業績サマリー
湯浅光裕氏(以下、湯浅):SBIレオスひふみ代表取締役副社長グループCOOの湯浅です。2026年3月期第1四半期の決算説明を行います。まずは30分ほど私からご説明し、その後でご質問等をお受けします。よろしくお願いします。
スライドは業績サマリーです。すでにご覧いただいている方もいらっしゃると思いますし、ご心配をおかけしているかと思いますが、2025年4月のトランプ関税ショックの影響で、4月から6月の運用資産残高(AUM)が減少しました。事実、営業収益は前年同期比マイナス2.5パーセントの27億7,600万円、営業利益は前年同期比マイナス22.3パーセントの4億4,200万円となっています。
ただし、運用資産残高は順調に回復してきており、一時的なものであるとご理解いただければと思います。
当社営業利益の要因分解
当社の主な営業利益の要因分解についてです。基本的には、運用資産残高に信託報酬を掛けたものが収益となります。運用資産残高は、市場動向や資金の流出入に左右されます。また、その間のフィーは、プロダクトごとの信託報酬率を掛け合わせたものにより決定されます。
そこからの費用についてはスライドのとおりです。詳細については後ほど触れますが、経常的な費用が発生しています。また、新しい投資信託をローンチする際には一時的なコストが含まれる場合があります。今回「つみえーる」としてローンチしたものもこれに該当します。
これらの費用を差し引いたものが営業利益となります。営業利益以下については、それほど金融収支がないため、ほぼ経常収支となり、そこから税金を支払って当期利益につながります。
①運用資産残高の変動要因
スライドは前年同期比を含めた過去の運用資産残高の変動要因です。全体像は次のページに示していますので、そちらをご覧ください。
2025年6月末時点の運用資産残高は過去最高水準に回復
スライドは、運用資産残高の全体を2023年4月から月次で記載したものです。今年に入ってトランプ氏が大統領に就任しました。いろいろな施策が期待されていましたが、関税問題などから直近まで不透明感を残すかたちとなりました。
その影響で、多くの投資家の解約や買い控え、投資控えが4月に見られ、運用資産残高が下がりました。しかし、4月以降は回復し、7月末時点の運用資産残高はこれまでの水準を越えてきていますので、ご安心いただければと思います。なお、7月末時点の運用資産残高は、8月の終わり頃にはご報告できる予定です。
①2026年3月期の運用資産残高の変動要因
スライドは、2026年3月期の運用資産残高の変動要因を分析したものです。左側のグラフは資金流出入の要因分解です。上が設定金額、下が解約金額、折れ線グラフは純流出入を表しています。
足元では4月、5月がプラスとなりましたが、6月に少し減少しています。これは基準価額が再び上昇したことで利食い売りが発生したためです。直近では「ひふみワールド」が最高値を更新していますが、それに伴い売りが出ていることが、この時点から見られる傾向です。
スライド右側には主な公募投信の基準価額の推移を示しています。基準価額は資産残高の推移に影響を及ぼす要素であり、スライドのような動きになっています。
YouTubeチャンネル「お金のまなびば!」はチャンネル登録者数70万人突破
私たちの重要な活動として、金融教育を含めたお客さまとの対話があり、これを「お金のまなびば!」というYouTubeのチャンネルを通じて行っています。チャンネル登録者数は順調に増加しており、70万人を超えています。これが100万人に達すると、さらに違った景色が広がり、メディアとしての影響力もますます強まると考えています。
もちろん、いろいろなタレントの方々にもご協力いただいています。ただし、巷で非常に売れているタレントというよりは、ユニークで金融に興味を持ち、ご自身でもさまざまなかたちで資産形成を行っている方々との対話が中心となっています。
②投信平均報酬率と③直販比率の推移
スライドは、信託平均報酬率および直販比率の推移です。やや改善しているように見えますが、これはプロダクトミックスによるものです。
本日は信託平均報酬についてご説明します。当社で最も大きな「ひふみ投信」「ひふみプラス」は約1パーセントの信託報酬率ですが、「ひふみワールド」は約1.5パーセントとなっています。
もちろん、これには資材費やその他のコストが含まれ、それらを勘案して信託報酬率を設定しています。その中で、どの投資信託の資産がどのように増えたのかという点について、私たちは「プロダクトミックス」と呼んでいます。このミックスの変化も信託報酬率に影響を与えます。
