事業内容
塚越孝弘氏:取締役管理部長の塚越です。2025年3月期決算についてご説明します。
まず、事業内容について簡単にご説明します。当社は、1892年に東京帽子株式会社として創業し、1985年に現在のオーベクス株式会社に社名を変更しました。創業以来、帽子製造で培った加工技術を応用し、現在ではペン先のメーカーとして世界市場で高いシェアを有しています。近年では、この技術を応用して医療機器やコスメ分野へと事業領域を拡大しています。
2025年3月期決算概要(連結)決算サマリー
2025年3月期の連結決算サマリーですが、売上高は、テクノ製品事業およびメディカル製品事業のいずれも好調に推移した結果、前期比12.0パーセント増の60億3,500万円となりました。
営業利益は、テクノ製品事業において中国を含むアジア地域での販売増加および高付加価値製品の売上が伸長したことにより、前期比50.1パーセント増の8億4,100万円となりました。
テクノ製品事業においては、売上高が前期比14.2パーセント増の43億3,400万円、セグメント利益が前期比43.2パーセント増の10億6,000万円となりました。アジア地域を中心とした販売拡大および高付加価値製品の拡販が寄与しました。
一方、メディカル製品事業においては、売上高が前期比6.9パーセント増の17億100万円と堅調に推移しましたが、セグメント利益は前期比17.8パーセント減の1億2,300万円となりました。これは、積極的なプロモーション活動と販売活動を展開する一方で、費用が先行したことによるものです。
2025年3月期は、全社的にグループ技術を結集した新製品開発の取り組みを強化し、着実な売上拡大と利益成長を実現した1年となりました。
2025年3月期決算概要(連結)損益計算書(P/L)
損益計算書ですが、売上高は、テクノ製品事業とメディカル製品事業が好調に推移し、前期比12.0パーセント増の60億3,500万円となりました。
営業利益は、テクノ製品事業におけるアジア地域での販売増加および高付加価値製品の売上伸長により、前期比50.1パーセント増の8億4,100万円となりました。
営業利益率は13.9パーセントで、前期比3.5ポイント増加しました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比32.9パーセント増の5億8,000万円となりました。
2025年3月期決算概要(連結)売上高・営業利益の増減要因
売上高・営業利益の増減要因ですが、売上高は、テクノ製品事業における主力の筆記具関連製品が好調に推移したことに加え、メディカル製品事業でのシェア拡大に向けた販売活動強化により、前期比6億4,800万円の増加となりました。
販売管理費は前期比1億3,700万円増加しましたが、テクノ製品事業におけるアジア地域での販売拡大および高付加価値製品の売上が伸びたことにより、営業利益は前期比2億8,100万円増加しました。
2025年3月期決算概要(連結)セグメント別状況
セグメント別状況ですが、テクノ製品事業では、中国を含むアジア地域での販売が好調に推移し、主力である筆記具関連の高付加価値製品の販売が伸長した結果、売上高は前期比14.2パーセント増の43億3,400万円、セグメント利益は前期比43.2パーセント増の10億6,000万円となりました。
メディカル製品事業では、積極的なプロモーション活動を展開し、売上高は前期比6.9パーセント増の17億100万円となりましたが、海外展開に向けた費用増加の影響で、セグメント利益は前期比17.8パーセント減の1億2,300万円となりました。
2025年3月期決算概要(連結)地域別売上状況
地域別売上状況についてご説明します。日本国内および中国を含むアジア地域の売上が伸長し、売上高は日本が前期比7.4パーセント増の23億2,900万円、アジアが前期比24.6パーセント増の26億3,500万円となりました。欧州は前期比11.7パーセント減の5億6,000万円、北米は前期比13.3パーセント増の2億8,100万円、中南米は前期比6.2パーセント増の1億5,400万円、その他地域は前期比1.0パーセント減の7,400万円となりました。全体では、前期比12.0パーセント増の60億3,500万円となりました。
2025年3月期決算概要(連結)キャッシュフロー
キャッシュフローですが、営業活動によるキャッシュ・フローは、6億3,700万円の資金増加となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得等により1億5,900万円の資金減少となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済等により5億6,100万円の資金減少となりました。
その結果、当連結会計年度末における現金および現金同等物の残高は、前期末比9,000万円減少し、27億5,000万円となりました。
2025年3月期決算概要(連結)貸借対照表(B/S)
