オープニング
分林里佳氏(以下、分林):「ログミーFinanceの株式投資ラジオ」をご視聴いただきありがとうございます。 今回の放送の進行を担当します、分林里佳です。この番組は、個人投資家、アナリスト、ストラテジストなどの方々へインタビュー・対談などを通して、みなさまとともに投資の知見を深めていくためのログミーFinance主催のラジオ番組です。
今回の「ログミーFinanceの株式投資ラジオ」では、前回に引き続き、ニッセイ基礎研究所所属 金融研究部主席研究員 チーフ株式ストラテジストの井出真吾さんをゲストにお招きして、2025年の経済の見通しについても触れつつ、2025年の投資戦略についておうかがいしていきたいと思います。それでは放送スタートです。
2025年の日本株の投資環境について
まずはゲストの紹介をさせていただきます。前回に引き続き、ニッセイ基礎研究所所属 金融研究部主席研究員 チーフ株式ストラテジストの井出真吾さんにお越しいただいています。井出さん、よろしくお願いいたします。
井出真吾氏(以下、井出):はい、今回もよろしくお願いいたします。
分林:お願いいたします。前回の放送では「2025年の経済はこんなふうになりそうだよ」というお話をうかがってきたのですが、その経済を受けて、マーケットはどう動いていくのかを今回はお話うかがえればと思います。まずはやはり我々の日本の株式市場。アメリカについてはこの後うかがおうと思うのですが、投資環境、2025年の日本はどうでしょうかね?
井出:日本株、日経平均とかTOPIXで言うと、ややボラティリティ、変動率は高いでしょうが、じり高という感じを想定しています。
この放送を収録している12月11日の時点で日経平均は3万9,000円ぐらいですが、2025年の春ぐらいには4万円回復、定着というかたちになってくると思います。2025年の年末は4万2,000円ぐらいを想定しています。
ですから、そんなに大きく上がるわけでもないけれども、じりじりと上がっていくことを想定しているんですね。なぜそう考えてるかというと、まず日本企業の業績が少し改善すると思います。
今現在、日本企業はものすごく慎重な見通しを出していて、アナリストの予想とだいぶギャップがあるんですよね。これが2025年の春、年度末の実績値は少し上振れ着地するでしょうし、1回目の放送でお話ししたように、アメリカ経済中心に世界経済の成長が緩やかに続くのであれば、2025年度も増益が見込めるよねという話になってくると思うんですね。
それは端的に言えば日経平均の実力が上がるということですから、投資家心理、専門用語で言うとPER、株価収益率が改善しなくても、横ばいでも、日経平均は少し上昇すると考えるのが自然だと思っています。
その幅がどのくらいかというと、だいたい5パーセント前後。なので、そんな極端な上昇は期待しませんが、年末に向けて少しずつ上がっていくという感じですね。
ただ、途中大きく値下がりする場面はあるかと思います。1つはトランプ政権の動向次第で、世界中が震撼する、震え上がらされるみたいなことがいつ起きても不思議じゃない。それから、この後お話しするアメリカ株自体がちょっと割高なので、急落する場面があるかもしれないんですよ。
これは必ずそうなるとは言えないんですけれども、場合によっては10パーセントから15パーセントぐらいの下落余地はあると思っています。その時、当然日本株も引きずり下ろされることはあるでしょうから。
日経平均でいうと、場合によってはいったん3万5,000円まで。もしくはもうちょっと状況が悪ければ、3万3,000円ぐらいまでの下落する場面はあるかもしれません。
ただ、年末にかけてはまた4万円に回復していくでしょうから、仮に3万5,000円とか3万3,000円まで下がったら、「これは絶好のチャンスが来た」と考えればいいと思っています。
分林:なるほど。
日本株の中で特に期待しているセクター
年末に4万2,000円という数字を挙げていただきましたが、日本株の中で特に期待しているとか「ここがいいセクターだよ」というのはありますか?
井出:自動車はやはりちょっと厳しいんでしょうけれども、2024年度業績が厳しかったところが反発しやすいと思うんですよね。例えば鉄鋼とか電気なんかも、もしかしたらいいかもしれないですね。
あとは消費関連が良いと思いますよ。103万円の壁の引き上げで日本人の消費余力は多少なりとも高まるはずですし、インバウンドも、2025年も(海外の方が)たくさん日本に来てくれるでしょうから、そういう意味で消費関連は悪くないと思います。
分林:2024年は失われた30年は取り戻したというか、4万円に乗せて……。4万円への道のりは長かったですが、そこにしっかり乗せてこれる年になるかなと。
井出:そうですね。年末には4万円台定着が見えてくると思います。
2025年のアメリカ株の投資環境について
分林:そして問題のアメリカ株ですけれども、アメリカ市場についての投資環境はどうでしょうか? マーケットはどうなりそうですか?
