FRB9月利下げ観測と日銀の政策動向:ジャクソンホール会議後の日本株市場シナリオ分析
マネックス証券のチーフ・ストラテジスト、広木隆氏がマーケットのトピックや見通しなどを語る「広木隆のMonday Night Live」。今回は、ジャクソンホール会議後の日本株市場シナリオ分析を中心に、広木氏が視聴者の疑問に答えながらじっくり語りました。
ジャクソン会議後のFRB利下げ観測
佐々木真奈美氏(以下、佐々木):みなさま、こんばんは。「広木隆のMonday Night Live」をご視聴いただきありがとうございます。本日MCを務めます、佐々木真奈美です。広木さん、今日もお願いします。
広木隆氏(以下、広木):マネックス証券チーフ・ストラテジストの広木です。よろしくお願いします。
佐々木:本日のニュースですが、ジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長の発言により、9月にも利下げが行われるのではないかとの観測が米国でかなり高まっています。私としては、この動きが日本株にも良い影響を与えたと見ています。
日経平均や東京市場の動きを見ていると、朝方500円近く上昇したにもかかわらず、その後伸び悩み、米国での利下げ観測が高まったわりには、最終的にそれほど大きく上昇しなかったというのが個人的な印象でした。
広木さん、本日の東京市場はどのような投資家心理や思惑が背景にあったと思われるか、まずご説明いただけますでしょうか?
広木:本日の市場の動きは非常に「しっくり来る」と思いました。私は『日経マネー』という雑誌に寄稿しており、「広木隆のザ・相場道」という長年続く連載を持っています。現在は電子版になっているため多少のタイムラグはありますが、ジャクソンホール会議を受けて記事を執筆しましたので、お読みいただければと思います。
そちらでも書いたことで、今回のジャクソンホール会議におけるパウエル議長の発言はハト派的と解釈されがちですが、これは誤解と言いますか、バイアスのかかった見方です。私は以前から、テレビやラジオ、この番組でも、パウエル議長は中立的な立場で淡々と講演を行うだろうと述べてきました。市場もこれと同様の見方をしており、ヘッジ売りが多く入っていました。
S&P500の動きは、構成銘柄が30銘柄しかないダウ平均だけでは全体像が掴めません。800ドル上昇して史上最高値を更新したことは理解できましたが、それはさておき、S&P500はアメリカ株全体の動きを示す指標ですが、ナスダックはハイテク株が中心で、現在のアメリカ市場を牽引する銘柄が強い傾向にあります。
これらの指数は8月中旬に高値を付けた後、ジャクソンホール会議に向けて調整局面に入りました。S&P500も5日連続で下落し、パウエル議長の発言を受けて買い戻され、一時的な安心感からの急反騰(リリーフ・ラリー / Relief Rally)となりましたが、まだ高値には戻っていません。そのような意味で、アメリカの株式市場も万々歳の状況というわけではなく、事前に警戒して売却されていた分が買い戻されたに過ぎない、というのが実情です。
それから、パウエル議長の発言は非常に中立的でした。少なくとも昨年と比較すると、トーンは緩和されています。昨年は「Time has come(時が来た)」と利下げを示唆していましたが、今年は利下げの道が開かれた可能性を示唆する程度に留まりました。ハト派的というよりも、中立的な発言が予想される中で、やや踏み込んだ発言があった、くらいの印象です。
利下げ観測と雇用統計が左右する株価動向
先日、土曜日にBSテレビ東京の番組「日経サタデー ニュースの疑問」に出演しました。その際、ジャクソンホール会議の直後ということもあり、現地取材をしていた日本経済新聞の三島記者が、興味深い話をしてくれました。この内容は『日経マネー』の記事にも書いたとおりです。
非常に印象に残った言葉が、ジャクソンホール会議での「Silence is acceptance(沈黙は是認)」という言葉です。「マネクリ」で月曜日に更新される「今週のマーケット展望」のジャクソンホール総括でも取り上げた内容ですが、これはFRBが利下げに関して沈黙を守れば、それは9月の利下げを容認したと解釈される、という意味です。
