【QAリンクあり】J-オイルミルズ、上期は減収減益も配当は維持 価格改定と高付加価値品の拡販等で早期の業績回復と成長を目指す
2025年度上期および2025年度業績予想サマリー

春山裕一郎氏:あらためまして、社長の春山です。本日はご多忙のところ、当社決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。また、平素より格別のご支援を賜わり、心より御礼を申し上げます。
本日は、2025年度第2四半期の決算概況に加え、2025年度通期業績予想および短期・中長期戦略の取り組み状況についてご説明します。
まず、2025年度上期および通期業績予想のポイントについてご説明します。
上期の連結売上高は1,122億円、連結営業利益は25億円となり、減収減益となりました。スペシャリティフード事業においては構造改革の効果が着実に現れ、減収ながらも収益が改善しています。一方で、油脂事業においてはコストの上昇に対し、価格改定の反映にタイムラグが生じたため、減収減益となりました。
このような厳しい事業環境のもと、当社は適正な販売価格の形成や生産性向上など、早期の業績回復に向けた収益性改善の取り組みを継続しています。
しかし、当初の想定以上にミール価格が低下した影響もあり、今年度中にコストを吸収することは難しいと判断しました。その結果、通期連結業績予想を売上高2,260億円、営業利益50億円に下方修正することとしました。
なお、株主還元については、今後の収益力回復への見通しと安定配当の方針に基づき、1株当たり配当70円からの変更はございません。
2025年度上期 連結業績概要

2025年度第2四半期の決算概要についてご説明します。
2025年度第2四半期の連結業績は、売上高1,122億5,000万円、営業利益25億2,000万円、経常利益27億8,000万円、当期純利益17億5,000万円となり、前年同期比で減収減益となりました。
2025年度上期 セグメント別業績

セグメント別の業績です。まず、油脂事業は売上高・営業利益ともに前年同期を下回り、減収減益となりました。一方、スペシャリティフード事業は構造改革の効果もあり、売上高は減少したものの増益を確保しています。
2025年度上期 営業利益増減分析

セグメント別の営業利益の増減要因についてご説明します。
油脂事業について、家庭用油脂では物価高騰に伴う生活防衛意識の高まりにより、需要が減少する厳しい環境が続いています。
こうした中、環境負荷の低減と利便性を両立する「スマートグリーンパック」の展開に加え、健康志向に応えるこめ油やオリーブオイルなど、付加価値の高い製品の拡販に注力しています。
業務用油脂では、円安の継続によるインバウンド需要の拡大を背景に、市場は回復基調にあります。このような市場環境を捉え、高付加価値品を軸に、メニュー品質の向上やコスト、作業負荷の軽減といったお客さまの課題に対応する提案活動を強化することで、販売重量は堅調に推移しています。
しかしながら、価格改定の浸透が遅れているため、コストの上昇を十分に吸収するには至らず、油脂事業全体では、前年同期比で33億8,000万円の減益となりました。
一方、スペシャリティフード事業では、乳系PBFにおける構造改革の効果や粉末油脂における価格改定の浸透が寄与し、前年同期比で3億2,000万円の増益となりました。
さらに、食品素材においては、テクスチャーデザイン事業で付加価値の高い機能性スターチに特化し販売を強化したことにより、収益力が向上し、1億2,000万円の増益となりました。
これらにより、スペシャリティフード事業全体では前年同期比で4億5,000万円の増益となっています。
2025年上期 営業利益増減分析

続いて、油脂事業の営業利益の増減について、このスライドでは主にコストの観点からご説明します。
まず、原材料コストについては、大豆、菜種および為替の影響を含めて28億8,000万円の良化となりました。
一方、ミール価格の大幅な下落により、ミール販売を含む油脂コスト全体では前年同期比で39億2,000万円の減益要因となっています。
特に、本年6月に米国環境保護庁(EPA)がバイオ燃料の混合比率引き上げ計画を発表したことにより、ミールバリューが低下した影響を大きく受けています。また、その他のコストについては、継続的にコストダウンに努めているものの、資材コストや物流費などのインフラコスト増加により、8億1,000万円のコスト増となりました。
一方で、製品販売に関しては13億5,000万円の改善が見られましたが、前述のコスト増加の影響が大きく、油脂事業全体では33億8,000万円の減益となっています。
高付加価値品の状況