井出:アメリカ株は、今の水準自体がちょっと高すぎるんですよ。S&P500で6,000ポイントを超えてきましたよね。PER、株価収益率、つまり株価の割高・割安を見る指標ですが、直近で22倍を超えたんですね。この22倍超えっていうのがどんな状態かというと、2020年、2021年にコロナバブルがあったんですよ。アメリカでコロナの給付金が配られて、その給付金で猫も杓子も株を買う。「Robinhood」なんていうアプリも有名になりましたよね。
分林:ありましたね。
井出:それで学生から何からみんながアップル株を買う、テスラ株を買う。買うから上がる、上がるから買うというかたちでまさにバブルが起きたわけです。22倍という水準は、そのコロナバブルのピークの時と同じぐらいなんですよ。そう考えると、やっぱりどう見てもアメリカ株は高すぎる。
コロナバブルの顛末はどうなったかというと、2022年、ナスダック指数は30パーセント下がりましたよね。S&P500も確か20数パーセント下がりました。現在のS&P500というのは、コロナバブル崩壊前の水準に近いっていうことなんです。かなり危うい状況だと思っています。
分林:アメリカ市場は新高値更新相場という感じで、2024年の年末に高値更新を見てきたので、まだまだどんどん行くのか、それともちょっと下がってくるのかどうかというね。
井出:バブルっていつまで続くか、どこで終わるかわかんないんですよね。実際にコロナバブルの時も、私は弾ける1年ぐらい前から「アメリカ株高すぎる、高すぎる」って言い続けて、でも一向にバブルがはじけてくれなくて。なので「井出の言ってること、ぜんぜん当たらねえじゃねか」って、私もだいぶ居心地の悪い思いをしたんですけれども(笑)。
でも、結局2022年には30パーセント下がって。やはりバブルはどこかで弾けるということを経験しているわけです。今回のアメリカ株も若干バブル気味ですから、10パーセントから15パーセントぐらいの値幅調整がいつ起きてもおかしくない。
その鍵を握るのがトランプ政権なのか、中東なのか、FRBなのか、こればかりは予想しきることはできないんですが、仮にそういう場面が来ても「やっぱり来たか」と。「ログミーFinanceの株式投資ラジオを聞いてて良かったな」と思っていただければいいと思います。
分林:そうですね。急に暴落が来たとか、そういう時にちょっと心構えがあるだけでも動じなくて済むと思いますから。「ちょっと割高な水準なんだよ」ということは頭に入れておいて。ただ2024年でいうと、前半はやはりNVIDIAが牽引してきて、後半はトランプラリー、ビットコインなんていうテーマがありましたけれども、2025年はどういうところが盛り上がりそうですかね?
井出:今お話にあったAIとか半導体関連について申し上げると、AIに関しては、これから銘柄の選別が進んでいくと思います。もう始まってるのかもしれないですね。
特にAIサービスをする会社に関して選別されていくと思います。これまでは「AIサービスを手がけてます」っていうだけで株はどんどん買われたわけですよ。それだけで上がったんだけれども、これからは「果たしてそのAIサービス儲かるのか、儲からないのか」「収益化できるのか、できないのか」を投資家は厳しい目で見ていくステージに移る、もしくはもうすでに移ったと思うんですね。なので、AIサービス関連は二極化していくと思います。
一方で、AIサービスに使われる半導体の需要は旺盛だと思いますよ。半導体って、AI以外にも自動車であったり軍事であったりにも利用されるわけです。我々の生活、あらゆるところに関わってるわけですね。この半導体の需要そのものが減るっていうのはちょっと考えにくいですから、半導体関連は基本的には堅調だと思います。
ただ、例えばNVIDIAに関して言うと、成長率が鈍化してきましたね。ですから、成長は続くんだけれども、成長率鈍化を投資家が嫌気して、いったん株価が大きめに下がるというような場面はあるかもしれないと思っています。
こういう逸話があってね。AIとサービスとその道具を提供する半導体。昔、ゴールドラッシュというものがあったんですよ。18世紀か19世紀か、ちょっと忘れましたけど。ゴールドラッシュの時に儲かった人って、金を掘った人ではなくて、金を掘るための道具、シャベルとかスコップを売った人だという逸話があるんですよね。
つまり、AIに関しても、そのサービスを提供する人は儲かるか儲からないかで大きく2つにわかれちゃうんだけれども、そのAIサービス向けの道具を売っている半導体会社、もしくは半導体製造装置とか、その部材を作ってる会社。これはもう道具ですから、売ったらそれで売上立つわけですよね。そこは大きくわかれていくと思います。
