2026年3月期Q1 経営評価とサマリー

谷郷元昭氏(以下、谷郷):みなさま、本日は弊社決算説明会のためにお時間をいただき、ありがとうございます。本日の進行については、2026年3月期第1四半期決算概況、サービス分野別の事業展開、中期目標の達成に向けた今期施策の進捗の順にご説明します。

2026年3月期第1四半期の売上高は前年同期比50.1パーセント増の約96億円、営業利益は16.5パーセント増の約10億円となりました。この四半期は例年どおり季節性の影響があり、前四半期比では業績がやや落ち込みましたが、想定の範囲内で着地したと考えています。

トレーディングカードゲーム事業の規模拡大が寄与し、前年同期比では大幅な売上成長が見られました。一方で、米国関税の影響を受け、その他マーチャンダイジング商品のEC売上進捗には一時的な減速が見られます。

事業進展についてです。第1四半期はイベント数の少なさと前年度におけるタレント卒業の影響により、前四半期比では配信収益がやや調整されたものの、新興タレントの集客増や海外タレント向けのコンテンツの施策強化により、前年同期比では集客成長が続いています。

また、地方都市でのイベント開催や公式店舗のオープンを通じて、首都圏以外でもファンコミュニティの醸成を進めています。ライセンス分野では、グローバルで人気の高いモバイルゲームタイトルや海外地域における外食フランチャイズとのコラボ展開が進み、収益面とブランド認知の両面で拡大が進展しました。

投資の進捗等についてです。物流拠点の一元化を通じた納期短縮による顧客体験の改善と、コスト効率化を推進しています。テレビ向け制作スタジオなど、外部制作環境における表現技術の改善を進めることで、よりリッチな表現が可能になっています。

「ホロアース」ではタレント自身がアバターを用いてプレイできる環境整備を進めた結果、集客モメンタムが向上しました。

人員採用、再配置、登用に関わる制度改革を推進し、組織の効率化も着実に進んでいます。

決算ハイライト 2026年3月期Q1のサマリー

金子陽亮氏(以下、金子):ここからは業績の詳細についてご説明します。第1四半期業績の詳細はスライドのとおりです。マーチャンダイジング分野では、前年度第2四半期から売上計上が始まっている「hololive OFFICIAL CARD GAME」が第1四半期における前年度上乗せ分となり、同分野は前年同期比でプラス99.2パーセントと大きく成長しました。

一方で、表現技術やソフトウェアなどの研究開発、物流改善、海外事業開発に関する先行投資的支出が営業利益率を短期的には押し下げていますが、第1四半期は全体として前年同期比では増益となっています。

第2四半期にかけての展開については、スライド右下に記載のとおりです。まず、配信を中心とした夏季企画「ホロナツパラダイス」の実施により、夏季期間中のコンテンツ増、連動したイベントの実施、関連グッズの展開を予定しています。

イベント分野では、当社主催の中型国内コンサート2件の実施、さらに7月から12月にかけてのワールドコンサートツアーの実施を発表しています。

ゲーム関連では、7月に「AbemaTV」と共催の大型イベント「超超超超ゲーマーズ2」も実施しました。

マーチャンダイジング分野においては、米国関税の海外事業への影響が引き続き懸念される状況ですが、EC上での夏季企画に連動したグッズ販売やキャンペーンの実施を通じ、需要拡大を図っています。

トレーディングカードゲームでは、英語版の一般販売を開始します。

また、ライセンスやタイアップ分野においては、北米やアジアでの案件拡大により継続的な成長を見込んでいます。さらに、ドジャースとの大型コラボの実施を通じて、ブランド認知の拡大を企図しています。

売上・売上総利益の推移

売上及び売上総利益の推移はスライドのとおりです。各分野の売上には下半期に拡大しやすい季節性があり、第1四半期は例年、前四半期比で調整される傾向があります。

スタジオ運用の拡大などにより、粗利率は前年同期比でやや調整されているものの、第1四半期では相対的に収益性の低いイベント分野の売上構成が低下したため、前四半期比で粗利が改善する状況となっています。

売上原価・販管費の推移

原価及び販管費の推移はスライドに記載のとおりです。スタジオ運用に係るコンテンツ制作原価の上昇やライブコンサートの増加により、前年同期比で原価水準は上昇しています。

