2025年9月期 第3四半期決算説明
天野治夫氏(以下、天野):みなさま、こんにちは。HENNGE株式会社取締役副社長の天野です。当社グループの決算説明動画をご視聴くださり、ありがとうございます。
本日はまず、CFOの小林から2025年9月期第3四半期の業績と通期業績見通しに対する進捗などについてご説明した後、私から成長戦略と当四半期の所感についてお話しします。どうぞよろしくお願いします。
連結業績サマリー (対前年同期比、9か月累計比較)
小林遼氏(以下、小林):執行役員CFOの小林です。それでは、2025年9月期第3四半期の連結業績についてご説明します。
連結業績のサマリーは、スライドのとおりです。当四半期は、2025年5月7日に開示した修正後の業績予想に対しておおむね順調に推移しています。
売上高の推移
連結売上高の四半期ごとの推移は、スライドのとおりです。HENNGE One事業の売上高はすべてリカーリングの性質の売上高であり、四半期ごとに増加する傾向となっています。
売上高 (対前年同期比、9か月累計比較)
連結売上高の対前年同期比は、スライドのとおりです。
売上総利益の推移
売上総利益および売上総利益率の四半期ごとの推移は、スライドのとおりです。
売上総利益 (対前年同期比、9か月累計比較)
売上総利益および売上総利益率の対前年同期比は、スライドのとおりです。主にARPUの向上により売上総利益率は上昇し、引き続き高い水準を維持しています。
営業費用の構造 (対前四半期比)
営業費用の内訳の対前四半期比は、スライドのとおりです。
営業費用の構造 (対前年同期比、9か月累計比較)
営業費用の内訳の対前年同期比は、スライドのとおりです。採用力強化のための費用に加え、人員拡充に伴い人件費などが増加しています。
売上高と営業費用の推移
売上高と営業費用の四半期推移は、スライドのとおりです。
従業員の推移
従業員数の過年度推移は、スライドのとおりです。当四半期末時点では、前期末比で58名の純増となりました。なお、当四半期より海外子会社の従業員数を括弧書きで表示しています。
事業トピックス
事業の進捗についてご説明します。事業トピックスは、スライドのとおりです。
主な広告宣伝活動
当四半期の広告宣伝活動は、スライドのとおりです。引き続き積極的に活動しています。
HENNGE One KPIのハイライト (対前期末比、9か月進捗)
KPIの進捗状況についてご説明します。前期末からのHENNGE Oneの各KPIの進捗は、スライドのとおりです。
HENNGE One KPI (対前年同期末比)
HENNGE OneのKPIの対前年同期末比は、スライドのとおりです。
HENNGE One平均月次解約率の推移
平均月次解約率は、スライドのとおりです。企業の統廃合やクラウド移行戦略自体の見直しなどといった、従来からの主な契約理由の傾向に、大きな変化はありません。
当四半期では比較的大きめの企業の解約が数件発生しましたが、解約が期初の想定よりも少なかったため、平均月次解約率も期初の想定より低くなりました。なお、理論上の平均契約年数は20年以上です。
HENNGE One契約企業数と契約ユーザ数の推移
契約企業数および契約ユーザ数の四半期ごとの推移は、スライドのとおりです。引き続き、販売パートナーとの連携強化により、中小規模の企業からの契約を安定して獲得できています。一方、契約ユーザ数については、比較的大きめの企業の解約があったものの、堅調に伸びました。
HENNGE One ARRとARPUの推移
ARRとARPUの四半期ごとの推移は、スライドのとおりです。当四半期は、前四半期末まで実施してきた価格改定の影響が落ち着いたものの、ARR、ARPUともに伸ばすことができました。
新規顧客、既存顧客ともに最上位プランであるHENNGE One Proを引き続き選択いただいており、ARR全体に占めるHENNGE One Proの割合も当四半期末時点で15パーセント程度まで増加しています。
2025年9月期の方針
2025年9月期の通期業績見通しに対する進捗についてご説明します。2025年9月期の方針は、スライドのとおりです。前四半期末時点からのアップデートを、次のスライドでご説明します。
