3つのポイント
大津裕司氏:本日は、株式会社日宣の2025年2月期決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。代表取締役社長の大津です。私と経営企画部長の中角より、スライドに沿ってご説明します。
はじめに、私から今期決算のポイントを3点ご説明します。1つ目は、過去最高益の達成です。当社独自の「コミュニティ発想」に基づく戦略が奏功し、連結売上高は55億3,300万円、営業利益は3億9,300万円と、いずれも過去最高となりました。
2つ目は、成長投資の進捗です。今期は好調な業績を背景に、新規サービス開発や成長領域への人的リソースの投入、M&Aなど、さらなる成長を実現するための投資を実施しました。
3つ目は、株主還元の拡充です。1株あたり5円の増配を行った前期に続き、今期も1円の増配を行う予定です。さらに、来期の年間配当額は2円の増配を予定しており、中間配当も新設します。当社では、株主のみなさまへの利益還元を重要な経営課題と考えており、今後も自己株式取得などの施策について一層強化していく考えです。
これ以降は、経営企画部長の中角よりご説明します。
目次
中角翔氏:経営企画部長の中角です。スライドの目次に沿ってご説明します。
業績ハイライト
業績ハイライトです。第72期となる2025年2月期は、売上高は55億3,300万円で前期比プラス5.9パーセント、営業利益は3億9,300万円で前期比プラス31パーセント、経常利益は4億1,000万円で前期比プラス43.9パーセント、当期純利益は2億4,800万円で前期比プラス25.9パーセントと増収増益での着地となり、連結売上高と連結営業利益は過去最高となりました。
営業利益率は7.1パーセントで前期比プラス1.4ポイント、当期純利益率は4.5パーセントで前期比プラス0.7ポイントとなりました。
2025年2月期 連結損益計算書
2025年2月期決算概要についてご説明します。まず、2025年2月期の連結損益計算書です。
原価や販売管理費の抑制により利益率が向上し、売上総利益や各段階の利益は2桁増益となりました。また、営業外において過年度に投資を実施した投資事業組合の運用益700万円、ホームタウンエナジー株式会社からの持分法投資利益500万円をそれぞれ計上しました。
一方で、当社保有有価証券のうち株式会社ルグランの株式について、投資額3,100万円の全額を減損処理し、特別損失として計上しました。
2025年2月期 連結売上高
連結売上高の内訳はスライドのとおりです。各業界ともおおむね好調に推移しましたが、医療・健康業界については、Pacoma事業譲渡の影響もあり、前期実績を下回りました。
住まい・暮らし業界には、昨年12月にM&Aを実施した株式会社アスティが、また、その他業界には後ほどご説明するFBM(ファンベースドマーケティング)事業が属しています。
前期からの売上高増減
売上高の増減要因です。増収要因を青色、減収要因をオレンジ色で表示しています。
まず、住まい・暮らし領域が1億3,800万円の増加となりました。この中には、M&Aを行ったアスティの売上が9,000万円ほど含まれています。
次に、医療・健康領域の売上高の減少分が1億2,300万円ありますが、これは主に大手クライアントからの受注減少とPacoma事業譲渡によるものです。
また、その他領域は3億2,300万円の増加となりましたが、このうちの約半分がファンベースドマーケティング事業の増収です。大手飲食チェーン向け事業の好調もあり、業績が伸びています。
経常利益の増減
経常利益の増減についてご説明します。こちらも増益要因を青色、減益要因をオレンジ色で示しています。
売上高が前期比3億900万円の増加となった一方、売上原価は1億2,300万円の増加となり、粗利ベースで差し引き1億8,600万円の増益となっています。
営業費用では人件費が3,200万円、人材募集費が2,000万円増加しています。また、その他費用のうちM&A関連費用として1,800万円を、のれん償却費として400万円を計上しています。
営業外収支は投資事業組合の運用損益改善により、3,800万円の増益となりました。
2025年2月期 連結貸借対照表
2025年2月期の連結貸借対照表です。資産合計は48億8,600万円で前期比プラス6.8パーセント、負債合計は14億5,100万円で前期比マイナス7.3パーセント、純資産合計は34億3,500万円で前期比プラス4.8パーセント、自己資本比率は70.3パーセントとなっています。