前年同期比での販管費率の上昇については、事業開発に係る人件費やソフトウェア償却費、海外拠点費などの固定費増が要因となっています。

限界利益・営業利益の推移

限界利益及び営業利益の推移はスライドに記載のとおりです。スタジオ運用の拡大やコンサートイベントの実施により、限界利益率は前年同期比で調整しました。一方で、収益性の高いトレーディングカードゲームの売上拡大により、限界利益水準は増加基調で推移しました。

表現技術やソフトウェアの研究開発、物流改善、海外事業開発等に関わる先行投資的支出が営業利益率を押し下げていますが、営業利益水準は前年同期比で増益しています。

事業分野別の進展 配信/コンテンツ

谷郷:サービス分野別の事業展開をご説明します。配信コンテンツ分野の進展についてです。配信収益は季節性や卒業タレントのYouTubeメンバーシップ収益減少の影響により、短期的には調整局面となっています。

一方で、新興タレントや海外タレントによるコンテンツの拡大が進み、持続的な成長を支えるヒットの再現性構築にも注力しています。

スライドの右側に示しているように、YouTube配信ではオンラインライブコンサート、「轟はじめ生誕祭2025」、大型ストーリーイベント「ENigmatic Recollection:The Chains of Fate」が実施されました。これらは、いずれも大きな同時接続数を記録し、SNSトレンドでの反響がありました。引き続き、ファンコミュニティの拡大とエンゲージメントの強化が期待されています。

事業分野別の進展 ライブ/イベント

ライブ・イベント分野の進展についてです。当社はライブコンサートでの新規演出手法を積極的に導入し、ファン体験価値の向上に取り組んでいます。これにより、ファンエンゲージメントの強化とブランド認知の促進を図り、今後の収益機会の拡大を目指しています。

5月に開催された猫又おかゆ 2nd Live「ぺるそにゃーりすぺくと」では、現地で8,000人超、配信で約1万人を集客し、当タレントのファーストライブ比で現地が410パーセント、配信が138パーセントと大きな成長を記録しました。

首都圏外でのコミュニティ形成を目的に、北海道、宮城県、埼玉県、愛知県、大阪府、福岡県の6都市でイベント「hololive SUPER EXPO 2025 後夜祭 ~bonus stage~」を展開しました。

このような試みにより、都内のイベントに足を運ぶことが難しい地方の若年層コミュニティの形成も推進しています。

事業分野別の進展 マーチャンダイジング

マーチャンダイジング分野の進展についてです。2025年6月から2026年春までの期間限定で「hololive production Official Shop in Osaka Umeda」の運営を開始しました。関西のファンとのリアルな接点作りを強化しており、好調な反響を得ています。

一方、第1四半期には米国関税の影響を受け、米国消費者からの単月EC売上が一時的に前年同期比で半数に落ち込む場面も見られました。足元では回復基調にありますが、今後も注意が必要な状況です。

マーチャンダイジング売上全体としては、グラフで示されているとおり、TCGの継続的な貢献により前四半期比でも高水準を維持しています。今後も通商政策の動向を注視しながら、北米向けECの展開など、持続的な事業成長に向けた施策を検討していきます。

マーチャンダイジング Q1におけるカード施策

カード関連施策の取り組みについてご説明します。通年を通じた店舗キャンペーンや大型トーナメント大会の開催が奏功し、プレイヤー数が継続的に増加しています。

第1四半期において、新商品売上が堅調に推移し、カード分野別売上は過去最大の四半期売上を更新しました。

4月から6月にかけては、複数の店頭イベントや「ホロカフェス2025」「ワールドグランプリ2025」などの大型大会を開催し、ユーザーの参加機会を拡大しました。

2024年度で最も販売数の多かった新規TCGシリーズとして、「hololive OFFICIAL CARD GAME」が「Media Create New TCG Award」を受賞しました。このシリーズは親しみやすく、敷居が低いルールに加え、人気VTuberを起用したキャラクターグッズとTCGの相性の良さが評価されています。