スライドをご覧いただければおわかりのとおり、信託報酬率は徐々に上昇してきています。ただし、これをさらに上げていきたいというわけではなく、現状の水準からやや上の範囲で推移させたいと考えています。この状況を維持できれば、現在と同等の信託平均報酬率を確保しつつ、それにかける信託財産全体の額が増加することで、当社の収入も安定的に増えていくと考えています。
各投資信託の報酬率と投資信託残高に占める比率の推移
少し細かい内容となりますが、四半期ごとの信託報酬についてです。各投資信託のプロダクトミックスを示しており、縦軸には当社がみなさまに提供しているさまざまな種類の投資信託を表示しています。また、そこからいただいているフィーのマトリックスとなっており、これが徐々に変化していきます。
直販、パートナーの状況
直販とパートナーの状況についてです。直販とは、私たちが直接受益者の方々とお話しすることができるチャンネルを指します。ご存知のとおり、当社の収入の約2割は直販から得ています。
残りの8割は、スライド右側に示しているパートナーの方々を通してお客さまになっていただいています。どちらも非常に重要ですが、直販は大きく増やすことが難しいのが現状です。それは、私たちが自ら営業を行い、お客さまに直接販売するというかたちになるため、進行が非常に遅くなるからです。
一方、パートナーには多くの金融機関の方々がいらっしゃいます。そのため、これらの金融機関の方々との密接なコミュニケーションを保ちながら、各金融機関の「今は『ひふみ投信』のような日本株を売りたい」や「今は『ひふみワールド』のような外国株を売りたい」といった目的に応じてお客さまをご紹介いただくかたちを取っています。
私たちは、コミュニケーションを重視しながら、最終的なお客さまに対してさまざまなかたちで投資信託をお届けしています。その中でも特に重要視しているのは直販を増やすことです。理由としては、直接コミュニケーションができる点が挙げられます。
当社が直接対応することで、市場の変化や状況が激変した際にも迅速に対応できます。このようなミーティングやカンファレンスの形式で、お話しする機会を設けることが可能となり、迅速な情報伝達を実現します。
情報をお伝えする際は、ミーティングやカンファレンスの形式で対応しますが、最初に「こういうことやりますよ」という重要な内容をお伝えする必要がある場面もあります。こうした情報伝達は、直販であればすぐに対応できます。一方、パートナーを通じて対応する場合は、パートナーの方々を介するためにどうしても情報伝達が遅れることがあります。このため、直販が非常に重要であると考えています。
「ひふみクロスオーバーpro」の状況
昨年発表した「ひふみクロスオーバーpro」の状況についてお話しします。我々自身も直販を行っていますが、現在19社のパートナーに販売を担っていただいています。
これも順調に拡大を続けており、プロダクトミックスの観点では、「ひふみクロスオーバーpro」は「ひふみワールド」に匹敵する信託報酬をいただいています。これは調査費が非常にかかることによるものですが、運用資産残高が増えることには、2つのメリットがあります。
1つ目は、未上場を含めた投資機会を多くのお客さまに提供できるという点です。2つ目は、私たちの収入が増加する点です。このような理由から、今後さらにこの事業を拡大していきたいと考えています。
販売管理費変動の推移と内訳
販売管理費についてです。ここまでは売上に関わる大きな流れも含めて説明しましたが、スライドはコストや費用の状況になります。費用はスライドのように推移しており、ウォーターフォール形式でわかりやすく示しています。
営業利益の変動要因
営業利益の変動要因をスライド左側からご説明します。今回の減収の大きな要因として挙げられるのは、運用資産残高の減少です。左から2番目の赤色の部分が、特に大きく影響を与えています。
その後、費用の増減が続きますが、右側に進んでいくと、「顧客基盤拡大に伴うシステム利用料の値上げ」と記載があります。これは運用を進める中で使用するさまざまなシステムを指します。この費用については値上げが見られます。インフレの影響がこのようなところにも現れており、さまざまなコストが徐々に上昇しています。特にシステム関連の部分で明確にその影響が出ています。
「人的資本への投資拡大」は当社にとって非常に重要であり、ある意味経常的なコストとなりますが、状況に応じて一時的に抑えることも可能です。このような観点も含めて対応を進めています。また、「業容拡大に伴う外部資本活用」については、各種アウトソーシングを活用しており、こちらも経常的なコストが発生しています。
