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空港施設株式会社8864

東証プライム

不動産業

2026年3月期中間期決算説明会

田村滋朗氏(以下、田村):みなさま、本日はご多用の中、空港施設株式会社2026年3月期中間期決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。代表取締役社長執行役員の田村です。

はじめに、当社ホームページ上でお知らせしたとおり、9月29日に羽田空港の大型格納庫における解体工事中に発生した火災について、関係者のみなさまに多大なるご心配とご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。火災による業績への影響はありませんが、今後は再発防止に努めていきますので、ご理解を賜りますようお願いします。

今期は業績が引き続き堅調に推移しており、5月に見直した中長期経営計画に基づき、重点施策の達成に向けた取り組みを推進しています。また、自己株式の取得をはじめとする資本施策についても、資本効率の改善を図るべく計画的に実行しています。

今後も持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に努めていきます。引き続きご理解とご支援をよろしくお願いします。

2026年3月期中間期 連結決算概要 連結PL

小玉滋之氏:上席執行役員経理部長の小玉です。2026年3月期中間決算について説明します。

当中間期は、空港内不動産事業において、既存物件の賃貸条件の見直しやテナント誘致による賃貸収入の増加、空港外不動産事業におけるノンアセット事業での販売用不動産の売却、空港内インフラ事業のうち熱供給事業の基本料金改定や給排水運営事業の使用水量の増加などにより、売上高は前年同期比21.8パーセント増の171億7,000万円、営業利益は前年同期比33.7パーセント増の33億8,000万円となりました。

経常利益は、補助金収入や受取配当金の増加などにより、前年同期比40.1パーセント増の37億円となりました。親会社に帰属する中間純利益は、羽田空港一丁目地区の建物撤去費用の見直しを行い、当該費用の大部分を減損損失(特別損失)に計上したことにより、前年同期比41.6パーセント減の10億1,000万円となりました。

減損損失については、羽田空港一丁目地区における一部の賃貸用施設について、嵩上げ工事に伴い撤去を予定していますが、昨今の著しい工事費の高騰や、近隣の撤去実績から杭抜き工法を一部見直す必要が生じたため、資産除去債務の見積もりを変更し、追加計上が必要になった部分を特別損失として計上したものです。

また、当社は株主のみなさまへの利益還元を重要な経営課題の1つと位置づけています。当中間期では、中長期経営計画の見直しに伴い、配当性向60パーセント以上の配当方針の下、期初予想どおり、昨年中間配当の9円を大きく上回る18円の配当を実施することとしました。

2025年3月期中間期 連結決算概要 セグメント別業績概要

セグメント別業績です。売上高と営業利益は、ノンアセット事業における販売用不動産の売却などにより、空港外不動産事業が収益を牽引しました。また、空港内不動産事業および空港内インフラ事業でも、着実に収益が増加しました。

2026年3月期中間期 連結決算概要 セグメント別業績

セグメント別業績の詳細を説明します。はじめに、空港内不動産事業です。このセグメントでは、既存物件のいくつかで賃貸条件の見直しを進めたことや、テナント誘致などにより賃料収入が増加しました。その結果、売上高は前年同期比3.1パーセント増の87億3,000万円となりました。

営業利益については、大規模な修繕工事があったものの、売上増のほか、昨年度に羽田空港一丁目地区での賃貸施設の減損損失を計上したことによる減価償却費などの減少もあり、前年同期比10.0パーセント増の22億円となりました。

続いて、空港外不動産事業です。当中間期は、ノンアセット事業において、販売用不動産1棟を売却しました。物件の仕入についても、上期に新たに1棟を取得しています。

これらの取得物件に対し、マーケットを踏まえた賃料の適正化や、バリューアップに伴う賃料改定などを行ったことで収入が増加しました。その結果、売上高は前年同期比160.4パーセント増の40億5,000万円、営業利益は112.2パーセント増の12億2,000万円となりました。

2026年3月期中間期 連結決算概要 セグメント別業績

空港内インフラ事業においては、熱供給事業の冷温熱基本料金の改定や、給排水運営事業における使用水量の増加などにより、売上高は前年同期比9.2パーセント増の40億1,000万円、営業利益は前年同期比17.9パーセント増の6億4,000万円となりました。

その他の事業では、一部の太陽光発電設備を譲渡したことなどにより、売上高は前年同期比6.4パーセント減の3億7,000万円、営業利益は前年同期比11.3パーセント減の1億4,000万円となりました。