7月から英語版の販売を開始し、北米を中心とする海外市場への展開が本格化しています。第2四半期以降は、海外イベントを通じてさらなる普及拡大を見込んでいます。

事業分野別の進展 ライセンス/タイアップ

ライセンス及びタイアップ分野の進展についてご説明します。当分野では、ライセンシー経由でのフィギュア販売が引き続き好調で、グローバルな需要の高まりを背景に、再販も続いており、安定的な収益拡大に寄与しています。また、5月にはライセンシー11社が参加する「hololive FIGURE EXHIBITION」が開催され、堅調な販売が継続しています。

海外での認知拡大施策として、Netease社のモバイルゲーム「荒野行動」とのインゲームコラボを実施しています。グローバル展開タイトルとの連携により、新規ファンの獲得と海外でのブランド認知向上に貢献しています。

売上推移を見ると、第1四半期は11億8,000万円で、前四半期からは季節性の影響により調整されていますが、前年同期比では高水準を維持しています。今後も国内外のタイアップ施策を通じた安定成長が期待されています。

中期目標の達成に向けた事業拡大の進捗状況

中期目標の達成に向けた今期施策の進捗についてご説明します。こちらのスライドでは、中期目標の進捗状況を成長ドライバーごとに整理しています。

1つ目の「共創によるコンテンツ供給の強化」では、大型ゲーム大会「獅白杯3rd」が実施され、恒例イベントとなっています。今回は有名ストリーマーや複数のスポンサーを巻き込み、カプコン社の公式コラボによって延べ同時接続数10万人以上を記録する成果を上げました。

簡易モーションキャプチャ技術の研究開発が進み、スタジオのキャパシティに縛られないタレント活動の多様化に向けた技術が進捗しています。

TVアニメ「機動戦士Gundam GQuuuuuuX」のエンディングテーマ歌唱や「2025大阪・関西万博」への出演などを通じて、ブランド認知拡大が加速しています。

2つ目の「グローバル収益基盤の確立」では、北米現地ECの開発に向けた協業スキームの構築が進行中です。また、海外営業の拡充により、ライセンス及びタイアップ分野の海外取引社数は前年同期比で60パーセント以上の増加となりました。

5月にはラスベガスで開催された「Licensing Expo」に参加し、3日間で130件超の商談を実施しました。これにより、北米での外食系大型コラボレーションにもつながっています。

東アジア圏のゲーム企業との連携により、現地市場でのブランド認知拡大も進展しています。

3つ目の「新規事業領域の収益拡大」では、英語版TCGの7月の一般販売に向けた商品の製造流通が始まっています。今後は2ヶ月から3ヶ月ごとに新商品を投入し、ティーチングイベントや大会施策を通じて、欧米・アジアでのプレイヤー数拡大を目指します。

ゲーム分野では「holo indie」ブランドや、他社とのライセンス協業によるタイトルのNintendo Switchでの展開も開始されました。

「ホロアース」では、タレントが自身のアバターを通じてファンと交流できるようになるなど、体験価値の向上が進んでいます。

4つ目の「人的資本の高度活用」では、採用強化や部門間の異動、新規採用に関する社内ルールの見直しが進められているほか、組織運営や人材評価制度の見直しに向けて、引き続き課題の棚卸しと中長期的な最適配置が進められています。

先行投資的支出に係る進捗状況 表現技術等の技術開発

表現技術分野における先行投資の進捗についてご説明します。まず、大規模な設備を必要としない簡易モーションキャプチャ技術の活用が進んでいます。これにより、テレビ番組の撮影現場等の外部環境でのVTuber支援や、他の出演者との双方向コミュニケーションが可能となりました。

大規模スタジオのキャパシティに縛られず、簡易的な設備での撮影が可能となることで、タレントに対してより多くの3Dコンテンツ制作機会をコスト効率的に提供することが可能です。

並行して、「UNREAL ENGINE」を活用したバーチャルライブの高度表現技術の研究も継続的に行っています。カメラの露出や時間帯による演出の変化をリアルタイムで反映し、没入感と実在感のあるバーチャルライブ空間を構築することが可能です。

高度モーションキャプチャ設備や企画・開発・制作・オペレーションを一貫して行える組織体制といった会社資産を活用することで、このような前例のないプロジェクトも短期間で実現することが可能となっています。

