AGENDA

大河原誠氏(以下、大河原):取締役の大河原誠です。みなさま、本日はお忙しい中、当社の決算説明会にお集まりいただきまして誠にありがとうございます。

本日の目次です。まず第1部は、2024年度業績ハイライトおよび実績についてご説明します。第2部は、2022年度から2024年度の中期経営計画の結果、第3部は、2025年度から始まる新たな中期経営計画について、代表取締役社長の原からご説明します。

なお、2026年3月期から従来の「ネットワーク事業」のセグメント名称を「サイバーセキュリティ及びその他ITソリューション事業」、略して「サイバーセキュリティ事業」に変更します。

本プレゼンでは、2026年3月期、つまり2025年度以降の内容に関しては「サイバーセキュリティ事業」と名称変更しています。

2024年度 業績ハイライト

2024年度の業績ハイライトについてご説明します。まず連結全体では、売上高が1兆342億円、営業利益が396億円と、前年に比べて若干の増収ではあるものの、大幅な減益となりました。

直近の計画では営業利益を445億円としていましたが、遺憾ながらこれに対しては未達となりました。

中身を見ると、半導体事業については、当社の主力である産業機器向けの弱さが年度を通じて続いており、これが足を引っ張って大幅な減益となりました。こちらは収益率が高い分野のため、この減少は売上以上に利益に影響して、利益率が下がっています。

一方でネットワーク事業は、エンドポイントセキュリティ関連商品が好調で、年度を通じて国内、海外ともに20パーセントを超える成長を実現しました。

2025年度の計画については、売上高1兆500億円、営業利益420億円を見込んでいます。前提として為替レートは1ドル140円とし、現状レベルで若干の円高を見込んでいます。また、トランプ関税については、直接的な影響はあまりないという認識のもとで計画を作っています。

当社がアメリカに販売している半導体は、数量的に非常に小さいです。中国に対しての販売はそれよりもかなり大きいですが、そのうち原産地がアメリカであるなど、中国で報復の関税を課せられるような対象製品は非常に少ないことから、直接的な影響はほぼないと見ています。

一方で、当社のお客さまである産業機器、自動車関連の企業の業績が大きく動くことは十分想定されるのですが、残念ながら、ここまでは今回の計画では織り込んでいません。結果として、市場全体としては、半導体事業については上期までは今のような停滞が続き、下期から若干回復してくる見通しです。

一方で、サイバーセキュリティ事業については、国内外ともに高い成長率が続くだろうという前提をもとに作っています。

配当の状況です。2025年度の配当については70円と、2024年度から据え置きとしています。今回の中期経営計画での還元方針としては、総還元性向を、従来の30パーセントから50パーセントから幅を狭めて、40パーセントから50パーセントにしています。

DOEについても5パーセントと、従来4パーセントより若干引き上げます。これを基本的な方針とし、この枠内で当期も70円の配当ということにしています。

セグメント別:売上高

セグメント別売上高の2023年度と2024年度の比較です。先ほど申し上げたとおり、半導体事業が低迷する中でネットワーク事業が好調となっており、構成比でもネットワーク事業が2023年度の12パーセントから2024年度には15パーセントとなっています。

利益率はネットワーク事業のほうが高いため、売上でいうところの15パーセントが、利益ベースだと3割ぐらいまでネットワーク事業が高まっている状況です。

半導体事業(用途別):売上高

半導体事業の用途別の売上高です。この中で大きいのはグラフの下2つを占めている産業機器と車載です。一見しておわかりになるように、産業機器が非常に低迷しており、前年比26パーセントの落ち込みとなっています。一方で、車載は41パーセント増と健闘しています。

産業機器の弱さの最大の要因は、私どものお客さまである日本の製造業の中国市場での弱さだと思っています。

一方で車載については、日本のOEMが我々の販売のおよそ8割を占めていますが、市場自体は横ばいであるものの、グローセル社の連結およびその他の商流の移管等があってシェアを拡大したということで、ここは市場自体の伸び以上の当社のパフォーマンスになっていると思っています。

