決算ハイライト
宮本昌俊氏(以下、宮本):代表取締役専務執行役員CFOの宮本昌俊です。2025年3月期第3四半期の決算について説明します。
第3四半期累計の実績について、売上収益はS&S(セーフティ&セキュリティ)分野の無線システム事業が非常に好調だったことに加え、M&T(モビリティ&テレマティクスサービス)分野の海外OEM事業も堅調であったことから前期比で増収となり、事業利益も前期比で増益でした。
営業利益と税引前四半期利益等も増益でした。特に持分法による投資利益が増加したことから、税引前四半期利益以下の段階損益と親会社の所有者に帰属する四半期利益は大幅な増益になっています。
2024年10月31日の中間期決算発表時に公表した自己株式の取得について、2024年11月1日から2025年1月31日までの期間で実施し、上限である約45億円の取得が終了しています。
また、通期業績予想については、第3四半期累計実績がほぼ想定どおりであることから、変更はありません。
2025年3月期3Q累計決算 全社実績
スライドは2025年3月期第3四半期累計、9ヶ月の全社実績です。
売上収益は2,705億円で、前期比32億円の増収でした。事業利益は186億円で、前期比26億円の増益でした。営業利益は168億円で前期比18億円の増益、税引前四半期利益は183億円で前期比33億円の増益、親会社の所有者に帰属する四半期利益は141億円で前期比31億円の増益でした。EBITDAは323億円で前期比25億円増、EBITDAマージンは11.9パーセントという結果でした。
2025年3月期3Q累計決算 分野別の状況
分野別の状況です。M&T分野の第3四半期累計の実績は、売上収益が1,488億円でほぼ前期並みですが、事業利益は36億円で前期比5億円の増益という結果でした。
S&S分野の売上収益は731億円で、前期比32億円の増収でした。事業利益は132億円で、ほぼ前期並みの実績でした。
ES(エンタテインメント ソリューションズ)分野の売上収益は415億円で、前期を若干下回りました。事業利益については、前期は2億円ほどの赤字でしたが、前期に構造改革等を行ったため、今期、2025年3月期第3四半期累計は17億円となり、前期比で19億円改善し、黒字に転換しました。その他を含め、全社合計で売上収益は2,705億円、事業利益は186億円という結果でした。
2025年3月期3Q累計決算 事業利益の増減要因
スライドは第3四半期累計の事業利益の増減要因を表したグラフです。前期160億円の実績に対し、為替ヘッジの影響は若干プラスになっています。また、価格対応は値上げにより10億円ほどの刈り取りができたと見ています。
一方、新社屋の建設等のオフィス再編に伴い、引っ越し費用等の一時費用が7億円ほどかかっています。また、固定費は人員増強や開発投資などで40億円ほどの増加がありました。
しかしながら、前期にES分野における構造改革として取り組んだ業務用カメラ事業の損失引当8億円の反動と、売上収益の増加に伴う利益の増加により54億円の寄与があり、当期は186億円の実績となりました。
全社実績推移
全社における第3四半期3ヶ月間の実績は、売上収益939億円、事業利益56億円という結果でした。
売上収益は第1四半期から伸長が続いています。S&S分野無線システム事業における北米公共安全市場向けの販売が好調なことと、M&T分野において苦労していたアフターマーケット事業の特に海外市場がかなり回復してきたことが要因です。また事業利益も、ES分野における構造改革の効果などにより、前期比では若干のプラスでした。
M&T 売上収益・事業利益推移
M&T分野の売上収益は521億円と前期比で増加しました。先ほど全社実績推移でご説明したとおり、アフターマーケット事業における販売が回復したことと、国内外におけるOEM事業が堅調に推移したことにより、売上収益が増加しました。国内中心のテレマティクスサービス事業は前期から大きく減少しましたが、それをカバーし増収となりました。事業利益も16億円となり増益でした。
S&S 売上収益・事業利益推移
S&S分野の売上収益は245億円と、前期比で若干のプラスとなりました。一方、事業利益は33億円と前期比で減少しました。今期、2025年3月期の期初にご説明しましたとおり、人員増強も含めた先行投資の増加による固定費の増加が要因です。
また、事業利益は第2四半期から減少しています。こちらは、後ほど詳しくご説明しますが、前期の第4四半期と同様の要因です。北米公共安全市場向けの出荷計画が、四半期単位では若干ずれたり減少したりすることがあることと、民間市場向けのプロダクトミックスの影響による悪化です。特に第2四半期に比べると第3四半期の事業利益が減少していますが、我々は一時的なものと考えています。第4四半期はまた回復してくると見ていることから、スライド右側に掲げている年間180億円という数字は、十分射程圏内と考えています。
ES 売上収益・事業利益推移
