【QAあり】ビジョン、祖業で培ったBtoBの提案力で業績伸長続く 中計達成に向けて積極的に先行投資をしつつもROE20%以上を維持
マネジメント紹介
佐野健一氏(以下、佐野):株式会社ビジョン代表取締役会長CEOの佐野です。本日はご視聴いただき誠にありがとうございます。これから会社説明を始めたいと思います。
私の経歴ですが、株式会社光通信に約4年半勤めました。その後、新幹線の車窓から富士山を見て「ここで起業しよう」と決めて、アパートの1室から1人で始めたのがこの会社です。
当初は、私以外全員外国人でした。当時、日本に約30万人の南米の方々がいたため、スペイン語とポルトガル語のコールセンターを作って、母国にかける高い国際電話の料金を安くするというサービスを、通信キャリアとタイアップして行っていました。静岡に移り住んだ後に気づいたのですが、たまたまその地域に外国人の方が多く住んでいたため、その方々とビジネスをスタートしたのが、株式会社ビジョンのスタートです。
現在は、グローバルWiFi事業、情報通信サービス事業の2つに加え、グランピング・ツーリズム事業も展開しています。
コロナ禍で、グローバルWiFi事業チームがいったん解散しました。我々のグローバルWiFi事業のお客さまには世界中を旅するのが好きな方々がたくさんいますので、そのような方々の日本のタッチポイントとして、時間を有効に使うためにスタートしたプロジェクトがグランピング・ツーリズム事業です。次の淡路島への展開が完了した段階で、1つ大きな役割が終了します。
私の出身は鹿児島で、働いたことがあったのは東京、大阪、名古屋でしたので、実は静岡には縁もゆかりもなかったのです。その後、起業から4年後に東京に本社を移して、現在は東京を中心に事業を運営しています。
株式会社ビジョン(Vision Inc.)
佐野:会社概要です。創業は1995年で、経営理念として「世の中の情報通信産業革命に貢献します。」を掲げ、人類や社会の進歩・発展に貢献していくことを理念としています。
現在、総勢971名の従業員がいますが、上場時は400人ぐらいしかいなかったと思います。また、上場時の売上高は100億円超、営業利益は3億円ぐらいでしたが、今期の売上高は400億円、営業利益は64億円を予想しています。
人数を大幅に増やさずに、1人当たりの生産性を高めることに注力している会社です。今はAIの時代になってきており、ちょうどこの戦略がはまってきているところです。
国内子会社はM&Aをした会社も含めて9社あります。
また、海外子会社は韓国、台湾、アメリカ・ニューヨークなどにあります。こちらは、国内と同じように「グローバルWiFi」という世界中で使えるインターネットのインフラサービスを提供している拠点です。後ほど成長戦略についてお話しする際に、新しく進出したアメリカ・ニューヨークの拠点について、詳しくご説明したいと思います。
残りの海外拠点に関しては、各国ごとにMVNOという通信事業のライセンスを持っていたり、ヨーロッパであれば、Vodafone GroupやTelefonicaといったメガキャリアと取引したりしています。アメリカでいうと、AT&TやVerizonなどです。いずれもメガキャリアですが、そのようなところとは現地に会社がないと取引ができないことも考慮して、海外拠点を整備しています。
また、国によってはキャリアとともに法律を変えて、レンタルできるスキームを一緒に作るなど、さまざまな役割がある海外拠点を持っています。
事業内容 -成長する3つのビジネス-
佐野:売上の構成です。昨年は、売上高の55.9パーセントがグローバルWiFi事業でした。これは2012年にローンチしたサービスで、実は業界の中でもほぼ最後発という立ち位置からスタートしています。
今年の進行期に関しては、56.9パーセントと若干ウエイトが上がってきています。もともとは2019年の段階でもう少し比率があったのですが、新型コロナウイルスにより4年間ぐらいはアウトバウンドが少なくなり、インバウンドもほぼないという状況に落ち込みました。
その段階で国内のWi-Fiにウエイトをかなりシフトしたり、グランピング・ツーリズム事業を開始したり、祖業である情報通信サービス事業のパワーアップに努めたりして、基本的にはコロナ禍でも赤字を出さずにきています。一度だけ下がりましたが、そこからまた急回復をして、現在はコロナ禍前の2019年に33億円だった営業利益が、今年の予定では64億円まで倍増してきています。
沿革および売上高推移 VOC(Voice Of Customer)による成長ストーリー
佐野:スライドは、創業から現在までを時系列で見たグラフです。もともとは国際電話からスタートし、そこで得た資金で国内のBtoBを中心に我々の通信サービスを提供し始めています。
2003年、2004年ぐらいから、コンシューマー向けにはインターネットで物が売れるような状況になっていました。しかし、さすがにBtoBは難しいと言われている中で、最初に「コピー機.com」というサービスを挑戦的に作りました。
