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中西雅洋氏(以下、中西):代表取締役社長執行役員の中西です。本日はお忙しい中、株式会社キューブシステムの決算説明会にご出席いただき、誠にありがとうございます。
本日はスライドの順にご説明します。2025年3月期決算概況、第2次中期経営計画と進捗状況、最後に2026年3月期の業績見通しです。どうぞよろしくお願いします。
1-1 連結損益計算書概要
最初に、2025年3月期の決算概況について説明します。2025年3月期の業績は、売上高が183億5,100万円で前期比1.8パーセント増、営業利益が13億8,000万円で前期比10.1パーセント減、親会社株主に帰属する当期純利益が12億6,100万円で前期比18.2パーセント増となりました。
事業環境については、サービスの高付加価値化や人材不足を背景にした効率化など、DX需要がさまざまな業種で継続しています。基幹システムのクラウドへの移行や、利便性の向上に向けたシステム構築などのニーズも根強く、引き続きIT投資は拡大傾向です。
一方で、お客さまの計画の変更などにより停止した案件がありました。また、不採算案件の対応により営業活動が停滞し、受注が低調に推移しました。結果として、売上高は微増にとどまりました。
営業利益は前期比で減益となりました。その要因としては、人件費の増加、拠点拡大への継続的な投資があったことに加え、不採算案件も影響しています。詳細は後ほどご説明します。
親会社株主に帰属する当期純利益は、退職給付制度の改定による特別利益発生により、前期比で増加しました。
1-2 営業利益の増減要因(前期比較)
営業利益の前期からの増減についてご説明します。増益要因としては、受注案件の増加が利益に貢献したことに加え、既存案件における価格交渉などの収益改善によるものです。
減少要因としては、社員の処遇改善による人件費の増加、研究開発への投資、拠点展開などの生産体制の拡充、社員とのエンゲージメント強化の取り組み施策があります。これらの領域で、前期以上の支出を行いました。また残念ながら、不採算案件による利益の減少もありました。結果として、前期比で1億5,500万円の減少となりました。
1-3 ビジネスモデル別 売上高推移
スライドはビジネスモデルごとの売上高です。まず、デジタルビジネスについてです。デジタルビジネスは急激に規模が拡大するものではありませんが、着実に成果を上げることができました。2025年3月期は、エネルギー分野のIoT基盤構築に対応する機会がありました。またコンサルティングサービスを提供する機会も増加しました。これらのテーマは、今後もさまざまなかたちで発展・展開されるものと期待し、対応を進めたいと考えています。
SIビジネスについては、マーケットの需要は旺盛で、さまざまな分野でクラウド構築案件の受注機会がありました。しかしながら停止した案件の規模が大きく、残念ながら減少となりました。
エンハンスビジネスについては、これまでの取り組み、取引などから受注を進めてきました。既存案件からの派生開発案件の受注も堅調に積み上げることができ、増加となりました。
1-4 業種別 売上高推移
エンドユーザーを主要業種ごとに分類した、業種別の売上高の推移です。金融業については、証券市場基盤に関するテーマや、メガバンク向けの案件などが堅調に増加しました。反面、保険関係で減少があり、全体では横ばいとなりました。
流通業と運輸・通信業については、それぞれの中核となるお客さまのテーマの獲得が進まず、結果として前期を下回る水準となりました。
一方で、官公庁やエネルギー関連会社向け案件の領域が拡大しました。特に官公庁については、前期比72.0パーセントと大幅に増加しました。
1-5 事業スタイル別 売上高推移
事業スタイル別に分類した売上高の推移です。Sier向け事業については、旺盛な引き合いのあるSierからの案件が大幅に拡大しました。反面、他のSierではエンドユーザーである個別の企業の事情により、大型案件の中止や縮小などがあり、結果として横ばいとなっています。
プライム向け事業については、当社取引先の案件獲得が進み、増加しました。
サービス提供事業については、ソリューションベンダーとの協業が進展しました。このうち、テクノロジーソリューション分野では、構築案件の実績や運用支援の展開など、今後につながる成果が出てきています。結果として、サービス提供事業は増加しています。
1-6 1人当たり指標
