全社:2024年12月期第1四半期業績
笹井英孝氏(以下、笹井):みなさま、こんにちは。株式会社トライト代表取締役社長の笹井です。本日はお忙しい中、当社決算説明会にご参加いただきありがとうございます。私から2024年12月期第1四半期の業績内容についてご説明します。
まず、売上収益及び各種利益です。第1四半期は、医療福祉紹介事業の売上収益及び各種利益が限定的な時期であるため、計画どおりではありますが、各種利益は赤字で着地しました。その結果、売上収益は前年同期比11パーセント増の118億5,200万円、営業利益は6億5,300万円、EBITDAは2億7,600万円の赤字となりました。
また、3月にローンの借り換えを行ったことに伴い、一過性の金融費用が発生した影響を受け、当期利益は8億9,800万円の赤字となりました。この借り換えにより、実効金利を半減させることに成功しています。
当該一過性費用は、通期業績予想に織り込み済みです。なお、借り換えに伴う一時費用を除いた場合の当期利益は、4億5,900万円の赤字となります。
全社:新取締役体制
3月に開催した株主総会において、新任取締役として大野麻衣子氏が就任しました。その結果、当社取締役5名のうち3名が独立社外取締役となり、より強固なガバナンス体制を構築しています。
この新たな取締役体制の下、本日適時開示したとおり、当社は東証プライム市場への市場区分変更に向けた準備を開始しました。
全社:売上収益(四半期推移)
売上収益の事業別内訳についてご説明します。第1四半期の全社売上収益は、前述のとおり前年同期比11パーセント増の118億5,200万円です。
その内訳としては、スライドのグラフの緑色で示している医療福祉事業が、前年同期比9パーセント増の74億8,400万円、灰色で示している非医療福祉事業が、前年同期比15パーセント増の43億6,700万円となりました。医療福祉事業が想定を若干下回りましたが、非医療福祉事業が順調に推移したため、全社としてはおおよそ計画どおりの結果となっています。
医療福祉事業:医療福祉事業サブセグメント別売上収益(四半期推移)
医療福祉事業における売上収益の内訳についてご説明します。スライド左側のグラフに示したとおり、医療福祉紹介事業の成長率は4パーセントで、54億500万円となりました。後ほどご説明しますが、介護領域で広告出稿が計画どおりに行えない状況が一時的に発生したことが影響しています。その結果、計画を下回る結果となってしまいました。
スライド中央の医療福祉派遣事業については、おおよそ計画どおりで、売上収益は前年同期比16パーセント成長の18億4,200万円となりました。また、ダイレクト・リクルーティング(DR)事業及びICTソリューション事業を含む医療福祉新規事業は売上収益2億3,600万円となり、第1四半期も着実な成長を継続しています。
医療福祉事業:第1四半期に発生した広告出稿不具合について
第1四半期に発生した介護職紹介事業における広告出稿の不具合についてご説明します。当社は介護職紹介事業において「介護ワーカー」というブランド名のWebサイトを有しています。そのWebサイト上で、転職を希望している介護従事者の方々に個人情報を登録していただいています。
当該Webサイトへの主な誘導経路としては、「広告等の有料検索流入」「直接流入」「オーガニック検索流入」「SNS流入」「外部サイトからの流入」の5つがあります。その中で最も大きな誘導経路は、「広告等の有料検索流入」です。
当社が用いている広告手法は「検索連動型広告」「ディスプレイ型広告」「アグリゲーション型広告」の3つに区分できますが、今回の不具合は「検索連動型広告」について発生しました。検索連動型広告では、転職希望者が当該広告をクリックした際にランディングページと呼ばれるWebページが表示されるのですが、そのページが検索エンジン運営企業から承認されず、当社の広告が表示されないという事象が一定期間発生しました。
その結果、介護職紹介事業において登録者不足が発生し、計画どおりの営業活動を行うことができませんでした。なお、すでにランディングページについては新たなものに更新しており、新しいページは問題なく検索エンジン運営企業からの承認を得ています。第2四半期にも多少の影響は残りますが、下半期でリカバリー可能な範囲だと考えています。
