【QAあり】Sansan、各セグメントの売上高は堅調に推移 ビジネスデータベース「Sansan」も直近3事業年度で最も高い成長率に
第1四半期実績ハイライト
橋本宗之氏:本日は当社の決算説明会にご参加いただき、ありがとうございます。CFOの橋本です。2026年5月期第1四半期の実績についてご説明します。
まず、ハイライトについて3点ご説明します。1点目は売上高についてです。各セグメントの成長率が前第4四半期から上向き、堅調に推移しました。2025年8月末時点でのARR(年間経常収益)は437億円を超過しました。
2点目は調整後営業利益です。大型プロモーションの実施により広告宣伝費が増加した中でも、売上成長率を大きく上回る増益率を達成しました。
3点目のビジネスデータベース「Sansan」では、契約件数や契約当たりの月次ストック売上高が高水準で推移し、直近3事業年度で最も高い成長率を記録しました。
経営成績の概況
全社の経営実績は、スライドのとおりです。売上高は前年同期比28.2パーセント増と堅調に成長しました。売上総利益率は前年同期比で1.2ポイント改善しました。これは主に「Bill One」のデータ化オペレーションの効率が向上したためです。
調整後営業利益は、テレビCM等の大型プロモーションを前第4四半期から継続したことで広告宣伝費が増加したものの、売上成長や売上総利益率の改善、人件費率の低下により、前年同期比178.8パーセントという大幅な増益となりました。
経常利益および親会社株主に帰属する四半期純利益については、前年同期は株式報酬関連費用を一時的に大きく計上したことで赤字となりましたが、当第1四半期ではその特殊要因がなく、大幅な増益となりました。
調整後営業利益の増減要因
調整後営業利益の詳細について説明します。売上高は堅調に推移し、原価率の改善によって売上総利益率が1.2ポイント上昇しました。
販管費の内訳では、広告宣伝費が約10億8,100万円増加し、売上高比率は6.3ポイント上昇しました。一方で、人件費の増加は約8億3,200万円に留まり、売上高比率は2.5ポイント低下しました。
さらに、前年同期に発生していた本社移転に伴う費用や二重家賃が解消されたことで、地代家賃および移転関連費用は約2億5,800万円減少しました。その結果、販管費率は6.5ポイント低下し、調整後営業利益の大幅な増益につながりました。
このように当第1四半期は、将来に向けた成長への投資を確実に実行しながらも、高い利益成長を実現することができました。
セグメント別実績の概況
セグメント別の概況についてです。Sansan/Bill One事業は売上高が堅調に伸び、調整後営業利益は大幅な増益となりました。Eight事業は売上高が大幅に拡大し、赤字額が縮小しました。
Sansan/Bill One事業の概況
セグメント別の実績についてご説明します。Sansan/Bill One事業の売上高は、前年同期比26.4パーセント増となりました。
サービス別では、「Sansan」が19.3パーセント増となり、前第4四半期から成長率が加速し、直近3事業年度の中で最も高い成長率となりました。「Bill One」は42.6パーセント増となり、高成長を維持しました。
調整後営業利益は、広告宣伝費が増加したものの、売上拡大や「Bill One」の売上総利益率の改善等により、前年同期比66.4パーセントの増益となりました。
その他の領域では、AI契約データベース「Contract One」およびグループ会社のナインアウト社がいずれも好調に成長しており、そのうち「Contract One」の契約件数は前年同期末比218件増の463件となりました。
「Sansan」:主要指標の状況
「Sansan」のKPIについてご説明します。スライドの左側に示しているストック売上高は前年同期比17.3パーセント増と、堅調な実績を示しました。
