目次
芥川裕氏:代表執行役専務の芥川です。目次に沿って、2025年度第1四半期の決算について簡単にご説明します。
A-1:2025年度第1四半期業績
2025年度第1四半期の業績についてご説明します。売上高は2,449億円、営業損益は198億円、経常損益は216億円、親会社株主に帰属する四半期純損益は299億円であり、前年同期比で減収減益となりました。
第1四半期の為替レートは145円32銭で、昨年の約155円と比較すると約10円の円高となりました。バンカーの価格は550ドルで、前年同期比で若干下がりました。
セグメント別の状況については次のページでご説明しますが、主に為替の影響と第1四半期におけるドライバルク市況の低迷があり、営業損益は前年同期比で減益となりました。
また、経常損益については、営業損益の減少に加えて、コンテナ船事業におけるOCEAN NETWORK EXPRESS(ONE社)の損益が持分法の損益として反映されています。特に第1四半期では、前年同期比で平均運賃が下がったことが収益の減少につながり、当社の経常損益も減益となりました。
当期利益は、保有船舶及び株式の一部売却により特別利益を計上し、299億円となりました。
スライド左下の財務指標については、3月末から大きな変動がないため、ご説明は割愛します。
A-2:セグメント別第1四半期業績
セグメント別の損益についてご説明します。今年度から為替差損益のセグメントへの配賦方法を変更しました。
主に外貨建ての債権債務のうち、各事業部門に紐付かないものについての為替差損益は、前年度までは一定のロジックに基づき各事業部門に配賦していましたが、今年度から本部で認識するという手法に変更しています。
今回比較対象として示した前年同期の数字は、「今年度と同じ手法にしたら」という表記に置き換えています。同じベースで比較を行うと、このようになるという内容を掲載しているものです。
ドライバルクセグメントに関しては、前年同期比で見ると、大型船の市況は6月に一時的に上昇したものの、貨物の積地での事故や争議といった影響により、マーケット全般があまり良くありませんでした。また、中・小型船についても、石炭や穀物の荷動きがあまり良くなく、市況が盛り上がらない結果となりました。
このため、ドライバルクセグメント全体では、円高の影響、市況の影響、さらに積地での事故や争議による当社ビジネス上の影響が重なり、経常損益はマイナス5億円となりました。
エネルギー資源セグメントについては、比較的長期の契約が多いため、損益の変動はあまりありません。しかし、前年度は第1四半期に一過性の損失がありましたが、今年度はそれが剥落し、前年同期比でプラスになっているとご理解ください。
製品物流セグメントについては、今回から自動車船事業の損益を内数として個別に開示しています。
自動車船事業については、米国向けの自動車輸出に追加関税が発動されたものの、米国に限らず世界各国の需要が比較的堅調だったため、輸送需要は全体的に堅調に推移しました。その結果、利益水準は高い水準を維持することができました。ただし、為替が円高に推移した影響で、収入と利益のいずれも前年同期比では減少しました。
コンテナ船事業については、関税発動前の駆け込み需要を含めてONE社の輸送量は前年同期比で微増でしたが、運賃の下落により利益が減少し、前年同期比で大幅な減益となりました。
これら2つの事業を除く製品物流の物流・港湾事業、近海・内航事業では、第1四半期では関税の影響があまりなく、取扱量も総じて堅調に推移し、増益で着地しました。
B-1:2025年度通期業績予想及び変動要素
今年度の業績予想について、アップデートした内容をご説明します。米国の関税政策については、中国が継続交渉中である一方、日本、EU、韓国、台湾等は税率について概ね合意に至っています。
ただし、この影響が今後の実体経済や、特に当社における荷動きにどのような影響を及ぼすかについて、先行きを見通すのが難しい状況が継続しています。影響の度合いやタイミングなど、見通しが難しい中ではありますが、現時点の当社としての予測を踏まえて、今回の数字をアップデートしました。
まず、この数字の前提となる事項についていくつか説明します。スライドにも記載のとおり、スエズ運河の通航再開は今年度中には見通せない状況であるため、今年度はスエズ運河を通航しないという前提を置いています。