医療福祉事業:内部環境
医療福祉事業における登録求職者数と契約施設数についてご説明します。スライド左側のグラフのとおり、当社のデータベースに登録している求職者の数は、第1四半期末時点で前四半期比3パーセント増の約210万人となりました。
介護領域においては、第1四半期の登録者数が計画を下回りましたが、他職種では順調に登録者を確保しており、医療福祉紹介事業全体のデータベースは順調に拡大しています。また、スライド右側で示している契約施設数についても順調に増加しており、前四半期比2パーセント増の約8万3,000件となりました。
医療福祉事業:医療福祉紹介事業の主要KPI
医療福祉紹介事業の営業社員数及び生産性についてご説明します。スライド左側に示した第1四半期末時点における営業社員数は、前年同期比3パーセント増の1,680人となりました。
今期は第2四半期以降に、特に新卒者を含め増員を計画しているため、第1四半期の人員増は意図的に抑制した結果、計画どおりとなっています。なお、離職率に関しては、おおよそ計画どおりの21パーセントとなりました。
スライド右側の営業社員一人当たりの期間平均売上については、前述の広告出稿不具合の影響を多少受け、増加傾向ではあるものの、当第1四半期は前年同期比2パーセント増となりました。
新規事業:DR事業及びICTソリューション事業の進捗状況
DR事業及びICTソリューション事業の進捗状況についてご説明します。スライド左側のグラフに示したとおり、第1四半期末時点のスカウト対象者数は83万5,000人にまで増加しています。医療福祉紹介事業で築き上げた既存データベースを活かし、大きく拡大することができています。
また、DR事業の求人件数は7万件となっており、法人顧客についても順調に増やすことができています。その結果、第1四半期の売上収益は3,500万円となりました。今後も求職者、求人件数の両方のバランスに配慮しながら、事業を成長させていきたいと思っています。
スライド右側のICTソリューション事業については、第1四半期の売上収益は1億4,100万円となりました。医療福祉従事者にITスキルを学ぶ機会を提供しながら、ソフトウェア企業に派遣するICT人材関連事業が成長を牽引しています。
新規事業:ICTソリューション事業におけるNTT東日本との連携
当社は今年3月、ICTソリューション事業において、介護事業所におけるICT推進などの取り組みを目的とし、NTT東日本と連携を開始しました。
本取り組みの第一弾として、当社子会社であるブライト・ヴィー社の「ケアデータコネクト」を、データ連携プラットフォームとして活用した介護事業所向けICTソリューションを、NTT東日本の展示施設であるNTTe-City Laboにて展開し始めました。
今後も、当社はNTT東日本とともに、介護事業に携わる各種介護事業者や、見守りセンサー等を展開するヘルステック企業との幅広い連携を通じて、介護業界の発展に貢献していきます。
新規事業:介護事業所向けICTの活用
こちらのスライドで、先ほどお伝えしたブライト・ヴィー社の「ケアデータコネクト」の機能や提供価値について、簡単に補足します。スライド左側に記載があるように、政府の後押しもあり、介護業界では各種ICT関連機器の利用が進んできています。
その一方で、新興メーカー含め多くの企業が、この分野で新しい製品を開発しています。これらセンサーメーカーの製品は、介護のICT化、省力化にとても有効である一方、メーカーごとに仕様が異なるため、介護従事者は各メーカーの個別のアプリを確認する必要があります。
「ケアデータコネクト」は、そのデータを集約することが可能です。スライド中央の図にあるように、介護従事者の方々が一画面で複数のセンサーの状況を一覧することができるという利便性を提供しています。
また、ここで集約されたデータは、介護記録システムに自動転記されます。そのため、介護従事者の方々が、各部屋でセンサーの測定結果をメモし、その後、事務室でメモを見ながら1つずつ測定結果を介護記録システムに入力するというような、従来の手間と時間を削減することができます。
このようにトライトグループとしては、引き続きICTソリューション事業を大きく前進させていく所存です。
