沿革

田村博之氏(以下、田村):代表取締役社長の田村です。本日はご多忙の中、当社の2025年3月期の決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。

今回初めてご参加いただく方もいると思いますので、スライドでは沿革を整理しています。1666年に創業し、今期は360周年という節目の年を歩んでいるところです。

当社のビジネスモデル

当社のビジネスモデルについて、スライド左側に仕入先を列挙しています。スライドのようなフィールドで販売先への販売、そして最終エンドユーザーへとビジネスを展開しています。

2025年3月期 通期実績

それでは、決算概要から始めて、最終的には株主還元方針までご説明を進めていきます。まず、2025年3月期の通期実績です。スライドの表で色付けしているところをご覧ください。すべての項目に関して、開示していた計画値には残念ながら届きませんでした。大変申し訳ございません。ただし、営業利益は157億円、経常利益は160億円と、この2項目に関しては3期連続で最高益となっています。

親会社株主に帰属する当期純利益は前期の118億円から13.3パーセント減益となりました。これは、昨年退職給付信託を解約したことにより32億円の特別利益が発生し、特別損失との差し引きで約12億円の利益を計上しました。これに対し、今期は約3億5,000万円のマイナスが立っています。そのため、前期比で16億円減の102億円となっているとご理解ください。

セグメント別実績

セグメント別については、後ほど今期の業績見通しでもご説明しますが、スライドの表の一番上にあるモノづくりのフィールドで大変苦戦しました。中でも、工業機械セグメントが大きく減収減益となっています。

一方、住設・管材・空調セグメントは健闘し、大きく増収増益となりました。したがって、営業利益は微増となり、過去最高益を確保できています。

連結貸借対照表

スライドはバランスシートです。当社のホームページからも本資料をダウンロードできますので、後ほどご覧ください。自己資本比率は37.8パーセントで、前期比2.8ポイント改善しました。

連結キャッシュ・フロー計算書

スライドは連結キャッシュ・フロー計算書です。前期に新本社の建設用地を購入した結果、投資活動によるキャッシュ・フローが大きく変動しました。最終的な現金及び現金同等物の期末残高は437億円で、前期比16億円増となっています。

2026年3月期 業績計画

2026年3月期の計画です。売上高5,500億円、営業利益177億円、経常利益180億円、親会社株主に帰属する当期純利益120億円としました。経常利益と親会社株主に帰属する当期純利益に関しては、昨年5月に発表した2025年3月期の計画値と同等です。

業界の見方ですが、まさにVUCAの時代が継続し、さらに不確実性が高まっています。工業機械セグメントの落ち込みに関しては、少しでも上がってくるのではないかという見通しの甘さゆえに、前期は結果として計画未達に終わりました。今期はいったん低水準から回復することは見込まず、前期同等の水準を維持する想定です。

一方、住宅・管材・空調セグメントは高止まり、まちづくりのフィールドは少し改善するだろうと見ています。後ほどご説明しますが、それ以外にも新しい戦略が活気を帯びていることから、このあたりでカバーして、売上高5,500億円はなんとしても達成したいと思っています。

現中期経営計画では、売上高5,760億円、経常利益200億円を当初からのゴールと定めて、走ってきました。途中、新型コロナウイルス感染症が拡大し、工作機械業界の構造変化がありました。そしてトランプ政権による関税政策の問題も含め、今回目標値を下方修正しました。ご理解いただきますようお願いします。

事業環境の認識と当社における取り組み

当社の事業環境です。スライド上段の内容は、一般的にみなさまも周知のものだと考えています。ただし、「ユアサビジョン360」を策定した2017年以降大事にしていることは、社会課題の解決に役立ちたいということです。それを成長戦略に掲げ、ビジネスにもつなげていくことを念頭に、これまで走ってきました。

ここ数年VUCAの時代が続く中、先ほど2025年3月期の業績をお伝えしましたが、3期連続で過去最高益となりました。

どれほど不確実な時代だろうと、社会課題というのは絶対的に存在します。スピードを上げて解決しなければいけないもの、あるいは熟慮した上で解決しなければいけないものなど、いろいろな課題があります。我々はどのような時代でも、社会にある課題に対して役立つような提案をし、ビジネスを成立させたいという思いで、これまで取り組んできました。