中期経営計画における成⻑戦略
続いて、中期経営計画に基づく施策の進展についてご説明します。
中期経営計画における成長戦略は、独自の「コミュニティ発想」に基づく成長の実現です。「事業成長・創造」と「M&A・投資」の2つを成長戦略の軸とし、それを支える3つ目の戦略として「人的資本の強化+ESG経営への取り組み」にも注力します。
1つ目の戦略、「コミュニティ発想」による事業成長・創造では、既存のペイドメディア、すなわち有料の広告枠に依存せずとも、企業がマーケティングを推進できる状態を作り出すための支援サービスの拡大に注力していきます。
2つ目の戦略、M&A・投資を活用した有望市場・領域の拡張では、「コミュニティ発想」が機能する戦略マーケットにおける有力クライアントの獲得、サービス、リソース、テクノロジーの獲得を目的としたM&Aおよび企業出資を実施していきます。
市場変化
「コミュニティ発想」が必要とされる背景には、2つの潮流による市場環境の変化があります。1つ目の潮流は、広告の影響力の衰退です。マスメディアの影響力が落ち、デジタル広告への不信感が強まる一方、口コミの影響力が拡大し、生活者は信頼できる情報源や共感できるつながりを重視する傾向が強まっています。
2つ目の潮流は、人口減による企業の戦略の変化です。人口減に伴う国内市場の縮小により、企業のマーケット戦略についても、これまでの広告による新規顧客の獲得・刈り取りから転換を迫られることとなりました。
新たな市場機会
その結果、企業のマーケティングにおいても、広告やメディアによる顧客獲得に依存せず、「顧客とのつながり」や「コミュニティの評判」から継続的に利益やロイヤリティを生み出していくマーケティングが重視されるようになり、新たな市場が急速に成長しています。
例えば、SNS等のソーシャルメディアによるマーケティング市場は、2024年から2029年の5年間で約1.8倍の2兆円の市場規模になるとの調査があり、CRM市場やDtoC EC市場についても急速な成長が予想されています。
日宣の成⻑戦略
当社は、そのような市場環境の変化を捉え、独立系広告会社というインディペンデントな立場から、独自の成長戦略とブランディングを推進しています。すなわち、広告やメディアに依存しない独自のポジションと強みを持ち、ターゲットとなる市場をフォーカスし、その市場ごとにユニークな課題解決モデル、サービスモデルを構築していくことで、メディアではなく「コミュニティ」をベースに、ブランドや事業の成長に貢献するユニークなマーケティング支援会社として進化していきます。
これが「コミュニティ発想」戦略であり、私どもの成長戦略の要です。
各戦略の推進成果
ここからは、各戦略の推進成果についてご説明します。
戦略(1)事業成⻑・創造
1つ目の戦略である「コミュニティ発想」による事業成長・創造については、「ファンマーケティング支援」の新事業立ち上げと、ケーブルテレビ業界向け「LINE」ツールの提供開始と拡販です。
大手外食ブランド支援の実績と経験をもとに、「ファンの力の活性化」「SNSの駆使」により、クライアント企業の事業成長を支援する「ファンベースドマーケティング事業(略称FBM事業)」が発足し、新規クライアントの獲得が順調に進展しています。
また、当社最大のクライアント群であるケーブルテレビ業界に対し、業界初となる「LINE」を活用したケーブルテレビ局向け顧客コミュニケーションツール「CCG」の提供を開始し、受注局数が順調に増加しています。
ファンベースドマーケティング(FBM)事業の発足
FBM事業は、「ファンマーケティング支援」によって企業・ブランドのファンの力を活性化し、ビジネス成長に貢献する事業となっています。その特徴は、SNSを駆使してファンの熱量と発信を高め、ファンの力を最大化することでマーケティング全体を向上させ、クライアントの成長に貢献することです。
例えば、「X(旧 Twitter)」のフォロワー数を増やし、トレンド入りを狙った話題を創出することで、クライアントのファンを増やし業績アップに貢献します。
FBM事業のクライアント数が拡大中
今、特に外食チェーン企業、ブランドを中心に、FBM事業のクライアント数が拡大しています。当社が支援を行っている主要クライアントの業績は好調で、このような成功実績を積み上げていく中でその強みを型化し、強みに基づく持続的なクライアント開拓を推進しています。
「ファンづくり」のためのあらゆる活動がFBMの支援領域