ジャクソンホール会議では、この言葉が会議のムードを象徴しているというレポートもあり、私もそのとおりだと感じました。しかし、実際には沈黙どころか、FRBはインフレの上振れリスクに加え、労働市場の下振れリスクが高まっているとの認識を示しました。これは従来の「インフレ最優先」の姿勢からリスクのバランスが変化していることを意味し、その点で折り返し地点とも言えます。
失業率は依然として歴史的に低水準で安定していますが、その背景にはトランプ大統領の移民抑制政策による労働供給の伸び鈍化があります。さらに、雇用する側の需要の減速も重なり、結果としてバランスが保たれているに過ぎないというのがFRBの説明でした。
このような状況は非常に危ういため、少しバランスが崩れるだけで雇用情勢が急速に悪化するリスクがあります。FRBは、この状況を受けて金融政策、つまり利下げの見通しを再調整し、利下げ再開を正当化するというようなことを言いました。マーケットはこれを好感し、株価は上昇したということです。
しかし、時間が経つにつれて、パウエル議長がそこまでハト派的ではないという冷静な見方もやはり出てきます。彼はあくまでデータ次第と述べており、9月のFOMCまでに再び同様のデータやCPIが発表され、それが上振れするリスクも十分にあります。現在、FedWatchでは8割の利下げ確率が示されており、100パーセントではないことを多くの人が認識しています。
株式市場においても、アメリカ株が買い戻されたのは、これまでの売りの反動に過ぎません。本日の日本株の動きは、取引開始直後にリスクオンの流れで買われたものの、その後冷静な見直しが入り、いったん落ち着いたと解釈できます。
佐々木:もし9月に利下げがなかった場合、市場が大変なことになる可能性もあるということですね。
広木:利下げがない可能性について言えば、まだ残っていると思います。FedWatchでは8割の人が利下げを予測しているということは、2割の人は利下げがないと考えているわけです。
これらの数値は、今後のデータ、特に雇用統計の非農業部門雇用者数(ノンファームペイロールズ / Nonfarm Payrolls)によって変動する可能性があります。非農業部門雇用者数は前月からの増減のみを反映するため、予測が大きく外れることがあります。例えば、10万人から13万人の増加が見込まれていたのが、実際には7万人しか伸びなかったというケースや、過去に発表された大幅な伸びが、実際にはそれほどではなく、大幅に下方修正されることもあり、少々いい加減な側面があります。
説明が難しいのですが、1億6,000万人という巨大な数字に対して、わずか数万人増えるかどうかの世界というのは、0.05パーセント程度の変化に過ぎません。0.5パーセントではなく、さらに一桁小さい0.05パーセントです。1パーセントの200分の1で、非常に小さな数字です。
それが、0.07パーセント伸びると予想していたのが0.05パーセントしか伸びなかった、つまり誤差は0.02パーセントだ、というような話です。極めて小さな変化の世界で、簡単に上振れしたり下振れしたりするものです。そのような根拠に基づいて議論しても何も始まりません。
一方で、9月に発表される8月分の統計が、今度は反動で上振れする可能性は十分に考えられます。もしそうなれば、再び利下げの可否が議論され、相場に波乱が生じる可能性もあるのではと考えています。
米国利下げ観測と為替動向、日本株への影響
佐々木:みなさまのご質問にお答えしていきます。まず、アメリカが利下げするという前提ということで「もしアメリカ市場の期待どおりに利下げが行われた場合、日本株にはどのような影響がありますか?」というご質問です。
広木:これもまた難しい問題で、株価は利下げだけで決まるわけではありません。利下げは株式市場にとって追い風となるため、アメリカ市場においては株価が堅調に推移するか、あるいはすでに織り込み済みであるため一時的に利回りが発生するか、不透明ではあります。
もう1点は、アメリカが利下げした場合、為替を通じて日本株や銀行にどのような影響が出るかについてです。一般的には、アメリカの利下げはドル安の要因となり、それをきっかけに円高が進むのではと言われていますが、私は以前から「そうはならない」と言い続けています。