先行投資的支出に係る進捗状況 物流関連

物流領域における先行投資の進捗状況についてご説明します。当社はトランスコスモス社と協力し、6月から新たな物流センターの本格運用を開始しました。

これは、これまで複数に分散していた倉庫拠点を集約するものであり、VTuberの人気拡大に伴い増加・多様化する商品取り扱い量に対応するための重要な転換点となります。この取り組みにより、在庫管理や入出荷オペレーションの柔軟性が向上し、データと商品フローの単純化・可視化が進みます。

結果として、サプライチェーン全体の効率化と品質管理の強化が図られ、将来の事業成長に備えた基盤強化とコスト削減が可能となります。

先行投資的支出に係る進捗状況 ホロアース

スライドは、「ホロアース」における先行投資の進捗状況についてのご説明です。2025年6月下旬より、タレント自身が自らのアバターで「ホロアース」にログインする企画を実施しました。

こちらは、ユーザーとタレントが同じ3D空間内で直接触れ合える体験を提供するもので、他のプラットフォームにはない独自のファンエンゲージメント施策として機能しています。

この取り組みは、ユーザーによるUGC制作の増加を促進し、ユーザー体験の質的向上に貢献しています。その結果、コミュニティ全体の熱量や継続参加意欲を高める構造が形成されつつあります。

「ホロアース」は、タレントとファンが共に作る体験の価値をより一層高める場として、今後も開発と実装を進めていきます。

経営構造改革その他の進捗

スライドは、経営構造改革等に関する第1四半期時点での主な取り組みについてのご報告です。まず、「人事制度及び組織体制の見直し」として、4月からの新しい執行役員体制のもと、部門間連携を強化するための組織改編を実施しました。あわせて、評価制度・採用・登用・異動フローの整備など、人的資本戦略の強化を進めています。

「タレントサポート強化」においては、個別面談やグループ面談、タウンホール・ミーティングを継続的に実施し、タレントとのコミュニケーション内容を踏まえたサポート体制の構築や課題解決、オペレーション改善を進めています。

「コスト最適化」では、SaaSやPC機器などの棚卸及びコストの見直しにより、第1四半期時点で2,500万円を削減し、年間で7,000万円規模の改善効果を見込んでいます。また、発注管理フローを強化することで、仕入・製造原価の最適化も図っていきます。

「プロジェクト・ガバナンスの強化」では、プロジェクト単位での進捗管理体制を強化するとともに、戦略の進捗に応じた柔軟なリソース再配分を目指した仕組みの構築に取り組んでいきます。ご説明は以上です。

質疑応答:利益進捗と先行投資費用の消化状況について

質問者:利益の進捗についてのご質問です。第1四半期は想定の範囲内の着地とおっしゃっていましたが、上期の計画から第1四半期の実績を引くと、第2四半期は約40パーセントの減益という計画になっています。第2四半期はイベントの数も多いため、少し保守的な計画だと感じています。米国の関税影響などによるリスクを踏まえて、保守的に設定されているのかについて教えてください。

また、先行投資の費用について、今期は31億円の予算があるとのことですが、可能であれば消化率も教えてください。

金子:ありがとうございます。利益進捗について、今回の決算説明でも米国の関税を含む通商政策に言及していますが、短期的にはマーチャンダイジングの動向が読みづらい状況にあり、ガイダンスが保守的すぎるとまでは言い切れないと考えています。

31億円の先行投資の消化状況についてですが、4月は季節的に日本の労働市場への人員の流入が多くなる時期であるなどの季節性要因もある一方で、先行投資の内訳としてはソフトウェアの償却費が多い状況です。そのため、四半期ごとに平均的に消化する進捗であり、31億円の約4分の1が消化された状況であると考えています。

質疑応答:トレーディングカードの需給バランスについて

質問者:トレーディングカードの状況についてです。今回は売上高が20億円近くとなり、おそらく前回の第4四半期と比較して約40パーセント伸びており、非常に順調だと思います。

再販等も行っているため、買いやすくなってきたかと思いますが、現在の需給バランスや販売拡大についてはどのようにお考えでしょうか? 生産ボリュームをさらに上げる余地があるような需給状況なのか教えてください。また、海外版も発売されましたが、この規模感についても可能な範囲で教えていただけると幸いです。

