logmi Finance
logmi Finance
三井不動産株式会社8801

東証プライム

不動産業

個人投資家向けIRセミナー

木島毅之氏(以下、木島):三井不動産株式会社IR室長の木島です。本日はどうぞよろしくお願いします。

関本圭吾氏(以下、関本):株式会社IR Agents代表の関本です。ふだんは「プレゼンをお願いします」と言うところですが、その前にぜひ1点おうかがいしたいことがあります。

私はこのIRセミナーのファシリテーターを何回か担当していますが、1兆円を超える時価総額を持つ企業がいらっしゃることは比較的珍しいと思っています。

木島:そうなのですね。

関本:私としてはどんどん出てほしいと思っていますが、今回のセミナーへの意気込みや「このようなことを伝えたい」ということがあれば、最初にぜひうかがいたいと思います。いかがでしょうか? 

木島:ありがとうございます。弊社としても、ログミーでは決算説明会の書き起こしを行っていただいており、それらを読んでくださっているみなさま、また、そうではないみなさまにも、弊社をよく知っていただきたいと思っています。

弊社には「ららぽーと」や「東京ミッドタウン」など、名前を聞いたことがあるような施設もあるかと思いますが、なかなか三井不動産と結びついていない方もいらっしゃいます。B2Cのビジネスも行っており、成長性もしっかりあるということをみなさまにぜひご理解いただければと思い、本日登壇しました。どうぞよろしくお願いします。

関本:プレゼン中にも「このようなことを行っています」というご説明が出てくるため、みなさまもご覧になりながら「ここ行ったことがあるわ」というように考えていただけたらと思います。では、あらためてプレゼンをお願いします。

自己紹介

木島:あらためまして、三井不動産株式会社IR室長の木島です。本日はお忙しい中、ご視聴いただき誠にありがとうございます。私は三井不動産に入社後、物流施設の用地取得などの業務を担当していました。3年前から、IR業務を行っています。

本日お伝えしたいこと

木島:本日は、三井不動産グループの概要、どのように企業価値を高めていこうとしているのかといったグループ長期経営方針「& INNOVATION 2030」、財務戦略、還元方針という4点についてご説明します。

また、弊社は株主優待制度を設けています。「ぜひファン投資家になっていただきたい」という思いを込めて作っているため、こちらの内容についても、この機会に知っていただけたらと考えています。

社長紹介

木島:まず、三井不動産グループの概要についてご説明します。スライドに映っているのは、弊社社長の植田です。

若々しい社長で、常に社内会議をこなすだけでなく、テナントのみなさまや投資家のみなさまにお会いしてさまざまなお話をしており、非常にアクティブに動き回っている、頼れる兄貴のような社長です。

三井不動産グループとは?①

木島:我々のアセットについてご説明します。当社は国内トップクラスの不動産総合デベロッパーで、多様なアセットクラスの事業を展開しています。

スライド左側に示しているオフィスでは、日本橋を中心に、会社全体で約100万坪のオフィスの貸付を行っています。テナント企業は約3,000社と非常に幅広いテナントさまとお付き合いしています。

ほかにも六本木、日比谷、八重洲にある「東京ミッドタウン」や、シェアオフィスの「WORKSTYLING(ワークスタイリング)」も展開しています。ご利用いただいている方も多いかと思いますが、引き続きご愛顧いただけたらと思います。

商業施設においては、全国で22施設を展開している「ららぽーと」、13施設展開している「三井アウトレットパーク」のほか、渋谷の宮下公園を商業施設と公園に改装した「RAYARD MIYASHITA PARK」や「COREDO日本橋」といったブランドを展開しています。

それ以外にも、「MFLP」という物流施設のブランドでは、80弱の施設を展開しています。こちらに加え、最近ではスポーツ・エンターテインメントにも力を入れています。2021年に弊社のグループに加わった東京ドーム社のほか、昨年度に南船橋で開業した「LaLa arena TOKYO-BAY」のようなアリーナ事業も展開しています。

三井不動産グループとは?②

木島:住宅事業については、「パークタワー」「パークシティ」「パークホームズ」といったブランド名でマンションを展開しています。

また、昨年度から引き渡しを進めている「三田ガーデンヒルズ」のような非常にハイエンドな物件も手掛けています。2019年からは、「パークウェルステイト西麻布」のようなシニアレジデンス事業にも参入しています。