スライドは、当社が重要な経営指標としている、従業員1人当たりのパフォーマンスについての数値です。まずは、スライド左側のグラフをご覧ください。2025年3月末時点の当社グループの従業員数は、グループ全体で918名となりました。国内従業員数は775名、海外子会社従業員数は143名という構成です。
採用については、新卒・キャリアの採用ともに強化し、継続的な成果を上げることができました。加えて従業員の処遇改善、社内のエンゲージメント向上施策などの効果もあり、離職率も低下しました。結果として、従業員数は堅調に増加しています。
従業員数が増加した一方で、売上高は微増、かつ営業利益は減少したこともあり、1人当たり売上高および営業利益については低下しました。
今後も採用の強化など人材の量的拡大を進めることを前提として、一層の生産性向上を図ります。そして利益向上を実現し、1人当たりの指標の改善に取り組みます。
1-7 自己資本およびROEの推移
当社は、資本効率および収益性の向上を図っていくことで、ROE14パーセント以上を継続的な目標として取り組んでいます。2025年3月期のROE実績は12.0パーセントとなりました。
今後も人的資本への投資に加え、事業創出に向けた投資や生産力向上に向けた投資を実行することで、利益率を高め、資本効率を高めていきます。
以上、2025年3月期決算概況についてご報告しました。
2-1 当社の目指す姿 ーサステナビリティ経営・価値創造モデルー
続いて、2025年3月期よりスタートした「ビジョン2026(以下、V2026)」第2次中期経営計画の概要、施策の取り組み状況についてご説明します。
最初に、当社のサステナビリティ経営についてお話しします。当社は、持続的に成長し続ける会社、そして持続的に社会に貢献し続ける会社でありたいと考えています。当社自身の企業としての成長を果たし、お客さまや社会、さまざまなステークホルダーの方々に貢献し続けられる会社を目指して取り組むという考え方です。
スライドの図は、当社の価値創造モデルです。当社は、インプットとしての人的資本や知的資本など、6つの資本の拡充を図りながら事業を進めていきます。また、事業成長は「V2026」第2次中期経営計画の考え方に沿って進めていきます。
その成果として、財務的価値と非財務的価値の創出を果たしていきます。そして、さまざまなステークホルダーのみなさまにそれを還元し、当社自身もその成果を活かしてさらなる成長を進める考えです。
これらの結果として、社会に貢献し続けられるよう取り組んでいきたいと考えています。
2-2 第2次中期経営計画の概要
スライドは第2次中期経営計画の概要です。第2次中期経営計画の方針を「第二の創業」と位置づけて進めています。
従来取り組んできた受託型ビジネスについては、Sier向け事業とプライム向け事業として取り組んでいます。Sier向け事業については、多くの受注機会を活かし、さまざまな業種での取り組みや社会課題の解決につながるテーマなど、広範囲に広げていきたいと考えています。また、先進技術にも積極的に取り組み、当社としての経験値、あるいは知的財産を積み上げていくことも狙っています。
プライム向け事業は、Sier向け事業で得られた経験・ノウハウを活かして、当社自身がお客さまに直接対応するスタイルです。難易度は高いですが、高付加価値のサービスを提供し、お客さまにご評価いただけるように取り組んでいきたいと考えています。
企画型ビジネスについては、サービス提供事業に注力して取り組んでいきます。具体的には、ソリューションベンダーと連携しながら受注機会を拡大していきます。加えて、ソリューションベンダーとの連携の中で技術やノウハウの蓄積を図り、当社自身のノウハウを磨いて競争力のあるサービスを作ることを狙っています。
この3つの事業スタイルを念頭に置いた上で、重点施策を推進していくことが重要だと考えています。
2-3 重点施策の取り組み ー2024年度の進捗状況ー
重点施策について、2025年3月期の進捗状況と2026年3月期の取り組みをお話しします。まず、2025年3月期の進捗状況です。事業基盤については、研究投資で成果を実感しています。当社発のサービスである「H・CUBiC」の構想、そして実装に向けた取り組みが進んでいます。また、社内公募による研究開発も推進することができました。そのテーマとして、生成AIを活用した業務効率化への投資などに取り組んでいます。
協業推進については、事業拡大という観点で重要だと考えています。従来の大手Sierやソリューションベンダーとの関係性を一層強め、受注機会の創出を進めていきます。今後の大きな成果を期待して取り組んでいます。
生産体制の強化については、整備が進捗していると考えています。具体的には、当社の海外子会社であるベトナムキューブの社員を日本に招聘し教育している他、国内での新たな開発拠点の準備も進んでいます。