初月は1,000万円ぐらいの広告費をかけて、問い合わせがわずか数件しか来ませんでした。ただし、その中でも獲得ができたため、将来的に価値があるかもしれないと考え、踏み込みました。
釈迦に説法ですが、こちらから潜在的な顧客層に対して「社長どうですか? このようなサービスがあるのです」とご説明して、お客さまから納得いただいて契約いただくかたちが、一般的な営業スタイルだと思います。逆にいうと、ネットで集客しているお客さまに関しては、すでに顕在化している顧客層になります。その時点で「相見積もりがしたい」「聞きたいことがある」というニーズがある状態で来ていただけるため、我々としては非常に高い獲得率を出すことができます。
ただし、営業の世界ですので、1件当たりの粗利は営業担当の力量によって変わるところではあります。そこで、わざわざ来ていただいているお客さまに対して、我々は安く売ることを非常に心がけています。
我々のお客さまは長年、スタートアップが中心ですので、やはりどんどん成長していきます。そのような中で買い替えや追加の需要があったり、さまざまなクロスセル商品を導入いただいたりというケースがあるため、1つでも「高く買わされた」と思わせてしまうと全滅してしまう可能性があります。
我々は安く提供することで、「ビジョンから買ったらあれもこれも全部安い」「ビジョンに全部任せたほうがいい」という認識を持ってもらえるように取り組んでいます。スライドには一部しか記載していませんが、さまざまな通信インフラに関わるものを顕在化させてサイトをローンチしリードを取っています。
その後、2010年に国内でWi-Fiのレンタルを始めました。しかし、東日本大震災の時に「このまま日本でビジネスをやり続けて、また同じようなことが起きた時に、会社が存続できるのか?」という危機感を持ちました。
そこで、創業時に一緒に働いていた外国人従業員とグローバルビジネスを作るべく動き出しました。グローバルWiFi事業はもともと通信のプロ集団でもあるため、各国の通信キャリアと緊密にタイアップしているものを世界に広げようとしました。
世界中のキャリアとタイアップして、ローミングやフィジカルSIMではなく、そのエリアのローカルな最高品質のネットワークをお客さまに提供できるようなサービス作りを掲げ、1社1社を口説いてきました。インバウンドも増えてきたため、「NINJA WiFi」を作ったり、新しく「World eSIM」というデジタルSIMを提供するサービスを作ったりと、現在も成長途上です。
「ビジョン」のコア戦略(Strategy)
佐野:我々が大事にしている戦略は3つです。まずはニッチなマーケットにフォーカスして圧倒的No.1を作り上げていくことです。そのための支えとして、1つはプライスがあります。
例えば、先ほど「コピー機.com」の話をしましたが、即決率を上げていくような価格の提供を心がけています。結局、2回も3回も訪問することになると、そのコストは最終的にはお客さまが払うことになります。したがって、1回で決定していただけるようなプライスを出していきます。
受注した後の流れが特殊なのですが、営業担当がお客さまを管理するのではなく、約100人の専用コンシェルジュを抱えています。これはグローバルWiFi事業のコールセンターと一緒です。
営業担当が顧客管理していると、連絡した時にすぐ折り返しがないなどのレスポンスの問題がありますし、仮に離職したとするとその引き継ぎや、既存顧客が増えると新規へのアプローチ数が減るなどの現象が起きてしまいます。そのため、ここを完全に分業化して、営業担当は新規営業のみに特化しているため、他社よりも圧倒的に高い生産性が出せるという、おもしろい仕組みになっています。
逆にいうと、コンシェルジュがいるため、顧客の離反率は圧倒的に下がり、追加オーダーもどんどん増えていきます。ここが我々のアップセル・クロスセルを支えるベースとなっています。
このような戦略が我々の持続的成長を支えています。
中期的な成長イメージ
佐野:グローバルWiFi事業の中長期的なイメージです。インバウンド・アウトバウンドの部分では、日本の中でも17パーセントぐらいしかシェアを獲得できていないため、まだまだ伸びしろがあります。
では、どこに注力しているかですが、今は円安により海外渡航をする旅行者が減っています。2019年比で約30パーセント減っている中、我々は2019年比で営業利益が倍増しています。実はこの期間で最も海外渡航をしているのは、BtoBのビジネスユーザーです。
冒頭で、グローバルWiFi事業はいったん解散してその間グランピング事業を行っているとお伝えしましたが、実は法人営業だけは続けています。コロナ禍においても、どうしても海外渡航しなければならない方はいたため、その方々に対してサービスを提供することに一生懸命取り組んできました。
