本日のご説明内容
本間裕一氏(以下、本間):本日はお忙しい中、当社のIRセミナーをご覧いただきありがとうございます。広報およびIRを統括している執行役員総務本部長の本間です。よろしくお願いいたします。
本日は、当社について4つの項目に分けてご説明します。
東京応化工業 概要
本間:当社の事業内容や扱っている製品をご紹介します。当社は、世界最高水準の微細加工技術と高純度化技術をコア技術として、世界に新たな価値を提供する会社です。お客さまからは、スライドに載せたロゴマークにあるように「tok」と呼んでいただいています。
主要製品は、半導体製造工程に欠かせないフォトレジストと呼ばれる化学薬品です。半導体用フォトレジストにおける当社の世界シェアは23.1パーセントで、世界No.1です。
創業者の向井繁正が掲げた「『自由闊達』な社風のもと、『技術のたゆまざる研鑽』にはげみ、『製品の高度化』をひたすら追求し、すぐれた製品を供給することにより、『社会への貢献』を果たす」という4つの経営理念のもと、グローバルで事業を展開している会社です。
数字で見る 東京応化
本間:当社の規模や歴史の長さをイメージしていただくために、当社にまつわる数字をいくつかご紹介します。当社は1940年、神奈川県川崎市で設立されました。現在、本社は川崎市の武蔵小杉にあります。
グループ全体の従業員数は1,877名で、国内9ヶ所、海外9ヶ所に拠点があります。事業規模については、2023年12月期の連結売上高が1,622億円、営業利益は227億円です。2024年11月25日時点の時価総額は4,424億円で、東証プライム市場上場企業のうち300位前後に位置しています。
あなたの身近にtokのテクノロジー
本間:当社はいわゆるBtoB企業で、企業間の取引をなりわいとしており、みなさまのお手元に直接お届けできるような最終製品を製造していません。しかし、みなさまがふだん使用されているスマートフォン、パソコン、テレビ、ゲーム機、自動車、データサーバーなどの電子機器には多くの半導体が搭載されています。
あなたの身近にtokのテクノロジー
本間:当社の主力製品であるフォトレジストは、半導体の製造に欠かせない材料です。当社のフォトレジストがどのように社会の役に立っているかを具体的にお話しする前に、半導体製造工程におけるフォトレジストの使用方法を少しだけご紹介します。
1分程度の短い動画ですので、ぜひご覧ください。
1つの半導体チップは、このような工程を何度も繰り返して形成されます。当社は、1960年代にフォトレジストの国産化に初めて成功しました。それ以来、半導体の高性能化・小型化・低消費電力化に貢献することで、安全・便利・快適な社会の実現に貢献してきました。
みなさまは、スマートフォンの中身を見たことがありますでしょうか?
スライドにあるとおり、スマートフォンを分解すると、黒く四角いものがたくさん搭載されています。こちらが半導体です。スマートフォンの中に搭載された半導体の一つひとつが、高速インターネット通信や動画の視聴、写真や動画の撮影や保存、さらにはナビゲーションなどのさまざまな機能を持っています。
東京応化の微細加工技術
本間:半導体は、非常に微細な電子回路でできています。この微細な電子回路を形成するためには、当社の主力製品であるフォトレジストが必要不可欠です。
半導体の電子回路がどのくらい微細であるかをスライドに記載しています。髪の毛の太さよりも非常に細い回路を形成しており、肉眼では確認できません。
当社が提供するフォトレジストでは、さらに微細な線を作ることができます。スライドの写真にある20ナノメートルの線幅は、ウイルスの直径の約5分の1のサイズです。髪の毛と比べると、縦に5,000等分に切り分けた細さになります。最新のスマートフォンでは、さらに微細な線幅で描かれた電子回路が組み込まれています。
これほど微細な電子回路を使って半導体は作られており、半導体の製造は「ナノテクノロジーの世界」です。当社は、このナノテクノロジーの微細加工に必要なフォトレジストを提供しています。
東京応化工業って、どんな会社?
