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中村正幸氏:株式会社丸運代表取締役社長の中村です。2025年3月期の丸運グループ連結決算についてご説明します。
本日は、会社概要、事業内容、決算概要、配当、2024年度下期のトピックスについてお伝えできればと思います。
会社概要
当社の歴史は古く、創業が明治25年、西暦1892年で創業130年を超える老舗企業です。現在、東京証券取引所のスタンダード市場に上場しています。
当社グループは、2025年3月末日現在、グループ全体で2,158名の従業員が所属しています。総合物流企業として、一般貨物や石油・潤滑油・化成品を中心に、輸送、保管、梱包、据付などの事業を展開しています。
事業内容
当社の事業内容についてご説明します。当社には、大きく分けて4つの事業があります。
まずは、トラック輸送や保管から梱包まで幅広い物流サービスを提供する貨物輸送事業です。営業収益の規模でいうと約50パーセントを占めています。
次に、石油製品の配送や潤滑油化成品などの輸送・保管を担うエネルギー輸送事業です。
そして、日本での輸出入の手配や通関などのサービスおよび中国・ベトナム現地において物流サービスを提供する海外物流事業です。
最後に、製油所や油槽所(タンクターミナル)の業務を受託し管理を行うテクノサポート事業です。
当社は、この4つの事業を柱として、強みである貨物輸送とエネルギー輸送の両輪経営を行ってきました。国内外の充実した物流ネットワークを活用し、多種多様な貨物に対応した最適な物流サービスを提供することで、同業他社との差別化を図ります。
決算サマリー
2025年3月期の決算概要についてご説明します。
まず、当社を取り巻く環境ですが、物価の高止まりや米国の政策変動による懸念があったものの、好調なインバウンド需要の継続、賃上げの効果などにより、個人消費は緩やかに回復しました。さらに、脱炭素化に向けた取り組みや、人手不足対応などを背景としたデジタル化などの進展に伴い、企業の設備投資は拡大傾向が続き、景気は回復基調となりました。
また、物流業界においては、地政学的な要因と円安によるインフレの進行、燃料費の高騰や深刻な人手不足など、業界を取り巻く環境は依然として厳しい状況が続いています。
貨物輸送数量は、個人消費の回復基調を受け、消費関連貨物は堅調に推移し、前期比プラスの荷動きとなりました。しかし、生産関連貨物は、鉄鋼、化学工業品および石油製品等が減少し、加えて、鉱工業生産も低調に推移したことから、前期比マイナスの荷動きとなりました。さらに、建設関連貨物も、大規模土木工事や住宅投資が引き続き低迷していることから大幅に減少し、前期比マイナスの荷動きとなったことから、全体として国内の貨物総輸送数量は、前期を下回る状況で推移しました。
このような経営環境の中、当社グループは、長期的な企業価値の向上を目指した「2030丸運グループ長期ビジョン」の実現に向け、2023年度を初年度とする第4次中期経営計画を策定し、適正運賃・料金の収受および提案営業力とコスト競争力の強化に取り組んでいます。
その結果、当連結会計年度の営業収益は、取り組んできた運賃・料金改定の効果により、前期比2.6パーセント増の461億4,500万円となりました。
経常利益は、既存顧客の荷動きは減少したものの、運賃・料金改定による増益の影響が大きく、また前期に比べ物流拠点の大規模修繕費用が抑えられたことから、前期比6億9,600万円増の14億100万円となりました。
損益計算書(P/L)
このスライドでは、前期と比較した損益計算書を示しています。
当社グループは、現在、長期的な企業価値の向上を目指した「2030丸運グループ長期ビジョン」の実現に向けて、2023年度を初年度とする第4次中期経営計画を策定し、適正運賃・料金の収受及び提案営業力とコスト競争力の強化に取り組んでおり、徐々に効果が出ています。
その結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、投資有価証券の売却等の特別利益もあり、前期比7億円増の11億1,600万円となりました。
経常利益の増減要因
経常利益の増減要因を分析すると、最も大きな要因として挙げられるのは、運賃・料金の改定が進展したことです。また、前期ほど物流センターの修繕費用が発生しなかったことも増益に貢献しています。
反面、既存のアルミ材輸送や流通加工業務の取扱が全般的に低調に推移したことや、2024年問題に対応するための人件費や協力会社への支払いが増加したことが、減益要因に挙げられます。
結果、経常利益は、前期比6億9,600万円増の14億100万円となりました。
セグメント別状況
貨物輸送事業においては、アルミ材輸送および流通加工業務の取扱量減等による減収要因があったものの、運賃・料金改定の進展による収支改善および鉄道コンテナ輸送業務での取扱量増等の増益要因に加え、前期ほど物流拠点での大規模修繕費用が発生しなかったことにより、減収増益となりました。結果、営業収益は前期並みの224億400万円、経常利益は前期比4億5,200万円増の5億1,700万円となりました。
エネルギー輸送事業においては、石油輸送事業における、石油製品の内需減の影響等により、輸送数量が前期比3.6パーセント減少となりました。潤滑油・化成品事業において、自動車関連向けの配送が低調に推移したことに加え、溶剤等の需要減により前期比5.9パーセント減少となりました。
収支については、ドライバー等の待遇改善を目的とした賃金改定や協力会社への運賃支払増はあったものの、主要顧客の運賃・料金改定による営業収益増に伴い、増収増益となりました。結果、営業収益は前期比4.6パーセント増の163億3,500万円、経常利益は前期比1億2,800万円増の5億8000万円となりました。