また、関税の影響については次のスライドで詳しく説明しますが、主にコンテナ船事業と自動車船事業に関するもので、一定の影響を当社としての試算に基づき織り込んでいます。
USTRによる対中国対抗措置としての入港税は10月から予定されていますが、収支には織り込んでいません。
為替レートは1ドル141円73銭を採用していて、今月以降、1ドル140円という前提で作成しています。バンカー価格は566ドルです。
市況や見通しについてはAppendixに記載していますが、ドライバルクなどの市況の前提は期初からほとんど変更していません。
これらを前提とした通期の業績ですが、売上高は9,680億円、営業損益は900億円、経常損益は1,200億円、親会社株主に帰属する当期純損益は1,150億円と今回変更しています。5月に公表した内容と比較すると、営業損益が100億円増加し、経常損益と当期純損益がそれぞれ150億円増加しています。
収益への影響としては、為替がドルで1円動くとプラスマイナス16億円、バンカーが10ドル動くと2,000万円の影響があるとしています。
還元等については後ほどご説明しますが、5月に公表した内容から変更はありません。
B-2:2025年度収支比較(2025年5月公表比)
スライドでは、関税影響を中心に、今年度の業績について期初からの変化を比較しています。期初の段階において、スライド左端は関税影響考慮前の業績見通しで、経常利益1,350億円としていました。
これに対して、関税影響として自営事業(主に自動車船)で135億円、コンテナ船事業で165億円、合計300億円の影響があるという試算に基づき、期初の経常利益予想として1,050億円を開示しました。
自動車船についてはこの後ご説明しますが、その後、足元で影響があまり出ていないため関税影響に100億円のプラス修正を加えています。また、コンテナ船はONE社の予想に基づいて、通期の最終損益を7億ドルとする前提で修正を行った結果、20億円のプラスとしました。
さらに、主に為替を要因として、自営事業で30億円のプラスが見込めることから、通期では期初予想から150億円増益の1,200億円の経常利益を見込んでいます。
B-3:セグメント別通期業績予想
セグメント別通期業績予想については、5月に設定した第2四半期以降のドライバルクや油槽船の市況の前提は変更していません。
ドライバルクについては、前年度との比較で為替の影響が大きいこと、第1四半期は市況の影響を受けたことが挙げられます。また、第1四半期における積地での事故や争議、特にギニア周辺での配船による影響もありました。その結果、期初の見通しからは減益になる見込みです。
エネルギー資源については、中長期の契約が多いことから、収益は安定しているとご理解ください。なお、前年度には一過性の損失がありましたが、今年度はそれが剥落するため増益となる見込みです。
次に、製品物流の中の自動車船についてです。関税に関しては、一時25パーセントとされましたが、15パーセントで決着したことを受け、関税影響を修正しました。期初の段階では、北米向け貨物が3割ほど減少するのではないかと見通していましたが、足元ではほとんど影響がない状況です。
上期については、ごくわずかな影響しか見込んでおらず、下期では当初30パーセント減と見ていましたが、15パーセント減に修正しました。その結果、期初予想から自動車船の収益見通しを120億円上方修正しています。
また、コンテナ船については、後半のONE社のスライドをご参照ください。当社のONE社からの持分法による取り込み利益を見直しました。
ONE社は、期初時点で関税の影響を織り込まない段階で約11億ドルという見通しを立てていましたが、当社は貨物減少や運賃市況の下落などの影響を考慮し、約7億ドル弱の見通しとしていました。今回、ONE社では通期見通しを7億ドルとアップデートしていて、これに基づき当社の取り込み利益も修正した次第です。
製品物流セグメントのその他の事業については、5月の公表から大きな変更はありません。
C-1:【資本政策】資本政策の進捗と企業価値向上に向けて
中期経営計画の状況・進捗についてご説明します。期初のご説明から大きな変更はありませんが、「稼ぐ力」の部分に関しては、今年度の経常利益見込みが期初から150億円増加し、1,200億円となりました。
