飯野海運、大型LPG船・ドライバルク船の損益改善等で通期の利益予想を上方修正 今期大型エタン船2隻竣工
目次

大谷祐介氏:みなさま、おはようございます。飯野海運株式会社代表取締役社長の大谷祐介です。本日はご多忙の中、2025年度中間期決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。
本日は、2025年度中間期決算の概要、2025年度通期業績予想および市況の見通しを中心にご説明し、今年度が最終年度となる中期経営計画の進捗についてもお話しします。
決算ハイライト

はじめに、2025年度中間期の実績についてご説明します。
2025年度中間期の実績は、売上高611億2,000万円、営業利益57億7,000万円、経常利益65億8,000万円、純利益74億8,000万円となりました。
前年同期比での主な減益要因は、ケミカルタンカー市況の軟化によるものです。経常段階で受取配当金や持分法投資利益を計上し、純利益段階で第1四半期に船舶の売却益などを計上しましたが、純利益は約75億円と、前年同期比21億5,000万円の減益となりました。
連結およびセグメント別決算概要

セグメント別決算についてご説明します。
外航海運業では、前年同期比で為替が円高に推移したことに加え、主力であるケミカルタンカー市況が軟化したため、前年同期に比べて減収減益となりました。詳細は次のスライドでご説明します。
不動産業においては、所有ビルが引き続き堅調な稼働を維持していることや、2024年度第1四半期に計上した、英国不動産2棟目の取得費用が今年度は剥落したことなどから、前年同期比で増収増益となりました。
営業利益の内訳( 2024 年度中間期 vs 2025 年度中間期 )

こちらのスライドは、セグメント別営業利益の前年同期との差額を示しています。
全体としては、当中間期の営業利益は約58億円となり、前年同期比で約41億円の減益となりました。主な減益要因は、主力であるケミカルタンカーによるものです。
ケミカルタンカーについては、2024年度上半期に運賃ベースで過去最高を記録したマーケットに対し、今期は中国の景気減速に伴う需要の低下や、米国の関税政策による不確実性の高まりを受け、製品需要が減少しています。そのため、市況は前年同期比で軟化しています。
一方で、紅海情勢の悪化に伴う喜望峰回りでの航海は継続しており、引き続き輸送距離が伸びていることが市況の下支え要因となっているものの、市況軟化の影響を大きく受け、28億3,000万円の減益となりました。
大型ガス(LPG)船については、LPG船市況が米国の関税政策の影響で米中間の荷動きに不透明感が高まったことで、一時的に市況が下落しましたが、米国からインド向けや中東から中国向けへの輸送が増加したことで貿易ルートが変化し、トンマイル(輸送距離)が増加した結果、底堅く推移しました。
しかしながら、前期末に一部船舶を売船したことから稼働が減少し、4億8,000万円の減益となりました。
なお、当社は欧州の荷主向けに2隻の大型エタン船を発注しています。1隻は9月に竣工済みで、もう1隻は来年1月に竣工予定となっており、今後の収益への貢献が見込まれています。
ドライバルク船については、期初に中国経済の低迷や米中間の貿易戦争に伴う両国間の輸送減少により市況が軟化しましたが、夏場以降は南米穀物の荷動きが増加したことで堅調に推移しました。
当社では、専用船が順調に稼働し安定収益の確保に貢献したほか、不定期船では市況回復の影響を享受しましたが、前年同期比で1億9,000万円の減益となりました。
不動産業では、国内保有ビルが引き続き満床稼働を維持して安定収入を得ていることに加え、2024年度に取得した英国不動産2棟目の取得にかかる初期費用が剥落したことなどから、5億5,000万円の増益となりました。
その他としては、為替が前年度比で8円弱円高に推移したことが、減益要因となっています。
以上が2025年度中間期の決算概要となります。
2025年度通期業績予想