みなさまもWi-Fiレンタルを利用したことがあるかもしれませんが、空港で借りて、現地で使い、空港で返却・精算するのが一般的な流れだと思います。しかし、「グローバルWiFi for Biz」という法人向けのサービスは、すでに会社に置いてあります。
コロナ禍でのテレワークもそうですが、セキュアな状態でインターネットを使うために、Wi-Fiの見直し需要が非常に多くありました。
例えば、「ホテルのWi-Fiを使っては駄目」「カフェのWi-Fiはリスクが高い」ということはビジネスの世界では当たり前です。そのため、テザリングするか、ポケット型Wi-Fiを持ってPCやタブレットにつなぐというのが当たり前になっていました。
「グローバルWiFi for Biz」は国内でも使えるWi-Fiであり、そのまま海外に持って行っても使えます。そのため、別途の申し込みは要りません。なぜかというと、地球上で「グローバルWiFi」の端末がどこで使われているかを、私たちがすべてキャッチアップしているためです。今日は香港、明日は深圳、明後日はマカオとなっても、利用料金は自動でまとめて集計され、お客さまに請求できるというロジックを作っています。
また、後ほどにも少し触れますが、Wi-Fiをクラウド化しています。例えば、eSIMもしくはローミングでは、相手がどのキャリアなのかわからないと、どれだけのエリアで使えるか、どれだけの通信スピードが出るのかもわからない状況です。
我々は、現地のローカルネットワークで高品質のものを提供していますので、もちろん品質は良いです。例えば、アメリカなら「西海岸はこの通信キャリアが強いけど、東海岸はこちらのほうが強い」「中西部はこっち」ということがよくあります。
日本は国土が広くないため、イメージしづらいと思いますが、我々はエリアによってキャリアをスイッチすることができるようになっています。したがって、どのエリアでも「Zoom」のミーティングができますし、そのような安定的な通信を提供できることから、「グローバルWiFi for Biz」のお客さまも着々と増えていっています。
海外旅行者はこれほどまでに数が減っているにもかかわらず、業績を伸ばし続けているのは、実は祖業でBtoBに強く、インターネットでの集客も得意であるためです。そして、それによって新しいサービスがお客さまに選ばれている状況が現在も続いています。
中期経営計画:経営数値目標
佐野:スライドは中期経営計画の数値目標です。営業利益は前期の53億6,500万円から、今期は64億3,900万円を計画しています。
今期と来期に関しては、どちらかというと投資を先行しています。投資を先行しながら、ROE20パーセント以上を維持し、配当性向50パーセントを出すという「ウルトラC」に挑戦しているわけです。
中間期の数字を見ても、しっかりこのラインに乗ったかたちで成長しています。大きく3つの投資をしていることに関しては、後ほど掘り下げてご説明したいと思います。
ゴールというか通過点、あるいは私たちの新しいスタートラインとして、2028年までに営業利益100億円を達成することを掲げています。
中期経営計画:連結およびセグメント別業績計画
佐野:戦略的なデータドリブンセールスという意味では、我々はさまざまなデータを活用しています。現在、法人のアクティブユーザーが情報通信サービス事業だけで約40万社います。グローバルWiFi事業は、先日2,300万人のユーザー数を達成し、リリースを出しました。
両方ともさらに増え続けており、データに合わせて、お客さまが必要としているサービスを提供しています。また、今後伸びそうな新しいサービスをスタートしているため、後ほどそのあたりもご説明したいと思います。
2025年12月期 第2四半期(中間期)連結業績トピックス
佐野:大きな3つの投資の内容についてご説明します。
1つ目は、グローバルWiFi事業のアメリカ・ニューヨークの拠点を今年からスタートしました。従業員はまだ3人しかいません。
実は2020年までロサンゼルスに拠点を持っており、ちょうど利益が出始めたタイミングでコロナ禍となって、一度撤退しました。今回あらためて、ロサンゼルスではなくニューヨークに進出したのですが、やはりビジネストリップが非常に多いです。ニューヨークの3空港だけで、日本のアウトバウンドとインバウンドをすべて足しても届かないぐらいのビッグマーケットです。
そもそもアメリカのTAM自体が莫大で、パスポートの保有者数も海外渡航者数も億単位です。特にメキシコ、カナダへの渡航が多いですが、それ以外のグローバルに出て行く方々もたくさんいることを踏まえ、ニューヨークに拠点を出しました。
我々の法人営業やグローバルWiFi事業については、国内の事例をトレースしてご説明したほうがみなさまにとってわかりやすいと思います。日本でいう「楽天トラベルグローバルWiFi」「ANAグローバルWiFi」「JCBグローバルWiFi」「ダイナースグローバルWiFi」のように、さまざまな顧客プラットフォームを持っている方々とパートナーシップを組んでいます。