海外物流事業においては、中国国内での日欧系自動車メーカーの販売不振により、主要顧客の輸送量が減少したものの、国際事業における航空貨物の取扱量増、半導体需要の回復に伴う輸出量の増および運賃・料金改定等により、増収増益になりました。結果、営業収益は前期比6.3パーセント増の54億6,000万円、経常損益は前期比4,100万円増の2,400万円の損失となりました。
テクノサポート事業においては、油槽所関連では業務受託料の見直しにより減収となったものの、製油所関連では構内作業および緑化作業の受託料改定、並びに配送業務の取扱量増等により増収増益となりました。結果、営業収益は前期比7.3パーセント増の19億1,600万円、経常利益は前期比9,400万円増の1億4,300万円となりました。
貸借対照表(B/S)
2025年3月期末における総資産は369億500万円となり、前期末とほぼ同等の水準になりました。この主な要因は、現金および預金の増加3億6,000万円、有形固定資産の増加1億8,800万円、無形固定資産の減少3億6,300万円並びに政策保有株式を含む投資その他の資産の減少1億1,600万円等によるものです。
負債は112億1,100万円となり、前期末に比べ6億7,000万円減少しました。この主な要因は、返済による借入金の減少10億円、および未払法人税等の増加3億800万円等によるものです。
純資産は256億9,400万円となり、前期末に比べ6億8,900万円増加しました。この主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益を11億1,600万円計上したことによる増加、配当金の支払による減少2億8,800万円、およびその他有価証券評価差額金の減少8,400万円等によるものです。結果、自己資本比率は前期末の67.1パーセントから68.9パーセントとなりました。
キャッシュフロー
キャッシュフローについてご説明します。前期末に比べ、資金は2億1,600万円増加し、21億7,400万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、営業活動による資金の収入が、税金等調整前当期純利益の増加等により、6億6,600万円増加しました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、投資活動による資金の支出が、車両等の固定資産の取得による支出が増加したことにより、4億5,400万円増加しました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、財務活動による資金の支出が、長期借入金の返済による支出の減少等により、1億6,600万円減少しました。
業績予想(2026年3月期)
2026年3月期通期業績予想についてご説明します。
まずは、当社を取り巻く事業環境ですが、国内において地政学的な要因と円安によるインフレの進行、中国経済の成長鈍化、米中貿易摩擦等に伴う貿易量の低迷に昨今の米国の関税政策等により不確実性が増しています。
また、物流業界においては、国内貨物輸送数量は昨年に引き続き前年を下回る状況で推移すると予測されており、ドライバー不足への対応を含め、課題が山積している状況です。
これらを踏まえ、前年度は運賃・料金の改定が収益の改善に大きく寄与しましたが、今年度は貿易面での不確実性に伴う主要荷主の荷動きの低下、貿易量減少等の収益下振れリスクの発生が見込まれます。また、持続可能な物流サービス維持のため、人材の確保、作業環境改善、法対応を含むDXのさらなる実装等のコスト増が見込まれます。
このような情勢を踏まえ、2026年3月期の業績予想は、営業収益が467億円で、経常利益が11億円と予想しています。
配当金の推移と予想
当社は、株主還元として配当が最も適切な方法であるとの考えのもと、年2回の配当を着実に実施しています。
一昨年11月に「資本コストと株価を意識した経営の実現に向けた対応」で公表しましたが、 2024年3月期以降の株主のみなさまへの利益還元策については、連結配当性向50パーセント以上を目途として配当を実施することとしています。また、安定的な配当の継続にも配慮し、単年度1株当たり8円の配当を下限としています。
以上の方針を踏まえ、2025年3月期の配当は、業績がおおむね順調に推移していることに加え、投資有価証券売却額を原資とした特別配当3円を見込み、前年から10円増配の1株当たり19円とする予定です。
また、2026年3月期の配当予想については、業績予想を経常利益11億円としていることから、1株当たり12円とする予定です。
中村運輸機工の全株式を取得/リサイクル事業の実証実験に参画
トピックスとして、2つご紹介します。
まずは、当社グループが成長分野と位置づける機工事業におけるM&Aです。機工事業に永年の経験と優れた技能を保有する中村運輸機工の株式を100パーセント取得する本契約を締結し、当社グループに迎えることで、優秀な人材や車両を確保し、中長期的に機工事業の拡充を図ります。
また、同じく成長分野と位置づけるリサイクル事業における実証実験の参画です。現在、当社では2つの実証実験に運送の分野で参画しています。スライドにある実証実験のイラストは、マヨネーズボトルの再利用におけるスキームになり、2025年2月よりボトルの回収の現場で参画を始めています。
当社は、ESG経営において循環型社会の形成を重要課題の1つと認識しており、本実証実験に参画することにより、リサイクルの普及拡大に貢献し、長期ビジョンの達成および環境負荷の低減の一助につながることを期待しています。
本資料の取り扱いについて
創業以来、変革精神で時代のニーズに応じた物流サービスを提供してきた、丸運グループの2025年3月期決算についてご説明しました。当社は、今後も長期ビジョン並びに中期経営計画に従い、企業経営の変革に取り組み、持続的成長と企業価値向上に努めます。引き続きよろしくお願いします。