続いて2025年度の通期業績見通しについてご説明します。
2025年度通期の業績予想は、売上高1,260億円、営業利益118億円、経常利益125億円、純利益126億円です。前回7月の開示から、売上高は下方修正となるものの、各利益段階で上方修正しています。
直近の業績予想時と比べ、大型LPG船とドライバルク船の損益改善を見込んでいるほか、下期の為替前提を1ドル140円から145円に変更したことが上振れの要因です。
また、上期と下期の利益に差が生じている大きな要因としては、為替となります。7月時点では為替前提を140円としていましたが、実勢では140円台後半で推移したため、第2四半期の実績ではB/Sのドル建て資産の評価益が発生しました。
一方、下期については、足元で為替が150円台で推移しているものの、期中に為替前提の145円まで円高に推移すると見込んでいることから、B/Sのドル建て資産の洗い替えにより評価損が発生すると予想しています。
なお、為替が1円変動した場合、経常利益への影響額は半年で8,000万円となります。円安に振れた場合は利益にプラス、円高に推移した場合は利益にマイナスとなります。
営業利益の内訳(2024年度実績 vs 2025年度予想【10/31時点】)

こちらのスライドは、セグメント別営業利益の前年度との差額を示したものです。
ケミカルタンカーについては、今後の市況は横ばいで推移すると予想しています。しかし、更改予定の一部COA(数量輸送契約)において現在の市況軟化の影響を加味したことや、船舶の売船などで稼働が減少したことから、約38億円の減益を見込んでいます。
大型ガス船では、先ほどの説明の通り、2隻の大型エタン船竣工のほか、市況が今後も堅調に推移すると予想されることから、通期の市況前提を7月時点から引き上げています。しかしながら、昨年度末に一部の船舶を売船したため、2025年度はその利益分が剥落し、1億円程度の減益を見込んでいます。
ドライバルク船では、第2四半期の市況が想定よりも好調だったことが利益に貢献したものの、全体としては昨年度比で700万円の減益を予想しています。
為替については、昨年度比で約7円円高に推移する前提で、11億5,000万円の減益を見込んでいます。
2025年度 ケミカルタンカー市況の見通し

海運・不動産における今後の市況予想をご説明します。まず、ケミカルタンカー市況の見通しについてです。
2025年度下期は、新造船やプロダクトタンカーのケミカルタンカー市場への流入が限定的で、市況は横ばいで推移すると見込んでいます。
米国による関税措置の影響については、米中間で取引される化学品の種類がもともと多くないため、全体として影響は限定的と見込んでいます。
ケミカルタンカーの新造船については、2025年度末までの発注残が約2.4パーセントと引き続き限定的な状況です。また、紅海の航行が現時点ではすぐに再開されない見込みとなっており、喜望峰回りの航行は引き続き船腹需給の引き締め要因になると考えられます。
競合するプロダクトタンカーについては、対ロシア制裁の影響で欧州が他地域からの石油製品調達を進める動きが見られ、それに伴い輸送距離が伸びています。また、中国国内では内製化が進んでいますが、国内で消費しきれない貨物が他国へ輸送されることなどが、輸送需要を押し上げる要素として期待されています。
こうした背景を受け、プロダクトタンカー市況は堅調に推移しており、ケミカルタンカー市場への流入は限定的と考えています。中国の景気停滞に伴う需要減少などの懸念はあるものの、ケミカルタンカーの市況は現在の水準から横ばいで推移する見通しです。
2025年度 大型ガス(LPG)船市況の見通し