FBM事業の支援領域はSNS運用にとどまらず、「ファンづくり」のためのあらゆる活動が対象となります。公式SNSのフォロワー拡大をはじめ、店舗設計、モバイルオーダーシステムへの導線設計、ファンプログラムの構築・運営、福袋などの物販商品の企画制作まで、これらすべてがFBM事業の支援領域となっています。
FBM事業の対外PRに積極投資
当社では、広告・マーケティング業界に影響力のあるメディア「宣伝会議」のイベント等を中心に積極的に登壇し、実績やノウハウを発信しています。これらの登壇・発信がきっかけとなり、新規クライアントが生まれる好循環を生み出しています。
FBM事業の売上が拡大、さらなる成⻑を見込む
FBM事業の売上は、スライドのとおり順調に拡大しており、今期は売上12億円とさらなる成長を見込んでいます。
ケーブルテレビ業界向けLINEツールの提供開始と拡販
2つ目の推進成果として、ケーブルテレビ業界向け「LINE」ツールの提供開始と拡販についてご説明します。当社では、全国のケーブルテレビ局向けにチャンネル情報誌「チャンネルガイド」を制作・販売していますが、新たに「LINE」を活用したデジタルサービスを開発し、ケーブルテレビ局と顧客との関係性を維持強化するための、両輪となるサービス提供を開始しました。
ケーブルテレビ局と顧客とをつなぐLINEツール「CCG」
それが次世代番組ガイド「Community Connecting Guide(CCG)」です。2024年7月にリリースしたこの新サービスは、「デジタルによる次世代番組ガイドの機能」と、「顧客とのダイレクトなコミュニケーション/CRMツールの機能」を兼ね備えたソリューションサービスです。
これは、デジタル接点における課題の多かった全国のケーブルテレビ局340局と1,600万人の顧客との関係に変革をもたらす、画期的なコミュニケーションツールです。
ケーブルテレビ業界に精通した日宣だから提供できるツール
「CCG」には、CRM機能やコンテンツ配信、ポイントによる囲い込みなど、ケーブルテレビ局と顧客とのサステナブルな関係構築に貢献する機能が搭載されています。
また、ツールそのものがケーブルテレビ業界に特化して設計されていることに加え、「チャンネルガイド」事業を通じて構築したケーブルテレビ局との関係性と知見を活かし、徹底したサポートを提供することで、他社との差別化を図っています。
まさに、ケーブルテレビ業界に精通した当社だからこそ提供できるツールとなっています。
順調に受注が拡大中
ケーブルテレビ各局の「CCG」の導入状況はご覧のとおりです。2025年2月末までに30局以上から受注し、2026年2月末までに60局の受注を予定するなど、順調に受注が拡大しています。
戦略(2) M&A・投資を活用した有望市場・領域の拡張
2つ目の戦略である、M&A・投資を活用した有望市場・領域の拡張についてご説明します。
M&A・投資の実績
こちらは、当社がこれまでに実施したM&A・投資の一例です。
今期は、都心の高級マンションのプロモーション等に強みを持ち、三菱地所グループを始めとする大手デベロッパーとの高い関係値を有するアスティの株式を取得し、連結子会社化しました。当社がフォーカスするブランドコミュニティ領域におけるシナジーの発揮を見込んでいます。同社とのシナジーについては、次のスライドでご説明します。
アスティとのシナジー
アスティは、今後も成長が期待される都心マンション市場という有望な市場において、大手デベロッパーをはじめとする長年にわたる優良クライアントを有しています。また、都心の富裕層コミュニティに向けたマーケティングという独自の強みとポテンシャルを有しており、「コミュニティ発想」戦略と極めて親和性の高い会社です。
同社とのクライアントやノウハウの共有を通じて、例えば、継続的に成長する不動産市場に対し、コミュニケーション全体の設計から顧客ナーチャリングまで一気通貫でサービス提供するワンストップ型サービスの構築など、新たな事業領域の拡張が期待されます。
M&Aによるクライアント獲得
当社が過去に実施したM&Aにより獲得したクライアントの事例です。メーカー、ゼネコン、ケーブルテレビ局、大手デベロッパーなど、数多くの優良クライアントを獲得してきました。
M&Aによるシナジーの発揮事例
M&Aによるシナジーの発揮事例についてです。ここでは、当社が今期、前田道路株式会社さまから受注した100周年記念事業をご紹介します。同社の創業100周年のプロモーション事業として、社史・動画・テレビCMの制作が企画され、当社がそれを一括で受注しました。
