質疑応答:投資事業の事業環境について

kenmo氏(以下、kenmo):山下さま、どうもありがとうございました。それでは質疑応答に移ります。

まず、直近の事業環境についてご質問をいただいています。「2022年頃はスタートアップ冬の時代と言われていましたが、足元の投資事業の事業環境はいかがでしょうか? 何か変化などは感じられていますか?」というご質問をいただいています。

山下優司氏(以下、山下):「シード~アーリー」は、いわゆる起業して、そこからグロースするところの最初の部分で、我々は一番そこに目がけて投資を行っているのですが、そこに関してはあまり変化はないというか、むしろスタートアップの数はどんどんどんどん増えていて、投資対象の会社が非常に増えてきているので、マーケットの状況は良いと捉えています。

ただ、我々から見たEXITですね。いわゆるメインとなるIPO。、特にグロース市場の環境だと、やはりIPOをした会社の株価と業績がなかなか伸びず、時価総額が低いままという状況が続いたりするので、上場のハードルは少し上がってきているな、というのを全体的には感じています。そういった中では、これまで同様、EXITイコールIPOというかたちではなく、最終的に出口としてのM&Aで売却をするところも増えてくるのかな、と考えています。

現段階では、我々の保有銘柄の中で上場前に詰まっている感じはないのですが、マーケットの状況を見ると、IPOのハードルは過去のものとは少し違うかなと、考えています。

kenmo:ありがとうございます。直近の上場企業を見ていると「比較的小粒で上場している企業が多いな」「上場維持コストがかなり上がってるな」という印象があります。

一方で、IR説明会を主催していると、各企業さんから「人が本当に足りない」「M&Aをしたい」という話をよく聞きます。やはり上場コストも上がってる中では、上場よりもM&Aという選択を取る企業も増えているのかなと、素人ながら思うのですが、そのあたりはプロの目線からしてどんな動きなのでしょうか?

山下:まだ増えてない、というのが正直なところで、今後増えていく、増えていかざるを得ないという感じになるかなとは思います。

まだ増えていないというのは、上場を前提にしたバリエーションの推移になっていくと、やはり高いというのがあって、買う側からするとM&Aで少し割高かな、という状況が続いているので、M&Aも念頭に入れた上での資本政策が組まれることが増えてくると、たぶん値付けのところももう少し、それを前提に変わってくるかなと思います。足元の現状と、そういった必要性みたいなところでギャップが生まれているかなと思います。

質疑応答:テック投資の投資先として注目している企業について

kenmo:ありがとうございます。続いてのご質問です。「『テック投資』の投資先として、今御社が注目しているのはどういった業態の企業でしょうか? 日本ではなかなかイノベーションが生まれにくいと言われていますが、日本にそういった投資対象はあるのでしょうか?」というご質問をいただいています。

山下:やはりテクノロジーを活用してイノベーションを、というところの定義になってくるので、そういう意味では対象は非常に幅広くなります。過去は、いわゆるインターネット的な要素が強いものが我々の投資対象として多かったのですが、ここ何年かは、テクノロジーにインターネットの要素は当然入りつつも、もう少し幅広い技術の捉え方のところで、リアルビジネスであったり、あとは直近だと、例えば衛星の打ち上げロケット開発をしている企業にも投資をしています。

テクノロジーをどう使うか? というところだと、非常にさまざまなものに活用されているのが現状で、過去のGAFAMとかと比較した時にイノベーションが生まれにくくなっているのかなと思うのですが、いろいろなビジネスや産業の分野でテクノロジーの活用・導入が始まっているので、そういったリアル、フィジカルのビジネスみたいなところまで我々の対象が伸びていくと、いろいろなイノベーションが今後生まれてくるんじゃないかなと考えています。回答がシャープじゃなくて申し訳ないです。

kenmo:ありがとうございます。また関連のご質問が出てくるかと思いますので、よろしくお願いします。

山下:はい。

質疑応答:アドテク・コンテンツ事業の売上・利益減少の理由について

kenmo:続いてのご質問です。「アドテク・コンテンツ事業の売上・利益が徐々に減ってきているように感じますが、Googleアルゴリズムの変更の影響なのでしょうか?」というご質問をいただいています。

山下:先ほども少し触れましたとおり、アドテク・コンテンツの中で減っているのはアドテクの部分なのですが、Googleのアルゴリズムを起因として少し目減りしている状況ではなく、どちらかというと、コロナによるユーザーの行動変容が一番大きく、一時上がっていたものが少し減ったというのが大きいと考えています。

単純に言うと、コロナの時よりユーザーがネットやスマホの中で広告と接触する時間が減って、広告を出す側が広告を出す効果が下がったと感じるところがあったため、アドテク・コンテンツ事業の売上・利益が下がってしまったというところです。当社もそうですし、他のアドテク系の銘柄を見てもやはり全体的には、コロナの時から比べてやや不調な感じがどの企業も続いてるかな、というのが感じられます。

kenmo:この傾向はいったん、このあたりで下げ止まりという感じなのか、それとももう少し下を掘ってしまうイメージなのか、今後のイメージをお聞かせいただければなと思うのですが、いかがでしょうか?