続いて大型ガス(LPG)船の市況見通しです。2025年度下期の市況については、世界情勢の変化により需給バランスが影響を受ける可能性があるものの、引き続き底堅く推移する見込みです。
需要面では、2025年下期に予定されている米国の輸出ターミナルの拡張に加え、中東での増産計画もあり、輸送需要の増加を見込んでいます。
供給面では、大型LPG船は比較的新造船の流入が多い船種ではありますが、市場では船舶の老齢化が進んでおり、今後のスクラップが予想されるほか、今年入渠予定の船が75隻と多いことから、新造船の流入による市況への影響は限定的と見ています。
今年4月に勃発した米中貿易戦争により、荷動きは不透明となり、一時市況は下落しました。しかしその代替として、従来米国から中国に輸出されていた貨物が米国からインドへ、中東から中国への貿易ルートに変化し、輸送距離が伸びた結果、市況は底堅く推移しています。
また、10月14日から開始された米国による中国建造船への入港料徴収や、これに対抗した中国の措置について、当社への直接的な影響はないと見込んでいましたが、10月30日、米中双方が互いに課している入港料措置を1年間停止することで合意しました。今後、この合意によりマーケットにどのような影響が出るのか、引き続き注視する必要があると考えています。
2025年度 ドライバルク船市況の見通し

続いてドライバルク船市況の見通しです。第2四半期は、南米からの穀物輸出が例年より長く継続したことで、市況は好調に推移しました。下期においては、中国経済の回復の遅れもあり、第2四半期の水準からは下がるものの、市況は比較的底堅く推移すると予想しています。
10月に行われた国際海事機関(IMO)の海洋環境保護委員会(MEPC)会合において、国際海運からの温室効果ガス(GHG)排出削減を目的とする国際条約改正案「ネットゼロ・フレームワーク」の採択に関する審議を1年間延期することが決議されました。
しかしながら、短期的には環境規制強化の流れは変わらず、老齢船の解撤が進むと考えられます。予想される新造船の竣工量とのバランスを見ても、例年を上回る大幅な増加の可能性は低いと考えています。
なお、ケミカルタンカー、大型LPG船、ドライバルク船の市況については、毎月中旬に当社のホームページに最新情報を掲載していますので、そちらもぜひご覧ください。
2025年度 国内(東京都心)オフィス市況の見通し

不動産業について、東京都心のオフィスビル市況の見通しをご説明します。
足元では空室率の低下や平均賃料の上昇傾向が続いており、市況は堅調に推移しています。需要面では、人材確保や人的資本の観点から、高品質なビルに対する需要が見られており、オフィス市況は今後も底堅く推移すると予想しています。
なお、当社保有のオフィスビルはほぼ満床で稼働しており、空室率はマーケット全体と比べても低水準で推移しています。
財務数値目標 達成状況(詳細)

続きまして、今年度が最終年度となる中期経営計画の進捗についてご説明します。スライドには財務数値目標の達成状況が詳細に示されています。
2025年度は、海運業の利益が計画を下回ることから、営業利益、経常利益、EBITDAが目標を下回る見込みです。先行き不透明な状況ではありますが、引き続き目標達成に向けて取組みを進めていきます。
投資計画については、中期経営計画の3年間で1,000億円を目指す中、進捗率は今年5月時点の85パーセントから90パーセントに進捗しています。残り半年で計画達成に向け、取組みを進めていきます。
次期中期経営計画については、投資家のみなさまからいただいたご意見を参考に、取締役会での議論にとどまらず、将来の会社を担う若手社員にも積極的に意見を出してもらいながら策定を進めています。発表は来年5月頃を予定しています。
株主還元策(配当)

最後に株主還元についてです。当社は、株主のみなさまへの利益還元をさらに強化ならびに資本コストや株価を意識した経営を実現するため、現中期経営計画の最終年度である2025年度については、通期業績に対して配当性向40パーセントを基準に配当を行うことを決定しています。
この方針に加え、ご説明の通り今年度の通期業績予想を引き上げたことに伴い、前回7月開示時点から中間および期末ともに2円増額し、通期で48円の配当を予定しています。
引き続き、持続的な成長を軸とした経営で企業価値を向上させ、充実した株主還元を実施するため、収益率の向上により配当額の増額に努めていきたいと考えています。
2025年度中間期決算説明会について、本日のご説明は以上です。ご清聴ありがとうございました。
新着ログ
「海運業」のログ