貸借対照表ですが、資産合計は前期比1億2,100万円増の98億4,200万円となりました。流動資産は前期比2億4,200万円増の65億8,500万円、固定資産は前期比1億2,100万円減の32億5,700万円となりました。
負債合計は前期比3億3,000万円減の31億3,500万円で、純資産合計は前期比4億5,100万円増の67億700万円となりました。
自己資本比率は68.1パーセント、流動比率は401.7パーセント、固定比率は48.6パーセントとなりました。
2025年3月期決算概要(連結)2026年3月期 業績予想
2026年3月期の業績予想についてご説明します。世界的なインフレ傾向や各国の通商政策の影響を受けて世界経済の減速懸念が高まり、先行きは不安定な状況が続くものと思われます。2026年3月期は、売上高は前期比2.7パーセント増の62億円、営業利益は前期比10.9パーセント減の7億5,000万円、経常利益は前期比10.3パーセント減の7億3,000万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比12.1パーセント減の5億1,000万円を見込んでいます。
配当について
当社の利益配分につきましては、将来に備え企業体質の強化を図るとともに、会社を取り巻く環境を勘案しつつ、業績に応じた利益還元に努めるとともに長期安定的な配当を継続することを基本にしています。これらの方針に基づき当期(2025年3月期)の配当は、前期から13円増配の「1株当たり年間配当金33円」を予定しています。次期(2026年3月期)の配当は、業績見通しと配当方針を踏まえて、「1株当たり年間配当金35円」とする予定です。
連結配当性向は、2025年3月期が15.8パーセント、2026年3月期の予想は18.9パーセントとなっています。
前中期経営計画(2022年度/138期~2024年度/140期)レビュー
ここからは、新たに策定しました第9次中期経営計画についてご説明します。
まずは、前中期経営計画のレビューについてご説明します。コロナ禍やウクライナ侵攻等の影響があったものの、最終年度はテクノ製品事業、メディカル製品事業ともに売上が伸長しました。テクノ製品事業では高付加価値製品の販売が好調に推移し、営業利益は計画を上回る結果となりました。最終年度である2024年度の実績は、売上高60億3,500万円、営業利益8億4,100万円、営業利益率は13.9パーセント、ROEは8.9パーセントとなり、売上高はやや下回ったものの営業利益およびROEは最終年度目標を達成することができました。
前中期経営計画(2022年度/138期~2024年度/140期)レビュー
テクノ製品事業では、筆記具用高付加価値製品の大型受注や新規受注が収益拡大に寄与し、アジア地域での売上も拡大しました。また、マーケティング戦略室の新設なども進展しました。
メディカル製品事業では、ベセルフューザー化学療法用が国内シェアトップを獲得し、無痛分娩用製品の認知度も拡大しました。
全社では、上場維持基準への適合、借入金が圧縮されました。
一方で、今後の課題として、テクノ製品事業では、高成長エリアでの市場拡大や海外販売拠点の在庫適正化、生産キャパシティの増強、新規事業の創出、メディカル製品事業では、生産キャパシティの増強に加え、ベセルフューザー無痛分娩用の拡販とグローバル展開、製品企画開発力の強化とスピード化、全社では、労働力人口が減少していく中での人材確保と資本コストや株価を意識した経営の推進等を主な課題としています。
長期ビジョン 10年後のあるべき姿
当社は、10年後のあるべき姿として、「高付加価値なモノづくりを追求し、グローバル市場で高い認知度を得ている企業」を目指しています。企画開発、技術開発、生産技術、品質管理のすべてを深化させることで、「グループのコア技術を結集し、新たな価値を創出する」、「独自の技術と発想でさらなる高収益化を図る」、「心豊かになる製品を世界中の人々に届ける」を実現していきます。
長期ビジョン 10年後のあるべき姿
長期ビジョン達成に向けて、テクノ製品事業は、高付加価値製品の開発強化を通じて収益性のさらなる向上を図ります。メディカル製品事業は、ベセルフューザーを成長ドライバーとして位置付け、収益基盤を強化します。これらに加え、グループコア技術を結集し、第3の事業創出を目指していきます。2034年度には、長期ビジョン達成に向けた主要施策を確実に実行していくことで、高収益な事業ポートフォリオを確立します。
第9次中期経営計画 オーベクスビジョン2027(2025年度/141期~2027年度/143期)
第9次中期経営計画「オーベクスビジョン2027」についてご説明します。本中期経営計画では、10年後のあるべき姿に向けて、「ESG経営を推進し、新たな価値創出と持続可能な成長を追求する」を基本方針としています。