ES分野の売上収益は148億円でした。前期比で若干減少していますが、事業利益は7億円でした。前期は、メディア事業において業務用カメラ事業が苦戦したことに加え、構造改革費用等の計上もあり大きな赤字でした。一方、今期、2025年3月期は構造改革効果と固定費削減効果などがあり、第3四半期は7億円という大きな利益を計上できました。
2025年3月期3Q累計決算 地域別連結売上収益
スライドは連結売上収益の前期比を地域別で表したものです。海外では為替の利益も若干ありますが、米州・欧州・アジア・中国でそれぞれ増収でした。国内は売上収益が大きく減少していますが、これはM&T分野のテレマティクスサービス事業の売上収益が、前期比で大きく減少していることが主な理由です。
2025年3月期3Q累計決算 連結損益サマリー
事業利益以下の段階損益についてご説明します。事業利益は185億7,000万円という実績でした。その他の収益・費用、為替差損益等は17億8,000万円のマイナスでした。前期から8億円ほど悪化していますが、これは、金融資産の評価損や、後ほどトピックスでご説明しますが、海外拠点の閉鎖費用等を第3四半期に計上したことなどが要因です。この結果、営業利益は167億8,000万円と、前期から18億円ほどの増益となりました。
金融収支他は前期から15億円ほどの増加となりました。第1四半期にもご説明しましたが、業務用無線システム事業を行っているニュージーランドにある会社の持分法による投資利益が増加したことなどによるもので、税引前四半期利益は182億8,000万円と、前期から33億円ほどの増益となりました。親会社の所有者に帰属する四半期利益も140億7,000万円と、前期から32億円ほどの増益という結果となりました。
2025年3月期3Q累計決算 財政状態サマリー
財政状態、バランスシートのサマリーです。表の下から2段目、親会社の所有者に帰属する持分(自己資本)は1,258億円で、前期末から110億円増加しました。
これは、利益が増加したことと、為替が若干円安になったことによるその他の資本の構成要素が増加したことが主な要因です。その結果、一番下の親会社所有者帰属持分比率(自己資本比率)は39.0パーセントとなり、前期末から2.8ポイント増加しました。
スライド中央に記載したネットキャッシュは、前期末となる2024年3月末にネットデットからネットキャッシュへ転じ、6億円のプラスとなりました。今期、2025年3月期第3四半期末となる12月末の段階では、43億円のプラスとなり、キャッシュも増加しています。
2025年3月期3Q累計決算 キャッシュ・フローサマリー
キャッシュ・フローサマリーです。2025年3月期第3四半期の累計実績は、営業活動によるキャッシュ・フローは289億円となりました。事業利益の増加と運転資金の改善等により、前期比で60億円増加しています。
一方、投資活動によるキャッシュ・フローは168億円の支出となりました。主に2024年10月から稼働を開始した新社屋の建設費用および将来へ向けた開発投資等の増加により、前期比で38億円増加しています。
フリー・キャッシュ・フローは、121億円のプラスとなりました。
また、財務活動によるキャッシュ・フローは166億円の支出となりました。有利子負債の返済は順調に進めている一方で、自己株式の取得に伴う支出が若干減少した結果、ほぼ前期並みの支出となりました。
以上が、2025年3月期第3四半期累計の実績に関するご説明です。
2025年3月期通期業績予想
2025年3月期通期の業績予想については、2024年10月31日の決算発表時に上方修正を発表しました。
2025年3月期第3四半期3ヶ月の売上・利益もほぼ想定どおりで推移し、第4四半期の見通しもほぼ想定どおりを見込んでいることから、2024年10月31日に発表した通期業績予想は変更していません。
2025年3月期通期業績予想 分野別の状況
2025年3月期通期の分野別の状況についてです。若干ばらつきはあるものの、分野別においても予想の変更はしていません。
自己株式取得の実績
トピックスの最初のスライドは、自己株式取得の実績についてです。今回は、約45億円分の自己株式を取得しました。過去に2度の取得を行っており、総額約110億円の自己株取得を行いました。
S&S 無線システム事業 北米公共安全市場は堅調
ここからは無線システム事業関連の内容となるため、佐藤よりご説明します。
佐藤勝也氏:執行役員S&S分野無線システム事業部長の佐藤です。よろしくお願いします。私より、S&S分野の無線システム事業のトピックスについてご説明します。
まず、スライド左側のグラフは北米公共安全市場における受注残の推移を示しています。2024年12月時点で特筆すべき点は、受注残の構成です。システムに比べて、比較的利益率が高い端末の構成比が上昇しています。