ホテル・リゾート事業については、日本全国で50施設以上展開しています。「三井ガーデンホテル」というブランドのほか、ラグジュアリーホテルとして「HOTEL THE MITSUI KYOTO」や「ハレクラニ」を展開しています。

海外事業にも積極的に展開しており、「50 Hudson Yards」「55 Hudson Yards」といったマンハッタンの旗艦物件があります。

ではここで、「三井のすずちゃん」のCMをご覧いただきたいと思います。我々が行っている日本橋やニューヨークで展開している街づくりについて、わかりやすくご説明しています。

(動画流れる)

木島:ご視聴ありがとうございました。日本橋に行かれたことがある方は、見慣れた光景をご覧いただけたのではないかと思います。

三井不動産グループのブランド

木島:スライドには、ロゴを掲載しています。「あれも、これも、三井不動産グループ」ということで、「ららぽーと」「三井アウトレットパーク」は聞き馴染みがある方もいらっしゃるかと思います。

スライド下部に掲載している「三井のリパーク」も、街中に多数の駐車場があり、ご覧いただいたことがあるかと思います。これらの非常に多様なブランドは、すべて三井不動産グループであるとご認識いただければと思います。

数字で見る三井不動産

木島:数字で事業概要を解説しています。約10兆円のグループ総資産を持ち、営業収益は約2兆6,000億円を上げています。親会社株主に帰属する純利益も、2,000億円超を稼いでいる会社です。

価値創造の歩み①

木島:我々の価値創造の歩みについてです。創業以来、三井不動産グループは街づくりを通してさまざまな社会課題に向き合いながら、新しい価値を創造してきました。

1950年代には、日本の高度経済成長を支える工業用地が足りなかったため、大規模な埋め立て事業を行ったりする中でオリエンタルランド社の設立にも関与しました。

また、産業がどんどん発展して経済が成長していく中、「オフィスの面積が足りない。どうするか。空に伸ばしていこう」ということから、日本初の超高層ビルディングである「霞が関ビルディング」をつくりました。

さらに、ライフスタイルが多様化していく中で、現在「ららぽーとTOKYO-BAY」という名前になっている船橋の「ららぽーと」のように、1日を通して過ごせるショッピングセンターを手がけたのも弊社が初めてです。

アウトレットも、弊社が初めて日本に持ち込んだ商業施設の形態です。また、現在は東京の湾岸部だけでなく、さまざまなところに建っているタワーマンションも、弊社が先駆けて開発に取り組んできました。

さらに、すでにお持ちの方もいらっしゃるとは思いますが、REIT(リート)についても、投資家との共生モデルとして、弊社が先陣を切って取り組んできました。不動産を1棟持つことはなかなかハードルが高い中で、不動産をお持ちいただけるような証券となっています。

価値創造の歩み②

木島:2000年以降は、先ほどご覧いただいたような日本橋の再生をはじめ、街づくりを通して街の価値を向上させていくこと、さらにはオフィスビルの価値を上げていく取り組みを行っています。

そのほかにも「東京ミッドタウン」や「柏の葉スマートシティ」、公園の再生として「RAYARD MIYASHITA PARK」の取り組みなど、さまざまな事業を展開しています。

街の価値の向上

木島:街の価値の向上についてです。こちらのスライドは、三幸エステート社が公表している、毎月のオフィス募集賃料のデータをグラフにしたものです。

我々が力を入れて取り組んでいる日本橋や八重洲エリアを、濃い青色のグラフで示しています。月坪2万円台で募集されていたオフィス賃料が、足元では4万円超というレベル感まで育ってきました。

街づくりを通じて街の価値が高まることによって、オフィスの募集賃料も上がってくるという好循環を生み出せているのではないか、そして、我々もそこに一役買っているのではないかと考えています。

後ほどご説明しますが、この街づくりはさらに進んでいきます。引き続き、街の価値を向上させていきたいと考えています。

価値創造の歩み③

木島:来年には「日本橋一丁目中地区」という、非常に大きなビルが建ちます。こちらは284メートルのビルで、「日本橋(284)」といったように日本橋らしい高さのビルに仕上げています。

また、八重洲駅の前、「ミッドタウン八重洲」の南側では、「八重洲二丁目中地区」の再開発計画を進めており、2029年に竣工します。

2030年以降も、日本橋川沿いで進んでいる5つの再開発計画のうち、我々は4つに取り組んでいきます。これらが順次竣工してくることで、東京駅の東側は今後10年ほどで大きく様変わりしていく様子をご覧いただけるかと思います。