つまり、スライド右側は基本的に経常的な部分となります。そのため、一番左側に位置する運用資産残高やプロダクトミックスをより良くしていくことが重要です。これには直販も含め、改善を進めていきます。
直販では、当社のフィーの取り分が高く、すべてが当社の収入となるため、このような施策を積極的に進めていくことが重要だと考えています。
つみたて継続保険「つみえーる」2025年6月30日より提供開始
今後の成長戦略についてです。先ほどお話ししたとおり、6月30日から「つみえーる」を提供しています。みなさまはあまり興味を持たれていないようにも見受けられますが、若い方々には注目されていると感じられます。この件に関してはさまざまな議論がありました。
投資と保険の組み合わせであり、「保険」をイメージすると、「一体どういう保険だ」となっていますが、特に学資保険に似た仕組みで、お子さまなどの将来の費用をつみたてつつ、投資を行い、万が一の事態が生じた場合には保険で補うというものです。この商品は、65歳まで加入可能となっています。私も加入を検討しています。
将来的には教育分野も含めて重要だと考えておりますが、現時点ではわかりやすいようにこのような分野をターゲットにしています。
「つみえーる」の概要
「つみえーる」の概要です。ポイントは、シミュレーションで目標が見「えーる」、つみたて投資で利益を「えーる」、保険でつみたて投資に「えーる」を送ることです。
スライドに記載しているとおり、つみたて予定期間やつみたて目標額をご設定いただけます。また、どのくらいの期間でどの程度つみたてを行うかのシミュレーションも可能です。なお、ご加入いただかなくてもWebサイト上でシミュレーションができますので、ぜひお試しください。
Webサイト上でのシミュレーションでは、「どのような商品を選びますか?」という選択肢もあります。「ひふみ投信」を選ぶか、「ひふみワールド」を選ぶかによって結果が異なります。例えば、100万円をつみたてたい場合、毎月3万円を「ひふみワールド」で運用することを選択すると、期間や予定がすぐに明示されます。
シミュレーションは過去のデータを基に「このような収益が期待できる」をベースにして算出され、目標が提示されます。この目標に向かって進めていくのですが、例えばお子さまが0歳から始めて、18歳や20歳頃まで、20年近く実施しようと考えている間に、ご自身にも変化があることが予想されます。現在「2060問題」というものが指摘されていますが、子どもが20歳になる頃に親が60歳であるという状況が一般的になってきています。
その際、ご自身になんらかの問題が生じた場合でも、保険を利用することでつみたて目標額を達成できる仕組みを提供します。このサービスは、自分で言うのも恐縮ですが、本当に優れていると自負しています。
「つみえーる」が狙う市場の規模とPR施策
「つみえーる」が狙う市場の規模についてです。スライドは、例えば「今、学資保険の世界を見てみるとどのように見えますか?」というものです。
当社には現在、直販で約6万人のお客さまがいらっしゃいます。一方、こども保険関連の保有契約者数は、足元で約657万件となっています。ご存知のように、少子化が進行しており、出生数は減少傾向にあります。例えば、昨年の出生数は約67万人でしたが、それでも67万人の新しい命が誕生しています。そのため、多くの親御さまが子どものために保険を検討していることが、この657万件の契約数につながっています。
ただし、保有契約者数は20年ほど経過するとその契約が終了するため、新しい契約者が継続的に必要となります。直近では、2023年度のこども保険関連の新規契約件数は約17万件でした。 つまり、その当時、1年間で約70万人の子どもが生まれており、そのうちの2割強の子どもが、親御さまの加入によって保険に入っていたということになります。
たとえ出生数が減少しても、10万人から15万人、あるいはそれ以上の親御さまが候補として十分に存在すると考えられます。したがって、当社としてもこの市場に積極的に参入し、こうした方々をターゲットとして取り組んでいきたいと考えています。
「つみえーる」と一般的な保険商品の比較
「つみえーる」の良さを伝える内容はスライドのとおりです。端的に言えば、「つみえーる」の保険部分は団体保険であり、私たちが加入してそれをみなさまに分けるという仕組みです。
「つみえーる」の優位性