グラフの右から3番目に記載のとおり、2023年1月には「VP8000」の導入がありました。さらに、スライド右側に記載のとおり、受注拡大に向けたラインアップ強化のため、今期、2025年3月期はP25トライバンド対応車載用無線機「VM8000」を導入しました。
「VM8000」は、先ほど紹介したポータブル端末「VP8000」(スライド左側の写真にある黄緑色の端末)と対になるモービル機です。今期、2025年3月期第3四半期から出荷を開始しました。
スライド右下の写真にある車載器が「VM8000」です。外観は従来モデルの「VM5000」と同じですが、トライバンド対応のため背面(奥行き)が非常に大きくなっています。第3四半期の出荷実績は400台以上ですが、第4四半期は2,000台以上の出荷を予定しています。
先ほど宮本からご説明したとおり、S&S分野の第2四半期と第3四半期の事業利益額には差がありますが、第4四半期に利益率の非常に高い端末の出荷を控えているため、第4四半期の事業利益は改善する見込みです。
無線システム事業 国内市場での取り組み
国内市場での取り組みの紹介です。2024年10月に、Jリーグの鹿島アントラーズさまとクラブパートナー契約を締結しました。この締結に伴い、茨城県立カシマサッカースタジアムに当社のデジタル簡易無線中継器「TCB-D239CR」を導入しています。
2024年12月8日のJ1リーグ最終戦から運用を開始していますが、2025年1月31日に鹿嶋市さま、鹿島アントラーズさま、当社の3者で、運用開始に関する広報発表を行いました。
茨城県立カシマサッカースタジアムでは、従来、無線端末同士が直接通話するかたちの運用でした。しかし端末同士の通信では、スタジアム内で通話できない場所がありました。
今回、当社のデジタル簡易無線中継器を導入し、スタジアムの上にアンテナを立ててカバレッジを広げたところ、スタジアム全体を非常にクリアな音声でカバーできることになりました。
また、2025年1月31日の広報発表では、鹿嶋市内全域をカバーする無線通信網を確立し、地域社会「共助」の仕組み作りを推進するとしています。
中継器によってカバレッジが非常に広がったことから、現時点で鹿嶋市内のほぼ全域をこの中継器1台でカバーできることがわかっています。将来的には中継器を追加し、鹿嶋市以外も含む鹿行地域全域をカバーできるようなコミュニケーション手段としての活用を目指したいと考えています。
私からの説明は、以上となります。
「VISION2025」事業ポートフォリオに基づいた経営基盤の強化
宮本:引き続き、私から経営基盤の強化についてご説明します。我々が成長牽引として掲げている、M&T分野の海外OEM事業についてです。
M&T分野の海外OEM事業の成長を牽引しているイタリアの子会社ASK(ASK Industries S.p.A.)は、主に欧州と中国で事業を展開しています。今回、中国での受注拡大に向けて新工場を建設し、2025年1月に稼働を開始しました。
スライド右下に新工場の写真がありますが、この新工場は浙江省寧波市にあります。寧波市にはもともとASKの工場がありましたが、老朽化が進んでいたため、新工場を建設し、徐々に移転を進めている状況です。まだどちらも稼働していますが、将来的には新工場へ一本化しようと考えています。
今後の中国については、足元の景気動向などいろいろありますが、やはり大市場ということで、受注拡大に向けて稼働させていきます。
また、先ほどの第3四半期実績に関するスライド(13ページ)でもお話ししましたが、今回、フランスにある販売拠点の閉鎖を決定しました。閉鎖に伴う費用等も、第3四半期に計上しています。
欧州地域の販売拠点はM&T分野のアフターマーケット事業やES分野のメディア事業等を中心に活動していましたが、これらの事業では、製品の販売自体が昔のように販売店に商品を並べる形態から、Eコマース等へと移りつつあります。
我々も新たな世の中に合った販売網へ移行していこうと考えており、今回のフランス販売拠点の閉鎖は、その最初の一歩であると考えています。
今後も、変わりつつある新たな世の中に向けた変革を行いつつ、これに伴う欧州の販路の再編等も進めていこうと考えています。
環境配慮の取り組み事例
環境配慮の取り組み事例です。我々が国内で販売しているカーナビゲーションシステム「彩速ナビ」の商品梱包材を、発泡スチロールからパルプモールドに変更しました。
プラスチック使用量の減少に伴うCO2排出量の削減等にも取り組んでおり、サイズが小さくなることによる物流費の減少も狙っています。今回、世界包装機構主催の国際コンテストで「ワールドスター賞」を受賞しました。
企業理念シンボルマークの制定(2025年4月より展開)
最後に、我々の企業理念シンボルマークを新しく制定しています。2025年1月に広報発表のとおり、本格的には2025年4月から展開し、引き続き「感動と安心を世界の人々へ」という企業理念に基づいた活動を進めていきます。
私からのご説明は以上です。
Q&A
質疑応答に関しましてはこちらに掲載されています。