そのほか、築地市場跡地についても東京都からお任せいただいています。築地の街づくりの推進や神宮外苑の再開発も進め、防災力の向上のほか、さらなるエンターテインメント・スポーツの振興にもかかわりたいと考えています。

三井不動産の競争優位性

木島:このように、我々はあらゆるアセットと幅広いバリューチェーンを併せ持っています。このような点が、他社にはない「総合力」だと考えています。

持続的な成長を実現するビジネスモデル

木島:バリューチェーンについてです。我々がどのように収益を得ているのかについてご説明します。スライドには、「インカムゲイン」「キャピタルゲイン」「マネジメント」と記載しています。

インカムゲインは、我々が保有する不動産をテナントさまにお貸しすることにより、賃料収入を得る部分です。非常に安定した岩盤となる利益を、このインカムゲインによって生み出しています。

キャピタルゲインは、分譲マンションや収益不動産を投資家のみなさま、またはREITに売却し、不動産の創出価値を実現していくことで得ています。いわゆる不動産の売却益です。

さらに、売却して終わりではなく、関連REITへ売却した場合には、我々が施設管理を請け負うことなどにより、マネジメント収益を得ていきます。

このように、インカムゲイン、キャピタルゲイン、マネジメントにより、「1つの不動産で三度おいしい」ビジネスモデルを展開しています。

事業セグメント別の収益構造

木島:このようなビジネスにより、非常にバランスの良い収益構成になっていると考えています。

賃貸が収益の約3分の1、分譲も3分の1、マネジメントが5分の1、ホテルやスポーツ・エンターテインメントの施設営業が10分の1と、非常にダイバーシティに富んだ収益構成です。

1つのビジネスの調子が悪い場合も、それ以外のビジネスで補うことができます。多様なビジネスを展開しており、例えば、昨今、インバウンドの方々が多くいらっしゃる中では、ホテル・リゾート分野で大きく利益を伸ばすことができます。

このように、「厳しい時には補い合える。良い時にはビジネスをしっかりと伸ばしていける」というメリットがあると考えています。

業績推移

木島:以上の結果、営業収益は2012年以降、右肩上がりでの成長を果たしています。営業利益・純利益については、商業施設にもホテルにも行けず、外出できなかったコロナ禍はさすがに若干落ち込みました。

しかし、それ以外の時期はしっかりと利益を伸ばしています。今期も、過去最高の利益を達成する見込みです。

同業他社との実績比較

木島:同業他社との実績比較についても掲載しています。同業他社については、色や数字から推測していただければと思いますが、すべての数字で一番を維持しています。

関本:事前にいただいた同業他社との実績比較は、色で企業を示していたのですね。

ここまでが事業概要ということで、ここでQ&Aを挟みたいと思います。

まずはビジネスについてうかがっていければと思います。私は、総合不動産デベロッパーはなかなか難しいと思っています。マンション、住宅、オフィスビルを展開していることはわかるのですが、総合不動産デベロッパーだからこそ提供できている価値や、「このようなところが我々のビジネスの源泉です」という点について、御社としてはどのように定義していますか? 

木島:さまざまな事業を行っているからこそ、1つの事業で培ったノウハウを別の事業に活かせます。例えば、我々はもともとオフィスを作っていた企業ですが、現在はそれを物流施設にも展開しています。

物流施設は単なる倉庫ではなく、その中で多様な作業を行う施設も増えています。単なる作業の場であった倉庫の中に、オフィス顔負けの物流会社用オフィスをつくる場面においては、オフィス事業のノウハウが活かされています。

また、先ほど高級住宅を作っているとお話ししましたが、ホテルの内装をどのように作り込んでいくかというところにも、ノウハウを活かせていると考えています。

さらに、我々はさまざまなアセットに取り組んでいますが、やはり土地の情報は不動産業では非常に重要です。

あらゆるアセットに取り組んでいるからこそ、さまざまな不動産情報をいただいた際、「このビジネスであればこのように活かせるのではないか」「このビジネスのほうが収益性がさらに高くなるのではないか」といった比較検討を、社内で行えます。

オフィスだけに取り組んでいると、オフィス用途以外でしか使えない土地情報が来ても、捨ててしまうことになるかと思います。しかし、弊社はあらゆる可能性の検討が可能です。このように、さまざまなビジネスチャンスにつなげていける点が総合不動産の強みだと考えています。

関本:得意分野に限らず「土地を最大に有効活用するためには」と考えたり、「ここで取り組んだ事業をこうやって活用しようかな」と検討できたりするということですね。

もう1点気になったのは、私も最近「東京ミッドタウン日比谷」に行きましたが、あのような非常に大規模な建物や街づくりは、やはり総合不動産だからこそ実現できるのでしょうか? 