半導体事業(品目別):売上高

半導体事業の品目別売上高です。この中で大きいのはその他標準ICとアナログです。この両方とも産業機器および車載のところが大きくなっています。

その他標準ICのほうは、産業機器の落ち込みを車載の増分が上回ったということで増加しています。アナログのほうは、逆に産業機器の低迷が響いて、前年比でマイナスになっている状況です。

ネットワーク事業(品目別):売上高

ネットワーク事業の品目別売上高です。スライドはいつもお見せしているハードウェアとソフトウェアの比率です。ソフトウェアの比率が一段と高まって今72パーセントから75パーセントまできています。

ハードウェアは、SaaS化の流れが止まらず、横ばい強で比率を落としているかたちになっています。

サービスのウェイトは変わらず、売上としては堅調なところですが、この中には当社の独自サービスの伸びが効いているところがあります。

グループ業績

原一将氏(以下、原):代表取締役社長の原です。私から、2022年度から2024年度の中期経営計画の結果についてご説明します。

スライドのとおり、この中期経営計画期間では売上高1兆円を超える大きな成長となりました。また、最終年度は目標値に届かなかったものの、2019年度から2021年度の中期経営計画期間での連結当期純利益の累計に比べて、この2022年度から2024年度の累計金額は約2.7倍となる1,144億円まで増加しました。

これにより、配当や自己株買いなど、株主のみなさまへの還元を進めることができました。

グループ業績

中期経営計画期間における半導体事業、ネットワーク事業の業績推移です。半導体事業は2021年度比プラス約2,000億円の売上高約8,800億円、ネットワーク事業は2021年度比プラス約700億円の売上高1,539億円という結果になりました。

CPSソリューション事業については、売上目標の120億円は未達となったものの、2021年度比で2倍以上となる93億円まで伸ばすことができました。

営業利益については、継続的な人員投資や、ケイパビリティ獲得のためのM&Aなどを行った関係で赤字が増加していますが、こちらは長期におけるビジネス拡大のための先行投資と捉えています。

なお、スライドの半導体事業とネットワーク事業の数字は、CPSソリューション事業の数字と重複して記載しています。

中期経営計画(2022-2024年度)の振り返り/エグゼクティブサマリー

前中期経営計画のテーマ別のエグゼクティブサマリーです。半導体事業は新型コロナウイルスによる需給バランスや米中貿易摩擦の影響を受けたものの、3年間のCAGRは約9パーセントの成長となっています。

中期経営計画期間の後半は市場が調整局面に入ったものの、3年間の営業利益の総額で見ると2019年度から2021年度の累計442億円に対し、2022年度から2024年度の累計は約3倍の1,383億円と、全体的には大きく収益を上げることができました。

またグローセル社の買収による商圏の獲得、人員の強化を行うとともに、海外における事業譲渡、そしてインドの法人設立等もすべて終わりました。

ネットワーク事業は全体でCAGR約23パーセントと、大きく成長することができました。セキュリティ市場におけるシェアも順調に伸ばしています。また自社のオリジナルサービスである「ASM(Attack Surface Management)」は国内市場シェアNo.1を獲得するなど、新しい挑戦も結果が出始めています。

CPSソリューション事業は、CAGRで約33パーセント成長しています。自社サービスも累計で21サービスにのぼり、売上が拡大すれば高い収益性を得られる見込みです。立ち上がりが比較的早いスマートシティ&モビリティにおいては、自動運転EVバスの各市町村での実証実験運行と定常運行において着実にその地域を拡大し、実績を積み上げることができています。

経営基盤の強化としては、監査等委員会設置会社へ移行し、監督と執行の役割を明確化しました。

IR/SRにおいても力を入れ、海外ロードショーを開始し、たくさんの海外投資家のみなさまへ当社の事業や将来のビジョンについて理解を深めていただく取り組みを実施しました。

加えて、統合報告書のリリース、ホールディングスのホームページのIRサイトの刷新、決算短信やすべての適時開示の日英同時開示を東証ルール変更の1年前倒しで実施するなど、投資家のみなさまとの対話の充実を図ることができました。