非医療福祉事業(建設):主要KPI
非医療福祉事業(建設)についてご説明します。当社に在籍している派遣社員数は、前年同期比12パーセント増の約2,220人となりました。順調に推移しています。
また、月平均派遣単価については、今年度からの働き方改革の一環で、残業時間の減少が多少見られるところはあるものの、残業時間減少の影響を営業努力による単価交渉で補えた結果、前年同期の水準を維持することができています。
全社:EBITDA/営業利益(四半期推移)
EBITDA及び営業利益についてご説明します。第1四半期のEBITDA及び営業利益はそれぞれ赤字ですが、医療福祉紹介事業の季節性によるものであり、おおよそ計画どおりの結果になっています。なお、前年のEBITDAは黒字ですが、スライドにあるとおり、2022年度は本年度と同水準の赤字でした。
したがって、今期の業績が過去に比べて特別に悪いわけではないということをご理解いただければと思っています。
全社:販売費及び一般管理費の概説(四半期推移)
第1四半期の販管費についてご説明をします。販管費の合計は、前年同期比15パーセント増となりました。すべての費用項目において、おおよそ計画どおりの進捗となっています。
なお、前年同期比で増加率が高いシステム関連費とその他については、システム関連費はDR事業の拡大に伴う増加、その他については、当社Webサイトリニューアルに伴う業務委託費及び減価償却費の増加によるものです。
全社:2024年12月期第1四半期連結損益計算書サマリー
連結損益計算書のサマリーです。繰り返しとなりますが、売上収益は、前年同期比11パーセント増の118億5,200万円となりました。営業利益、EBITDAについては、それぞれ6億5,300万円、2億7,600万円の赤字、当期利益についても8億9,800万円の赤字と、いずれもおおよそ計画どおりの結果になっています。
収益性という観点では、介護職紹介事業の成長が計画を下回ってしまった一方、人材派遣事業が成長している影響を受け、売上総利益率は約2パーセント低下しているものの、こちらも通年への影響は限定的であると考えています。
なお、スライド右側に記載のとおり、第1四半期にローンの借り換えを行った結果、実効金利をこれまでの2.1パーセントから約1パーセントへと、おおよそ半減させることができています。
全社:2024年12月期第1四半期連結財政状態計算書サマリー
連結財政状態計算書については、法人所得税の支払い及び借入金の返済に伴い、長期借入金が第4四半期末から約20億円減少した一方、現金及び現金同等物も約30億円減少しました。
その結果、EBITDAに対する純有利子負債の倍率は4.5倍と前四半期よりも上昇しましたが、前年同期比では着実に低下させることができています。
全社:2024年12月期第1四半期連結キャッシュ・フロー計算書サマリー
キャッシュ・フロー計算書の概要についてご説明します。第1四半期は法人所得税の支払いタイミングの影響により、営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなったことを主因に、フリー・キャッシュ・フローは6億1,300万円のマイナスとなりました。ただし、こちらもおおよそ計画どおりの着地です。
全社:株主還元の考え方
株主還元の考え方については、特に変更はありません。大規模なM&Aを行わないという前提において、EBITDAに対する純有利子負債の倍率が3倍未満になる確度が高まった時点で、株主還元を開始する方針です。
私からのご説明は以上です。ご清聴ありがとうございました。
質疑応答:第1四半期における医療福祉事業の評価及び新規事業の計画達成確度、市場区分変更に向けた準備について
質問者:3点お伺いします。1点目は、売上収益の事業別内訳では医療福祉事業が前年同期比9パーセント増となり、想定よりも成長が遅いかと思うのですが、そのあたりの感覚について教えてください。
2点目は、第1四半期の医療福祉事業における新規事業の売上収益が2億3,600万円で着地していますが、今期の計画である16億円は達成できそうなのか、感覚的なところを教えてください。