分林:実際にそのAIが組み込まれた社会というか、便利な生活を想像させてくれて、生活の中に入れてくれた企業が伸びてくる。じゃあやっぱり、それをどんどんどんどん生産しようとなって、半導体需要もきっと増えますもんね。
井出:そういうことですよね。
分林:その段階、実際に私たちが便利と感じられる段階が来るのかどうかで……。
井出:あとは、トランプ関連で言うと、いわゆる地下資源、石油とか石炭とかの関係、エネルギー関係は買われやすいですし、もちろん防衛関係も買われやすいです。あとセキュリティ関連ですよね。サイバーセキュリティとか、そういうところ。対中国、対ロシア、対北朝鮮というところでアメリカは相当神経質になっていますから、セキュリティ関連も伸びると思います。
2025年の投資戦略
分林:それら注目したいセクターとか銘柄とかがあるとは思うんですが、2025年、投資家はどういう投資戦略というか、姿勢で臨めばいいんでしょうか。
井出:前回の放送でもちょっと申し上げましたが、市場の変動率自体は大きくなると思うんです。株価が急落したり、為替が急落したりっていう場面は、さらに増える可能性が高まっていると思います。
株価が急落すると怖くなって売りたくなったり、例えば「積立投資はちょっといったんやめておこうかな」とか、そういうふうに慎重に考えたくなるんですけれども、投資家として、短期の投資家と長期の投資家で考え方を大きく区別する、分ける必要があります。
短期の投資家だったら、とにかく下がったところで買って、また下がったところで買ってっていう……。とにかくトランプ政権からどんなボールが飛んでくるかわからない。高いボール、低いボール、いろいろなボールが飛んでくるでしょうから、それを1個1個丁寧に打ち返すしかないですよね。結果的に打率が下がってしまうかもしれない。それはもう仕方ないと思います。
一方、長期の投資家の場合は、下がった時はチャンスと思って、買い増ししてもいいです。積立投資はとにかく止めない、続けるということが一番肝心だと思います。
というのも、トランプ政権ってどんなに長く続いても4年なわけですよ。積立投資って、目指しているゴールは10年後、20年後、30年後なわけじゃないですか。「10年後、20年後、30年後の株価は今より高いよね」と普通は考えられますから。だったら別に怖がらずに買えばいい。それだけのことです。
とにかく自分のゴールを見失わないことですね。短期の投資家はゴールが明日だったり1ヶ月後だったりと短いので難しいんですけれども、長期の投資家は高速道路を運転するのと同じです。(高速道路で)目の前を見て運転する人なんていないですよね。遠くのほうを見て運転しますよね。長期の投資はその視線を下げないことが大事です。
特に初心者の方は、株価が大きく下がって、それこそ夕方のニュースとかで報道されたりすると、「ちょっと危ないかな」「いったん売っておこうかな」って思いがちなんですよね。
例えば2024年8月5日、日経平均が4400円下がる、大きく下がった日がありました。ああいう時にいったん全部売却しちゃったりとか、積立投資やめちゃった人とかも実際にはごくわずかいらっしゃるんですけれども、結果はどうですか? 今、2024年年末は3万9000円まで回復してるわけですよね。
あの時、8月5日時点で投資していた人は、もう1回経験済みですから、それだけ自分の経験値が上がったっていうことですよね。免疫力も付いたということですから、2025年にもっと大きく下がる場面があっても耐えられると思うんです。
とにかく、「自分のゴールは何年後なんだったっけ」というのを忘れないようにしていただければいいかと思います。
分林:一つひとつの変動も勉強だと、経験だと思って乗り越えていっていただければなと。
井出:長期投資家にとっては、大きく下がった時はむしろ安く買えるチャンスなんですよ。
分林:そうですね。ということで、「投資環境は2025年こうなりそうだよ」ということでお話しうかがいました。井出さん、どうもありがとうございました。
井出:どうもありがとうございました。
分林:今回の放送はここまでです。ゲストはニッセイ基礎研究所所属 金融研究部主席研究員 チーフ株式ストラテジストの井出真吾さんでした。
エンディング
今回も2025年の経済の見通しについても触れつつ、2025年の投資戦略について井出さんにおうかがいしましたが、みなさんいかがだったでしょうか? この放送については書き起こし記事も公開されますので、気になる方はログミーFinanceのWebサイトをぜひご覧ください。
なお、書き起こし記事内では、次の放送テーマや出演者の募集も行う予定です。「こんなテーマを聞いてみたい」「こんな人に出演してほしい」などご希望がありましたら、ぜひご意見をいただければと思います。それでは今回は以上になります。また次回の放送でお会いしましょう。さようなら。