一方で、品質の強化については、残念ながら一部の中小規模のプロジェクトのリスク対応で課題が顕在化しました。他にも不採算案件が発生し、その対応に多くの人員を割くことになり、受注機会の損失にもつながりました。2026年3月期はこの課題対策にしっかりと注力していきたいと考えています。
経営基盤については、人的資本の充実として「量的拡大」「質的向上」「意欲の向上」の3点を進めました。このうち「量的拡大」は、採用の強化で一定の成果を上げています。「質的向上は」個人の能力の向上を意味しています。研修体系の整備に加えて、社員のキャリアフィードの明確化、個々のキャリアアップに対する意識づけなどを行いました。体系化した研修についても受講が進み、能力向上は進展していると考えています。
また、エンゲージメント向上施策も実施し、意識の喚起も図っています。これらは重要な要素である社員の「意欲の向上」に関する取り組みと考えています。今後も継続して推進していきます。
2-3 重点施策の取り組み ー2025年度の取り組みー
第2次中期経営計画2年目となる2026年3月期については、引き続き重要施策の各テーマを推進していきます。特に、前期の課題であった品質の強化については、最優先で取り組みます。
今回の不採算案件の原因の1つとして、中小規模のプロジェクトでのリスク評価が十分でなかったことがありました。その対策として、プロジェクトの特性に応じたリスク管理の基準の見直しを徹底し、周知していきます。
また、見積もりや計画段階における品質レビュー、管理、フォローといったマネジメントシステムを再整備します。リスクを早い段階で検知し、対応する基本を徹底しながら、不採算案件の撲滅に努めます。
2-4 第2次中計の財務・非財務目標
財務目標値はスライドのとおりです。売上高については、2026年3月期で195億円、2027年3月期で230億円と拡大、成長を目指します。また収益性についても、高い水準を目標として取り組みます。
2-4 第2次中計の財務・非財務目標
第2次中期経営計画で掲げている財務・非財務の目標および進捗は、スライドのとおりです。財務目標については、成長性と高収益性を重視して取り組んでいきます。
財務目標のうち、1人当たり売上高については、社員の能力向上の取り組みと生産技術などへの投資により、達成を目指します。また、ビジネスモデル変革については、新しいビジネスのかたちを実績として積み上げていくことを目標としています。結果として、高い利益水準の実現を目指します。
非財務目標については、当社のありたい姿を目指したものです。スライド下段に示した5つの観点を持って、それぞれの実現に向けて取り組んでいきます。なお、観点の1つを「コミュニケーションの活性化」という表現から「エンゲージメント」に変更しております。
2-4 第2次中計の財務・非財務目標
非財務目標値はスライドのとおりです。ダイバーシティ促進では、さまざまな特性のメンバーが集い、活躍することを目指し取り組んでいます。中でも女性活躍については、係長級に占める女性の割合を増やすことを目標に設定しており、割合も増えてきました。
働き方改革については、高稼働な状況が継続していることを課題として取り組んでおり、改善効果が出てきています。引き続き、適正な稼働状況のもとで仕事ができるように取り組んでいきます。
エンゲージメントに対する目標としては、社員が仕事に対して今まで以上にやりがいを感じることを目指しています。そのために、社内にエンゲージメント向上委員会を発足させました。エンゲージメントに対する意識が高まりつつあるので、今後もさらに力を入れていきたいと考えています。
人材育成については、社員それぞれがキャリア形成の目標を持ち、取り組めるプラットフォームを整え、運用しています。個々人の能力向上の意識も高まり、研修の受講も進んできました。結果として、1人当たりの研修・教育の日数が増えるなど、学びたいことを積極的に学んでいく風土が整いつつあると感じています。
環境問題については、社会の重要課題と捉え、引き続き取り組んでいきます。
3-1 業績見通しの概要
2026年3月期の業績見通しについてご説明します。概要をスライドにまとめました。通期の業績見通しは、売上高が195億円で前期比6.3パーセント増、営業利益が17億5,000万円で前期比26.7パーセント増、親会社株主に帰属する当期純利益が12億2,000万円で前期比3.3パーセント減としています。なお、親会社株主に帰属する当期純利益については特別利益を見込んでいないため、前期比で減少となります。