「つみえーる」の優位性です。どの保険会社でも共通ですが、団体保険には広告費用をかけません。すべて団体で契約を行い、対象者を明確に絞り込んで取得するため、一般保険のように広告を打つことがありません。この部分のコストが抑えられているので、団体保険はコストの優位性があります。
そのように低コストでありながらも、十分な保障を付帯しています。また、私自身も「ひふみワールド」の運用に力を入れており、増やせる可能性のある投資信託につみたてを行う仕組みです。なにかあった際には保険でカバーされるという、とてもユニークで使いやすい商品だと思います。
例えばご自身が60歳で、今後5年間で300万円を貯めたいとお考えの場合でも、この商品を活用いただけます。そのうえで、万が一の場合には保険でカバーされ、例えば私の場合は妻が受取人となり、その金額を受け取ることができます。
このように、ただ単につみたてをしているだけではないという点が、この商品の特徴です。
収益性の高い新たな金融商品を年内ローンチ予定
我々はユニークな商品を作成しており、それらを年内にローンチする予定です。当社はトップラインを増やしたいと考えており、現在、スライド左上に記載している機関投資家向けの商品、いわゆる投資顧問の商品を開発しています。ただ、これらは機関投資家向けであり、一般の方々には提供できません。
機関投資家向けの商品もフィーをいただく仕組みとなっており、一般の投資信託とは異なるため、みなさまの目に直接触れることはありません。「今、何億円だよね?」といった商品名で確認することもできませんが、収益性の高い商品を計画していますので、私たちのトップラインの押し上げに貢献すると考えています。
また、「フィナップ」「つみえーる」「ひふみ」「Kiffy(きっふぃー)」など、私たちの子会社が取り組む金融教育や寄付活動を通じて、多くの方々に金融教育をお届けしていきたいと考えています。
貸借対照表ハイライト
貸借対照表はスライドのとおりです。
配当について
配当政策についてお話しします。配当に関してはやや消極的ではありますが、前期と同様の方針で「これ以上は出せますよ」というところを提示しています。
当社の収益は、「これを売りますよ」と言って物を売るように積み上がっていくビジネスモデルではなく、マーケットの変動に大きく影響を受けるため、業績予想を正確に出すことが難しい部分があります。ただ、その状況を真摯に正直にお伝えする中で、DOE10パーセント以上を維持することをお約束しています。また、配当性向についても50パーセント以上を目指している点をお約束しています。
特に、DOEは資本に対して10パーセントを配当に充てるものであり、将来の予測ではなく、これまで積み上げてきた堅実な資本に基づいているため、安定性が高いです。そこをベースに、2026年3月期は6.8円の配当を提示しています。
ただし、前期と同様に通年で確実に収益を積み上げ、マーケットに大きな混乱が生じない限り売上や利益をさらに伸ばし、それに伴い配当も増やしていきたいと考えています。この方針を改めてお伝えします。
2025年3月期の株主優待について
株主優待についてのお知らせです。みなさまは株主として株主優待をお受け取りになられていると思いますが、手続きは済んでいますでしょうか? 前期は5,776名の対象株主さまがいらっしゃいましたが、直近の7月25日時点で株主優待のお申し込みをいただいた方は1,768名となっています。
すでにご案内していますが、「ひふみクロスオーバーpro」を口数としてお渡しするか、寄付を選択いただけます。ぜひサイトへアクセスしていただき、お手元の書類をご確認の上、株主優待を受け取っていただければと思います。
なお、レオス・キャピタルワークスに口座をお持ちでない方におかれましては、これを機会に直販口座を作成いただき、ぜひ株主優待をお申し込みいただきたいと考えています。
新任取締役のご案内
直近、新しい取締役が就任しました。中川はこれまでCFOを務めていましたが、今回社内取締役に就任しました。また、佐藤社外取締役が退任され、その後任として三木桂一氏に社外取締役として加わっていただいています。
スライドに記載のとおり、三木氏はこの業界での経験が非常に豊富です。私自身、過去に三木氏がジャーディン・フレミングという運用会社に在籍していた頃、声をかけていただいたことがあります。三木氏はこの業界について幅広い知識を蓄えており、今回ボードメンバーに加わり、私たちの経営を監視していただいています。
「フィナップ」の開講スクールについて
「フィナップ」も順調に進んでいます。スロースタートではありますが、オンラインの金融教育を開始し、お客さまも徐々に増えてきています。藤野も私も講座を1つずつ持って話をしていますので、ぜひご覧ください。