2025年9月期の方針の進捗
HENNGE One事業ARRは引き続き順調に進捗しています。
マーケティング活動は順調に進捗しており、広告宣伝費の年間総額は業績予想どおりの見込みです。また、事業投資については、グループ全体のARRを最大化するため、引き続き機会を模索しています。
人員計画については、期初の方針から変更が生じた点がありますので、詳しくご説明します。今期の純増目標数は、これまでの採用市場の厳しさを考慮して設定していましたが、最近の傾向として、多くの優秀な候補者を採用できるようになってきています。
これは、依然として採用環境が厳しいと感じる中で、人材獲得力向上に向けた施策として実施した取り組みの成果ではないかと捉えています。例えば、前期末の約1億円をかけた採用広告のような採用促進費用の投下以外にも、採用プロセスの見直しや採用担当者の増員など、多角的な施策を展開してきました。
また、退職者数が期初の想定を下回る進捗となっています。これら入退社のバランスにより、期初計画を大幅に上回る人員純増数が見込まれます。一方で、特に営業人員については期初目標採用数に達しておらず、課題が残っています。そのため、継続的に将来を見据えた活動を進めていきます。
連結業績見通し (通期)
連結業績見通しは、2025年5月7日に開示した修正後の業績予想から変更はなく、スライドのとおりです。
前回の決算説明会では、下半期の方針として、人材獲得力の強化、当社サービスのセキュリティ強化、将来のARR獲得を目的とした営業活動の実施を挙げていました。これに関し、すでに当社サービスのセキュリティ強化の一環として、当社の投資先であるIssueHunt株式会社でのバグバウンティ(ホワイトハッカーが脆弱性調査を行い、脆弱性が見つかったことを企業に報告することで謝礼が発生する仕組み)や、営業活動の一環としてナーチャリングイベントの開催などを実施しています。
現在進行中の第4四半期では、特に人材獲得力の強化に向けた積極的な費用投下が見込まれています。
当社は、直近の営業利益の水準に過度にこだわることなく、将来への投資を積極的に行い、ARRを積み増していく考えです。そのため、主に中長期的な成長戦略の実現に向けて、ARR成長に寄与する投資対効果の高い費用投下の機会を継続的に模索していきます。
経営理念
天野:当社の成長戦略についてご説明します。HENNGEの経営理念は、「テクノロジーの解放」です。私たちはテクノロジーが大好きで、テクノロジーが世の中をより良くすると強く信じています。この力をできるだけ多くのお客さまに届けることで、世の中を少しでも良い方向に動かしたいと考えています。
HENNGEは創業以来25年以上、「テクノロジーの解放」を理念として掲げ、さまざまな分野や方法でテクノロジーを解放してきました。その結果、SaaSはテクノロジー解放のための最もフェアで洗練された効率的な手段であるという考えに至っています。
そのため、私たちはSaaSを提供するとともに、お客さまのSaaS活用による変革を支援したいと考えています。
LTV最大化
このような「テクノロジーの解放」を通じて、当社が提供するテクノロジーの総量、私たちの理念の実現の証左となるのがLTV(ライフタイムバリュー)、すなわち当社が保有する契約の総価値です。
当社の成長戦略は、このLTVの最大化を目標としています。LTVの最大化、つまり将来得られる累計売上総利益額を最大化することで、さらなる事業成長のための投資を増加させても、安定的に利益を増やすことができるモデルをより堅固なものにしていきたいと考えています。
現在、平均契約年数と売上総利益率はすでに高い水準にあります。したがって、LTVの最大化にはARRの最大化が必要な状況にあります。私たちは、投資対効果の高い活動を積極的に実施し、ARRの積み増しに注力します。
また、ARRは3つの要素に分解できます。契約企業数、平均ユーザ数、そしてARPUです。現在、私たちはこのうち契約企業数とARPUの向上に注力し、ARRの成長を目指しています。
成長戦略の進捗 (HENNGE One)
