日本ヒューム、通期利益を上方修正、中期計画目標を2年前倒し達成見込み 増配など株主還元を強化
日本ヒュームグループの事業概要

増渕智之氏:日本ヒューム株式会社代表取締役社長の増渕です。本日はお忙しい中、当社の決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。本日はどうぞよろしくお願いします。
はじめに、会社概要についてご説明します。当社は1925年に遠心力鉄筋コンクリート管、いわゆるヒューム管の製造からスタートし、おかげさまで本年10月に創立100周年を迎えることができました。
「社会インフラを支え、未来にワクワクを重ねる会社」をコーポレートメッセージに掲げ、「総合コンクリート、主義」のもと、基礎事業、下水道関連事業、プレキャスト事業の3本柱で事業を展開しています。
老朽化したインフラの更新需要や省人化ニーズの高まりの中、コンクリート製品製造と施工を一体で提供できる強みを活かし、確かな品質と技術で社会に貢献している会社です。
①連結損益計算書

2026年3月期第2四半期の業績についてご説明します。2025年11月11日に発表した決算短信のとおり、売上高は167億円、営業利益は11億4,500万円でした。
前年同期比では減収減益の結果となりましたが、これは想定の範囲内であり、計画どおり進捗しています。営業利益の通期目標に対する進捗率は50パーセントを超えており、現時点では通期予想の達成に向けて順調に推移していると考えています。
また、足元の受注動向や採算性改善の進展を踏まえ、昨日、営業利益を22億円から23億円、経常利益を31億円から34億円、純利益を23億円から30億円へと業績予想を修正しました。
これにより、通期予想の達成に向けた見通しは一段と明確になったと考えています。
②連結貸借対照表

連結貸借対照表についてご説明します。ご覧いただいているとおり、自己資本比率は77.8パーセントと、引き続き健全な財務基盤を維持しています。
現金および預金は前期末に比べて減少していますが、これは手形廃止および支払サイトの短縮に伴う一時的な資金流出によるものです。
これらは取引先との信頼関係を踏まえた前向きな取り組みであり、財務の健全性に影響を及ぼすものではありません。
③2025年度中間期 業績総括(連結)

事業セグメント別の業績についてご説明します。
基礎事業については、昨年度に施工した大型杭工事の反動減により、売上高は約100億円で前年同期比20.8パーセント減、営業利益は7億2,000万円で前年同期比41.0パーセント減となりました。
しかし、この減収減益は想定内のものです。当社は受注産業のため、工事の着工時期や進捗により四半期ごとの計上額に変動が生じる特性があります。しかし、受注水準自体は堅調に推移しているため、下期以降に回復する見込みです。
下水道関連事業については、高付加価値の合成鋼管の出荷が増加したほか、下水道管更生・耐震化工事の需要拡大も寄与しました。その結果、売上高は約59億円で前年同期比7.5パーセント増、営業利益は約11億円で前年同期比24.6パーセント増となり、引き続き堅調に推移しています。
2026年度3月期(通期)業績予想

中期経営計画「23-27計画R」の3年目にあたる、2026年3月期の業績予想についてご説明します。
2023年5月にご説明したとおり、「23-27計画R」は当社創立100周年をまたぐ中期経営計画であり、「『継承と新化』-多様性と相互信頼で成長軌道を描く-」をテーマに、全社一丸となって改革に取り組んできました。
最終年度である2027年に、売上高400億円、営業利益22億円の達成を目標としてきましたが、2年前倒しで達成する見通しです。足元の受注動向や採算性改善の進展を踏まえ、このたび通期業績予想を上方修正しました。
売上高は計画どおり400億円を見込んでいますが、営業利益は採算性の改善や原価低減の進展により、期初計画から1億円増の23億円、経常利益は3億5,000万円増の34億円、当期純利益は7億3,000万円増の30億円を見込んでいます。
2026年3月期連結業績予想