このように個別のブランドで展開している部分、私たちがダイレクトにBtoBで展開している部分、旅行会社が展開している部分など、OTAも含めたさまざまなところとパートナーシップを組んで、「グローバルWiFi」を売ってもらっています。空港の受け渡しカウンターは1か所に集積され、バックエンドは私たちが1つで持っているため、より効率よく獲得できる仕組みです。
実はアメリカでも同じように展開をし始めています。もちろん、ダイレクトにユーザーを獲得する取り組みも行っていますし、先々は「Amazon」などでの販売等も含めて展開していこうと思っています。
マーケットが大きいということは、おそらくみなさまもわかっていただけたと思うのですが、さらにアメリカは今ホワイトスペースになっています。なぜなら、新型コロナウイルスの影響で既存のWi-Fi業者が潰れたためです。
eSIMもありますが、やはり品質の問題がどうしてもあります。例えば、日本のメガキャリアでも一番高い料金サービスがあって、その下にMVNO的な少し安いサービスがあって、その下にさらに安いサービス、その下にプリペイドといった構造になっています。これは実は少しずつ通信品質や帯域が異なる仕組みになっています。
旅行者にとっては、ここでいうプリペイドの領域がeSIMの領域でもあります。自国の人たちは、もちろんメインネットワークをeSIMのポストペイドとして使うことができます。しかし、旅行者に対してメインネットワークを使わせて、全体を圧迫してしまうことや、誰が使っているかわからないリスクなどをキャリアも回避したいため、そのあたりは棲み分けをしています。
これは世界的に今起きてきている状況ですが、アメリカはeSIMを徐々に減らしており、SIMロックをさらに強化しています。端末が高騰しているため、両方合わせて買ってくれたら安くするようなプランがどんどん増えてきています。
冷静に考えてみると、eSIMであるかないかはみなさまにとってあまり関係ないといいますか、キャリアを変えないのであれば、別にロックがかかっていても安いほうがいいというのが大半のお客さまだと思います。
したがって、そちらの方向に動いている国もかなり増えてきています。eSIMを使うことはできますが、キャリアの乗せ換えはしないという約束になっているところが多いです。アメリカでの「グローバルWiFi」の需要には、このような背景があります。
一方、日本へ渡航する際に「NINJA WiFi」を使っているアメリカ人が実はどんどん増えており、アメリカの方もWi-Fiを使うことがしっかりわかってきています。
「グローバルWiFi」の端末1台当たりでどれぐらいのデバイスをコネクトしているのかというデータを見ると、日本よりもアメリカのほうが多くコネクトしていることがわかりました。数人で割り勘する率が高く、ギガ数も日本より少し多いです。
ただし、提供価格も日本より高いため、原価は世界共通ということを考えると、非常にマーケットが大きい分、とても期待しています。ベースが出来上がってきたら、もう少し攻めていこうと考えています。
2つ目は「World eSIM」です。例えば、韓国のソウルや台湾の台北など、近い地域に1人で旅行するような方たちは、昔はフィジカルSIMを買っていました。そのような方は、ローミングを安く使いたいというニーズを持っているため、そのマーケットも取りに行っています。
コロナ禍で4年間ぐらい止まっていましたが、こちらもかなり伸びてきています。複数人利用は「グローバルWiFi」、単独で使う場合は「World eSIM」というかたちです。しかし、割高になるにもかかわらず4人でeSIMを買っているような人もまだいるため、そのあたりはこれから調整していきたいと思っています。
3つ目は情報通信サービス事業で始めた経理BPO業務です。我々のスタートアップのお客さまは毎月約1,500社ずつ増えています。これから人が採用しにくくなってくるため、社長は売上を上げたり、戦略を考えたりすることに時間をより一層費やしていただき、バックエンド業務は我々がローコストで請け負うというサービスを、今年から本格的に開始しました。
構想は以前からあり、昨年もテストマーケティングを行っていたのですが、OCRやAIの技術が急速に向上したおかげで、いろいろなものが整ってきて、事業として展開できるようになりました。
数としては非常に多くを取れるのですが、抑えめに受注しています。品質が一番大事なため、今は実績をどんどん積み上げていき、ある程度整ってきたら、一気に拡大していくフェーズになるかと思います。
経理BPO業務を手掛ける業者はたくさんありますが、決定的な違いは何かということがみなさまも気になると思います。我々はお客さまからパーミッションを取り、お客さまが使っている各項目をすべてチェックして、何がコスト削減につながるかを再提案しています。