今期も同じ思いです。アメリカ経済の不透明感、あるいは日本企業が抱えている人手不足の問題など、いろいろな不確実性を包括して社会課題を見つけ、それに対して解決提案をすることで、業績を確保していきたいと考えています。

事業環境の認識と当社における取り組み

スライドでは、セグメント別の取り組みを整理しています。表の一番右側は、グループ全社で展開しているテーマです。こちらに関してご説明したいと思います。

Growing Together 2026 基本方針

中期経営計画「Growing Together 2026」の進捗についてご説明します。昨年、一昨年の決算説明でも同じようなスライドをご覧いただきました。スライドのような考え方を中期経営計画の基本方針としています。詳細は後ほどご確認ください。

ユアサビジョン360の進捗と計画

「ユアサビジョン360」を3年ごとに分けたものが「Growing Together」で、こちらの肝となるものがスライド下段のグラフです。カラフルに色付けした部分は成長戦略の進捗によって得られた売上高を示していますが、2023年3月期には全体の約25パーセントが新しい分野での売上となっています。

これに対し、2025年3月期は売上高も増加しましたが、全体の約35パーセントが新しい分野での売上となっています。今期1年かけて、さらに35パーセントから約49パーセントに持っていき、金額で約1,927億円から約2,860億円にしたいと計画しています。各成長戦略の名称については、右下に記載しています。

ビジネスフィールド別売上構成比

事業ポートフォリオについてです。2025年3月期決算においては、すまいづくり・環境づくりが39パーセント、モノづくりが34パーセント、まちづくりが19パーセントとなりました。

事業ポートフォリオの強化

時系列で見ていくと、「ユアサビジョン360」を開始した2017年3月期の時点では、モノづくりが39パーセント、すまいづくり・環境づくりが31パーセント、まちづくりが13パーセントという構成でした。

そこから先ほどお伝えした数字に変わってきています。全体的な売上も上げながら、このような事業ポートフォリオにたどり着きました。工業機械セグメントの落ち込みがもう少し早く改善していれば、事業ポートフォリオのバランスはさらに良くなったかと思いますが、落ち込みが長引いている結果、少しアンバランスになっています。ただし、構造変革により、機械系商社あるいは機械系メーカーに比べれば悪影響が薄まっていると考えています。

成長戦略

9つの成長戦略について、スライドは「◎」「◯」「△」「✕」で進捗を自己採点しています。

ご覧のように、レジリエンス&セキュリティは計画を達成しました。グリーンや介護・医療は良い伸びを示しています。全体でも3分の2はクリアしているため、「◯」の評価となっています。一方で海外、デジタル、シェアリングは「✕」でした。このあたりについてご説明していきます。

成長戦略:海外戦略

まずは、海外戦略についてです。昨年もお話ししたとおり、2月5日から3日間、タイで当社最大のプロモーションである「YUASA Grand Fair」を開催しました。結果は後ほどお話ししますが、先に動画をご覧ください。

(動画流れる)

画像は開会式の様子です。駐タイ全権大使も駆けつけ、お祝いをいただきました。また、タイ側からも要人をお招きして展示会の評価をいただいたり、日本からも工作機械メーカーの代表をお呼びしました。

タイでも展示会は数多く開催されていますが、専門的な展示会しかありません。「YUASA Grand Fair」の特徴は、工作機械もあれば住宅設備もあり、建材関係や建設機械もある、総合的な展示会とご理解いただけたらと思います。

目標来場者数は5,000人、目標受注額は30億円と置いていましたが、結果として6,111名の方にお越しいただき、受注額は先月末時点で16億円を超えています。さらに、有力商談が50億円強あります。有力商談をクロージングに向けて展開し、目標の30億円は達成できると考えています。

また、出展していただいたメーカーは206社となりました。日本からも当社の重要顧客のみなさまを153社、475名ご招待し、展示会ならびにタイの文化を実感いただくツアーを実施しました。この他、将来の海外事業を担う若手41名にも参加を呼びかけ、現地の雰囲気を肌で感じてもらいました。