2026年3月期のセグメント別の業績予想についてご説明します。
基礎事業については、昨年度に施工した大型杭工事の反動はあるものの、一般土木や再開発関連の案件を中心に受注が堅調に推移しているため、売上高は242億円、前期比6.5パーセント増と、増収を見込んでいます。
一方、採算面では大型案件の反動などにより、営業利益は10億円、前期比23.4パーセント減となる見通しです。ただし、受注環境は安定しており、全体として堅調な推移を維持しています。
下水道関連事業については、大都市圏で進む大深度下水道や高水圧に対応した配管向け「合成鋼管」の出荷が増加する見通しです。
さらに、橋梁の基礎構造物に使用される当社オリジナル製品「PCウェル」の出荷が伸びるほか、下水道管の更生・耐震化工事の需要拡大も寄与する見込みです。
その結果、売上高は142億円で前期比約10.7パーセント増、営業利益は27億円で前期比約39.5パーセント増と、大幅な増収増益を見込んでいます。
損益の進捗状況

損益の進捗状況についてご説明します。着実な成長を続けており、今後は次期中期経営計画のもとで、さらなる企業価値の向上を目指します。
基礎事業の進捗状況

事業別戦略の進捗についてご説明します。
基礎事業については、過去5年間で売上高は168億円から242億円へと拡大し、営業利益率も1.4パーセントから4.1パーセントに向上しました。
これは、売価の適正化や物件ごとの採算管理を徹底したこと、さらに中期経営計画で掲げた改革による成果と考えています。
また、来年より本格始動する関西地区の大型案件に対応するため、尼崎工場に約3億円を投資し、生産能力の増強を図っています。なお、この投資は、同地区における今後の杭の大径化にも対応できるものです。
今後の主な成長戦略は、3点になります。
1つ目は、環境負荷を抑えつつ工期を短縮できる中掘工法であり、先般発表した「CP-X工法」の拡販、2つ目は、先日発表した超高強度杭の評定取得による競争力の向上、3つ目は、ICT施工管理ツールである「Pile-ViMSys」や「ViMCam」を活用した、社会が求める省力化や安全のオートメーション化による受注機会の拡大となります。
これらの3点を柱として、さらなる競争力の強化を図っていきます。
基礎事業の進捗状況

今期の基礎事業における主なトピックスをご紹介します。当社では、BIMソフトウェア「Autodesk Revit」向けに、既製コンクリート杭の設計支援データを整備し、無償で公開しました。
「Autodesk Revit」は、建設大手各社が採用するBIMソフトウェアで、構造物データの共通化や統一化を図るものです。これまで設計事務所や施工会社ごとに異なっていた設計データの形式を共通化し、設計から生産、施工、維持管理までの一連のデータ活用を可能にしています。
一言で言うと、「Autodesk Revit」という設計ソフトの「部品」として、当社の杭データが組み込まれるようになったということです。
今回の無償公開により、設計段階から当社の製品が選定され、活用される機会が増えることが期待されるため、将来的な受注拡大につながるものと考えています。
基礎事業の進捗状況

2025年10月20日に発表した、コンクリート強度200ニュートン毎平方ミリメートル(以下、N/平方ミリメートル)の超高強度コンクリートパイルについてご説明します。
現在、既製コンクリート杭に使用されるコンクリートの最高強度はおよそ140N/平方ミリメートルとされており、今回開発した200N/平方ミリメートルは、国内最高強度クラスの技術です。
この超高強度パイルを使用することで、杭の小径化による使用材料の削減や、掘削残土およびCO2排出量の低減が可能になります。
また、既存の高支持力工法と組み合わせることで、従来の既製コンクリート杭では適用が難しかった構造物への採用も視野に入ります。
さらに、この技術開発の意義は製品そのものにとどまらず、工場がより高い強度の製品を製造できるようになることで、他の製品の品質や生産効率の底上げにもつながり、長期的には当社全体のコスト競争力強化にもつながると考えています。
今後、建築評定の取得を進め、早期の実用化および販売開始を目指していきます。
下水道関連事業の進捗状況