要はクロスセルで入っていくことによって、お客さまの経費そのものの全体的な見直しを図ります。我々は営業に相当な力を入れている会社でもあるため、積極的にできるマネタイズポイントが複数あるところが最大の強みとなっています。
川合直也氏(以下、川合):グローバルWiFi事業の中身を整理すると、従来からあった端末をレンタルする「グローバルWiFi」に、個人向けと法人向けのサービスがそれぞれあるのが、最大の特徴だったかと思います。
そこに今、新たに米国ニューヨークと「World eSIM」を拡大していて、ニューヨークについてはインバウンド、および「外から外」向けという理解であっていますか?
佐野:おっしゃるとおりです。ニューヨークから世界に渡航する人たち向けです。拠点はニューヨークですが、利用者はアメリカ全土にいます。
川合:これは「NINJA WiFi」の端末をレンタルされているのでしょうか?
佐野:日本でマーケティングしているのは「NINJA WiFi」で、米国では「グローバルWiFi US」を展開しています。
川合:「World eSIM」は端末ではなく、1つのスマートフォンに1回線契約するというサービスですか?
佐野:そのとおりです。
川合:国は関係なく、グローバルで展開されているのでしょうか?
佐野:国は関係ありません。最初は日本からのアウトバウンド・インバウンドが中心でしたが、空港のタッチポイントが必要なくなったため、世界でもニーズがあるところに提供しています。
実際には、「World eSIM」のお客さまのリードも「グローバルWiFi for Biz」につながっています。「さらに品質の良いものを使いたい」というお客さまもいらっしゃるため、1つのリードとして全世界にリーチしていきたいと思っています。
中間期累計業績推移
佐野:スライドは中間期決算です。もともと予定していた数字を上回ってきています。今年と来年に関しては積極的な投資をしていくフェーズであり、そのために実は伸長率と利益は低調となっています。しかし14枚目のスライドでご説明した数字を除くと、利益は120パーセント以上成長している状況です。
そこは切り分けながら、既存事業が伸びていることと、そして投資でどれだけ使っているかを、株主の方々にわかりやすくご説明していきたいと思っています。
2025年12月期第2四半期(中間期)ハイライト
佐野:グローバルWiFi事業、情報通信サービス事業、そしてグランピング・ツーリズム事業の全事業ともに売上・利益とも過去最高を更新しています。
全社ストック収益 売上総利益推移
佐野:全社のストック収益です。ショットのビジネスだけではなく、ストック収益も昨年度は年間21億8,000万円と、かなりの勢いで伸びてきています。
「グローバルWiFi for Biz」については、基本料金と使用した分の通信費は別であり、この上に何十億円も乗っていますが、スライドに記載しているのは基本料金であるリカーリングの部分のみです。
情報通信サービス事業の自社サービスのストック収益については、もともとキャリアやメーカーとタイアップして展開していたものがベースだったため、ここで使った通信費の何パーセントかのストックは徐々に下がってきています。しかし、今年はすでに半分を超えている状況です。
2025年12月期 第2四半期(中間期)ハイライト
佐野:スライドには細かい指標を記載しているため、簡単にご説明します。先ほどお話ししたグローバルWiFi事業で法人の需要が増加している現状については、円安であり世界中でビジネスを展開したほうが法人のお客さまは儲かるため、日本のシュリンクしているマーケットから積極的に世界に出ていっています。
これが、円安により渡航者数が減っている状況の中でも、利益を伸ばし続けている源泉になっており、重要なポイントであると考えています。
また情報通信サービス事業では、ストック収益がどんどん伸びているため、利益の下支えが出来上がってきています。
グランピング事業についてはあと1か所で終わりですが、インバウンドの旅行の手配をしているツーリズム事業が順調に伸びています。一部アジアからの旅行者も取りますが、特に欧米からの旅行者を確実に取っていくという方針で我々は取り組んでいます。
セグメント別売上高および利益
佐野:セグメント別の売上高と利益です。セグメント利益は中間期までで、グローバルWiFi事業が27億9,100万円、情報通信サービス事業が9億5,100万円、グランピング・ツーリズム事業が6,300万円という内訳になっています。
グローバルWiFi事業 業績推移
佐野:グローバルWiFi事業の推移です。コロナ禍で大きく落ち込んだものの、順調に回復してきています。ただし個人のお客さまの伸びは非常に低い状態のため、まずは法人のお客さまを着実に獲得し、いずれ帰ってくるであろう個人のお客さまを待っています。
川合:上期の増収額が5億円から6億円ぐらいあると思います。その中身として、どの部分が多いのでしょうか?