スライド中央に記載されている契約件数は前年同期比10.3パーセント増、四半期の純増数は350件を超え、安定的に成長しました。また、契約当たりの月次ストック売上高は前年同期比6.6パーセント増となり、高水準で推移しています。
スライド右側で示した直近12ヶ月平均の月次解約率は0.52パーセントとなり、1パーセント未満の低水準を維持しました。前年同期比で0.12ポイント上昇しましたが、これは契約更新が集中する前第4四半期に一時的に解約率が上昇した影響であり、足元に懸念はありません。
また、ご参考までに第1四半期における新規受注状況についてご説明します。ここで示す新規受注金額とは、解約による減少分を反映した、今後新たに追加で計上されるストック売上高に近い指標です。この中には、すでに第1四半期の売上高に反映されているものや、第2四半期から計上が開始されているものが含まれています。
その金額は前年同期比20.8パーセント増となり、堅調な実績を示しました。
「Bill One」:主要指標の状況
続いて、「Bill One」のKPIについてご説明します。
スライド左側のMRRについて、2025年8月の実績は前年同期比40.1パーセント増の9億8,500万円で、四半期での純増額は7,200万円となりました。純増額は前期の第3四半期以降、3四半期連続で拡大しており、底堅い成長が続いています。
次に、スライド中央に示している有料契約件数は前年同期比40.2パーセント増、四半期での純増数は320件となり、こちらも前期の第3四半期以降、300件を超える安定した成長が続いています。
一方、有料契約あたりの月次ストック売上高は、小規模顧客の獲得が増加した影響で前年同期比0.4パーセント減となりましたが、顧客規模別では高水準を維持しており、特段問題はありません。
スライド右側の直近12ヶ月平均の月次解約率は0.33パーセントで、低水準を維持しました。
第1四半期の新規受注金額は、見込んでいた一部の受注獲得が第2四半期に後ろ倒しとなった影響等により、前年同期比で3パーセント減少しました。マイナスとなった要因は明確であり、通期見通しの達成に向けては順調に進捗していると判断しています。
Eight事業の概況
次に、Eight事業についてご説明します。BtoCサービスの売上高は前年同期比12.9パーセント増と、堅調に推移しました。
BtoBサービスの売上高は、複数のビジネスイベントを開催した効果等により、前年同期比57.4パーセント増と好調な実績を上げました。その結果、売上高は52.4パーセントの大幅な増収となり、売上高の伸長に伴い、調整後営業利益は赤字額が約1億200万円縮小しました。
中期財務方針
最後に、業績見通しについてご説明します。まず、中期財務方針ですが、足元の業績は順調に進捗しており、現時点で数値の変更はありません。
業績見通し
2026年5月期の通期業績見通しについても、期初公表内容から変更はありません。売上高は前年同期比22パーセントから25パーセント増、調整後営業利益は92.7パーセントから143パーセント増を見込んでいます。
当社のビジネスはストック型であるため、四半期が進むにつれて業績が積み上がり、拡大していく構造です。また、当期は大型プロモーションの実施に伴い、上期に多くの広告宣伝費を投下する計画で、利益の計上は下期に偏重する見通しです。具体的には、上期に約25パーセント、下期に約75パーセントを計上する計画です。
したがって、当第1四半期の調整後営業利益は、見かけ上は進捗率が低く見えるものの、実態としては社内計画を上回る非常に順調な水準となっています。また、当第1四半期が広告宣伝費のピークとなる計画であり、第2四半期以降は利益水準がさらに高位で推移する見通しです。
以上で説明を終了します。ありがとうございました。
質疑応答:広告宣伝費について
質問者:第1四半期において、広告宣伝費をかなり多めに投下したと思いますが、この効果はどのように測っていくのでしょうか? また、今後の広告宣伝費用の配分について、どのように計画しているのでしょうか?