木島:非常にうれしい質問をいただき、ありがとうございます。我々は「ミクストユース」と言っていますが、「東京ミッドタウン」に代表されるように、低層階には商業施設、中高層階にはオフィス、最上階にはホテルが入っている建物を作っています。

最近では他社でも始められていますが、我々は「東京ミッドタウン六本木」の時からそのような施設を作っています。

このような建物は、ワーカーの方が出社帰りに買い物ができたり、経営者の方々も来賓をお招きする時にホテルのサービスが使えたりするなど、ワーカーにも経営者の方々にもよろこばれる施設になっていると自負しています。

このようなものをつくることができるのは、さまざまなアセットを手掛けている総合デベロッパーだからだと考えています。

関本:次の質問も、おそらく先ほどの回答にかかわってくるかと思いますが、先ほどお話があった「他社にはない総合力」が、個人的にはけっこう気になっています。

投資する上では、御社に投資しなければいけない理由として、「他社と比べて何がありますか?」ということをはっきりさせたいと思われるだろうと考えています。

「他社にはない総合力や、事業ポートフォリオとして安定しているビジネスを持っていますよ」という点は、複合施設の展開、あるいはお客さまとお話しする時に強みになりますか? このあたりは、どのように活きてくるものなのでしょうか?

木島:先ほどのお話と重複しますが、テナントのお客さまから自分の持っている不動産の有効活用のご相談をいただいた際にも、さまざまなご提案ができるソリューションがあります。

また、1つのビジネスが厳しくてもほかのビジネスで補えます。やはり、ホテルだけではコロナ禍に非常に厳しい思いをしただろうと思いますし、オフィスについても「オフィス不要論」が出ました。

一方、我々は住宅やさまざまなビジネスを展開しているため、利益は若干減ったものの、そこまで大きく減ることなく乗り切ってこられました。やはり、このような点がバランスの良いビジネスを展開している強みだと考えています。

関本:少し意地悪な質問になりますが、「他社にはない総合力」と記載しつつ、ご認識のとおり、日本には「総合不動産デベロッパー」と呼ばれるいわゆる財閥系のような会社はいくつかあります。

「彼らにも同じく総合力があるのでは?」と思いますが、御社から見ると「実はここが違う」「ほかと比べて、提供できる価値が違う」といった点があるのでしょうか?

木島:他社のことはなかなか申し上げにくいところがありますが、やはり「ミクストユース」の物件については、「ほかにどのような物件がありますか?」とご想像いただきたいところです。

また、「ほかの財閥系企業のショッピングセンターは、どのようなところが思い浮かびますか?」という点もあるのではないかと考えています。

我々の場合は「ららぽーと」や「三井アウトレットパーク」を思い浮かべる方が多いのではないかと自負していますし、「東京ミッドタウン」も聞いたことがあるかと思います。このように、オフィスや住宅だけでなく、名前を聞いたことのあるブランド名があるところではないかと思います。

関本:スライドの実例を見て、「あれもこれも、実は三井不動産であると想像してください」というところですね。

私は事業について質問する際、よく「いわゆるビジネスのドライバーは何ですか?」とお聞きするのですが、先ほどキャピタルゲイン、インカムゲイン、マネジメントのお話がありました。

キャピタルゲインはどうしてもフロー的な収入かと思いますが、こちらも非常に安定して過去推移してきているように見えます。

では結局のところ、御社や総合不動産デベロッパーは、何を続けたら長期的に安定的な成長を実現できるのでしょうか?

例えば「ストックをどんどん積み上げていくこと」「プロジェクトの開発のパイプラインをたくさん持っておくこと」など、何が事業を伸ばすために大事だと考えていますか? 