高付加価値品の状況についてご報告します。売上高は、両セグメントともに販売重量の増加や販売価格の改定に伴い、前年から伸長しています。粗利益については、オリーブオイルの原料コストの軟化を背景に収益性が改善し、粗利益の向上に寄与しました。
厳しい事業環境下においても、高付加価値品の拡販を通じて、お客さまが求める価値に応え、選ばれる製品・ブランドの地位を確立することで、事業基盤の持続的な強化につなげていきます。
B/S・C/Fの状況

B/Sの状況についてご説明します。2025年度上期末の総資産は、前年同期末に比べて4億円増加し、1,705億円となりました。
キャッシュフローについては、価格改定の浸透が遅れている影響で営業キャッシュフローが減少しています。しかし、今後、価格改定が徐々に浸透することでコスト上昇分の吸収が進み、収益の改善とともにキャッシュフローの健全化が見込まれます。
2025年度 連結業績予想

続いて、2025年度通期業績予想についてご説明します。
2025年度通期の連結業績予想について、本年5月に公表した通期予想を修正します。油脂事業では、当初想定を上回るコスト上昇に加え、販売価格改定の実現に時間がかかっている状況を受け、業績を修正すべきと判断しました。
連結売上高は2,260億円、営業利益は50億円に修正し、営業利益率を2.2パーセント、当期純利益は41億円、ROEは3.9パーセントとしています。
2025年度 セグメント別業績予想

セグメント別の業績予想について、油脂事業は2,065億円、スペシャリティフード事業は187億円の売上高を見込んでいます。
営業利益については、油脂事業を期首予想の83億円から41億円に、スペシャリティフード事業を期首予想の6億円から8億円に変更しました。
2025年通期 営業利益増減分析

続いて、油脂事業の通期営業利益の増減についてご説明します。
まず、原材料コストに関しては52億7,000万円の良化を見込んでいます。しかしながら、ミール価格が想定以上に下落している影響で、ミール販売を含む油脂コスト全体では、前年同期比で61億4,000万円の悪化となる見通しです。
また、その他のコストが18億5,000万円増加することを考慮すると、コスト全体で79億9,000万円の減益要因になる見込みです。
油脂事業の製品販売については、下期にかけて汎用品を含めた価格改定の効果が徐々に現れることで、38億4,000万円の改善を見込んでいます。しかし、油脂事業全体では41億4,000万円の減益となっています。
経営環境の認識と当社対応

こうした外部環境によって業績が左右されやすい状況を改善するため、これまで不採算事業の整理や生産性向上による収益基盤の強化、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)の改善、政策保有株式の売却による資産効率化などに取り組み、着実に成果を上げてきました。
しかしながら、直近の事業環境においては、バイオ燃料需要の高まりを背景としたミールバリューの低下や物流費、人件費の増加により、一時的に業績が悪化する見込みです。
このような状況下で当社は、まず短期的な施策として、先月に今年度3回目となる価格改定を発表し、速やかに適正な価格への改定を進めていきます。さらに、製品ラインアップの選択と集中を図り、収益性の向上に取り組むことで、早期の業績回復を目指します。
中長期的な取り組みとしては、当社の基盤である油脂事業の収益最大化を目指す施策を推進するとともに、事業ポートフォリオの変革推進や海外事業の加速により、持続的成長が可能な企業への変革を進めていきます。
早期の業績回復と成長への回帰に向けて