回答者:今の段階で、広告投資が成功したかどうかの判断は少し早いかなと思っています。広告の効果検証にはいろいろな指標を用いて総合的に判断をしていますが、やはり一番は認知度とリードの獲得状況です。
施策として、例えば個別のお客さまに対してアプローチができるようなマーケティング投資を伴う場合には、受注金額というのが一番の指標ですが、それ以前のマスマーケティングにおいては、リードの獲得数や認知度が必要になります。それがどのように受注につながってくるかは、これから向こう3ヶ月、6ヶ月ぐらいでの判断かなと思います。
今期の大型プロモーションは第1四半期でいったん完了しており、通期65億円の広告宣伝費の予算のうち、残りの金額については、向こう3四半期で均等か、やや第4四半期に偏重するようなイメージで投資していく予定でいます。
まだ中身・内訳は確定していませんが、マスマーケティングを行う部分もあれば、もう少し個別のマーケティング施策に寄っているものもあろうかと思います。
第1四半期での広告投資で非常に良かったのは、特に「Bill One」は経費精算サービスを立ち上げて、そこに重点的に広告投資を行ったことです。今まで「Bill One」は、請求書の受領サービスであるという認知は獲得できていた認識ですが、それに加えて経費精算も行えるという認知が徐々に広がっていく感触もありますので、非常に良い感触を持っています。
質問者:御社では、競合他社と比べても、広告宣伝費が少ないイメージですが、直近2四半期はこれまでと比べて多くの広告宣伝費を使っているので、競争環境に何か変化があるのか教えてください。
回答者:競争環境が大きく変わったとは思っていません。競争環境が変わった時に一番大きく変化が出るのは契約の獲得数と思いますが、「Bill One」も「Sansan」も獲得数はとても堅調であり、「Sansan」については過去最大レベルの顧客獲得が進んでいるので、競争環境に特段変化はなかったものと捉えています。
質疑応答:「Bill One」の売上について
質問者:「Bill One」のKPIの見方として、スモールが相対的に増えたという記載がありましたが、この背景をどのように分析されていますか? 新人の営業人員が立ち上がっているという内部的な要因なのか、もしくはマーケットの浸透度としてSMBのアップサイドがあったのでしょうか?
回答者:現在、「Bill One」のエンタープライズ、ミッド、スモールのカテゴリーで見ると、スモール、すなわち小規模顧客向けの売上が前年対比で最も伸びている状況です。
フィールドセールスの育成過程においては、まず小規模領域で経験を積み、そこからミッド、そしてエンタープライズへとステップアップしていくのが、当社のようなビジネスモデルでは一般的な流れです。そのため、スモール領域に比較的人員が厚く配置されているというのは自然な構造となっています。
一方で、受注金額の最大化という観点からは、リソース配分を細かく調整しています。現状、最も受注が取りやすいのはスモールおよびミッドの領域であるため、そこに重点的にリソースを投入している結果、これらの領域での受注が特に伸びているという状況です。
また、エンタープライズにおいて何も取り組んでいないわけではありません。「Sansan」で培ってきた営業ノウハウを「Bill One」にも展開しつつあり、大型案件の獲得体制も整ってきているところです。第2四半期以降は、その成果がより顕在化してくると見込んでいます。
質疑応答:「Bill One」の受注動向について
質問者:「Bill One」の今後の受注の見通しについておうかがいします。先ほど第1四半期の受注のモメンタムの話の中で、第2四半期に一部後ろ倒しになったという言及もありましたが、特段の要因等はあるのか、あとは第1四半期で広告宣伝費をそれなりに投下されたかと思いますので、この辺りの効果が第2四半期以降の受注に出てきそうかといった手応えもおうかがいしたいです。
回答者:受注の一部が第2四半期に後ろ倒しになった点については、個別要因によるものであり、売り方や戦略、オンボーディングの方針等に変更があったわけではありません。
また、第2四半期の初月(9月)の受注は非常に好調であり、上期全体としても計画を上回る着地が見込まれる状況です。
質疑応答:「Bill One」のクロスセル・ARPU動向について
質問者:「Bill One」についてうかがいます。今年は経費精算機能に注力し、債権管理とのクロスセルも推進されていると期初にお聞きしました。プロモーション施策も含めて、下期以降の「Bill One」のARPUに変化が期待できるのか、現状の手応えを教えてください。
回答者:定量的な効果がどの程度あるかまでは、まだ明確な感触は得られていませんが、請求書の受領・経費精算・債権管理をセットでどのように販売していくかが整ってきている状況です。