下水道関連事業の進捗状況についてご説明します。
これまで、下水道関連市場は年々縮小傾向にありましたが、当社はスペック営業活動の成果や高付加価値製品の拡販により、シェアを着実に伸ばしてきました。
その結果、売上高は112億円から142億円へ、営業利益率も17.1パーセントから19.0パーセントへと向上し、収益力が一段と高まっています。
今後は、社会課題となっている下水道管の老朽化対策需要を確実に取り込み、低炭素型高機能コンクリート「e-CON」や、コンクリートの腐食を抑制する「ビックリート」などの製品の拡販を強化していきたいと考えています。
下水道管の老朽化対策として「ヒューム管2.0」というビジョンのもと、さらなる成長戦略を推進していきます。後ほど詳しくご説明します。
下水道関連事業の進捗状況

現在の下水道業界の動向についてご説明します。インフラの老朽化が深刻化する中、先般、国土交通省が実施した2025年9月末時点の全国特別重点調査結果では、1年以内に対策が必要な管路が約75キロメートルにのぼることが明らかになっています。
これを受けて、国は点検や調査の精度向上、複数手法を組み合わせた再構築、さらにリダンダンシー(冗長性)とメンテナビリティ(維持管理の容易性)を確保した管路更新を基本方針として示しています。
一方で、財政や人手、工期には限界があり、従来型の更新だけでは対策が追いつかない状況です。現在、自治体が抱えているのは「直すべき量が直す能力を上回っている」といった構造的な課題であると認識しています。
また、災害の激甚化が進む中では、壊れる前に備える、いわゆる予防保全型インフラへの転換が強く求められています。
下水道関連事業の進捗状況

このような社会的要請や背景に対し、当社は次世代型の管路提供モデルとして、スライドに記載の「ヒューム管2.0」構想を推進しています。
一般的に、ヒューム管は耐用年数が約50年とされており、当社ではこれを「ヒューム管1.0」と位置づけています。今後、すでに埋設されている既設管の更新需要が本格化する見通しです。
当社はこれまでに培った設計、製造、施工、維持管理の知見を基盤に、課題解決型の管路運用モデルへと進化させるべく、この「ヒューム管2.0」というビジョンを展開していきます。
本構想では、コンクリート腐食に対する防菌性に優れた「ビックリート」や、低炭素型高機能コンクリート「e-CON」を使用し、管そのものの長寿命化を図るとともに、点検や調査などのモニタリング技術を組み合わせることで、早期発見、早期対応により維持管理コストの削減を実現していきます。
今後は、自治体や施工業者との連携をさらに強化し、設計、製造、維持管理までを見据えた一貫した管路提供体制の構築を進めていきます。
下水道関連事業の進捗状況

下水道事業に関するトピックをご紹介します。
当社の低炭素型高機能コンクリート「e-CON」が、公益社団法人土木学会より「技術開発賞」を受賞しました。セメントを使用せずにコンクリートと同等以上の強度を実現し、硫酸にも強く、CO2排出量も大幅に削減できる点が高く評価されたものです。
この受賞は、当社の環境技術への取り組みが学術的にも社会的にも認められたことを示すものであり、今後の「e-CON」の普及と標準化の大きな後押しになると考えています。
プレキャスト事業の進捗状況

プレキャスト事業の進捗についてご説明します。当社では、基礎事業、下水道事業に続く第3の柱としてプレキャスト事業の拡大に取り組んでいます。
2025年3月期にはプレキャストの予材量が前期比158パーセントと大きく伸長しました。2026年3月期にはさらに前期比120パーセントを目標として、さらなる成長を目指します。
道路分野では、東京外環自動車道向け「PCウェル」の出荷が堅調に推移し、「プレキャスト壁高欄」の需要も増加しています。「プレキャスト壁高欄」および「PCウェル」は、設計ソフトの改善により設計スピードが格段に向上しており、設計営業活動の数を増やし、さらなる受注拡大を目指します。
治水分野では、北海道地区の流域治水工事でボックスカルバートの出荷が好調に推移しました。今後は、実績のある水門や遊水池などの治水構造物におけるプレキャスト化を積極的に提案し、受注領域の拡大を進めていきます。
港湾分野では、海水に強い「e-CON」製の生物共生パネルや護岸突堤などの納入実績を重ねています。今後は、全国の漁礁や港湾施設への積極的な展開をさらに強化していきます。
防衛分野では、自衛隊施設の強靱化における基礎杭工事などを受注してきましたが、重点成長分野として位置づけています。詳細についてはお伝えできませんが、プレキャスト化および標準化に向けた研究開発を進めています。
さらに、生産面では3Dプリンティング技術やロボットアームを活用した製造の自動化、省人化を推進し、生産性の向上、高品質の安定化、そして競争力の向上を図っていきます。
プレキャスト事業の進捗状況