金子:現状の需給バランスは、需要に対して少しずつ供給量を上げてきており、拡大が進んでいる状況かと思います。ただし、発売からまだ1年程度のトレーディングカードゲームシリーズということもあり、短期的に大幅な供給増加の決断には至っていない状況です。プレイヤー数の増加と商品の普及については、状況を観察しながら慎重に進捗させていく方針です。

海外版に関しては、日本版のキャンペーンと同様に海外のプレイヤー数を増やすためのキャンペーンを徐々に進めている状況です。7月時点では北米のアニメコンベンションで試遊会を実施するなど、段階的にキャンペーンを開始しています。ただし、現在の海外版の配荷のロットはあくまで試験的なものにとどまっている状況です。

質疑応答:タレントサポート強化の効果と課題について

質問者:タレントサポート強化の効果についてです。谷郷社長がタレントとのコミュニケーションを強化されてから数ヶ月が経過したかと思います。その中で見えてきた課題や、タレント活動に対する好影響、手応えなどがありましたら教えてください。

今年度に入ってからソロで行うライブ活動も増えていますが、タレントからの意見を吸い上げた結果、このような活動につながっているのではないかと思っています。なにか成果などがありましたら教えてください。

谷郷:タレントサポート強化としては、タレントのみなさまにとってスタジオの活用や日々の配信活動がメインとなっている中で、このような活動面において、例えば不要なルールを緩和するなど、細かな改善が足元で行われている状況かと思います。

質疑応答:北米の関税影響について

質問者:マーチャンダイジング分野の北米における関税の影響についてです。実際にどの程度影響が出ていたのか、試算があれば教えてください。

イメージとしては、この4月から6月の売上に顕在化したということなのか、6月末の前受金として反映され、7月から9月にも影響が残るということなのでしょうか。このあたりの影響について補足いただけると幸いです。

金子:5月は関税の先行きが読みづらかった時期で、買い控えが顕在化していた状況でした。その結果、北米の売上が単月で半減していた月もありました。

数億円程度の影響があったと見ていますが、その影響は商品性により異なります。早くお届けできる短納期の商品に対する影響と、受注してから3ヶ月から6ヶ月後に売上として顕在化する受注商品における影響の両方が見られた状況でした。

現在、関税の先行きは少し改善され、状況はじりじりと回復してきています。しかし、第2四半期以降も一定の影響が残ると見ており、引き続き注視が必要な状況です。

質問者:4月から6月では、数億円前半程度ということでしょうか?

金子:おっしゃるとおりです。そのようなイメージかと思います。

質疑応答:配信コンテンツ分野の増収ペースと新規ファン獲得の基調について

質問者:配信コンテンツ分野の増収ペースについてです。第1四半期には卒業タレントの影響があったということですが、それを除いたベースで見た場合、このモメンタムに変化があるかどうかを教えてください。特に、新しいファン層の獲得状況に基調の変化が見られるかどうか、あらためて確認させてください。

金子:視聴者のアクティブ数については、前年同期比やサードパーティの調査資料で示された市場シェアを見ても、悪くない状況だと考えています。

新規タレントや海外タレントもしっかりと成長しており、ヒットの再現性を持たせることで、今年度及び来年度以降の成長を構築していくことが、会社として注力するポイントだと思います。

卒業したタレントの短期的な影響や、新規タレントが成長するまでの過程については、注意深く観察を続ける必要がある状況かと思います。

質疑応答:モバイルアプリゲーム「DREAMS」のアップデートについて

質問者:現状進めているモバイルアプリゲーム「DREAMS」のアップデートについてです。ローンチに向けた時間軸に変わりがないのか、またファン拡大に向けた期待値をどのように見ているのか、お聞かせください。

金子:「DREAMS」については、時期についてハードコミットはしづらいのですが、来年度を目指していることに変わりありません。

ゲーム系の事業においては、大型イベントの実施や、これまで順次リリースしてきた「holo indie」の施策、中型ライセンス系のゲームデベロッパーとの開発案件がNintendo Switchに移植されてリリースされるなど、注目が非常に高まっている状況です。