本間:当社をより深く知っていただくために、5つのポイントをお伝えします。
1つ目は、当社は世界最先端の微細加工技術を研究開発している会社で、半導体用フォトレジストを主力製品としている点です。スライド左上のグラフをご覧ください。競合相手は国内の大手総合化学メーカーである信越化学工業、JSR、住友化学といった会社ですが、当社は、半導体用フォトレジストにおいて世界No.1のシェアを維持しています。
2つ目は、当社はグローバルに事業を展開しており、世界中のメーカーと取引している点です。半導体分野での取引先は、日本のキオクシア、アメリカのインテル、韓国のサムスン電子、台湾のTSMCなどで、売上高の8割以上が海外のお客さま向けとなっています。
3つ目は、当社の半導体フォトレジストが、2014年に引き続き2020年においても、経済産業省が認定する「グローバルニッチトップ企業100選」に選定された点です。グローバルニッチトップ企業とは、国際市場の開拓に取り組んでいる企業のうち、ニッチ分野において高いシェアを確保し、良好な経営を実践している企業とされています。
4つ目として、昨年に続き「JPX日経インデックス400」の構成銘柄に選定されました。
5つ目として、今年は「SX銘柄2024」に選定されました。日立製作所、第一三共、ブリヂストンといった選定企業15社のうちの1社として、当社が選ばれています。
事業内容①:事業構成(2023/12期)
本間:事業構成についてです。主力事業は、半導体用フォトレジストを中心とするエレクトロニクス機能材料部門と、それらのフォトレジストを現像する現像液や、フォトレジストを除去する洗浄液などの高性能な付属薬品などで構成されている高純度化学薬品部門の2つに分けられています。
事業内容②:主要製品
本間:当社のエレクトロニクス機能材料と高純度化学薬品は、「半導体製造前工程」「半導体製造後工程」「イメージセンサー・MEMS製造分野」「パネル製造分野」の4つの事業領域に提供しています。
当社の特徴は、半導体製造の前工程で使用されるフォトレジストを、旧世代のg線、i線フォトレジストから、最先端のArF、EUV用フォトレジストまでの全世代において、フルラインナップで提供していることです。
これにより、最新のスマートフォンやデータサーバーで使用される最先端半導体の製造にフォトレジストを提供するだけではなく、近年のカーボンニュートラルや自動運転などで注目されているパワー半導体やセンサーといった半導体の製造需要にも、旧世代のフォトレジストで応えることができています。
もう1つの特徴は、最先端の半導体製造に使用できる高純度・高品質な製品を、安定して供給し続けていることです。ナノレベルの半導体製造を支えるフォトレジストは超高純度です。当社は、オリンピックサイズのプールにコーヒー1滴の不純物があっても検出できる精度で製品検査を行っており、非常に高い純度の製品を安定的に提供するための生産技術を強みとしています。
kenmo氏(以下、kenmo):御社は、エレクトロニクス機能材料と高純度化学薬品の2事業にほぼ絞っていると思います。これには、いわゆるニッチトップ戦略を目指しての戦略的な背景があるのでしょうか?
本間:当社の強みは微細加工技術、高純度化技術、顧客密着戦略の3点です。フォトレジストの老舗メーカーとして、技術的知見の蓄積が多くあります。また、当社は世界各地の顧客の近くに拠点を設けて、研究開発や製造販売を行っています。
高性能・高品質なフォトレジストを提供するためには、顧客やサプライヤーとの緻密なコミュニケーションを迅速に繰り返す必要があります。当社では、これを「究極のすり合わせ」と呼んでいます。このようなことが、高いシェアを占めている要因だと思っています。
kenmo:先ほども少し触れていただきましたが、フォトレジストの競合他社と世界No.1のシェアをとれている強みについて、補足説明をお願いします。
本間:半導体用のフォトレジストにおいては、日系メーカーが世界シェアの約8割から9割を占めていると言われています。競合相手は先ほどお話ししたとおり、国内の大手総合化学メーカーや、海外ではデュポンなどの化学メーカーになります。その中で、当社は唯一のフォトレジスト専業メーカーです。
また、日本企業の強さの理由の1つとして、日本国内にはフォトレジストの原材料を提供するサプライヤーや半導体装置メーカーが多数存在しており、強固な半導体エコシステムが構築されている点が挙げられます。それが、他国の企業にとっての参入障壁になっていると考えています。
生成AI需要の増加によるTOK製品の成長見通し
本間:当社のフォトレジストは、半導体製造における幅広い分野で使用されています。最近話題の生成AI向け半導体チップの製造においても、tokのフォトレジストがさまざまな工程で使用されています。
半導体製造工程は、半導体回路を形成する前工程と、半導体回路形成後のチップをパッケージ化する後工程に分けられます。当社は、前工程向けのフォトレジストだけでなく、後工程向けの材料も手掛けており、半導体メモリチップをつなぐためのバンプ形成用レジストや再配線用レジストなども、生成AIチップを製造する上で必要とされています。
中長期的に見ると、今後は生成AIが進化する上で必要なGPUの生産数量が増加すると予想されており、当社材料のさらなる需要増加が期待できます。
kenmo:生成AI向けなどでは、積層型のDRAMが主流になってきていると思います。積層型のDRAMにおいて御社の主力製品であるフォトレジストが担う役割について、もう少し詳しく教えてください。
本間:HBMと呼ばれるHigh Bandwidthメモリは、DRAMを積層して製造されるデバイスです。DRAMと呼ばれるメモリの部分の製造に、当社のEUV、ArF、KrF用フォトレジストが使用されています。
その後、DRAMを積層する工程において、DRAMとDRAMを接続するために必要なマイクロバンプと言われる電極(接合部分)を形成するために当社のパッケージ材料が使用されます。
kenmo:従来のフォトレジストは前工程で使われるイメージがありましたが、現在は生成AI向けが伸びる中で前工程でも後工程でも使われており、それぞれのニーズで利用が拡大していくという理解でよろしいでしょうか?