SNSアカウントのご案内
最後に、SNSのアカウントがありますので、この機会にアカウントを作成して、私たちをフォローしていただければと思います。
メール配信登録ページのご案内
メール配信の登録ページもございますので、ご登録をお願いします。
株式会社シェアードリサーチによるアナリストレポート
シェアードリサーチという調査会社が、当社に関するレポートを公開しています。非常に詳細に書かれており、長期間の取材を経て作成された分厚いレポートとなっています。当社がどのような会社であるのか、ある種物語のように読める内容になっていますので、ぜひご覧ください。
私からの説明は以上です。ありがとうございました。
質疑応答:ショック時の運用資産残高減少への対応と金融教育の重要性について
質問者:4月のトランプ関税ショックの影響で、御社の運用資産残高が減少し減収になったとのインターネット速報が昨日ありました。私は正真正銘の御社の熱狂的なファンですが、これは、会社としての不断の努力が足りないのではないかと考えています。
私は、ショックが起きた際には資金流出よりも資金流入が増えるべきとの考えですが、一晩考えた結果、即効性のある解決方法はないという結論に至りました。しかし、こうしたショックは度々発生します。日本人の投資信託の所有期間が約3年であることを踏まえると、それに備えるためには、日頃からの金融教育が重要だと結論づけました。
つまり、取得コストを下げるためには暴落時に買うことが基本ですが、こうした行動が当たり前であるという認識を投資家に広げる教育が不足しているのではないかと感じています。
また、選挙においても得票にもつながることもあり、インターネットの重要性を認識しています。御社のネット広告は非常に効果的ですが、私は投資家とのリアルな接触機会を増やすことが絶対に必要だと考えています。
私自身の経験として、運用者に直接接することで、投資信託を売却する際にその運用者の顔が思い浮かびます。そのため投資信託を長期間保有し続けることが多くなり、最終的には大きな利益を得ることができると感じています。そのため、リアルな接触機会を重視することと、日頃からの金融教育へのさらなる努力が必要だと思いますが、いかがでしょうか?
湯浅:一例として、スライドをご覧ください。4月はネットでの流入が増えています。我々は、そこにはある程度成功していると考えています。約20年かけて、そのようなお伝えの仕方をしてきました。
約20年の中で、さまざまなショックがありました。我々にとって最初の大きなショックはリーマンショックでした。リーマンショックは非常に大きな影響を与えた出来事で、創業から数年しか経っていない我々がどれだけ発信しても、ほとんど誰にも聞き入れてもらえなかったという状況がありました。
しかし、その後の回復局面で示した私たちのパフォーマンスや、さらにその後に発生したさまざまな事件や動揺の際の経験を、少なからず評価してくださった方々がいると思います。そうした方々は、市場で動揺があった際には、しっかりと追加購入されていると思います。
ただし、全体のマーケットが下がることにより、既存のアセットが毀損するのは避けられません。当然ながら、我々が管理する運用資産残高が減少すると、それに伴って期間中の収益も減少してしまいます。このような中で、お客さまが市場の下落時に購入することで得られるメリットは、購入した時点では享受できていると考えます。
一方で、市場が下がる中で、当社のアセットのみが下がらないということはほぼなく、マーケットの上下に伴い、一定程度の変動があることは避けられません。そのため、収益が減少してしまうのは、会社として避けがたい課題であると認識しています。
ただし、お客さま個人のリターンについては、先ほどお話ししたような内容を継続してお伝えしています。例えば「ひふみワールド」で説明した際には、「私の現在のリターンは百何十パーセントだ」という方がいらっしゃいました。「それって、どうしてそんなことになるの?」とおうかがいしたところ、「下がった時にちゃんと買っているから」という方もいらっしゃいました。
そのような中で、「やはりこういう方々はいらっしゃるんだ」という考えも浮かびましたが、これがマジョリティではありません。もちろん、私たちの収益も重要ですが、まずはお客さまの収益を最優先に考えています。