こうした動向を踏まえると、「ホロライブ」のタレントがゲームという媒体に対して持つ送客力の大きさや、ゲームを通じて消費者の目に触れることで「ホロライブ」のタレントたちに顧客が還流していく効果については、引き続き高い期待感を持って見ています。

質疑応答:売上成長要因について

質問者:売上が50パーセント近く伸びていますが、客数、客単価、購買回数別ではどのように伸びているかについてご説明をお願いします。

金子:客数は、小売店の展開やカードゲームの展開、販売チャネルや商品性の多様化によって、総数としては引き続き伸びている状況だと思います。

客単価については、大きな変動はない状況かと思いますが、足元では関税や為替の影響によって、海外分が外的要因によってボラタイルになっている状況です。

購買頻度については、販売チャネルや商品の多様化に伴って増加傾向にあると考えています。

質疑応答:海外の売上比率の状況について

質問者:海外の売上比率はどのような状況でしょうか?

金子:もともと、EC全体に占める海外売上の比率は約3割でしたが、4月から6月は通商政策の影響でやや下押しされました。

質疑応答:顧客属性の動向について

質問者:顧客属性についてです。性別や年代で、特に伸びている層や特徴があれば教えてください。

金子:現状は、若年層から、エンタメ消費者層としては比較的年齢層が高い部類の方まで、全年齢層に広がってきている状況かと思います。

特に新興のタレントの中で、女性や若年層の集客獲得に明示的に強いタレントが出てきており、これまで存在しなかったファン層へのリーチも進んでいるという印象です。

質疑応答:トレーディングカードの年間売上イメージと成長性について

質問者:トレーディングカードの売上が第1四半期で20億円近くに達しており、単純に4倍すれば80億円、さらに海外の売上も加わると100億円という数字も見えてくるように思われます。この点に関して、年間トレーディングカードの売上のイメージ、及び来期以降の成長性について教えてください。

金子:もともと、期初時点での予算設定では、売上を40億円から50億円と見込んでいましたが、これを上回る可能性が出てきていると思います。拡張パックの販売数は伸びている状況ではありますが、1Qではそのほかのスターターデッキや海外版のキャンペーンでの出荷分なども含まれており、必ずしもこの進捗で進むわけではなく、先の回答と合わせて、プレイヤー数の伸びや小売店の需給バランスを見ながら、期初予算をベースにもう少し積んでいくような見通しを持っています。

質疑応答:「ホロアース」の収益寄与について

質問者:「ホロアース」が収益に寄与し始める状況について、来期以降の見通しも含めて、今期の売上への影響について教えてください。

金子:SNSでのメンション数が明示的に増加しているほか、足元で実施しているマーケットプレイス機能や、タレントが実際に自身のアバターを用いてログインする等の施策などを受けて、プロダクトマーケットフィットは徐々に確認されてきている状況だと思います。

ただし、今期についてはまだ猛烈にマネタイズを進めるフェーズには至っていないと考えています。

質疑応答:VTuber市場の動向について

質問者:VTuber市場の動向について、社長が想定されているものと比較して、最近の状況についてどのように見ていますか? 御社の競争優位性は、引き続き維持できるという理解でよろしいですか?

谷郷:グローバル市場として捉えた場合、日本、東南アジア、北米圏などが現在ホットな領域であると認識しています。また、我々は北米圏でも安定的に視聴者を獲得している状況です。私も「Anime Expo」に行って同人誌コーナーを見てきましたが、残念ながら、国内VTuberのカテゴリでは我々の会社以外のコンテンツはほとんど見かけなかったという認識です。これは我々の強みであると思います。 引き続き、例えば北米圏でも、従来型のアニメファン層の市場が存在しているとの認識です。今後も、グローバル展開を強みにしてビジネスを進めたいと考えています。

質疑応答:配信の売上・視聴時間の動向について

質問者:配信の売上及び総視聴時間の動向についておうかがいします。サードパーティのデータを見る限り、季節性の要因もあるかもしれませんが、足元の視聴時間の伸びがやや弱いように感じています。その点について、御社の受け止め方はどのようになっているかおうかがいできればと思います。

金子:視聴時間については、短期的には配信を行うタレント数やアクティブに配信を行うタレントの動向に影響を受けています。また、おっしゃるとおり、季節性の影響も毎年あり、フェスを開催している第4四半期から、それらがない第1四半期にかけては少しトラフィックが弱まりやすい状況だと考えています。

現在の状況は、前年同期比で見てもそれほど不健康な状態ではないと判断していますが、今後は消費者動向を注意深く観察しつつ、コンテンツ供給の強化をさらに進めていく必要があると思います。

質問者:確認ですが、IP価値の上昇やファンの獲得ペースが鈍化していることについては、現時点ではそれほど意識する必要はないという状況でしょうか?