佐野:やはり法人が大きいです。法人のお客さまはどんどん獲得できています。みなさまがかなりアグレッシブに海外に行っていると思いますし、海外でビジネスを始めたいという方々も増えているため、法人が一番大きいと思います。
川合:海外出張数自体が増えているというイメージですか?
佐野:そのとおりです。あとはインバウンドです。
これまで手掛けてきませんでしたが、今はSIMカードの自動販売機が空港に置いてあります。これが意外と売れています。なぜなら、まだ「World eSIM」を使えない端末が世界中にたくさんあるからです。日本のようにみんなが最新端末を使えているわけではなく、古い端末を使っている方々は「World eSIM」に対応していないため、フィジカルSIMを買っています。そのような点で伸びています。
川合:「World eSIM」について、既存のレンタルサービスとやや自社競合するようにも思えます。それぞれどのような価値があって重なっていないのか、もしくは御社としてなぜ「World eSIM」を展開するべきなのかについておうかがいできますか?
佐野:実際に「自社競合となってもおかしくない」と最初は思っていました。我々は世界中のキャリアと、5年ぐらい前から「World eSIM」に関して相当踏み込んで交渉していますが、実際のところ世界中のキャリアはeSIMにまったく興味がありません。なぜかというと、ローミングがあるためです。
「国内のキャリアをスイッチするためにeSIMをつけているのであって、なぜわざわざローミングがあるのに海外のSIMを入れるの?」という議論があって、実際にはそれほど良い品質のものを彼らも出したくないわけです。したがって今は「良い品質ではないけれども、旅行者のために安いものを出している」という状況です。
我々は法人やハイスペックの容量を使いたい方、具体的には「『Zoom』でアクティブにミーティングをしたい」「辺鄙なところでも使いたい」などという方向けに考えています。例えば、プラントを作っているような会社では、どこでもつながる会社でないと契約できないため、当社としか契約できないお客さまも実際にはいます。
そのようなカバレッジやスピードといったさまざまな法人需要、もしくは個人でも「アクティブにそれぐらい使いたい」という人たちは「グローバルWiFi」を選んでくださっています。
これは「World eSIM」では実現できません。「World eSIM」は安くて、利用日数が短くてもいい方向けです。「今まではSIMを購入したりローミングを使ったりしていたけれども、扱えるようになって簡単になったためこちらを使いたい」という方々です。このような棲み分けになっています。
したがって利用者が1人か2人なら「World eSIM」、複数人以上だと「グローバルWiFi」となります。
3人や4人で海外へ行ってもみんなが同じキャリアというわけではないため、「1人がSIMを1枚買って、みんなでテザリングを使おうとしたら使えなくなってしまった」など、さまざまな声をいただいています。そこで、お客さまも含めて棲み分けをしています。今はそのグラデーションを整えている最中です。
川合:ローミングも各キャリアがかなり価格を下げていて、Wi-Fiレンタルとあまり変わらなくなってきていると思います。その中で「World eSIM」を扱うことは防衛になるのでしょうか?