お客さまの収益にしっかりと寄り添いながら、説明を行い、体験していただき、実際に利益を上げていただきます。それを繰り返した結果として、「そういうことをしてアドバイスしてくれたよね」や「良い会社だよね」という状況が生まれ、最終的には私たちの収益も大きく増加する、という順序が理想ではないかと思います。このようなかたちに徐々に近づいてきていると考えています。
一方、リアルのミーティングはさまざまなかたちがあってよいと思います。「私たちはリアルな接触機会を増やします」や「ネット広告を増やします」だけでなく、多様な形式で増やしていく必要があると考えます。現在、ネット広告はかなり充実してきているので、リアルのミーティングもさらに増やしていければよいと思います。
今日は夕方になって涼しくなりましたが、天候はなかなか予測が難しいため、なるべく足元が悪くない時に開催したいと考えています。ただし、その場合、気候の良い時だけになってしまい、それでは物足りないため、ネットを主体とした取り組みや、気候が良くなった時にリアルのミーティングを増やすなど、工夫の余地はまだあると思います。
おっしゃっていただいたことは本当にそのとおりですので、社内でさらに議論を重ね、より良いアウトプットができるよう努めていきたいと思います。
質疑応答:今期の目標と市場に対するアウトパフォーマンスの方向性について
質問者:第1四半期が減益ぎみになったことについては、お話をうかがい理解しました。また、基準価額も回復してきているとのお話をうかがい、少し安心しました。今期の目標について、どの程度の上昇を目指すのか、またアクティブファンドとしてTOPIXに対してどのような見通しを持っているのかについて、方向性をお聞かせいただければと思います。
湯浅:もちろん増収増益を目指していきます。ただ、市場は予測が難しいため、何パーセント程度と想定してお伝えすることはできません。しかし、今期だけでなく、常に考えていることは、市場に対してアウトパフォーマンスをしていきたいということです。
これは社内的な目標ですが、インデックスに対して全体で2パーセントから3パーセント上回ることを目指しています。先ほどご説明したプロダクトミックスがありますので、これにはトピックスだけではなく、外国資産に関連するものも含まれています。そのため、我々はインデックスを直接持っていないものの、その対比として全体で2パーセントから3パーセント程度のアウトパフォーマンスを目指しています。
したがって、具体的なお答えが難しい部分ではありますが、増収増益を記録する中で、市場が下がった場合、その減少幅を上回るかたちでパフォーマンスを発揮することが重要だと思います。ただし、市場そのものの動向については想定が難しいため、ここで明言することはできません。
いずれにしても、当社としてはさまざまなかたちで対策を進めています。先ほど機関投資家向けの商品についてもお話ししましたが、それに関連するフィーなどは現時点でははっきりと見えていません。それでも、当社として期待を持って取り組んでおり、この分野にも相当な力を注いでいます。これらも含め、全体の売上・利益がこれまでを上回ることを目指していきたいと考えています。
質疑応答:解約増加の原因とパートナー販売の影響について
質問者:7月は流入が多く、6月は解約が増えている状況についてです。これは直販ではなく、パートナーを通じて購入された方々に起因しているのではないかと考えています。パートナーのことを悪く言うつもりはありませんが、御社の志がまだ十分に浸透していないからではないかと理解しています。この見解は正しいでしょうか?
湯浅:そのように想像しています。
質疑応答:解約における直販とパートナーの割合について
質問者:解約における直販とパートナーの割合については、統計を取っていないということですか?
湯浅:それは把握しています。ただし、パートナー企業は現在約300社いらっしゃることに加え、パートナーの中でも、その時々で力を入れるポイントが異なります。そのため、我々が関与する範囲ではないと考えています。
質疑応答:「お金のまなびば!」の社会貢献と事業的な見込みについて
質問者:「お金のまなびば!」は、社会貢献に大きくつながると思っています。もちろん、パートナーを通じて御社の投資信託を購入したことが縁で、チャンネル登録する方もいます。また、日本には投資家が少ないという状況の中で、御社と関係がない方にも投資の意識をイチから育てるということは、まさに社会貢献だと思っており、すばらしい活動だと感じています。
株主として私はそれでよいと思っていますが、事業的な観点で言うと、これは事業的な収益をあまり重視していない、つまり社会貢献が主な目的で、収益はあまり期待していないということですか?