実際、パウエル議長の講演時も一時的に2円ほど円高に振れた(148円台から146円台)程度でした。その一時的な円高もすぐに収まり、週明けの東京市場では再び147円台に戻りました。したがって、パウエル議長の講演を受けて利下げ期待が高まったにもかかわらず、円高は進行していません。
この状況を考慮すると、日本株にとって懸念材料である円高を過度に気にする必要はなく、むしろ、利下げによるリスクオンムードと世界的な株価上昇の「良いとこ取り」で、しばらく推移する可能性も十分に考えられます。
日経平均の年内上値・下値シナリオ
佐々木:「日経平均株価の動向について、年内にどこまで上昇し、もし下落する場合にはどこまで下がると見ていますか?」というご質問です。
広木:今日の日経平均は4万3,000円を挟んで推移しましたが、現状、株価は上昇しており、何かしらショックがない限り、大きく下落する可能性は低いと見ています。瞬間的に4万2,000円を割る可能性はありますが、そこから下がる材料はなかなか見当たらないのが事実だと思います。
年内には4万4,000円、年末には年末特有の株高ムードで4万5,000円に到達する可能性も考えられます。したがって、上値が4万5,000円、下値が4万2,000円といったレンジだと考えています。
佐々木:「今週のマーケット展望」を読まれた方からも、「広木さんが予想されていたレンジの下限の4万2,000円を割り込んでくるようなリスクがあるとしたら、要因は何だと思いますか?」というご質問が来ています。
広木:今週注目すべきはNVIDIAの決算があります。終わった期はさておき、問題は10月までの見通しです。
もしNVIDIAが、例えば中国への製品輸出規制に絡んで業績見通しを下方修正するようなことがあれば、現在NVIDIA株はかなり高値で買われているため、一気に利益確定売りが出て相場が荒れる可能性があります。NVIDIAのガイダンスリスクによって株価が急落し、日経平均が4万2,000円を割り込む可能性は十分にあるでしょう。
米国株価の懸念材料は、企業業績の好調さにもかかわらず、常に割高なバリュエーションにあります。企業業績が良いことはすでに株価に織り込まれており、過度に買われすぎているため、バリュエーションの高さ自体が米国市場のリスクであり、いつ調整局面を迎えてもおかしくないと考えています。これは私が以前から言い続けてきているとおりです。
戦争長期化が支える防衛産業需要
佐々木:ロシアとウクライナの和平交渉について質問が来ています。「この交渉は成立が難しい状況ですが、もし戦争がさらに激化することになった場合、アメリカ株や日本株にはどのような影響が考えられるでしょうか?」というご質問です。
広木:あまり喜ばしいことではないですが、現在、世界の軍需産業が活況を呈しています。アメリカも同様ですが、ヨーロッパ株はほとんど軍需産業関連が買われています。
日本でも、防衛関連銘柄として三菱重工、IHI、川崎重工業などの株価が堅調です。日本には純粋な軍需産業はありませんが、これらの企業が防衛関連の思惑から強い動きを見せています。しかし、戦争が終結すれば、これらの銘柄にはいったん利益確定売りが入るものと考えられます。
日本の防衛関連銘柄は、ロシア・ウクライナ問題だけでなく、世界的な地政学リスクの高まり、特に日本が中国、北朝鮮、ロシアと日本海を挟んで接している地理的要因により、安全保障の重要性が増しています。
また、トランプ政権以降、アメリカが「世界の警察官」としての役割を縮小し、「自分のことは自分でやる」よう各国に促していることも、日本の防衛意識を高める一因です。同盟国であるアメリカが、今後もこれまで通り自国を守ってくれるとは限らないという見方も強まっています。
このような背景から、自己防衛への意識が高まり、防衛産業が注目されるようになってきたのは事実です。その一因としてロシア・ウクライナ戦争が挙げられますが、この戦争が終結すれば、防衛関連銘柄に対しては一時的に手仕舞い売りが出るきっかけになる可能性が高いでしょう。
皮肉なことではありますが、戦争が長引くほど、そうした銘柄は買われる傾向にあるのだと思います。そのような側面があるのも事実です。