本間:おっしゃるとおりです。当社は以前から前工程・後工程向けの材料を提供していますが、前工程の微細化が発展したことで、さらなる微細化を実現する難易度が上がっています。そのため、半導体の高性能化のために後工程の微細化や積層化のニーズが高まっており、当社の製品もどんどん需要が伸びている状況です。
新規事業(機能性材料・光学部材・ライフサイエンス関連材料)
本間:当社は今までお伝えしてきた製品のほか、スライドに記載のとおり、新たな事業の柱となる新規事業の創出にも注力しています。
東京応化 国内拠点
本間:当社は、国内外の拠点で製品を開発・製造・販売しています。
冒頭で「国内、海外ともに9つの拠点がある」とお話ししましたが、国内は北の福島県・郡山工場から、南の熊本県・阿蘇工場まで6つの工場があり、2024年6月に熊本県菊池市に阿蘇くまもとサイトという工場を竣工しました。
開発拠点は神奈川県寒川町にあるTOK技術革新センターで、こちらで主に開発を行っています。
東京応化 海外拠点
本間:海外においては、大手半導体メーカーがあるアメリカ、韓国、台湾、中国に生産拠点と販売拠点を設け、グローバルに事業を展開しています。
kenmo:中国には工場を設けていないのでしょうか?
本間:以前は現地のパートナー企業と合弁で製造会社を設けていましたが、昨年この会社を合弁相手に譲渡しました。昨今の中国市場における需要拡大を受けて、さらなる生産能力の増強が必要になったため、販売と顧客サポートの強化を目指すために譲渡を決断したものです。
現在は、現地のパートナー企業が製造を行い、当社が品質管理・販売を行うというビジネスモデルに転換しています。
東京応化を取り巻く環境_2030年の社会
本間:成長戦略についてご説明します。
当社は2020年8月に、2030年への羅針盤となる「TOK Vision 2030」を発表しました。しかし、それから数年の間に当社を取り巻く事業環境が大きく変化し、半導体需要のさらなる増加が見込まれていることから、2024年2月に当ビジョンの見直しを行いました。
スライドに示しているのは、当社が半導体の進化によって実現可能と考える2030年の社会です。自動運転やさまざまなアプリケーションの発達によって、豊かで便利な社会が実現しようとしています。
2030年の社会~TOK Vision 2030~
本間:当社は、半導体の成長分野を「情報端末」「クラウド」「センシング&IoT」「グリーンエネルギー」の4つに定義し、それぞれの成長分野にフォトレジストや高純度化学薬品を提供することで、2030年の豊かな未来の実現に貢献していきたいと考えています。
TOK Vision 2030(定性側面/定量側面)
本間:スライドには、当社グループの「2030年のありたい姿」を示しています。半導体市場の成長の波をしっかりと捉えることで、売上高3,500億円、EBITDA770億円まで事業を拡大できるポテンシャルが十分あり、ROEも13パーセントまで高めていけると考えています。
2030年のありたい姿
本間:これらを達成するために、冒頭にお伝えした技術をしっかりと向上させ、お客さまが感動するイノベーションを提供していきたいと考えています。
2030年に目指すビジネス構成をスライドに示しています。既存事業である半導体前工程材料、半導体後工程材料、ディスプレイ材料、高純度化学薬品の成長に加えて、新規事業の創出やM&Aなどを駆使し、2030年のありたい姿を実現していきます。
tok中期計画2024
本間:現在進行している「tok中期計画2024」は「TOK Vision 2030」からバックキャストで設定したものであり、最終年度の目標達成に向けて進捗している状況です。
高品質製品の安定供給とグループに最適な生産体制の構築
本間:将来のさらなる需要増加に対応するために、今中期計画の3ヶ年で累計570億円の設備投資を実施しており、こちらは当社グループにとって過去最大の規模となります。
現在進行している大型投資をいくつかご紹介します。韓国においては、品質管理強化を目的として新たな検査棟の建設を進めているほか、新たな工業用地を取得し、事業拡大に向けた設備投資を検討しています。