このスライドでは、油脂事業を取り巻くコスト環境と早期の業績回復に向けた取り組みについてご説明します。
まず、バイオ燃料需要の拡大に伴い、オイルバリューは上昇し、ミールバリューは低下する状況が続いています。
この状況は、アメリカにおけるバイオ燃料混合比率引き上げ計画に大きな変更がない限り、今後も継続すると見込まれます。そのため、油脂を取り巻くコスト環境は引き続き厳しい状況が予想されます。加えて、物流費や人件費などのコストについても、今後さらに増加する見通しです。
これらのコストは、持続可能な社会の実現に向けて、我々を含めた企業が責任を持って負担すべきものと認識しています。このような背景を踏まえ、当社では本年に入り3度の価格改定を発表しました。ただし、価格改定の反映には一定のタイムラグが生じているのが現状です。
当社は、製品ラインアップの最適化や小ロット配送の集約などによる効率化を進め、油脂の生産性向上と効率化を推進していきます。また、必要不可欠なコストについては、可能な限り速やかに価格へ反映する努力を継続しています。
これは、人々の生活に欠かせない油脂を、高品質かつ安定的にお届けする当社の責任を果たすために、必要不可欠な取り組みであると考えています。今後も、お客さまに丁寧に説明し、ご理解いただけるよう努めていきます。
高付加価値品の拡販:業務用油脂

業務用油脂においては、高付加価値品の拡販に加え、それを支えるサービスの提供にも注力していきます。「フライエコシステム」は、当社独自技術「SUSTEC」を活用した長持ち油「長徳」シリーズと、ITを活用したサービスを組み合わせたソリューションです。
油脂の劣化度合いを測定し、適切なフライ油の交換時期を把握できるため、廃油量のさらなる抑制が可能になり、おいしさの追求と環境への配慮を両立できます。すでに外食・中食業界を中心としたお客さまにご活用いただいており、廃油量削減の効果を実感いただいています。
また、「おいしさデザインオイル」については、「JOYL(ジェイオイル)PRO」の製品ラインアップの強化にも取り組んでいきます。
例えば、「JOYL(ジェイオイル)PRO 美味得徳こくアップオイル」は当社独自製法により、少量の添加で肉料理や野菜料理のコクを引き立て、中味から後味にかけての余韻を増強し、味に奥行きと深みをもたらします。
料理のコクが増すことで、原材料費を削減しながら品質を維持できるため、コストパフォーマンスの向上につながると考えています。ハンバーグやチャーハン、唐揚げなどの多様なメニューに使用可能で、冷凍食品などの加工商品に加え、セントラルキッチンや飲食店のバックヤードなど、幅広いお客さまにご利用いただけます。
高付加価値品の拡販:家庭用油脂

家庭用油脂では、オリーブオイル「スマートグリーンパック」シリーズのラインアップ強化を進めていきます。「スマートグリーンパック」は発売以来、流通各社での取り扱いが着実に拡大し、生活者のみなさまの目に触れ、手に取る機会が増えています。
オリーブオイル市場は原料高騰の影響で縮小傾向にありましたが、現在は原料相場も落ち着きを見せています。このような環境の中、使いやすさと環境への配慮の点で好評をいただいている「スマートグリーンパック」を投入し、さらなる需要喚起を目指します。
また、MCTオイルやアマニ油など、サプリメントオイルカテゴリの強化にも取り組んでいます。MCTオイルに関しては、トライアルユーザー向けの小容量90gとリピーター向けのお求めやすい大容量320gの2サイズを展開し、消費者ニーズに応じたラインアップの充実を図ります。
アマニ油については、日本初の「肌」に関連する機能性表示食品である「毎日アマニ油」の機能性を訴求し、マーケティングを強化することで、さらなる市場拡大を目指します。
事業ポートフォリオの高度化

事業ポートフォリオ高度化に関する検討状況をご説明します。
当社の差別化できる強みは、油脂の販売を通じ、幅広い中食・外食のお客さまと接点を持つことに加え、油脂に当社独自の機能性スターチやマーガリン、ショートニングを組み合わせることで、お客さまのさまざまな課題を解決するソリューション提案、すなわち「おいしさデザイン」を提供できる点にあります。
例えば、唐揚げでは、フライ油の販売にとどまらず、素材を組み合わせることで、サクッとした食感やジューシー感、さらには肉の風味を引き立てる調整を、お客さまのニーズに応じて行ってきました。この「おいしさデザイン」の力を強化するため、科学的な解釈の深化と体系化を進めています。
これらを徹底的に磨き込むことで、その適用範囲を川上・川下へ、さらには海外まで拡大し、新たな価値を創出することによって、当社のビジョンである「Joy for Life」の実現を目指します。
川下のユーザーに対しては、油脂、スターチ、マーガリンなど多様な商品素材を有する当社の強みを活かしながら、新たな素材の活用も視野に入れ、これまでリーチできていなかった市場に新しい「おいしさデザイン」を提供していきたいと考えています。
また、川上領域では、既存ビジネスであるミールや飼料など1次産業向け素材のさらなる付加価値化を検討します。従来の素材単体を提供するビジネスモデルから、食のバリューチェーン全体に貢献できる事業ポートフォリオへの深化を目指していきます。
海外展開加速への取り組み