木島:やはり、事業機会をいかに実現していくかだと思っています。

ある意味では、不動産をつくっていかなければ、賃貸収益は伸ばせません。また、キャピタルゲイン(売却益)を得る場合には、次の物件を仕込まなければ売り物がなくなってしまいます。

したがって、いかに土地の情報を多くいただき、それらを事業機会につなげていくかというところだと考えています。

「価値創造の歩み」というスライドでもお話ししましたが、我々はさまざまな新しいことにチャレンジしてきている会社です。

最近では、新しいアセットとして「ラボ&オフィス」という試験管を振ることができるオフィスも開発しています。海外にはそのようなアセットクラスがあるのですが、日本にはまだなかったところに、我々が初めて導入しました。

単に不動産の事業機会を実現していくだけでなく、新しいアセットクラスを作っていくといった企画構想力も、我々の強みではないかと考えています。

関本:「事業機会を増やし続けていくために」というところですね。

木島:そのとおりです。

関本:ここまでで、事業のお話をうかがいました。次は長期経営方針、戦略についてうかがえればと思います。

「& INNOVATION 2030」の全体像

木島:我々の企業価値を今後どのように伸ばしていくのかについて、ご説明します。

やはり成長していくことが一番大切である一方、不動産を増やしていくことで利益を成長させるだけでなく、資本市場から求められる効率性にも配意しつつ、株主還元にも目配りします。

「成長・効率・還元」を三位一体で捉えて経営を推進していくことにより、企業価値を上げていきたいと考えています。

「& INNOVATION 2030」事業戦略

木島:その中での成長について、事業戦略は「三本の道」で構成しています。

1つ目に、オフィスや商業施設、住宅のような、現在メインで取り組んでいるコア事業をさらに進化させていきます。2つ目に、ラボ&オフィス事業のような新たなアセットクラスにも取り組んでいきます。さらに3つ目には、新事業領域を探索していこうと考えています。

「& INNOVATION 2030」事業戦略 1.コア事業の更なる成長

木島:まず、コア事業の進化についてです。「市場からのデカップリング」としては、我々のアセットの価値をご理解いただき、それらを賃料などのかたちでしっかりといただくことです。

マーケットが良いために賃料を上げられるというかたちではなく、我々が提供している付加価値をしっかりと認めていただき、賃料としていただくかたちを実現していければと考えています。

また「開発利益の強化」については、我々が含み益と呼んでいる、不動産時価と我々のバランスシートに記載した簿価の差が3兆7,000億円もあります。物件を売却していくことで、この含み益を顕在化することを鋭意進めているところです。

そして「海外事業の深化と進化」です。スライドに記載したアメリカのサンベルトエリアに代表されるような、人口流入や企業進出が進んでいるエリアへの投資を増やし、その成長力を我々の糧にしていくことを進めていきたいと考えています。他にも、オーストラリアやインドでも取り組んでいます。

「& INNOVATION 2030」事業戦略 2.新たなアセットクラスへの展開

木島:次に「スポーツ・エンターテインメントを活かした街づくり」です。

東京ドーム社が我々のグループに入ってから、スポーツ・エンターテインメントに関する知見がたまってきています。そのような中でアリーナ事業にも参入し、今年の夏には名古屋にも新しいアリーナをつくる計画を発表しました。

このようなエンターテインメント領域に広げていくほか、「賃貸ラボ&オフィス事業」のような新しいアセットクラスにも取り組んでいきます。

さらには、データセンター事業です。AIの活用によってデータ使用量が増えていく中、データセンターの需要が高まっているため、このようなところも我々の成長に取り込んでいきたいと考えています。

「& INNOVATION 2030」事業戦略 3.新事業領域の探索、事業機会獲得

木島:3つ目は「新事業領域の探索、事業機会獲得」です。我々はリアルの場を作ることが得意で、さまざまな産業がマッチングするような場も設けています。

ラボ&オフィス事業については、ライフサイエンス領域におけるコミュニティを作ったことで、その中から聞き出したニーズを事業化につなげてきました。

現在は宇宙領域や半導体領域のような、成長産業といわれるものの場とコミュニティを作っています。その中から我々が取り組んでいける事業を見つけ出し、新たな成長の道にしていきたいと考えています。

今後の大規模再開発プロジェクト

木島:「ミクストユース」の街づくりも進めていきます。「日本橋一丁目中地区」や「築地地区」、「神宮外苑地区」などのプロジェクトにも注力し、我々の収益や利益をさらに拡大していきたいと考えています。

関本:長期経営方針について、何をしていきたいのかがクリアに示されていると思います。

長期経営方針の議論において、「そもそも、我々はこのようなものを目指さなければいけない」といった長期経営方針の前提になるところや、「ここが足りないから、これに取り組まなければいけない」という部分など、どのような議論が行われたのでしょうか?