湯浅:いいえ、期待しています。登録者数が100万人規模、あるいはもう少し大きくなってくると、また違う力が生まれるのです。
質問者:100万人のチャンネル登録者うち、1割もしくは何パーセントかが将来の御社のお客さまになる可能性があるということでしょうか?
湯浅:それもそうです。また、そこで生み出されるコンテンツを別の場面でさまざまなかたちで活用していけることも想定しています。
質疑応答:広告運用と改善に対する意見と対応について
質問者:今回の減益に関して広告費と人件費に大きく注目していますが、その理由が気になっています。Twitter(X)でも「そこだよね」という話がありました。
実をいうと、私が御社を知ったのは4年から5年前のことで、「何かはわからないけれども会社から100万円落ちてきて、この100万円をどうしよう」となった際に、「わからないから、とりあえず投資信託に申し込んでみよう」とパソコンを立ち上げ、「『ひふみ』って、100万円預けたら400万円、4倍になったんだ。じゃあ自分も預けてみよう」と感じたことを覚えています。第1四半期は広告費が使われているとのことですが、私はまったく広告を使用していません。
今はTwitter(X)を開いてニュースを調べる際に、「つみえーる」の広告がニュースに表示されることがあります。その広告の手法が本当に適切なのか疑問を感じます。自分が見たい記事を閲覧しようとすると、「つみえーる」が邪魔になりスクロールしてくるようで、「これではイメージダウンにならないか?」と煩わしさを強く感じます。そのため、広告表示についての見直しを検討していただけるとありがたいと思います。
湯浅:ネット広告に関しては、私たちが「こういうふうにやりたい」として設定した内容もありますが、実際のオペレーションはエージェントに任せる部分もあります。
広告が配信される先のアルゴリズムがいつの間にか変わったり、ずれるなど、さまざまな事象が発生します。もちろん我々はそれをトラックしていますが、それでも余計なものが表示される場面があることを私も認識しています。さまざまなご意見をいただいていますので、それをフィードバックに反映していきたいと思います。
質疑応答:時価総額の課題と投資への取り組みについて
司会者:「海外投資家を増やすために、海外IRを訪問されたと聞きました。何か共有いただける点はございますか?」というご質問です。
湯浅:最近イギリスを訪問しましたが、現地で大きな興味を持っていただいていると感じました。「ユニークだ」の件についても、みなさま話題にしてくださり、私も藤野とともに現地でお話しする機会がありました。同業者として、苦労を理解していただいている面があり、握手を交わしながら「お前たち、よくやったな」といった反応を得る場面もありました。ただ、実際に投資となると時価総額のハードルがあるという印象を持っています。
これはよくチキン・アンド・エッグの問題に例えられますが、どちらが先かという部分です。ただ、私たちは売上や利益を伸ばしていくために全力を尽くしており、その点については強いコミットメントと自信があります。
また、これは釈迦に説法かもしれませんが、仮にバリュエーションが変わらなくても、利益が拡大すれば時価総額や株価も上昇していくものです。したがって、これからも真摯に取り組んでいかなければならないと思っています。
一方で、IRの面では、多くの方々に共感を得ていただいているものの、実際に購入する際のハードルを何とかしてほしいというご意見は、本当にそのとおりだと思います。
「僕も投資家だとしたらそう言うだろうな」となります。そのため、「この部分についても努力していきますので、引き続きフォローしてください。フォローいただく中で、もしそのような機会があれば株主となっていただきたい。私たちは利益を増やし、キャピタルゲインもインカムゲインもさらに向上させる自信があります。また、日本国内でも特にユニークな運用会社であるとの自負を持っていますので、そこを期待して待ってくれ」という内容をお伝えしています。
この点については、本当に「卵が先か、鶏が先か」だと思っています。いずれにせよ、この活動を継続していかなければ、「今は小さいから、やっても駄目だ」と捉えてなにも行わない場合、筋肉も育たず、顧客も「突然訪問してきてそんな話をされても」という結果になってしまいます。そのため、これからも継続的に取り組んでいきたいと思います。
質疑応答:プライム市場への移行について
司会者:「将来的に、プライム市場への移行は考えていますか? 考えている場合、いつ頃までになど、ざっくりした目標はありますか?」というご質問です。
湯浅:考えています。ただし、いくつか要件がまだ足りない部分があるので、そこを補って、できる限り早く対応したいと考えています。