海外事業の取り組みについてご説明します。
ASEAN地域においては、子会社であるJ-OIL MILLS THAILANDにおいて、これまでスターチを中心に、現地ニーズに合わせた「おいしさデザイン」の提案を推進し、販売量を拡大してきました。今後は、現地社員の増員によって販売体制を強化し、油脂とスターチを組み合わせた新たな「おいしさデザイン」の提案を展開することで、さらなる売上拡大と成長を目指していきます。
北米においては、大豆シート食品「まめのりさん」やビタミンK2「Menattto(メナット)」の輸出を中心に事業を進めていますが、さらなる事業拡大を図るため、新たにAjinomoto Health & Nutrition North America社との協業体制を確立しました。具体的には、同社に当社社員を配置して既存製品の販売網拡大を図るとともに、新規製品のラインアップ拡充に向けた事業化を推進し、Win-Winの関係構築を目指していきます。
さらに国内では、本年12月1日付で機構改正を行い、これまで1つの組織で担っていた海外戦略の策定および推進業務を、M&A・資本業務提携などの海外戦略を担う組織と、既存海外事業の成長戦略を推進する組織に分割し、それぞれの機能を強化することで、より専門性を高めながら取り組みを加速していきます。
経営基盤強化の取り組み

続いて、経営基盤強化の取り組みとして、dXおよび人的資本経営についてご説明します。
dXについては、昨年設定した4つの改革テーマが順調に進捗しています。例えば、年間3万時間の業務時間削減を目指す全社横断的な課題に対して、各部門で抜本的な業務改革が進められています。これらの業務改革および連携変革の取り組みを通じて、ビジネス変革のテーマが発案され、新たな取り組みにも着手していきます。
これらの取り組みを通じて、2025年11月に経済産業省が定める「DX認定事業者」の認定を取得しました。当社がdXを通じてビジネス変革を起こすことで社会的価値を提供し、当社のビジョンの実現を通じて社会変革へつなげていくことが、当社dXの目指す姿です。
加えて、人的資本経営の取り組みを一層加速していきます。当社では、経営・事業戦略に即した人的資本戦略を策定するとともに、その実効性を高めるため、2025年4月に経営会議の諮問機関として「人財委員会」を設置しました。
現在、4つの取り組みを掲げており、特に「成長分野をリードする人財の育成」を最優先課題と位置付けています。これまでに、次世代の経営人財の選定および育成を推進する体制を整備しました。
今後は、次世代の経営人財に加え、若手リーダー、専門分野に特化した人財、新たな事業分野や海外戦略を開拓・推進する人財など、経営戦略と連動した人財育成を効果的に進めるため、さまざまな施策を展開していきます。
株主還元

最後に、株主還元についてご説明します。2025年度の1株当たり配当は、70円から変更ございません。
足元の業績は厳しい状況にありますが、本日ご説明した短期および中長期の施策を着実に実行し、収益力の早期回復とさらなる利益成長を実現することで、株主のみなさまには今後も継続的かつ安定的な還元を行っていきたいと考えています。
日本経済は緩やかな回復基調で推移していますが、事業環境は依然として厳しい状況です。当社はこのような状況下においても、短期および中長期戦略を着実に実行し、速やかな業績回復と持続的成長を可能にする企業構造の構築を進めていきます。油脂やスターチを活用した高付加価値提案を通じて、食品バリューチェーン全体に貢献し、社会とともに成長する企業を目指していきます。
今後も、株主・投資家のみなさまとの対話を大切にし、透明性の高い経営を継続していきます。引き続き、変わらぬご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
Q&A
質疑応答に関しましてはこちらに掲載されています。
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