金子:四半期ごとの動向は季節性の影響を受けることもあり、第4四半期と第1四半期を比較するような文脈では、評価が難しい部分があります。ただ、長期的なトレンドの中では、大きく不健康な状況ではないと考えています。

質疑応答:大阪の店舗の業績インパクト、北米EC展開の時間軸について

質問者:マーチャンダイジングに関する質問です。大阪のストアが好調というお話がありましたが、具体的にどの程度業績に貢献しそうですか? また、北米のEC展開の時間軸についても教えてください。

金子:売上規模は、東京駅の地下で行っているポップアップショップと同等程度の売上モメンタムが得られているという報告を現場から受けています。

北米ECのスケジュール感については、大規模な開発が着実に進んでいるものの、今年度中のオープンは難しいと思っています。そのため、具体的な時期についてはコミットしづらいのですが、来年度を目指して進めている状況です。

質疑応答:表現技術への投資について

質問者:表現技術への投資についてです。御社の表現技術は同業他社と比べて優れていると感じています。しかし、ゲーム産業などを見ても、一定水準を超えると表現技術への投資は投資効率が若干下がるように見受けられます。この点について、差別化等も含めて、継続的に投資が必要な分野とお考えなのかを教えていただければと思います。

谷郷:いわゆる高クオリティ化を目指しているというよりも、軽いフットワークでコンテンツを制作できるような体制作りに力点を置いているというかたちでご理解いただければと思います。

当社は大型スタジオを構えたことで、1回の配信にかかる費用が上昇し、テレビ局化が進んだ結果、おもしろいコンテンツを生み出す際の投資が大きくなり、きわめて非効率な状態に陥っていました。そのため、もっと気軽にコンテンツを追加できる体制構築を進めています。

一方で、「UNREAL ENGINE」に関しては、クオリティ向上を目的にしていることは確かですが、新しいことに挑戦しやすいフットワークの軽さを実現するという切り口で進めています。

質疑応答:「VShojo」事業閉鎖の影響について

質問者:7月末の「VShojo」の事業閉鎖の影響は、御社にとってどのようなものが考えられますか?

谷郷:特段インパクトはないという認識です。

金子:北米のVTuber市場は、インディーズの方々を中心に非常に幅広い参加者がいる状況です。その中で、大きなマーケットにおける1つのプレイヤーとして「VShojo」が存在していましたが、直接の数値的なインパクトについては、あまりない状況です。

質疑応答:タレントの発掘及び育成戦略について

質問者:タレントの発掘及び育成の戦略についてです。以前、数名のタレントの卒業がありましたが、今後、新たなタレントの育成をどのように進めていくのか、御社の戦略を教えてください。

谷郷:当社では通常どおりインターネット上でオーディションを行い、その中で有力な候補者をタレント候補としてお迎えした後、一定のトレーニングを経て、デビューしていただくという流れで進めています。現状、この戦略に特段の変更はない状況です。

質疑応答:タレントの獲得について

質問者:中長期的な目標としている所属タレント数があれば教えてください。また、タレントの獲得競争が激化しているかどうかについてもおうかがいできればと思います。

谷郷:所属タレント数については、特に目標数を掲げていません。タレントの数が増えすぎて、かえってサポート体制が整わない場合のことを考えると、むしろ多少少ないくらいのほうが適切に成長できるという認識です。

また、現時点で、タレントの獲得競争の激化についてはそれほど感じていない状況です。

質疑応答:海外TCGの本格的な業績寄与時期と販売戦略について

質問者:海外TCGについてです。こちらの販売を開始されたところですが、本格的に業績に寄与していく時期について教えてください。

日本と同様の戦略やスケジュール感で進めるのかについてもおうかがいしたいと思います。さらに、海外売上の期ずれなどが発生する可能性があれば、その点についても教えてください。