木島:不動産事業をしているだけでは、効率性がなかなか上がってこないところがあります。都心のオフィスビルは非常に安定した収益を生み出しますが、それゆえに利回りという観点では非常に低くなってしまうのです。

その中で我々が資本市場から求められる効率的な運営、ROEやROAの向上をどのように実現するかを考えた際、「産業デベロッパー」として、不動産事業だけでなくさまざまな成長産業のお手伝いをすることによって、その成長の果実を分けてもらおうと考えました。

そこで出てきたのが、「三本の道」の3つ目です。我々がお手伝いできるさまざまな産業の領域を探していこう、すなわち「産業デベロッパー」として社会の付加価値創出に貢献しよう、というような議論がありました。

関本:「このような方面に投資しよう」「このようなこともしてみたい」という議論があったのですね。まさに「『ミクストユース』がこの領域にあったらいいよね」という話でもあったのかと思います。

「& INNOVATION 2030」主な定量目標

木島:「& INNOVATION 2030」では、成長だけでなく、効率性を重視するところを打ち出しました。効率的な運営をしていくためには、自己資本を過度に持たないことが重要となるため、還元についても拡充していく方針を示しています。

我々の目標の中で一番大事なところが、株主還元の原資となってくるEPS、1株当たりの純利益です。これらを継続的に伸ばしていきたいと考えています。

CAGRは、2030年前後にプラス8パーセント以上に伸ばしていくことを目標にしています。また、効率性指標のROEの水準についても、10パーセント以上を目指していきたい考えです。

「& INNOVATION 2030」主な定量目標の進捗状況

木島:2030年では少し遠すぎるため、2026年度にも途中のマイルストーンとして示している数字を達成していきます。こちらは非常に順調で、EPSやROEも2026年度の目標に向けて着実に進んでいる状況です。

バランスシートについても、しっかりと規律を持ってコントロールを進めています。日々目にする話題かと思いますが、我々も政策保有株式をしっかりと縮減していきます。2026年度には50パーセント程度縮減し、その後も縮減を継続していく方針を掲げています。

純投資目的の株式もありますが、こちらもしっかりと売却していくことで効率性に配意した運営を実施しています。

株主還元方針

木島:還元については、純利益の50パーセント以上を還元する方針を掲げています。配当性向は、毎期純利益の35パーセント程度を掲げ、右肩上がりで増配しているところです。

リーマン・ショックやコロナ禍で純利益が落ち込んだ際も、配当は減らさないという還元政策をとってきました。今回は累進配当を明示し、純利益が減ろうとも配当は維持または向上していくことを示しています。

また、1株当たり価値を継続的に向上させていきたいという思いから、自社株買いも機動的・継続的に行っています。

総還元性向50パーセント以上から配当性向35パーセントを引いた15パーセント以上を、継続的に取得しています。株価の状況を見て、シグナリング効果も考えながら自社株買いを実施しているところです。

株主優待制度

木島:株主優待制度についてです。今回、我々の施設をご利用いただき、施設だけでなく会社のファンになっていただけたらうれしいという思いから、IRセミナーに参加させていただきました。

さらに、株主さまにファンになっていただく一助となればと考え、昨年度から株主優待制度を導入しました。

100株ごとに「三井ショッピングパークポイント」を1,000ポイント進呈します。長期保有者優待制度もあり、長く持てば持つほどお得になる制度になっています。

当社の商業施設が近くにないという方は、我々が運営している通販サイト「&mall」のようなオンラインでも使えるものです。ぜひ、こちらの優待制度もご勘案ください。

質疑応答:不動産のビジネスにおけるROEについて

関本:「2030年前後にROE10パーセント以上」という定量目標については、「もっとほしい」という気持ちがある人もいるかと思います。

不動産はビジネスモデル上、アセットをどこに投資し、レバレッジをどうするかというポイントがありますが、より高い水準を目指すため、どのよ

ここから先は会員登録(無料)
お読みいただけます

本サービスにおける利用規約プライバシーポリシーに同意します

会員登録がお済みの方はログインしてください

facebookxhatenaBookmark