石破支持率上昇と政治停滞が映す日本株の行方
佐々木:「国内政治に目を向けると、石破総理の支持率上昇は、素直に株価にとって追い風となりますか? 政治不安は払拭されたと言えるのでしょうか?」というご質問です。
広木:政治的な不安というよりも、石破氏の支持率上昇は、以前新聞が報じたような、日本人の判官贔屓(注釈:ほうがんびいき、立場が弱い者に同情し肩入れすること)のようなものですよね。そのため、石破氏が辞任すべきか否かといった感情的な議論が起こっていますが、政治家、特に首相であれば、感情論よりも実績で評価されるべきではないかと思います。
昨年の秋、9月の総裁選から1年が経とうとしていますが、この1年間、首相として一体何をしてこられたのかを問うべきです。日本の進路に関して言えば、トランプ大統領による対日関税を「国難」と捉えて、赤沢亮正氏を経済再生担当大臣として起用して交渉体制を整えました。
赤沢氏に関しては私も批判することがありましたが、結果的にはがんばったという評価になっています。シンプルに結果だけ見ると、日本が特別に優位な立場を築いたわけではなく、ある意味、自然体で世界標準の存在になったと考えることができます。赤沢氏自身は、日本とワシントンを頻繁に行き来し、ネットワークを構築するなどの努力をされたことと思います。赤沢氏が日本を世界標準に引き上げたという見方に対し、石破氏については「何もしていない」と見られても仕方がない状況です。
石破氏は国のリーダー、あるいは自民党総裁として、国民へのメッセージ発信、リーダーシップ、そして将来への期待を抱かせるような政策をまったく打ち出していません。衆参選挙で大敗したのも仕方ないと言えるほど、自民党の政策は無策でした。結果として野党、特に国民民主党と参政党の台頭を許し、日本の政治の先行きが混沌としている現状に対する責任は多少なりともあると思います。
この1年間、日米の通商交渉は活発でしたが、それを除けば政治的な空白期間だったと言えるでしょう。重要な経済政策をはじめ、何も前に進んでいません。選挙を前にしたばらまき政策(所得税減税、給付金など)や、途中から浮上した外国人問題など、この1年間の政治的な停滞は、私たち国民の経済や生活、社会の進展にまったく寄与していない印象です。
もちろん、そのすべての責任が首相にあるとは言えませんが、リーダーシップの欠如であり、日本という国を前に進める役割が果たせていない点で、及第点が与えられるものではないと考えます。このような政権が続いてしまうことが、日本にとってプラスになると思えないですね。
金融政策の限界と財政政策の必要性
佐々木:賃上げなど、経済政策に対する石破氏の具体的な方針が見えない中でのご質問です。「日銀の利上げはあると思いますか?」ということですが、いかがでしょうか?
広木:10月に日本銀行が利上げするのか、という点ですが、「日経サタデー ニュースの疑問」では、東短リサーチの加藤出さんが「するべきだ」という持論を展開されていました。私は「するべきではない」という意見で、両者の見解が異なりました。
このように「するべき論」でさえ意見が分かれるほどですし、実際に利上げが行われるかどうかは非常に難しい問題です。個人的には利上げは「するべきではない」と考えていますが、現在の市場のムードからは、利上げが行われる可能性も否定できないと感じています。
これも米国次第ですが、ジャクソンホール会議の結果を受け、9月のFOMCで米国が利下げを行う可能性が高いと見ています。この見方どおりに米国が利下げに踏み切れば、それに追随して日本銀行も利下げを行う可能性があります。これは円高を促進する意図がある、あるいは、それ以外に意味がないとも言えるでしょう。
日銀が金融政策を引き締める目的は、物価の安定にあります。安定と言うかは難しいですが、物価上昇は総合的には事実ですが、エネルギーと食料品を除くと1.6パーセントの上昇に過ぎず、大幅な上昇とは言えません。経済がデフレを脱却し、正常な状態になれば、1パーセント程度の物価上昇は当然のことですから、この程度の物価上昇で金融政策をどうこうする話にはならないと考えます。