基本戦略は3点です。1点目は、「強固な収益基盤の構築」です。当社の強みである成形技術をさらに進化させ、新たな価値を創出することを目指します。2点目は、「環境負荷低減活動の推進」です。温室効果ガス排出量削減の取り組みを進めるとともに、環境配慮型製品の開発と拡販を実行していきます。3点目は、「成長を支える人財育成」です。人的資本への投資を通じて従業員のエンゲージメントを高め、ガバナンス強化と持続可能な体制の維持を図ります。
2027年度の最終年度における定量目標として、売上高は140期比16.0パーセント増の70億円、営業利益は140期比18.8パーセント増の10億円、営業利益率は14.3パーセント、ROEは9パーセント以上を掲げています。設備投資については、3年間で15億円以上を見込んでおり、これは前中計3年間の実績である6億円を上回る水準です。
売上高の内訳は、テクノ製品事業48億円、メディカル製品事業22億円、営業利益の内訳はテクノ製品事業11億円、メディカル製品事業3億円、本社費用4億円を想定しています。
第9次中期経営計画 オーベクスビジョン2027(2025年度/141期~2027年度/143期)
前中期経営計画と第9次中期経営計画の売上高および営業利益の推移を表したグラフになります。
第9次中期経営計画 オーベクスビジョン2027(2025年度/141期~2027年度/143期)テクノ製品事業
テクノ製品事業では、高成長エリアへのさらなる販売強化、コア技術による差別化された高付加価値製品の拡販、環境配慮製品の開発およびラインアップ強化、増産に向けた設備投資と生産効率化を進めていきます。また、メディカル製品事業との協働による新分野展開にも取り組みます。
原材料やエネルギー等の製造コスト上昇が見込まれる中、高成長エリアでの販売活動強化や製品開発力の強化により、最終年度には売上高48億円、営業利益11億円、営業利益率22.9パーセントを目指します。
第9次中期経営計画 オーベクスビジョン2027(2025年度/141期~2027年度/143期)テクノ製品事業
テクノ製品事業における前中期経営計画と第9次中期経営計画の売上高および営業利益の推移を表したグラフになります。
第9次中期経営計画 オーベクスビジョン2027(2025年度/141期~2027年度/143期)メディカル製品事業
メディカル製品事業では、高付加価値製品へのシフトを進めるとともに、ベセルフューザーを中心とした製品で国内シェアの拡大を図ります。また、泌尿器・消化器分野への新製品投入、グローバル市場への参入体制の構築、組織力強化により市場競争力のある製品開発に取り組みます。
グローバル展開に向けた先行投資により、初年度の収益は微増になるものの高付加価値製品の開発と拡販を進めることで、最終年度には、売上高22億円、営業利益3億円、営業利益率13.6パーセントを目指します。
第9次中期経営計画 オーベクスビジョン2027(2025年度/141期~2027年度/143期)メディカル製品事業
メディカル製品事業における前中期経営計画と第9次中期経営計画の売上高および営業利益の推移を表したグラフになります。
第9次中期経営計画 オーベクスビジョン2027(2025年度/141期~2027年度/143期)キャッシュアロケーション
キャッシュアロケーションですが、第9次中期経営計画の3年間で、25億円以上の営業キャッシュフローを創出する計画です。これに対して、成長に向けた設備投資を15億円以上、さらに新製造装置開発や海外拠点拡充、環境負荷低減製品の開発などの成長投資を6億円以上実施する予定です。株主還元については、4億円以上を充てる方針です。これらのバランス配分により、中長期的な企業価値の向上を図っていきます。
資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について 現状分析・評価
資本コストや株価を意識した経営に向けた現状分析・評価についてご説明します。
当社の株価は、2025年3月期末時点で1,404円となり、加重平均株価も改善傾向にあります。PBRは0.62倍で、前期比で上昇したものの、依然として0.5倍から0.6倍の水準で推移しています。PERは7.2倍となり、前期の6.2倍から改善しています。
ROEは2025年3月期で8.9パーセントとなり、前期比で1.7ポイント増加しました。当期純利益率は9.6パーセント、総資産回転率は0.62回、財務レバレッジは1.51倍となっています。これらの数値は、いずれも安定的に推移しており、財務体質の強化と収益性の向上が進んでいることを示しています。
資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について PBR向上への対応
当社は、長期ビジョン実現に向けた中期経営計画の各施策を着実に実行し、ROEおよびPERの改善を図ることで、PBRの向上を目指しています。
売上高の拡大に向けては、積極的な設備投資を行い、高付加価値製品の拡販および高成長エリアへの販売強化を進めています。また、総資産の最適化に向けては、在庫の適正化および保有資産の見直しに取り組んでいます。こうした取り組みにより、資本コストを上回る経営意識を徹底し、企業価値の持続的向上を図っていきます。