プライム市場に移行するということには、さまざまな意味があります。1つは投資家層の拡大であり、もう1つはインデックスへの採用です。そして、インデックスに採用されることで時価総額の拡大につながり、それが1つの早道と考えています。そのため、プライム市場への移行を実現したいと思っています。
質疑応答:金融商品の提供形態と収入の可能性について
司会者:「『ひふみ投信』や『ひふみワールド』のETF版は、実現できないものでしょうか?」というご質問です。
湯浅:お客さまの費用を考えるとETF版が適しているかもしれません。しかし、我々の収入が減少する可能性があるため、痛し痒しの部分もあります。ただ、さまざまなかたちで金融商品をお届けしていきたいと考えており、その点にはまだまだ可能性があると思っています。
さらに、収入を拡大し安定させることができれば、投資家の方々に還元するスキームとなっていくと考えています。
質疑応答:配当方針について
司会者:「DOEだけでなく、累進配当も宣言していただけないでしょうか?」というご質問です。
湯浅:宣言については、社内でさまざまなかたちを検討しています。我々は投資家ですので、現在の金融の中で最もポピュラーなものは何か、そして将来にわたって「こういうことを考えて経営してきている」ということを熟慮する必要があると考えています。
先ほど市場についてのお話がありましたが、みなさまは長いご経験をお持ちだと思います。私が仕事を始めた当初、成長企業が配当を出すというのは、「何をしているんだろう」という反応が一般的でした。
つまり、「社内でもっと設備投資に使う」「人材投資に使う」「もっと拡大を早めるところに投資をするべきだ」というのが一般的な考え方だったかと思います。しかし、ここ10年ほどで、その考え方も大きく変わりました。
この背景には、世界中で人口が増加していることや、いわゆる高齢化が進む先進国が増えてきたことがあると思います。このように、生き方自体が変化してきているのです。
世の中が変化する中で、どのようにあるべきかを常に考えています。そのため、慎重に検討を重ねた上でお話ししなければいけないと考えています。今後も十分に検討していきたいと思います。
質疑応答:国際的な投資機会について
司会者:「日本はいろいろな海外運用会社の商品を取り扱っているので、海外に『ひふみ投信』を売ることはできないでしょうか?」というご質問です。
湯浅:今回は海外でIRを実施しましたが、同時にマーケティング活動や取材も行いました。これは私の感想ですが、マーケティング活動の中で、日本株や米株、フランス株、イギリス株などプレーンなものが、さまざまなかたちで本当に多く存在していると感じました。
私たちがリリースした「ひふみクロスオーバーpro」のようなものは、ほとんど存在しないのではと感じています。参考までに、イギリスでは3年前、「LTAF」という法律が制定されました。この法律は、未上場資産に特化したLong-Term Asset Fund(LTAF)を対象とし、未上場100パーセントのファンドを作ることを目的に制定されたものです。このファンドは年金や確定拠出年金(DC)などに組み入れることで、投資機会を広げ、リターンの可能性を高める仕組みとなっています。
また、そのような法律を用いて未上場市場が膨らみつつある現状を見ると、世界各地でそのような投資機会が求められていることを実感しています。そうした背景もあり、当社もこの未上場市場に注力しています。
ただ、国をまたぐと税制面での法律がずいぶん変わってしまうので、そこがハードルになっているという点は日本も含め各国同様です。このため、可能性としては非常にあると思っていますが、プレプレくらいのマーケティングでやってきました。このあたりについては、また変化があったらお伝えしたいと思います。
おっしゃるとおり、世界中には多くの投資家がいますし、いろいろなリターン・プロファイルを求めている人たちがいますので、そこに最も適したもの、最も収益性の高くなりそうなものを出していきたいと思っています。
質疑応答:株主優待制度導入の効果と今後の展望について
司会者:「株主優待についてです。現在は1,000株と5,000株の切り口がありますが、3,000株での優待の検討をお願いします」というご質問です。
私はIRを担当していますが、株主優待をきっかけに多くの株主の方々とIRでお話しする機会があり、非常に喜んでいただいています。当社としても株主優待を導入してよかったと感じています。株主のみなさまからのご意見を社内で共有し、さまざまな検討を進めていきますので、引き続きご支援いただければと思います。