山下:基本的には底を打ったと思っているのですが、四半期単位で見ると少しボラティリティはあるので、おおよそ前期ぐらいの推移になるのかなと思っています。

質疑応答:教育事業、人材マッチング事業のボトルネックについて

kenmo:ありがとうございます。続いてのご質問です。「教育事業、人材マッチング事業ともになかなかトップラインを伸ばし切れていない印象です。何がボトルネックになっているのでしょうか?」というご質問をいただいています。

山下:人材マッチング事業とともに触れたのですが、教育事業の売上高のメインは個人向けのスクール事業がこれまででした。

この個人向けのスクール事業は、2016年ぐらいからずっと継続的に成長していました。コロナ禍の巣ごもり需要でさらに急激に伸びたのですが、その後競合が一気に増えました。やはりどこかが伸びると一気に競合が増えて、そういった競合の増加の中からユーザーを獲得し続ける、同じ数やそれ以上の数を獲得し続けるのが難しくなってきていて、そこからまだ脱せていないのが正直なところです。

なので、対企業の研修ビジネスなどで、それ以外の売上高を作り、個人向けのところの減少を補って伸ばしていくということにまだ達せていない、というのが要因で、個人の「リスキリングをしてプログラマーになろう」とか、「自分のバリューを上げよう」みたいなところに対して、国は盛り上げようと補助金をいっぱい出しているのですが、それが喚起されないと、その需要が伸びてこないというところで、どうしても一定のパイの中を今取り合っているというのが、なかなか伸びきらない一番の要因かなと思っています。

そのため、それ以外の事業で売上で成長させていかなければいけないのですが、そこまでまださせていないというのが足元になっています。

人材マッチング事業は先ほども申し上げたとおり、前期までは副業とフリーランスのマッチングに特化をしていたのですが、企業は正社員が欲しいというニーズが圧倒的に強く、求職者は副業、フリーランスのほうが多いみたいなところで、そこのバランスがなかなか取れなかったというのが、やってみてわかったとところです。

副業、フリーランスを通じて転職に向かっていく求職者もたくさんいるので、そこはしっかり正社員として企業にマッチングさせていくことで、マネタイズしていくことで、その需給ギャップをしっかりと埋めながら、ビジネスとして成長させていけるんじゃないかなと現在は考えています。

質疑応答:人材マッチング事業の3年後の売上目標について

kenmo:ありがとうございます。人材マッチング事業について、ご質問をいただいています。「人材マッチング事業の前期5億1,000万円の売上を、3年後にどのくらい伸ばしたいか教えていただけますか?」というご質問をいただいています。

山下:中計は出していないというところと、立ち上げたばかりのビジネスであるというところがありますが、我々のグループの中には、いろいろな会社やいろいろな事業がたくさんあって、投資事業を除くと、最終的に大きいものの売上高がだいたい20億円ぐらいのサイズになってくるので、少なくともそのラインを越えたいなと思っています。

質疑応答:事業名称の変更理由について

kenmo:ありがとうございます。続いてのご質問です。「事業名称を変更した理由は何でしょうか?」。上に以前の事業領域を出しています。現在の事業が下のようになっているところです。よろしくお願いします。

山下:たくさんの事業、会社があるのですが、パーパスをもとにどういうことをやっていくのか、何をコアとしていく会社なのかというのを再定義した時に、自分たちがやっていることを、あらためて事業セグメントに落とし込むとこうなりました。どちらかと言うとパーパスを起点に変えました。

インベストメント領域と投資事業は基本的にまったく一緒ですが、よりわかりやすくするために投資という名前に変えたり、コンテンツ事業とアドテクノロジー事業は基本的にはノンコアなので、ノンコアとして1つにまとめました。

DXプラットフォーム領域は、ある種、当時我々も模索していた時期で、すごくふわっとしたセグメントの名付けをしていたり、入っている企業がすごく多種だったりしたので、そこをあらためてしっかりと切り直した感じです。

(次回へつづく)