今期のプレキャスト事業におけるトピックスを紹介します。
2025年10月20日に発表したとおり、当社はロボットアームを活用したコンクリートの自動打設システム「NH-ROBOCON」を開発しました。これまで複数名の熟練工が行っていたコンクリート打設や、振動を加える作業である加振作業が、スタートボタンひとつで自動的に完了する仕組みです。この取り組みにより、省人化と生産性の大幅な向上を実現しました。
今後は、AIを活用した制御精度の向上や、3Dプリンティングで作成した型枠との連携により、鋼製型枠を使用しない新しい製造プロセスの確立を目指します。
労働力不足が深刻化する中、「NH-ROBOCON」を製造現場の働き方改革とコスト競争力の強化を同時に実現する次世代型の生産技術として位置付け、今後も取り組みを強化していきます。
プレキャスト事業の進捗状況

設計部門のDX化の取り組みとして「プレキャスト防護柵自動製図システム(NH-GFAS)」についてご紹介します。
従来、多くの時間を要していた「プレキャスト壁高欄」の割付図や設品図の作成を自動化し、設計時間を約70パーセント削減することに成功しました。
これにより、設計担当者はより多くの案件を設計できるようになったほか、お客さまへの提案活動に時間を充てることが可能になりました。設計から納品までのリードタイムを短縮し、見積もりや提案のスピードを高めることで、営業面での競争力強化にもつながっています。
今後も設計業務のDX推進に取り組み、事業全体の効率化と受注の拡大を図っていきます。
財務戦略(資本政策)

当社は、経営環境の変化に対応した機動的な資本政策と、株主のみなさまへの安定的な利益還元を重要な経営課題として位置付けています。
まず、自己株式の取得についてです。財務状況や株式市場の動向などを総合的に勘案し、今年10月15日に20万株、約6億5,000万円の自己株式を取得しました。これは、資本効率の向上、ROE目標8パーセントの実現、政策保有株式の縮減対応を目的としたものです。
次に、株式分割についてです。2026年1月1日を効力発生日として、1株を2株に分割します。これにより、最低購入代金を引き下げ、より多くの投資家のみなさまに当社の株式を、お持ちいただきやすい環境を整えることを目的としています。
さらに、株主優待制度を拡充します。分割後も株主のみなさまにご満足いただけるよう、2026年3月末の基準日より、優待内容を拡充し、より多くのご支援を賜れる制度とします。
今後も企業価値のさらなる向上と株主のみなさまへの還元を着実に実行していきます。
財務戦略(株主還元)

株主還元についてご説明します。当社は、安定的かつ持続的な株主還元の向上を経営の重要な課題の1つとして位置付けています。
今期は、業績の上方修正を踏まえ、株式分割を考慮しないベースで4円増配し、48円とします。この金額には記念配当6円を含めています。100周年という節目の年に、これまでのご支援への感謝の気持ちを込めた配当です。
今後も安定配当を基本としながら、株主のみなさまのご期待に応えていきます。
ESG戦略

ESG戦略の進捗状況についてご説明します。
1つ目は、2025年9月に「第1回e-CON協会総会」を開催し、全国から賛同いただいた28社にご参加いただきました。今後は、共同研究や自治体との連携を通じて、この28社で脱炭素化と持続可能な社会基盤作りに取り組んでいきます。
2つ目は、次世代教育の一環として、小・中学生向けのキャリア教材『おしごと年鑑2025』に協賛しました。
今年は、コンクリートパイルをテーマに、社会を支える仕事の魅力を紹介しています。将来、当社の仲間として活躍してくれる人材が生まれることを願い、このような活動を続けています。
これ以降のスライドには、その他のトピックスや業界の需要推移に関するデータを掲載していますので、ぜひご高覧ください。
今後も社会インフラを支える企業として、持続的な成長と企業価値の向上に努めていきます。
本日はご清聴いただき、誠にありがとうございました。
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