次に、現在戸建を1軒借りて、新たなモデルルームを準備しています。そこに住設・空調および建材・エクステリアにおいて当社が推薦したいものを織り込んでいるところです。

スライド右側には、拠点戦略を掲載しています。前期はインドのプネとチェンナイに2拠点を追加しました。ベトナムにはハノイとホーチミンに加え、ダナン支店を開設しています。なお、インドの本社はグルガオン、ベトナムの本社はホーチミンにあります。これらの地域でも、積極的に展開していきたいと考えています。

成長戦略:グリーン

グリーン戦略は順調に進んでいます。スライドのとおり、当社は省エネ診断から商品の提供まで、ワンストップですべてを提案・提供できる体制を整えています。これは当社の強みの1つだと考えていますので、今後も強力に展開していきます。

成長戦略:デジタル

デジタル戦略は少し遅れています。ロボティクス関係について、スライド左側に新たな取り組みをまとめました。物流業界における人材不足という課題に対して、「LOGI CRAFT(ロジクラフト)」と銘打ち、総合的に物流の自動化を提案していきたいと考えています。

この他、AIを搭載した外観検査装置を発表しています。その1つが「F[ai]ND OUT EXW」です。こちらは日刊工業新聞社の「ものづくり賞」を受賞しました。新たにラインナップ機を追加していますので、動画をご覧ください。

(動画流れる)

他社にも寸法の計測だけができる装置はありますが、当社オリジナル商品「F[ai]ND OUT EXW」は、寸法の計測および外観検査が一体化されていることが特徴です。

成長戦略:シェアリング

シェアリング戦略は進捗が良くないため、発展に拍車をかけるために、2025年2月末に1社のM&Aを行いました。ラインナップという名古屋に本拠地を置く企業です。イベント設営時に人員を派遣し、設営などを行っています。またファニシング事業として、企業の移転やレイアウト変更時の設営業務も行っています。

当社は社員154名の規模ですが、アルバイト登録者を1万2,000人有しています。さらに、当社グループにはシェアリング事業の核となるユアサマクロスという会社が参画しています。ユアサマクロスとの相乗効果を生み出し、シェアリング戦略を加速させるという考えのもと、M&Aを実行しました。

成長戦略:レジリエンス&セキュリティ/シェアリング

レジリエンス&セキュリティおよびシェアリングに関する成長戦略をご説明します。レジリエンス&セキュリティはすでにゴールを達成し、大きな成果を上げている戦略の1つです。

スライドの画像は、当社グループの富士クオリティハウスが開発したコンテナです。現在、建設現場やゼネコンの工事現場で宿泊施設が不足しており、このコンテナを宿泊所として活用できないかと考えています。

宿泊所不足の主な要因の1つとして、インバウンドで増加した訪日外国人がホテルを利用している状況が挙げられます。このような状況に対応するため、このコンテナを現場に運び込み、作業員の宿泊所として使っていただきたいと思っています。

さらに、発生したら困ることではありますが、地震などの災害発生時には、復興・復旧支援に向かう作業者や医療関係者の宿泊施設としても活用できます。このように、平時は建設現場での宿泊施設として、有事は災害復興支援の拠点として機能することを想定しています。

実際の使用例を示した動画があります。参考にご覧ください。

(動画流れる)

このような特徴から、「コンパク」という名前を付けました。社会課題に対する強力な提案の1つとして、これからの展開に注力していきたいと思っています。

風土改革・DX推進・サステナビリティ推進

スライドは風土改革、DX、サステナビリティについてまとめたものです。風土改革の一環として、先ほど触れたように、総合職・一般職の区別なく、将来有望な若手社員41名に、タイでの展示会を経験してもらいました。

スライド右側には、タイ新社屋の写真を掲載しています。屋上には中国製・日本製両方のソーラーパネルを設置し、社内電力の自給を目指す取り組みを推進しています。

成長投資の進捗

投資についてご説明します。すでに発表したとおり、3年間で212億円の投資を計画しています。このうち現在、成長戦略投資に72億9,000万円、DX・ITデジタル投資に108億5,000万円、合計181億4,000万円の投資を実行している状況です。今期も投資効果を考えながら、成長戦略投資およびDX・ITデジタル投資を実行していきます。