今期の目標達成に向けては、領域拡大と収益性の改善がテーマと考えています。特にSier向け事業で領域拡大を図っていきます。具体的には、産業分野、金融分野および官公庁マーケットでの領域拡大に注力します。また、各企業で取り組みが非常に盛んなモダナイゼーションのテーマでも、拡大を狙っていきたいと考えています。
収益性の改善については、品質強化と生産性向上がポイントだと考えています。プロジェクトのタイプ別にリスクコントロールを見直し、品質強化と不採算案件の撲滅に取り組みます。また、AI技術などを活用した生産革新を進め、生産性の向上にも取り組んでいきたいと考えています。
なお、2026年3月期上期の業績見通しは、売上高が93億円、営業利益が5億4,000万円、親会社株主に帰属する当期純利益が4億6,000万円としています。
上期と下期の収支バランスについてご説明します。当社では、毎年一定数の新入社員を採用できており、上期は新入社員の育成に注力します。その後、下期ごろから順次、開発・製造工程のプロジェクトに新入社員が参画し、事業に寄与するという構造です。このような事業構造を踏まえ、収支などのバランスを考慮して見通しを作成しています。
3-2 事業スタイル別 売上高見通し
2026年3月期の事業スタイル別の売上高の見通しです。Sier向け事業については、これまでのSierとの協業関係を活かし、ワンストップサービスを推進することで拡大を図ります。例えば、経済安保の対応を念頭に、当社の海外子会社や国内開発拠点を活かした提案を進めていきたいと考えています。新たな領域の開拓なども、当社からのアクションにより積極的に進めていきます。
また、活況が見込まれるモダナイゼーション案件については、当社の強みであるクラウド技術やAI技術を活かし、事業拡大を図っていく考えです。
プライム向け事業について、既存顧客に対しては一層の関係性構築を進め、テーマを創出し拡大の機会を狙います。また、提案力を強化し、新規顧客の開拓も進めていく考えです。
サービス提供事業では、ベンダーとの連携が重要と考えています。具体的には、これまで培ってきたオラクル技術の強みを活かします。また、AWSやマイクロソフトとの取り組みでも当社の付加価値の創出を果たし、事業拡大を図ります。なお、当社初のサービスである「H・CUBiC」については、導入適用の実績を実現していきます。
3‐3 受注高・受注残高
受注高および受注残高の状況は、前期比で増加している状態です。ただし、今期の計画達成に向けて、いまだ十分な受注状況ではないため、今まで以上に案件獲得への取り組みを強化し、受注残高の拡大を図っていきたいと思います。
3-4 配当金および配当性向の推移
1株当たり配当金と配当性向の推移についてご説明します。当社は、株主さまへのさらなる還元を重要事項として、連結配当性向50パーセントを目安に取り組んでいます。
2026年3月期の1株当たり配当金については、中間で20円、期末で22円、合計で42円を予定しています。配当性向は51.8パーセントの見込みです。今後も収益性の向上に努め、安定した配当を継続していきます。
3-5 最後に
最後に、「V2026」では社員自らが志を持ち、ビジネスマインドを持ち、自ら考え、行動する、そのような姿になることを目指しています。社員一同、そうなろうという思いを共有しています。
「V2026」で目指すビジネスは、受託型のSler向け事業でも、受け身でもなく、主体的に取り組む姿勢を大切にしようと考えています。プライム向け事業、サービス提供事業も、当社社員が全体を掌握し、俯瞰した上で、仕事を進めることを目指しています。
このようなマインドを持って、「第二の創業」と位置づけた第2次中期経営計画を進めていけば、事業領域も広がり、経営やノウハウもさらに広がって、新しいサービスも生まれていきます。持続的に成長し、持続的に社会に貢献できる会社になっていくという考えです。
「V2026」第2次中期経営計画の2年目となる今期は、Sierやクラウドベンダーとの協業推進による領域拡大と、品質改善や生産性向上による収益性の改善の2つを念頭に取り組み、成果をあげる1年にしていきます。
今後も役職員一同、社業の発展に邁進します。引き続きご支援いただきますよう、よろしくお願いします。
私からのご説明は以上です。ご清聴、誠にありがとうございました。
質疑応答:今期業績予想の前提となる数字と想定従業員数について
司会者:「今期の業績予想の前提となる粗利率、販管費、投資額を教えてください。中期経営計画では投資額は4億1,000万円となっています。また、国内外の期末の従業員数も教えてください」というご質問です。
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