日本においては、冒頭でお伝えしたとおり、熊本県の新拠点として高純度化学薬品等を製造する工場を建設しました。郡山工場では、200億円以上をかけて国内最大のフォトレジスト製造棟を建設しています。
今後の世界の半導体需要の増加に応えるため、国内外の生産基盤の一層の強化を進めているところです。
kenmo:2024年に竣工した阿蘇くまもとサイトの稼働状況や生産能力、阿蘇工場とのすみ分けについて詳しく教えてください。
本間:こちらは2025年上期の稼働開始を予定して工事を行っており、間もなく製品を出荷できる体制が整うところです。
阿蘇工場は1984年に開設し高純度化学薬品を製造していますが、阿蘇くまもとサイトでは最先端の半導体製造工程に耐え得る高品位なものを作るべく、新しい設備を導入しています。
業績の推移
本間:足元の業績および財務状況ついてご説明します。スライドのグラフは、当社の売上高および営業利益の推移と、当社の利益に影響を与える為替の動きを表しています。
2024年12月期の売上高は、市場の回復等を踏まえて、前年比312億円増の1,934億円と過去最高を予想しています。営業利益は、各種フォトレジストを中心とした高付加価値製品の売上増加により、過去最高に迫る利益を予想しています。
なお、為替の前提は1ドル145円で組み立てています。
財務状況(2024年9月30日現在)
本間:財務状況です。総資産は2,661億円、自己資本比率は72.1パーセントであり、安全性の高い財務体質であると自負しています。
この強固な財務体質があるからこそ、ロングランの研究開発型企業として大手総合化学会社と互角以上に戦うことができ、長期戦略に基づく投資計画や安定的な株主還元も実行可能であると考えています。
業績概要
本間:2024年12月期第3四半期の進捗状況についてご説明します。
売上高は前年同期比プラス23.5パーセントの1,465億4,700万円、進捗率は75.8パーセントと、おおむね計画どおりに推移しています。営業利益は増収および為替の効果等もあり、前年同期比プラス50.5パーセントの232億4,300万円となりました。
設備投資・減価償却・研究開発 進捗
本間:設備投資、減価償却費、研究開発費についてです。スライドに記載のとおり、非常に多くの設備投資をしている状況です。
株主還元・配当の推移<健全で効率的な経営基盤の整備>
本間:株主還元と株価推移についてご説明します。
当社株式の流動性の向上および投資家層の拡大を図ることを目的として、2024年1月に株式分割を実施しました。
また当社は、中長期で応援していただける株主のみなさまに対し、安定的かつ継続的な利益還元でお応えしたいと考えています。そこで、2018年12月期の期末配当からは配当方針にDOEを採用し、DOE3.5パーセントをめどに配当を行ってきましたが、2021年12月期の期末配当より、DOE4パーセントをめどとする配当方針に変更しました。
2024年12月期の年間配当は58円を予想しており、実質増配となる見込みです。
加えて、11月12日に公表したとおり、2024年11月から2025年1月にかけて総額70億円を上限とする自社株買いを実施することを決定しました。これからも株主還元へ積極的に取り組むことで、みなさまのご期待に応えていきたいと考えています。
株式の概況
本間:株式の概況です。2024年6月30日現在の発行済株式の総数は1億2,780万株、株主数は2万1,842名となっています。昨日(2024年12月6日)の株価の終値は3,523円です。
tokのホームページ
本間:本日は非常に限られた時間の中、駆け足でご説明しました。お話しできなかった事業の内容や過去の業績推移、取り組み内容については、当社のホームページをご覧いただければ幸いです。
質疑応答:理想の株主構成バランスと個人投資家へのアプローチについて
kenmo:スライド右下の株主構成グラフを見ると、特に個人投資家からあまり認知されていない会社だと思います。御社が理想とする株主構成バランスと、今後個人投資家に興味を持ってもらうために、どのようなアプローチを行うかを教えてください。
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