Growing Together 2026 定量計画

業績に関するKPIです。業績については先ほどご説明したため、ここでは説明を割愛します。ROEは前期の12.0パーセントから9.7パーセントに下がる見込みです。冒頭でお話ししたとおり、前期は親会社株主に帰属する当期純利益で特別利益を計上しましたが、今期はそれがないことが要因です。2026年3月期には11.8パーセントに回復させたいと考えています。

株式のKPIとしては、株主還元率33パーセント以上を設定しています。2025年3月期は業績未達となりましたが、みなさまとの約束を守り(1株当たり年間配当金を190円とした結果)、39.4パーセントで着地しました。株主資本配当率(DOE)はスライドのとおりです。

Growing Together 2026 定量計画

業績以外のKPIです。女性管理職比率については最終確認中ですが、前期から少し低下しています。もう一度すり合わせを行い、対策を講じていきます。

一方、女性総合職比率は順調に上昇してきています。これは女性総合職の採用率に関係しており、2025年3月期の採用率は19.0パーセントでした。現在は、来年の女性総合職の入社比率を12.0パーセント以上とすべく、採用活動を実施しています。

有給休暇取得率は少し低下しました。目標の70.0パーセントに対し、前期は67.8パーセントまで伸びていましたが、2025年3月期は残念ながら64パーセントへと低下しています。こちらも、あらためて各拠点・事業本部において意識改革を徹底していきます。なお、平均労働時間は目標達成に向けて順調に減少しています。

マネジメント人材の育成も順調ですが、デジタル人材の育成は少し足踏み状態です。現在DX開発を進めていますが、そちらにどうしても人材や時間を配分せざるを得ず、育成面が少し手薄となっています。今後はDX開発の進捗状況を見ながら、育成体制の立て直しを図っていく方針です。

株主還元方針

株主還元方針です。2025年3月期末の配当は、約束していたとおり118円で実行します。年間配当は190円となり、配当性向は39.4パーセントとなります。2026年3月期は中間配当を76円、期末配当を114円とし、年間では前期同額となる190円の配当を予定しています。配当性向は33パーセント以上となる見込みです。

スライドのように、DOEは約束していた3.5パーセントの水準を超えて推移しています。

資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応

資本コストの説明をまとめました。詳細は後ほどご参照ください。会社の品質を表す指標の1つである売上総利益率については、2020年3月期の9.6パーセントに対して2025年3月期に11.2パーセントになりましたが、当社はまだ満足していません。現在、改善傾向にあります。

成長戦略割合も35パーセントまで進捗しています。これを49パーセントまで引き上げようと、邁進しているところです。

商号変更予定について

商号変更についてのお知らせを、決算の開示と同時に行いました。当社は1666年から始まり、スライドのように屋号・商号が変遷してきました。直近では、1992年にユアサ産業との合併により「ユアサ」をカタカナ表記とし、「ユアサ商事株式会社」という商号となりました。

このたび「商事」という言葉を外すことを検討し、商号の変更を予定しています。「商事」の英語訳は「トレーディング」で、海外の現地法人の一部は「YUASA TRADING」という商号を使用しています。しかし先ほどもお伝えしたように、現在は会社全体がオリジナル商品の開発にシフトしている状況です。

また「ユアサ」についても、カタカナ表記を継続するかどうか議論しました。その結果、来年の創業360周年とその先の400周年を見据え、アルファベット表記に変更することにしました。6月25日の株主総会に定款変更の議案を出し、可決・承認いただければ、来年4月に新しい商号へ変更したいと考えています。

足早となりましたが、以上が私からのご説明となります。聞き取りづらいところがあったかもしれず、申し訳ございません。ご清聴ありがとうございました。

質疑応答:工業機械セグメントの落ち込みと今後の見通しについて

司会者:「工業機械セグメントの落ち込みおよび今後の見通しについて、どのように考えていますか?」というご質問です。

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