HENNGE Oneにおける3つのKPIの推移は、スライドのとおりです。HENNGE Oneを主力とする当社グループのビジネスは、基本的にサブスクリプションモデルです。当期中に獲得した契約は、解約されない限り積み上がり、翌期以降の売上の基盤となります。
HENNGE OneのARRは順調かつ安定的に積み上がってきています。特にこの数年、東京以外の主要都市でもクラウド型ワークスタイルへの移行が進む企業が増加しており、この流れを捉え、販売パートナーとの連携強化により、効率的に多くの比較的中小規模の契約を獲得できています。
また、拡大する市場ニーズに対応した新サービスや新機能を数多くリリースすることで、ARPUも増加させることができました。
HENNGE One ARRの成長戦略
今後も既存事業の推進を軸に据えつつ、日本国外での地域拡大やM&Aなどにも挑みながら、ARR200億円を目指し、さらにその先の事業成長をより盤石なものにしていきたいと考えています。
最近の傾向としてHENNGE One Proを選択いただく機会が増えています。これは、HENNGE Oneの価値を高め、その価値をお客さまにしっかりと伝えることで、お客さまに届けるテクノロジーの総量を最大化してきた成果だと捉えています。今後もさらなる事業成長と企業価値向上を目指し、ブランド強化や人材獲得力の向上に注力していきます。
以上、駆け足でしたが、当社の2025年9月期第3四半期の決算についてご説明しました。本日はお忙しい中、当社の決算説明動画をご視聴いただき、誠にありがとうございました。
司会者:質疑応答に移ります。なお、事前にご質問いただくことが多いと想定した項目については、当社のIRサイトでQ&Aを開示しています。併せてご覧いただければ幸いです。
質疑応答:HENNGE One Proの来期以降の構成比の見通しについて
質問者:HENNGE One Proについておうかがいします。前四半期末時点ではARRにおける構成比が1割強程度とおっしゃっていたかと思います。今回、15パーセント程度ということで、2ポイントから3ポイント程度構成比が上がったと推測しています。
来年度くらいまでにかけて、四半期ごとにだいたい2ポイントから3ポイント程度のアップセル、すなわち上位プランへの移行を見込めるものなのかを教えてください。
小林:HENNGE One Proに関して、来期以降もARRに占める割合が2パーセントから3パーセントずつ上がっていくかについては、上げていきたいと考えていますし、可能であればもう少しダイナミックに上げたいというのが本音です。
一方で、現実問題としてどうかというと、今まさに来期の予算を作成、精査している段階という答えにとどまります。ただ、まだ割合を上げられる状況にはあると思っており、既存のプロダクトだけでなく、新しいプロダクトを追加することによって、HENNGE One Proとしての魅力をさらに高め、その魅力をお客さまにお伝えしていければと思っています。
質疑応答:新規顧客におけるプラン割合について
質問者:新規顧客については上位プランとそれ以外のプランで、だいたい何割ぐらい違うのでしょうか?
小林:割合についてはお伝えできないのですが、HENNGE One Proに関しては、前四半期末時点でARRに占める割合が10パーセント強というお話をしていましたが、今回は15パーセント程度まで上がっています。
HENNGE One事業のARRは現在100億円を超えている状況です。そのため、新規のお客さまだけでなく既存のお客さまもHENNGE One Proに入ってこないと、なかなかARR全体におけるHENNGE One Proの構成比率は上がってきません。それを踏まえると、一定の割合で新規も既存のお客さまも入ってきていただいていると捉えていただけるのではないかと思います。
質疑応答:採用の進捗および来期以降の採用見通しと施策について
質問者:採用は期初計画に対して好調に推移しており、通期75名とのことですので、第4四半期で差し引き17名程度の純増を見込まれているのではないかと思っています。
来期以降についても採用力が向上していることから、70名前後は採用できる見込みなのでしょうか? また、どのような施策が最も効果的で、人材が集まっていると考えていますでしょうか?
