今後はさらに税収の上振れが見込まれます。税収上振れの最大の要因はインフレです。
現在、日本はインフレ経済に転換してきています。インフレは同時に債務の負担も減らします。日本の財政は悪いことは悪いですが、今に始まった話ではありません。そして、その厳しい状況はどんどん改善しています。
GDP対比の債務残高なども、昔の最悪期に比べれば改善傾向にあります。一番わかりやすいのが、インフレになり債務の負担が減り、税収が過去5年連続で上振れし続けている状況です。こういった状況で財政を積極的に出さない理由はないほど、絶好のタイミングです。
今のマクロ環境下で、高市さんの掲げている政策はぴったりだと思います。そして連立を組む相手が国民民主党であれば、一番まともな成長戦略を掲げている政党です。成長戦略に舵を切れば、その成果が経済成長や税収の上振れとして返ってきます。GDPが拡大すれば債務比率もさらに下がります。
ですから、日本の財政を改善させる一番良い方法は、成長戦略のアクセルを思いきり踏むことです。
短期的には、そのための種銭として財政は一時的に悪化するかもしれませんが、その先の成長でGDPが拡大することが期待できるのであれば、その策は取る価値があると思います。まさにそれを実行できる環境が今、整ってきています。設備投資もソフトウェア投資も、非常に上振れしてきています。
人件費が上がり、人手不足が進む中で、企業はソフトウェア投資など生産性向上に向けて動き始めています。このようなタイミングを捉えて、さらに民間の投資を後押しするような政策を打ち出していけば、本当に良い循環になっていきます。
日本が成長軌道に乗ろうとしているタイミングで登場した日本の首相ですから、非常に期待感が高いと思います。
佐々木:そうなると、本当に今後が楽しみです。
広木:経済政策が正しい方向にアドレスしていることが一番の改善要素です。女性だという影響ももちろんありますが、それよりも経済政策が今のマクロ環境にしっかりフィットしていることがポイントなのです。
日本の生産性を上げる「馬車馬のように働く」姿勢
佐々木:気づいたら終了時間になってしまいました。高市さんが総裁に選ばれたことによって、どのようにマーケットに影響があるかをまた見ていきたいと思います。次回の「広木隆のMonday Night Live」は祝日のためお休みです。
広木:祝日なのですね。今回高市さんは「ワークライフバランスという言葉を捨てます」と発言され、話題になりました。これが本当に、一番日本を成長させると思うんです。
先週、某団体で講演会をした時に「日本の生産性をどう上げたらいいでしょうか?」という質問を受けました。「馬車馬のように働くべきだ」と言ったんです。今、日本人は生ぬるくて、「ワークライフバランス」を理由に全然働かなくなってしまいました。これが生産性が上がらない一番の理由だと思います。
「昔みたいに、がむしゃらに働いたらいいんじゃないか」と言ってきましたが、それを高市さんが言ってくれました。今回の国会議員全員に「馬車馬のように働いていただきます」と言って、ご自身も「ワークライフバランスを捨て、働いて働いて働きます」と発言されました。これに尽きると思います。
日本のトップがこうしたスタンスを示すことで、その姿勢は社会全体にも染み出していくと考えます。これもまた、日本の生産性を上げる1つの希望で、非常に良いことだと私は思っています。
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