佐野:どちらかというとWi-Fiで問題ありません。
例えば、私のキャリアがソフトバンクで、川合さんがauで、荒井さんがドコモだとします。「ドコモのローミングが安いから、みんなでテザリングして使おう」というと、海外の方々は「嫌だ」と言うわけです。それは、非常に早く電池がなくなったり、ある一定のところまでは制限なく使えても、あるところから制限がかかったり追加料金が発生したりと、さまざまなことが起こり得るためです。
このように「人の端末にぶら下がるのは嫌だけど、Wi-Fiにはぶら下がってもいい」という傾向は最初の頃からありました。3人でローミングを使うと非常に割高になりますが、それを割り勘にしたところで割安になるだろうかという意味では、安くなってもあまり関係ないということです。
情報通信サービス事業 業績推移
佐野:情報通信サービス事業の業績は、先ほどご説明したとおりです。
米国(ニューヨーク)子会社設立
佐野:ニューヨークでの子会社設立についても先ほどご説明したとおりです。ニューヨークだけで日本のインアウトよりも大きく、さらにホワイトスペースもあり、アメリカ全体のTAMも大きいため、今後が非常に楽しみです。
グローバルWiFi事業 World eSIM
佐野:「World eSIM」については、第1四半期、第2四半期と四半期ごとに10万件ほど売り上げています。ただ、ここで「通信状況がいまひとつだった」ということが起こり得ます。
特に法人のお客さまで「『Zoom』に使うのは厳しかった」という方に対して、「実はWi-Fiがあるんです」という流れで「グローバルWiFi」を使っていただくためのリードとして、「World eSIM」は非常に良いアイテムです。しかしながら「グローバルWiFi」を認識していない方々も多いため、取り逃しがないように取り組んでいます。
また、日本人だけではなく、少しずつ海外の方々も買ってくれるようになってきています。今期の利用件数が、第1四半期の10万件から第2四半期に9万7,000件に下がっている要因として、第1四半期が卒業旅行シーズンだったこともあり、コストを抑えたい学生の方々に使っていただいたという側面があります。こちらも順調に伸ばしていきたいと考えています。
自社サービス ~記帳代行ドットコム~
佐野:「記帳代行ドットコム」についてご説明します。世の中には、非常に安い価格でこのようなサービスがたくさん存在しています。その多くが超テクノロジー型だと思いますが、私たちはかなりの後発のため、これからAIを使って開発すると非常に費用を抑えて作ることができます。したがって、あまり早く展開しないほうがいいと考えています。
もう1つは、「写真を撮るのが面倒くさい」というお客さまが多いため、私たちはすべてをこちらに送っていただき、仕訳から全部こちらで作業を行います。お客さまの時間を割かずに、こちら側がすべてを請け負うことで、お客さまにとって非常に役に立つということが、さまざまなやり取りをしている中でわかってきました。そこで「お客さまに手間がかかることはやめていこう」と考えています。
現在AI-OCRの向上により、AIを提供している世界中の多くの会社が伸びています。我々も積極的にAIを活用していますが、オリジナルの技術で一番のキーとなるのが、手書き文字を解析する技術です。我々はここに非常に力を入れてきており、かなり良い状況となっています。
さらに就労支援にも力を入れており、障害のある方も積極採用しています。今、発達障害などの診断を受けた方々も非常に多く、障害者手帳を持っている方で「スーツを着て会社に行きたい」という方がたくさんいます。しかし採用する企業がほとんどないため、我々がそのような採用を行うと非常にたくさんの応募がきます。彼らが活躍する場を提供していくことで、いずれ我々のお客さまたちにも、そのような方たちが就職できるようにしていきたいと思っています。
自社サービス ~顧客・時代のニーズにあった商材・サービス提供~
佐野:そのほかに、情報通信サービス事業にもさまざまなサービスがあります。
自社サービス ~顧客・時代のニーズにあった商材・サービス提供~
佐野:情報通信サービス事業の中でも、最近はWebカメラの売れ行きが非常に良くなっています。お客さまからいただいた「こういうのはないの?」というご意見やご要望から、どんどんラインナップを増やしています。
グランピング・ツーリズム事業
佐野:グランピング事業では、淡路島に新しい施設がオープン予定です。すべての部屋から明石大橋がきれいに見えるのが特徴です。山中湖の施設もすべての部屋から富士山が見えると好評で、常に稼働率95パーセント以上となるほど大人気です。
質疑応答:先行投資の集中分野について
荒井沙織氏(以下、荒井):「先行投資について、どの分野に投資を集中していますか?」というご質問です。
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