前田道路さまは、当社がM&Aを実施した旧日産社と数十年来の取引実績があります。このような旧日産社のクライアントとの関係値の高さと、当社の持つ豊富なノウハウとの相乗効果により、大型案件の受注につながりました。
人的資本の強化+ESG経営への取り組み
以上、2つの成長戦略を支える3つ目の戦略として、人的資本の強化とESG経営への取り組みについてご説明します。
サクセッションプランの構築
当社では、高度で多様な人財が集まり、創発することで価値を創造・提供するという考え方のもと、独自のサクセッションプランの一環として、「⽇宣Next Leaders Project(NLP)」を推進しています。
このNLPは、社員の成長を引き上げるためのサポート制度と、成長に貢献した社員へのインセンティブ・プランを両軸とし、経営人財の育成と、成長に貢献した社員に対する総額最大1億2,000万円のインセンティブを用意しています。
サクセッションプランの構築
若手社員の活躍・抜擢事例についてご説明します。FBM事業の構成メンバー約20名のうち、90パーセントは20代で、デジタルネイティブ世代ならではの特性やリテラシーを活かし、入社1年目からフロントで活躍する社員も多数います。そして、成果を上げた社員の管理職登用も実施しており、FBM事業は、新世代育成の拠点としても機能しています。
また、全社採用活動においても、このような活躍事例やチーム運営が、求職者に対し、高い共感性と魅力を発揮しています。
社内研修プログラムの構築
また、当社では、イーラーニングを活用した独自の動画研修プログラムを構築しています。コンプライアンスなどの基礎知識から、自社の歴史や事業・サービスの内容まで、幅広いコンテンツを提供することで、社員の事業理解やスキル向上をサポートしています。
エリアビジネスを通じた社会課題の解決
ESG経営への取り組みについてです。当社では、ESG経営の一環として、クライアントとの共創を通じ、地域活性化や地方創生をはじめとする社会課題の解決にも取り組んでいます。
自治体新電力会社の設立
その取り組みの1つが、自治体新電力会社の設立です。ケーブルテレビ局との合弁で設立した電力事業会社であるホームタウンエナジー株式会社が、久喜市と連携し、当社グループ初となる自治体新電力会社、久喜新電力株式会社を2024年11月に設立しました。
「電力の地産地消」を創業の理念に掲げるホームタウンエナジーと、ゼロカーボンシティの実現を目指す久喜市との連携により、脱炭素社会の実現や地方創生に貢献していきます。
2026年2月期業績予想
2026年2月期の業績予想についてご説明します。通期では、売上高は70億円で前期比14億6,700万円増、営業利益は4億6,000万円で前期比6,700万円増、経常利益は4億7,000万円で前期比6,000万円増、親会社株主に帰属する当期純利益は3億2,000万円で、前期比7,200万円の増加を予想しています。売上高、営業利益、経常利益ともに過去最高となる見込みです。
また、表の右側に記載している現行の中期経営計画と比較しても、売上高、営業利益、当期純利益はいずれも計画値を達成する見込みです。
株主還元方針について
最後に、株主還元についてご説明します。当社は、当期利益の大幅な変動による配当額への影響を減少させ、安定的かつ漸進的な配当の増加を目指す姿勢をより明確にするため、連結株主資本配当率(DOE)3パーセントを配当目標に掲げています。
また、株主のみなさまへの利益還元の機会を充実させるため、2025年4月11日に開催された取締役会において配当方針を変更し、これまでの年1回から、中間配当と期末配当の年2回実施を基本方針としました。
今後も株主還元方針に基づき、安定配当を継続するとともに、適切な機会を捉えて自己株式取得等を実施していきます。
2026年2月期は29円の配当予想
以上の配当方針を受け、2025年2月期は、前期比1円の増配を行い、1株あたりの配当金を27円としました。2026年2月期の配当予想については、中間配当14円、期末配当15円、通期で29円と3期連続での増配を予定しています。
以上をもちまして、2025年2月期の決算説明を終わります。ご清聴ありがとうございました。
質疑応答:アスティとのシナジーについて
「アスティのM&Aについて、具体的にどのようなシナジーを見込んでいますか?」というご質問です。
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