コーポレートブランディングにも力を入れ、ロゴやキービジュアルなど、ブランドを刷新し、テレビCMや広告といったメディアリレーションの強化も行いました。

半導体事業

事業ごとのより詳細な振り返りについてご説明します。まずは半導体事業についてです。この中期経営計画期間において、半導体市場のコロナ禍からの回復に伴って半導体の需要が急増し、2022年は過去最高水準の市場規模となりました。

しかしながら、2023年は一転して中国経済の鈍化も始まったことで大きく需要が減少し、在庫調整が始まりました。当社の注力市場でもある産業機器市場においても、この流れを受けて2023年から需要の停滞が続いています。

一方で、2023年から生成AI向け市場が急速に立ち上がり、市場を牽引し、GPUやメモリなどの最先端半導体の需要は急激に増加することとなりました。

このような市場環境の中で、当社の成長戦略である市場シェア拡大を力強く推し進めてきました。結果として、半導体事業全体の国内市場シェアは2021年度の約13パーセントから2024年度には20パーセントと、約7パーセントシェアを拡大することができました。

半導体事業全体ではCAGR約9パーセントの成長で、特に車載は、車載向けマイコンなどで、優秀なエンジニアを多く抱えるグローセル社を買収したことにより新たな顧客を獲得し、さらなる市場でのシェア拡大を行い、CAGR約42パーセントの成長となっています。

半導体以外の付加価値ソリューションについては、GPUサーバーやデータセンター向けの通信モジュールなどを中心に、CAGR約11パーセントの成長となりました。新規サプライヤについても17社と新たに契約を締結し、長期成長のためのソフトウェアや、AI関連のサプライヤを獲得できています。

この他、韓国における事業譲渡やインドの法人設立など、グローバル戦略も着実に進めています。

ネットワーク事業

ネットワーク事業においては、CAGR約23パーセントの成長で、売上高も1,500億円を超えました。

カテゴリ別に見ても、CAGRは、国内セキュリティが約20パーセント、国内BigDataが約22パーセント、国内アプリケーションが約17パーセント、海外においては約34パーセントと、全領域で順調に成長しています。

国内セキュリティ製品市場におけるシェアも約18パーセントと、この3年間で約7パーセント伸長させることができました。

また、長期的な成長に必要な新しい商材の開拓についても、3年間で27社の新規サプライヤと契約を進めました。

海外展開においても、2021年度は海外9ヶ国に進出していましたが、2024年度には22ヶ国まで拡大しています。

CPSソリューション事業

CPSソリューション事業のCAGRは約33パーセント、売上高93億円まで伸ばしました。先行しているスマートシティ&モビリティはCAGR約57パーセントで45億円、スマートマニュファクチャリングはCAGR25パーセントで7億円になっています。

6つの自社サービスでCPSプラットフォームを活用しており、データで価値を作るビジネスの開発を進めています。

CPSソリューション事業では、お客さまが既存事業とは異なるケースも多くあり、新たな分野における得意先の獲得も順調に増加しています。

かねてよりご説明してきましたが、CPSソリューション事業は当社が得意とする、世界中の最先端技術を持つ製品の高付加価値ディストリビューションモデルで新しい市場に参入し、ドメインナレッジやパートナーを含めたインテリジェンスを獲得し、その上で自社サービスを作っていくというプロセスで事業を進めています。

この中期経営計画の3年間で、高付加価値ディストリビューションのサプライヤ数は約2倍、パートナー数は約3倍に増え、こうしたエコシステムの中で累積21の自社サービスをリリースすることができました。

先行しているスマートシティ&モビリティの主軸である自動運転EVバスは、実証実験運行数は10から50へ、定常運行数は2から6へと順調に拡大しています。実証運行は2024年度に大きく伸びたため、今年度以降に定常運行がさらに伸びていくと考えています。

経営基盤強化

コーポレート部門の振り返りです。当社の競争力の源泉である人的資本の最大化に、継続的に力を入れてきました。組織力をモニタリングする指標は継続して上昇しており、前中期経営計画期間も社員のエンゲージメントやスキルアップなどができる環境を強化することができました。

DXの成果も大きく表れました。基幹システムの刷新により、オペレーションの効率化と自動化が進み、1人当たりの受注残処理件数は、プロジェクト開始前の2020年度と比較すると、ピーク時は3.6倍もの効果を出すことができました。今後、半導体の市況回復時にこのケイパビリティが生きてくると考えています。