2026年3月期中間期 連結決算概要 連結BS・連結CF

連結貸借対照表および連結キャッシュ・フローについてはスライドのとおりですので、説明は省略します。

2026年3月期 連結業績予想 連結PL

2026年3月期業績予想について説明します。通期業績予想については、10月30日に業績修正の開示を行いました。売上高の好調な推移や一部の仕入経費が想定より低い水準で推移したことから、営業利益と経常利益を上方修正しました。

一方で、羽田空港一丁目地区に係る減損損失および固定資産除却損を計上したことなどにより、当期純利益は期初予想とほぼ同水準となっています。

修正内容と増減要因の詳細を説明します。売上高については、空港内不動産事業における賃貸条件などの見直しにより、賃料、SDプラントの利用料といった収入が増加したほか、空港内インフラ事業のうち給排水運営事業における使用水量が当初予想よりも好調に推移していることから、期初予想比6億円増の365億8,000万円を見込んでいます。

売上原価については、羽田空港内の土地に係る国有財産年間使用料の増加率が想定よりも低い水準で推移したことや、子会社である東京空港冷暖房株式会社における修繕工事内容の一部見直しが影響しています。

加えて、冒頭でお知らせした当中間期における羽田空港一丁目地区の撤去費用見直しに伴う減損損失について、期初予想では減価償却費として見込んでいたものの一部が特別損失として計上されたことなどにより、営業利益は期初予想比12億9,000万円増の58億2,000万円を見込んでいます。

経常利益は、期初予想で同じく減損損失に係る費用を固定資産除却損として見込んでいたものが特別損失として計上されたことに加え、期初予想では特別利益として見込んでいた補助金収入が営業外収益に計上区分変更となったことから、期初予想比49.1パーセント増の61億9,000万円となる見込みです。

以上のように、営業利益・経常利益については大きく修正がありますが、当期純利益は、売上原価として見込んでいた減価償却費、また、営業外費用として見込んでいた固定資産除却損を減損損失として計上したことや、期初予想では特別利益として見込んでいた補助金収入が営業外収益に計上区分変更となったことにより、期初予想とほぼ同水準の30億3,000万円と予想しています。

2026年3月期 連結業績予想 セグメント別・配当見通し

スライド左側では、業績修正後のセグメント別予想を示しています。こちらは記載のとおりとなるため説明を省略します。

右側は配当見通しです。通期の配当については、中長期経営計画の見直し後に掲げた配当性向60パーセント以上の方針に基づき、期初予想どおり、昨年度の年間配当21円を大きく上回る過去最高額の年間37円を予想しています。

中長期経営計画の見直し・骨子(再掲)

田村:5月に見直し後の計画を公表した中長期経営計画の進捗について説明します。当社は見直し後の計画において、「Ⅰ:羽田空港内事業の更なる強化」「Ⅱ:ノンアセット事業の拡大」「Ⅲ:事業領域拡大・成長投資の実行」の3つの重点施策を中心に事業戦略を推進しています。

加えて、資本効率改善と市場評価の向上を目的として、「Ⅰ:キャッシュ・アロケーション方針」「Ⅱ:株主還元の大幅拡充」「Ⅲ:上場市場の見直し・株主優待制度の廃止」「Ⅳ:IRの強化」の4つの資本政策を掲げています。

中長期経営計画の進捗状況(重点施策)

重点施策の進捗について説明します。重点施策Ⅰのうち、「羽田空港一丁目プロジェクト」では、昨年11月に第1フェーズとして、一丁目地区の機能の一部を新整備場地区の既存施設へ移転集約する方針を決定しました。

受け入れ先となる新整備場地区の物件については、共用部のリニューアルやレイアウト変更工事など、テナントのニーズに合わせたバリューアップ工事を実施しています。

また、新整備場地区では駐車場不足が課題となっていましたが、近隣の当社施設敷地を有効活用し、駐車場用地を捻出することで課題に対処しました。

現在の一丁目地区におけるテナントの新整備場地区への移転状況としては、11月に一部のテナントが早期移転を完了しました。その他のテナントについても、移転期限である2026年度にかけて集中的に移転する見込みであり、今後も新整備場地区の既存施設の稼働率をさらに向上させるべく、引き続き営業活動を行っていきます。

なお、第1フェーズの一部および第2フェーズの計画内容については、引き続き関係者と協議を進めていきます。

中長期経営計画の進捗状況(重点施策)

重点施策Ⅰの羽田空港内事業の強化や、重点施策Ⅲの事業領域の拡大に向けた取り組みを紹介します。

羽田空港国内貨物地区では、空港内でのCO2排出量削減に貢献するため、貨物の荷さばきなどを行う貨物上屋の屋根に太陽光発電設備を設置しています。この設備の設置拡大に加え、電力需要の平準化や空港BCPへの対応として、蓄電池の導入を目指し、調整を進めています。