営業キャッシュフローと投資キャッシュフローについては、期初のご説明どおり、営業キャッシュフローが1.5兆円、投資キャッシュフローが6,100億円としており、足元では数値に変更ありません。
株主還元については、当社は従来から最適資本構成を常に意識し、企業価値向上に必要な投資や財務健全性を確保した上で、適正資本を超える部分についてキャッシュフローを踏まえ、積極的に株主還元を検討する方針を堅持しています。この考え方に基づき、今後も進めていきます。
5月時点で、中期経営計画期間の還元総額を8,000億円以上と示しました。今年度の配当については1株当たり120円、来年度については1株当たり100円と公表していますが、この見通しに変更はありません。
また、5月の時点で、以前と比較して500億円以上の機動的な追加還元をご説明していましたが、足元の事業環境を踏まえ引き続き検討中です。手法や時期については、引き続き検討している段階だとご理解ください。
企業価値向上に向けた課題として、現状PBRが0.8倍前後という水準であり、PBRをしっかりと改善していくことが、当社にとって資本政策上の最大の課題だと認識しています。当社の強みを十分に活かし、成長していく姿をしっかりと示すことができるよう、現在検討を進めています。
C-2:【資本政策】株主還元政策
株主還元政策について、年間配当は、今年度は1株当たり120円、来年度は1株当たり100円を予定していて、現時点では変更ありません。
500億円以上の機動的な追加還元についても、なるべく早いタイミングでお知らせできるよう検討を進めています。
C-3:事業環境の変化
事業環境の変化について、地政学や世界経済、エネルギー・環境政策に関しては、特に地政学と世界経済において、当社のビジネスに影響を与える事象が同時並行的に発生していると認識しています。
具体的には、米国の関税通商政策、中国の景気の問題、中東情勢など、いずれも当社のビジネスにとって、どちらかというと下押し圧力が強い要因となっています。
また、これらの先行きについては不確実性や不透明性が非常に高いため、当社としてはこれらの状況をしっかりと見極めつつ、適時・適切な対応ができるよう努めていかなければならないと考えています。
エネルギー・環境政策については、脱炭素の流れそのものは変わっていないと考えています。ただし、若干の揺り戻しなども見られる中で、当社としてはビジネスとして現実的な対応も踏まえながら進めていく必要があると考えています。
C-4:海運業を取りまく環境
スライドでは海運業を取りまく環境について、米国の関税政策、USTR、スエズ運河・ホルムズ海峡という3つの観点で整理しています。
関税政策については、中国に関しては引き続き協議が継続しています。この点を踏まえ、トレードパターンへの影響や実体経済への影響がどの範囲で、どの程度出てくるのかをしっかりと注視していく必要があると考えています。関税やUSTRの影響に関して、当社のビジネスに与える影響を引き続き見極めていきます。
また、USTRについては今年の10月14日から入港料が発効される予定ですが、現在何が起きているのかについて、しっかりとお客さまにご説明している段階です。収益へのインパクトに関しては、現時点では今回示した数字には織り込んでいませんが、当社としてできることを確実に実施していく所存です。
スエズ運河については、ホーシー派の攻撃に関連する報道もあり、すぐに通峡が可能になる状況ではないと認識しています。そのため、今年度の業績はスエズ運河が通れないことを前提に作成しています。
スエズ運河が通れないことにより需給への影響が一定程度生じていますが、このような状況を踏まえながら、引き続きビジネス展開を進めていきたいと考えています。
簡単ですが、私からのご説明は以上です。
質疑応答:コンテナ船事業の第1四半期実績について
Q:ONE社の第1四半期の実績については税引き後利益が8,600万ドルという結果でしたが、想定よりもやや弱かった印象があります。川崎汽船の想定と比較してこの実績をどのように評価されるのかお聞かせください。
運賃率・積高はもちろんですが、特に第1四半期は運航費などのコストが発生しているようです。この点を含めたオペレーションも含めて、川崎汽船の想定と比較してどうだったのか教えてください。
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