財務面では、在庫や債権、債務といったバランスシートの管理を強化し、工夫することによって、定常的に営業キャッシュフローの水準を向上させることができました。

運転資本回転率に関しては、在庫調整局面の影響で目標である3.8に対して3.4という結果となりましたが、継続した課題として取り組んでいきます。

IR戦略の強化に関しても、結果を残せた3年間でした。投資家のみなさまとの対話の機会を3倍以上に増やしました。私自身も、年間100件を超える投資家さまとの面談を実施しました。

また、2023年度から統合報告書を毎年発行し、投資家のみなさまをはじめとしたすべてのステークホルダーのみなさまに、当社のご理解をより一層深めていただけたと感じています。

経営基盤強化

以上のような経営基盤の強化のためのさまざまな取り組みを、こちらのスライドにまとめています。前中期経営計画期間の3年間では、それぞれの各種ポリシーや方針の策定を行いました。そして、それに伴い、さまざまな外部からのご評価をいただくことができました。

特にIRにおいては、数々の構成銘柄に組み込まれるなど、大きな進展がありました。また人的資本強化やDXの取り組みにおいても、高い評価をいただくことができました。今中期経営計画においても引き続き、さらなる経営基盤の強化に取り組んでいきます。

中期経営計画(2025-2027年度)/長期経営構想の全体像

新しい中期経営計画についてご説明します。まずは長期経営構想の全体像について、あらためてご説明します。

企業理念は創業時から変わらず、「足下に種を蒔き続ける」です。経営理念は「変化の先頭に立ち、最先端のその先にある技と知を探索し、未来を描き"今"を創る。」というパーパス、そして「豊かな未来社会の実現に向けて、世界中の技と知を繋ぎ新たな価値を創り続けるサービス・ソリューションカンパニー」というビジョン、コアバリューとして「T.E.A.M.S.(Trust Excitement Aggressiveness Move Stretch)」を掲げています。

その上でサステナビリティ基本方針を定め、4つのマテリアリティを制定し、事業を推進していきます。

長期経営目標は、「未来社会の発展を牽引」です。社会価値と事業の持続的成長による経済価値を定め、2030年度に売上高2兆円、営業利益1,500億円、営業利益率7.5パーセント、ROE15パーセントを目指します。

この長期経営目標を、2022年度から2030年度までの3つの中期経営計画により達成していこうという構想です。今中期経営計画は、その真ん中の中期経営計画に当たります。

中期経営目標

ここからは、2025年度から2027年度の新中期経営計画についてご説明します。

新中期経営計画の目標としては、売上高1兆4,000億円、営業利益800億円、営業利益率5.7パーセント、ROE15パーセントを目指していきたいと考えています。

中期経営目標(セグメント別目標)

セグメント別では、半導体事業は売上高1兆1,400億円、営業利益520億円を目指します。ネットワーク事業は、新中期経営計画から、サイバーセキュリティ事業にセグメント名称を変更しましたが、事業の構成に変更はありません。サイバーセキュリティ事業は、売上高2,300億円、営業利益240億円、CPSソリューション事業においては売上高300億円、営業利益40億円を目指していきます。

なお、本スライドの事業別の数字は、CPSソリューション事業の数字を重複なく記載しており、報告セグメントの数字とは異なっています。

中期経営戦略

新中期経営計画は全社戦略として、「Vision2030に向けた成長投資」「ビジネスモデル変革」「AI関連ビジネスの強化」に取り組んでいきます。

半導体事業においては、「成長国への重点投資」「成長市場の継続強化」「AI関連ビジネスの強化」に取り組んでいきます。

サイバーセキュリティ事業においては、「高付加価値ディストリビューションモデルの拡大」「付加価値運用支援サービスの強化」「サービス・ソリューションの拡大」に取り組んでいきます。

CPSソリューション事業においては、「スマートシティ&モビリティ、スマートマニュファクチャリングのビジネス拡大」「サーキュラーエコノミー、ヘルスケア、フード&アグリテックの個別強化」に取り組んでいきます。