羽田空港における共用通信事業では、従来の固定電話や専用線サービスの提供に加え、共用IPネットワークサービスとして「インターネット環境」「無線LAN」「有線LAN」の一括提供を開始しています。今後もインターネット環境の利便性向上のためのサービス導入を検討しており、調整でき次第みなさまにお知らせする予定です。

続いて、スライド右側に記載のとおり、当社がCM(コンストラクション・マネジメント)業務を担当した静岡空港の駐機スペースが9月に竣工しました。当事業は、鈴与株式会社より当社がCM業務を受託し、駐機スペースはフジビジネスジェットに利用いただいています。引き続き事業拡大のため受注獲得を目指していきます。

中長期経営計画の進捗状況(重点施策)

重点施策Ⅱの空港外不動産事業におけるノンアセット事業の進捗についてです。当中間期では、4月に「サクラフロント一番町」を売却しました。販売用不動産の取得状況については、上半期において、東京都新宿区の「大和屋ビル」を9月に取得しています。11月には中央区の「GRANBIZ東京日本橋」を取得し、今年度2棟目の仕入れとなっています。

取得した物件については、周辺の賃貸マーケットを加味した賃料の増額や、物件価値を高めるリニューアルなどのバリューアップ施策を進めていきます。不動産私募ファンドの組成についても準備を進めており、引き続き回転型事業の推進を図ります。

中長期経営計画の進捗状況(資本施策)

資本政策の取り組みについて2つ紹介します。1つ目は、資本施策Ⅲの市場区分の変更についてです。当社は、現在の東京証券取引所プライム市場からスタンダード市場への市場区分変更を決議し、変更申請を行いました。

現状で当社はプライム市場のすべての上場維持基準に適合していますが、上場維持基準への安定的な適合と機動的な自己株式取得といった資本政策を両立させ、限られた経営資源を事業戦略に振り向けることで、持続的な企業価値向上を目指す目的で市場変更を行っていきます。

2つ目の資本施策Ⅱの自己株式の取得については、株主還元の大幅拡充の一環として、B/S構成の見直しによる資本効率の改善を目指し、今回10億円を上限として自己株式の取得を開始しました。取得予定の自己株式は、全株式を消却します。

ESGの取り組み

最後に、ESGに関する取り組みについて紹介しています。説明は省略しますが、10月に発行した統合報告書と合わせてぜひご覧ください。

以上で2026年3月期中間決算の説明を終了します。

質疑応答:羽田空港のコンテナ留め置き施設の計画について

質問者:前回の会見で、羽田空港の機能強化の一環としてコンテナの留め置き施設を計画しているとうかがいましたが、具体的なスケジュールや配置場所、また、何層程度の施設でどれほどの規模になるのかお聞かせください。

笹岡修氏(以下、笹岡):取締役常務執行役員の笹岡です。ご案内のとおり、国内貨物地区において空コンテナを効率的に保管し、航空会社からフォワダーへの効率的な払い出しを実現するため、機能強化を図るという課題認識のもと、現在、限られた土地を有効活用するために施設の一部を複層化することで解決できないかと検討しているところです。

現在は、ユーザーである航空会社の方々と協議を進めている段階です。昨今の建築費の高騰などを踏まえ、目的である効率的な保管と払い出しを実現するために、複層化以外のかたちも含めて検討しています。

ふさわしい場所や設備投資のあり方については、ユーザーである航空会社と課題を共有した上で、今年度から来年度にかけて協議を進め、来年頃に着手する予定です。実際のサービス供用は少し先になる可能性もありますが、東西両エリアを視野に入れながら進めている状況です。

質問者:東西の国内貨物ターミナルについて、2026年度の着工を目指しているという認識でよろしいでしょうか? 

笹岡:2026年度中に着工できることが望ましいというスケジュール感を持っています。ただし、東西のどの場所に、どのような規模で、どのようなサービスとして設置するのが最適かについては、現在、細部の協議に入っています。その進展次第ではありますが、なんとか来年度中には手を入れ始め、2027年頃にはサービス開始できるよう進めています。

質疑応答:今後の自己株式取得の方針について

質問者:自己株式取得について、今回10億円と発表されましたが、中長期経営計画のROE6パーセント目標に向けて考えると、10億円は少し多めにも見えます。基本的には10億円のペースを安定的に維持すると考えてよろしいのでしょうか?