金子:海外TCGに関しては、キャンペーンなどを徐々に展開し、プレイヤーの数を増加させるフェーズにあると考えています。本格的な収益寄与には半年以上はかかるのではないかと見込んでいます。

例えば、北米でのカードゲーム市場におけるカードの供給についてですが、日本のように都市部にカードショップが密集しているというよりは、プレイヤーがカードを楽しむ場がかなり離れた場所に散在している状況です。

また、消費者のカードの楽しみ方も、市場自体は大きいものの、日本とは少し様相が異なる部分があります。そのため、研究を重ねながら、カード供給を拡充しているところです。

カードの海外版の収益計上のずれについては、大きく異なるわけではありませんが、ホールセラーの買い受けのタイミングが日本よりも少し先行しているといったずれは、確かにあります。

ただし、それは財務やIR上で大きく懸念される状況ではありません。例えば7月に、アニメコンベンションで英語版のカードの先行販売をキャンペーンとして実施していますが、その際のカード売上は僅少ながらも第1四半期に計上されています。

質問者:少し早めに出るということでしょうか?

金子:おっしゃるとおりです。ただし、僅少額ですので、大勢に影響を与えるような状況ではなく、このようなサイクルで運営していくという状況です。

供給のペースについては、日本語版が四半期ごとに定期的に供給される中で、英語版はそのペースに少しずつキャッチアップするかたちで進めています。そのあたりが日本語版とは少し異なる部分ではないでしょうか。

質疑応答:「ホロアース」の集客期待値とスケジュール感について

質問者:「ホロアース」についてです。売上については理解しましたが、いわゆる集客の期待値やスケジュール感について、計画と実際の差異がどのように発生しているのか教えてください。

金子:財務上の計画値はやや上回って推移しています。ただし、もっと長期を見据えた集客のプロダクトマーケットフィットを図る指標では、今年の目標KPIというより、来年や再来年を見越したより早いペースを社内でストレッチ目標として置いている状況です。そのため、現状ではまだ満足できる数字ではないというイメージです。

質疑応答:海外のTCG市場での注力ポイントについて

質問者:海外のTCGにおける注力ポイントについてです。ティッピングポイントとなり得る要素は、KPIのような定量的なものなのでしょうか。それとも、ユーザーの盛り上がりといった定性的なものなのでしょうか。この点について教えてください。

金子:重要なのは、やはりプレイヤーの数です。ちゃんと遊んでくれる人たちが英語版の経済圏でも多く存在している状況を作るということが大切だと考えています。例えば、大会での参加者の集まりなどを観察しています。

最終消費者の数については、業界的に電子的な数値を正確に把握するのが難しいため、グロースマーケットボリュームを消費者単価で割るようなかたちで疑似的に推定することが、トレーディングカードゲームのサードパーティのレポートでも慣例となっているように見受けられます。当社のTCGはまだ市場形成期にあるためそのような推定を行いづらい状況です。

質疑応答:第1四半期から第2四半期以降にかけての関税影響の変化について

質問者:第1四半期の関税の影響についてです。第2四半期以降は税率が変わっています。この点について、なにかガイダンスをいただけますでしょうか?

金子:一時期、中国生産品の対米輸出に対して相当高い関税が示唆される状況がありました。その影響で、一部のフィギュアメーカーが北米向けの輸出を差し控えたり、顧客の買い控えが短期的に見られたりしたのが春頃の状況だったと思います。

それに比べると、現在、中国生産品に対して設定されている関税はかなり緩和されたと言えると思います。しかし、国内生産品の対米輸出なども含め、1年から2年前と比べるとやや高い関税が設定されているのは事実です。そのため、どれだけ顧客がついてきてくれるかについては、引き続き観察が必要なフェーズだと思います。緩やかに回復はしているものの、予断を許さない状況かと思います。

質問者:では、関税率が少し下がったものの、まだ足元では影響は残っているというイメージで捉えておけばよろしいですか?

金子:おっしゃるとおりです。