経営基盤の強化として、「財務戦略強化」「人財戦略強化」「IR戦略強化」「ブランディング戦略強化」「IT/DX戦略強化」「コーポレートガバナンス強化」に取り組んでいきます。

次のスライド以降で、それぞれについてご説明します。

サービス・ソリューションモデルについて

新中期経営計画のご説明に入る前に、3つの事業領域と2つのビジネスモデルについて整理しておきたいと思います。

スライドの図の横軸には3つの事業領域として、半導体事業、サイバーセキュリティ事業、CPSソリューション事業があり、縦軸には、ビジネスモデルとして従来得意とする高付加価値ディストリビューションモデルと、サービス・ソリューションモデルを示しています。

半導体事業とサイバーセキュリティ事業の高付加価値ディストリビューションモデルが、現在の収益のコアになっています。それに対して、サービス・ソリューションモデルへのビジネスモデル変革に取り組んでいきます。

CPSソリューション事業は将来事業であり、半導体事業、サイバーセキュリティ事業に次ぐ第三の事業の柱を作るということになります。

ビジネスモデル変革には大きな壁を乗り越える必要がありますが、高付加価値ディストリビューションモデルでドメインナレッジやパートナーを獲得し、エコシステムをてこに自社でサービス・ソリューションモデルを開発していくとともに、インオーガニックな投資をもって、これを拡大していきます。

新しい事業の柱を作る上でも大きな壁を乗り越える必要がありますが、コア事業で培った最先端技術の目利き力、そして技術吸収力と技術実装力を活かして新市場に参入することについては、すでに一定の成果が出てきています。

全社戦略:Vision2030に向けた成長投資

全社戦略の1つ目、Vision2030に向けた成長投資についてご説明します。まずは財務健全性を維持しながら、一定のレバレッジを効かせるために、Net DERの上限目標を0.5倍と設定しました。Net Profitの40パーセントから50パーセントを株主還元とし、残った利益とDebtの増加分から運転資本を差し引いた部分を成長投資に回します。

成長投資は、新中期経営計画の3年間で500億円から800億円を見込んでいます。そのおよそ半分を半導体事業の高付加価値ディストリビューションモデルへ、残り半分はサイバーセキュリティ事業を中心にサービス・ソリューションモデルへ重点的に投資していきます。

2028年から2030年の次期中期経営計画において、CPSソリューション事業を含めたサービス・ソリューションモデルへの配分を高めることを想定しており、今中期経営計画でビジネスモデル変革、CPSソリューション事業に取り組んでいきます。

全社戦略:ビジネスモデル変革

全社戦略の2つ目のビジネスモデル変革については、高付加価値ディストリビューションモデルでドメインナレッジを持ち、ある程度オーガニックな成長に取り組んだ領域において、インオーガニックな成長のための投資を行います。それにより、サービス・ソリューションモデルにおけるそれぞれの事業の拡大と収益性の向上を目指していきます。

全社戦略:AI関連ビジネスの強化

全社戦略の3つ目のAI関連ビジネスの強化についてご説明します。生成AIが注目を集め、市場が過去に類を見ないスピードで日々変化していく中、各事業部門での市場の動きに敏速に対応するとともに、全社AI戦略を策定し、全社レベルでの取り組みや当社が生き残っていけるセグメントの見定めなどに取り組んでいきます。

高付加価値ディストリビューションモデルでは、半導体事業におけるデータセンター向けを中心とするインフラ系AI商材、近い将来に大きく市場が成長すると予測されるエッジ系AI商材、サイバーセキュリティ事業におけるシステム系AI商材の効果的な販売体制を構築します。それと同時に、最適な事業ポートフォリオ管理を進めていきます。

サービス・ソリューションモデルでは、小売業向けの店舗からの報告内容の分析をするAIソリューションや、製薬業界における品質保証のAIソリューションといった、業界・業務特化型の汎用サービスと、個社ごとのカスタマイズや各社固有の重要な課題を解決するAIソリューションの提供を進めるため、事業ポートフォリオ戦略と開発体制の整備を進めています。