笹岡:自己株式取得については、中長期経営計画のキャピタル・アロケーションの中で、株主さまへの還元として100億円という規模を明示しています。これについては、配当と機動的な自己株式の取得を組み合わせて進める方針であり、今回は10億円で進めています。

これを今後も安定的に進めていくのかということについては、少し先の話となるため、現時点では断言できません。ただし、還元の全体規模感である100億円を意識しながら、配当と合わせて機動的に対応する考え方です。

そのため、今回と同じ規模感のものを、残りの中長期経営計画の期間である3年間にわたり進めるかどうかについては、今後の市況の動向や当社の成長投資の状況、事業環境などを総合的に考慮しながら検討していきたいと考えています。

質疑応答:インフレーションへの対応について

質問者:御社は、長期固定的で非常に安定したビジネスである賃貸事業を持っています。そのため、投資家からはインフレーション下ではやや投資しづらい銘柄と見られることもあります。今回さまざまな契約を見直し、インフレに対応するかたちを取られていますが、今期についてはしっかりと増益が見込まれているように見受けられます。

構造的にコストを転嫁するだけでなく、インフレに伴って利益を増やしていけるかどうかという視点では、どのように考えればよいでしょうか?

笹岡:当社としては、運営コストの上昇をそのまま転嫁するのではなく、それも踏まえて利益拡大に資する、適切な利益を確保するための賃料や賃貸条件の見直し交渉を進めています。

一方で、当社は空港内で安定した事業を展開しており、それは同時に、空港内で事業を行う方々の事業基盤となる施設を提供しているという意味も持ちます。そのため、長期的な関係を大切にしたい思いがあります。

このような背景から、中長期的に当社として適切な利益を確保する観点で取り組んでおり、インフレの状況下で当社のビジネスが劣後しているという評価にはならないことを示しながら、お客さまとの長期的な関係を築いていきたいと考えています。

質問者:今期については契約の見直しで利益がしっかり出るように見えるため、反対に来期はそのような見方がしづらくなるのでしょうか? 

笹岡:我々としては、賃料の適正な見直しが必要な先をとらまえて交渉を重ねてきた結果、実現してきています。1つのアクションについては、年度の途中であればその期のタイミング以降に貢献し、翌年にはそれが通年化されるかたちで貢献します。そのような大きな課題を認識している先については、一定程度対処が完了しているというのが実態です。

ただし、当社については空港内外に施設を持っているため、マーケットの状況等を見ながら、来期についても引き続き賃料の見直しに取り組んでいきたいと考えています。

質疑応答:静岡空港の事業規模と羽田以外の投資案件について

質問者:今後、羽田空港以外の投資として静岡空港のコンストラクション・マネジメント契約について記載されていますが、具体的にこの投資が利益としてどの程度の規模を持つのでしょうか? また、羽田空港以外の投資として、以前は航空機リースファンドなどが進められていましたが、現時点で静岡空港以外に検討している投資案件に関して、コメントできることがあれば教えてください。

笹岡:今回、静岡空港におけるコンストラクション・マネジメント業務を受託していますが、その利益貢献の規模感は数千万円程度となります。これは工事の監修を行う業務であり、当社が設備投資を行って資産を保有し、賃貸する当社のオーソドックスなビジネスモデルとは異なります。

このような取り組みを通じて培った知見を、他社の施設展開に活用していただくというサービス業務です。そのため、今回の案件については、規模感としてはこのようなかたちになっています。

また、このような業務を行える会社として、航空業界全体で広く認知を高めることを通じて、次の展開へつなげていきたいと考えています。この業務については、今後も求められるものであると認識しており、確実に積み上げ、積み重ねていきたいと考えています。

今回の対象は静岡空港でしたが、当社は規模の大小を問わず、国内の基幹空港にさまざまな施設を展開しており、「空港」と名の付くところであれば事業機会を求めて取り組みを進めています。羽田空港を拠点かつ基盤としつつも、地方空港においても従来から事業を展開しており、今後は従来以上に強化していきたいと考えています。

また、パイプラインとして積み上がるまでに至らない案件も含めて、いくつかの案件が挙がっている状況です。日本の空港については概成している状況にはあるものの、お客さまの事業環境は大きな変化が伴うほか、施設の老朽化や環境対策といったニーズを捉え、地方空港への投資拡大を図っていきます。

これは中長期経営計画における事業戦略のうち、重点施策Ⅲに掲げている事項でもあり、地方空港における投資チャンスも確実に獲得していきたいと考えています。

田村:笹岡常務の説明のとおりですが、私からも一言添えます。当社では、空港機能を支えるこれまでの経験や知見を活かし、各空港の航空関係のお客さまとの積極的なコミュニケーションを通じて、事業拡大のチャンスを捉えるべく取り組みを進めています。

これまでもさまざまなご要望をいただいていましたが、まだ具体的なかたちになっていない案件もあります。それらを社員一丸となって事業機会を創出および獲得していくことを目指しています。ご理解のほどよろしくお願いします。

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