小林:採用人数について部門ごとに見ていくと、今回も営業メンバーに関しては期初に立てていた目標には届かなさそうだと社内でも話しており、期末もその水準に未達のまま着地するのではないかと思っています。
そのため、営業に関しては、より多くの人を採用できるようになることが課題であると強く認識し、克服するための取り組みを進めなければならないと考えています。
来期に営業部門の人員を充足することができれば、それは非常に良い結果につながると思います。しかし、来期の純増人数を最終的に何名にするのが最適なのかについては、現在予算策定のタイミングにあり、検討している状況です。
人材獲得を順調に進めるための施策については、継続的なアピールが最も重要ではないかと考えています。
例えば、前期の第4四半期には、1億円規模の採用広告を実施しました。渋谷や新宿といったエリアでの大々的な広告であったり、各大学の食堂のトレイなどに当社のロゴを掲載したりして、そこにQRコードを置くことで、ランディングページへ誘導することを当初の目的としていました。結果として、ランディングページを訪れ、直接応募される候補者は想定を下回りましたが、直接応募以外のパイプライン形成において、数字を見る限り一定の効果があり、おおむねよい試みだったのではないかと感じています。その後も、大規模なものではありませんが、継続的に採用に関する広告活動を実施しており、その結果、パイプラインが安定して作れる状況になってきたと考えています。
そのため、今後も引き続き当社のアピールをしっかりと行う必要があると認識しています。また、当社ではエージェントを通じた中途採用が主流のため、エージェントとのリレーション強化もよりしっかりと行う必要があると思っています。
質疑応答:広告宣伝費の進捗について
質問者:広告宣伝費について、第4四半期はナーチャリングなどに使う予定があるとうかがっています。会社計画との対比では、第4四半期でおそらく3億8,000万円程度を使用しないといけないと考えます。
現在の第3四半期までの広告宣伝費の消化スピードは会社の想定どおりで、第4四半期も予定どおりに消化するのですか? それとも、若干ビハインドしている状況でしょうか?
小林:特にビハインドしているわけではなく、想定どおりと考えています。具体的な内容についてはお伝えできませんが、今後さまざまなプレスリリースを出していく予定ですので、注目していただければと思います。
質疑応答:米国事業の進捗とコストについて
司会者:「米国事業のスタートとしてはいかがでしょうか? 米国のMSPとのリレーション構築のためのコストは今期予算にも入っていますか? 全社利益率を毀損するコスト投下は想定していないとのことでしたが、こちらについても、あらためて考え方を教えてください」というご質問です。
小林:米国事業ですが、MSPとはすでに何社か契約を締結しており、実際に当社のサービスを利用してくださるエンドユーザも獲得できている状況です。滑り出しが非常に速いというわけではありませんが、着実に進められていると感じています。
この先の成長を実現させるためには、MSPからの当社の認知度をさらに高め、サービス内容をしっかりと理解していただく必要があると考えています。そのため、まずは各種MSP向けのイベントに参加し、アピール活動を行っています。
このようなリレーション構築のためのコストは今期の予算に広告宣伝費として組み込まれています。全社利益率を毀損するようなコスト投下は現在のところ想定しておらず、投下した分を回収できるよう、しっかりと取り組んでいきたいと考えています。
質疑応答:ARPU成長率と価格改定に関する考え方について
司会者:「当面のARPU成長率は、HENNGE One Pro比率の上昇によるものがメインとなりますか? SaaSの他企業では2年に1回の価格改定も多く見られますが、御社の価格はまだ安いと感じます。この点についての考え方を、あらためて共有していただけますと幸いです」というご質問です。
小林:ARPU向上施策において、HENNGE One Proの比率上昇は重要なポジションを占めることになると思いますが、それ以外の施策もしっかりと進める必要があると考えています。
幸い、現時点の標準価格でお客さまにサービスをご利用いただければ、ARPUが上昇していく水準にはあると思います。そのため、HENNGE One Pro以外のプランを販売してもARPUの上昇が期待できるという状況です。
大きめの企業さまが単機能プランでご利用いただく場合、ARPUの引き下げ要因となる可能性はありますが、それを加味しても現在の環境ではオーガニックにARPUを上げられる状況にあるのではないかと考えています。
おっしゃるとおり、2年に1回程度の価格改定はよく見られますし、我々もそのようなサイクルを実現できるよう、新機能を追加し、お客さまに納得いただける状況を作り出せるとよいなと考えています。
過去を振り返ると我々は、2024年4月から1年間、価格改定を行いましたが、前半は解約されるケースが見受けられました。これは、HENNGE Oneに新しい機能を追加してきたものの、HENNGE Oneの活用について十分にお伝えできていなかったためではないかと捉えています。
今後、そのような課題を解消するためにも、新しい機能をしっかり追加し、納得感を持っていただいた上で、上位プランへの移行を促したいと考えています。このような取り組みが進めば、価格改定を実施できる状況につながるのではないかと考えています。