当社ではこれを「スイートパッケージ」と呼んでおり、実際にスイートで販売・契約できた事例が少しずつ出てきています。スイートでなくても複数サービスをご利用いただいているお客さま、新たに複数サービスを導入いただけるお客さまで、比較的大きな案件も入ってきているため、ARPUの押し上げに効いているのではないかという感触を持っています。
一方で、クロスセルやスイート販売がうまく進めば自動的にARPUが上がるかというと、そう単純ではありません。スモール規模の顧客獲得が非常に順調に進んでおり、むしろARPUが上がりにくい構造にもなっています。
そのため、そのバランスがどうオフセットされるかを見ながら、ARPUの推移を注視していく必要があります。結果としては、当社全体の売上高にとってはどちらも良い方向に働いていると考えており、感触としては非常に良いと感じています。
質疑応答:「Sansan」の売上拡大要因と持続性について
質問者:「Sansan」についておうかがいします。純増や単価の上昇がポジティブに見えますが、これをもたらした具体的な要因と、今後の持続性についてお聞かせください。
回答者:この3ヶ月間で何か特別な施策を打ったというわけではありません。マスマーケティングではデジタル名刺等の新しい機能をプロモーションしましたが、それが主因というよりは、売り方を洗練させ、営業活動やマーケティングを地に足の着いたかたちで進められるようになってきたことが大きいと思っています。
つまり、お客さまのファンダメンタルなニーズと、当社が提供できる価値がしっかりかみ合い、その結果として受注や売上が伸びている状況です。
一方で、それだけでは進化がないとも考えています。前回7月の通期決算で発表したAIを活用した新しい取り組みについては、この秋以降、順次新サービスをリリースしていく予定です。そこがさらなる売上成長や成長率の加速につながることを期待しています。
質疑応答:「Sansan」のその他売上の変動要因について
質問者:「Sansan」の第1四半期におけるその他の売上高が大きく伸びています。この要因と、第2四半期以降の見通しを教えてください。
回答者:「Sansan」の売上の中の「その他」が大きく伸びているという点ですが、これは新たにご契約いただいた際に、その企業に眠っている名刺をデータ化する作業に伴って初期収入をいただいているケースが増えたことが主な要因です。
企業の規模によって実態はさまざまですが、第1四半期はこの初期費用をしっかり計上できたことで、その他売上が伸びたと考えています。
第2四半期以降については、特段大きな変化は想定していません。
質疑応答:「Sansan」の顧客規模別成長トレンドについて
質問者:「Sansan」の顧客規模別収入構成について、従業員1,000人以上の企業の伸び率が前期比で上昇しています。この傾向は第2四半期以降も続くと見てよいでしょうか?
回答者:基本的にはトレンドは大きく変わらないと考えています。ただし、先ほど申し上げたようなAIを使ったMCPサーバーに関する取り組み等は、スモールよりもミッド、あるいはエンタープライズの領域でより効果が見込まれると思っています。
今後リリースを進めながら、どの領域にどの程度影響が出るかを確かめていく方針です。
質疑応答:「Bill One」の受注構造とエンタープライズ営業の展開について
質問者:「Bill One」でスモールやミッドの受注が取りやすいとのことでしたが、その理由をどう整理すればよいでしょうか? また、エンタープライズ向けに「Sansan」のノウハウを移管されているとのことですが、具体的な取り組みを教えてください。
回答者:スモールのほうが受注を取りやすいというのは、結果としてそうなっているということで、売り方やプロダクトの仕様によるものではありません。
推察できる要因としては、大企業ほど請求書処理のオペレーションがすでに整っており、当社が介在する余地が比較的少ない点が挙げられます。ただし、コスト削減等の観点から価値訴求の余地は十分にあり、時間をかけて浸透していく領域だと考えています。
営業体制の面では、これまで「Bill One」はマスプロモーションを中心にスモール・ミッド層を主にターゲットにしていた一方で、「Sansan」ではゴルフトーナメントのスポンサー案件等を通じて企業間関係を深める取り組みを進めてきました。
エンタープライズ営業ではこうした取り組みが重要であり、「Bill One」でも「Sansan」からノウハウを吸収し、同様の営業活動を行う人員を配置する等、体制を整えているところです。今後の立ち上がりに期待しています。
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