しかし、世間では物価高で国民が苦しんでいるという認識があります。物価高の要因は食料品であり、金融引き締めによって国内の景気を冷やし、食料品の価格が下がるというものではありません。もしそこまでして景気を悪化させ、国民がお金を使わなくなり、食料品すら削るような状況になれば、需要を落として食料品の価格を下げることになりますが、そのような国民窮乏策は取るべきではありません。
直近の備蓄米の問題は特殊要因として、日本の食料自給率の低さから、食料品価格は輸入依存度が高く、輸入物価の上昇がそのまま反映されています。日銀の金融緩和政策による円安が輸入物価高騰の一因となっており、為替介入なしには食料インフレの沈静化は難しいでしょう。日銀が利上げしても、それが即座に円高につながるわけではありません。100歩譲って、日米金利差が為替に影響を与えるとしても、それは限定的だと考えています。
仮にアメリカが利下げし、間髪入れずに日銀が利上げした場合、その瞬間的に多少の円高になる可能性はありますが、日銀の利上げは何度もできるものではありません。一度利上げすれば、半年近くは次の利上げが難しくなり、その後の利上げのハードルも上がっていきます。日本の潜在成長率が低い現状を踏まえると、なおさらです。
先述のとおり、米国の雇用統計は変動しやすいものです。しかし、4.1パーセントから4.2パーセントへの変化は、安定した状態を示しています。パウエル議長も同様の見解を示しており、米国の労働市場が極端に悪化しているわけではありません。一方でインフレリスクが残る中、米国が積極的に利下げを進めるのは難しく、継続的に進めるかは疑問です。
となると、日銀の金利差だけで円高に誘導することには限界があります。では、日銀は何のために利上げをするのでしょうか? それは食料品価格を抑制するため、つまり円高にすることに他なりません。しかし、利上げによって本当に円高にできるのかが論点です。不確実性の高いその一点に賭けて利上げをすれば、多くの中小企業にとってマイナス要因となります。
仮にそれで円高になり、輸入物価が抑えられ食料品価格が安定したとしても、輸出に関わる中小企業はどうなるでしょうか? これらの企業の景況感がどうなるのかも考慮する必要があります。物価高に苦しむ国民のために利上げをするというような、一方的な金融政策は本当にいびつだと考えます。
金融政策には限界があり、今回のジャクソンホール会議でパウエル議長も指摘しているように、構造変化に対して金融政策ができることは極めて少ないのは当然のことです。そのような状況であれば、金融政策だけではなく、むしろ財政政策が重要となるでしょう。
教科書的には、インフレ対策は金融引き締めによる金融政策が基本です。しかし、今回は教科書的なインフレとは異なります。需要引き上げ型のインフレ(ディマンド・プル・インフレーション / Demand-pull Inflation)ではなく、海外からの輸入インフレによって原材料費が高騰しているため、日本の国内金融政策には限界があります。
そもそも、インフレで本当に困っている人がどれだけいるのか、という話でもあります。エンゲル係数が高いという人は低所得者層であり、彼らにとって食料品は収入の多くを占める必需品です。インフレは「貧しい人への税金」と言われるように、低所得者層ほどその影響に苦しみます。一方、富裕層はインフレによって株や不動産、ゴールドなどの資産価格が上昇するため、影響は限定的です。
となると、金利引き上げのようにすべての層に影響を及ぼす政策では、預金を多く持つ富裕層にとってはむしろ有利に働くことになります。このような状況で、インフレ対策として利上げは本当に有効なのでしょうか? 結局のところ、金融政策でできることには限りがあるため、財政政策の出番ではないか、という話になります。
給付金のように、財政政策であれば低所得者層へ的を絞った支援策が可能です。しかし、物価高に対して日銀が利上げで対応しようとするのは短絡的すぎると私は考えます。多くの視点が欠けており、あまりにも性急な議論です。
そうだとしても、日銀は利上げに踏み切るでしょう。彼らは利上げをしたがっており、利上げが目的化し、「利上げのための利上げ」が行われる、これこそが日本の不幸だと私は思います。
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