半導体事業

個別の事業戦略です。半導体事業は引き続き重要な収益基盤と捉え、グローバルでの強化をさらに図っていきます。米中貿易摩擦で不確実性が高まる中、中国以外の成長国への重点投資と中国市場に特化した個別戦略を並行して進めていきます。

産業機器、車載といった成長市場については継続的に強化していきますが、産業機器市場については、市場の状況をしっかりと注視する必要があると考えています。一方で、車載市場の不確実性はあるものの、車載ソフトウェア市場の成長や市場の全体的なソフトウェア化のトレンドの中で、ソフトウェアソリューションの強化も進めていきます。

AI関連ビジネスについては先にご説明したとおり、全社AI戦略に沿って、インフラ系AI商材、エッジ系AI商材を中心に、効果的な営業体制と事業ポートフォリオ管理を進めていきます。

サイバーセキュリティ事業

サイバーセキュリティ事業については、セキュリティ、従来のビッグデータにAIを加えたデータ/AI、アプリケーション、海外の4つの領域でビジネスをさらに進めていきます。

従来の高付加価値ディストリビューションモデルにおいては、既存商材を伸ばすことに加え、新商材を獲得することや、各カテゴリ内でターゲットセグメントを広げる新規サブカテゴリへの進出に取り組んでいきます。

併せて、ディストリビューションに付随する高付加価値な運用支援サービスとして、マネージドサービスを強化し、これを海外にも展開していきます。

そして、ビジネスモデル変革のところでも述べましたが、サービス・ソリューションの拡大については、自社サービス・ソリューションの強化と、オーガニックに加えてインオーガニックな成長も目指していきます。

CPSソリューション事業

CPSソリューション事業について、従来は6つのテーマで取り組んできましたが、CPSセキュリティはサイバーセキュリティ事業との親和性がきわめて高いため、同事業に吸収し、テーマを5つに絞りました。

スマートシティ&モビリティ、スマートマニュファクチャリングはいずれも拡大フェーズに入ってきました。それぞれ自動運転EVバス、運行管理システム、自動運転のインテグレーション、製造業向けのインテグレーションの拡大に取り組んでいきます。

サーキュラーエコノミーは成長フェーズと位置付けており、ポテンシャル事業に絞ってビジネスの拡大を目指していきます。ヘルスケアにおいては循環器領域でのディストリビューションが始まっていきますので、長期的なマクニカ独自のデータによる価値創造を目指したエビデンス開発を強化していきます。

フード&アグリテックにおいては、植物工場関連のディストリビューションを進めながら、データビジネスの開発に本格的に取り組んでいきます。

経営基盤

経営基盤に関しては、それぞれの機能を継続して強化していきます。財務においては先にご説明したとおり、キャピタルアロケーションを戦略的に実行し、事業ポートフォリオの変革を進めていきます。それに伴い、資本政策を強化していきます。人的資本に関しては、継続的に個とチームの力を最大化できるよう、ウェルビーイング活動など、そのための仕組みや仕掛け作りに取り組んでいきます。

IR、ブランディング、IT/DXについてもそれぞれ戦略を立案し、実行していきます。ブランディングにおいてはコーポレートブランディングをさらに強化し、IT/DXにおいてはグローバルでの取り組みや社内DXにおける市民開発強化の取り組みを実施していきます。また、拡大を続けるグローバル全体にコーポレートガバナンスを効かせていきます。

株主還元

株主還元についてです。今中期経営計画期間においては、連結業績の動向および財務状況、投資計画、経営環境などを総合的に勘案し、DOE5パーセントを目安として、安定的かつ継続的な配当を実施していきます。

また、資本効率や市場環境などを考慮の上、自己株式の取得を実施し、総還元性向40パーセントから50パーセントを目指していきます。2026年度3月期の配当予想は昨年同様、年間70円とします。ご説明は以上です。

今年度は新しい中期経営計画がスタートします。中期経営目標を達成し、Vision2030に向けて確実に前進していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

質疑応答:インド市場での半導体事業について

質問者:インド市場での半導体事業について、注力するアプリケーションや、同事業がいつから業績に寄与する見込みなのかを教えてください。2025年度からの中期経営計画における数値目標などがあれば、併せて教えてください。

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