3点目は、本日「東京証券取引所プライム市場への市場区分変更申請に向けた準備に関するお知らせ」というリリースがありました。こちらには時期などについて書かれていませんが、大体いつ頃なのかなど、開示できる範囲で教えてください。
笹井:1点目は私から回答し、続く2点は井上から回答したいと思います。
医療福祉事業における売上収益は、前年同期比9パーセント成長と計画を多少下回っています。こちらでは、先ほどご説明した介護領域における広告出稿の不具合という、本当に想定していなかったことが発生しました。
この結果、本来であれば転職希望の方々が我々に登録していただけたのですが、一定期間止まってしまったことが大きく影響しています。本来は2桁の成長をしたかったところですが、これにより9パーセントという結果になったと考えています。
ただし、この部分では計画を下回ったものの、広告出稿の問題はきちんと対応したため、再びイレギュラーが発生する確率はほとんどないと確認しています。今後、下半期にかけてリカバリーしていくと考えています。
井上卓暁氏(以下、井上):2点目の新規事業の進捗については、ご質問のとおり、医療福祉新規事業における第1四半期の進捗が2億3,600万円となっており、金額としては低くなっています。ただし、新規事業の性質上、今後売上が伸びていくことを期待しているため、第1四半期の結果としても、概ね計画どおりに進捗しています。
また、特にDR事業のデータベースである、求職者数や求人件数の拡大も計画どおりに進捗しているため、現時点では、お約束した業績予想を変更することは考えていません。順調に進捗しているとご理解ください。
3点目のプライム市場について、本日お伝えできるのは「準備を始めた」ことのみです。今後のスケジュールについては適時開示していく所存であるため、ご理解ください。
質問者:ちなみに、プライム市場の上場基準及び維持基準はすべて満たしているという理解でよろしいですか?
井上:基本的に問題なく満たせるだろうと考えているため、このような発表をしました。
質問者:グロース市場上場時から、将来的にプライム市場へ移行することは計画していたのでしょうか?
井上:昨年の上場時はグロース市場を選定しましたが、その後、決算発表や3月の株主総会を終え、上場企業としての管理体制がしっかりと構築できていることが確認できました。そのため、注目度や流動性がより高いプライム市場に上場することが適切だろうと考えています。したがって、もともと長期的には計画していたものではありますが、この段階で発表できることになりました。
質疑応答:キャリアアドバイザーの採用について
質問者:キャリアアドバイザーの採用について教えてください。営業社員数は前年同期比3パーセント増と計画どおりであり、意図的に採用を落としているというご説明だったと理解しています。なぜ採用を意図的に落としているのでしょうか? 競合他社はむしろ4月から5月に大量に採用したと聞いていますが、わざわざ「意図的に」とおっしゃっていることには何かあると思っています。このあたりの背景について、可能な範囲で教えてください。
笹井:「意図的」という言葉がミスリードしてしまったかと思いますが、「計画的に」と置き換えていただければと思います。他社が4月から5月に大勢採用したということですが、当社も同じように、4月には大学を卒業した新卒社員が100人いるため、4月から5月の採用数は増えています。
したがって、第1四半期となる1月から3月は、4月から5月の採用数が増えることを見越して計画的に取り組んだということであって、決して採用を止めたり、当初の計画から下げたりということではありません。すでに中期経営計画では「3年間このようなかたちで採用していこう」と発表しており、計画に沿って採用を進めているため、次の説明会では大きく増えた報告ができると思います。
質問者:季節性があるためへこんだり膨らんだりしますが、そもそも期初計画どおりのアクションを取っているだけで、期中で何かを変えたわけではないということですね?
笹井:はい、おっしゃるとおりです。
質疑応答:広告出稿の不具合がなかった場合に想定される第1四半期の実績について
質問者:広告出稿の不具合に関して、金額にすることは難しいかもしれませんが、肌感覚でも「不具合がなければこのくらいだった」という数字はおそらく持っているかと思います。不具合がなければ、医療福祉紹介事業の成長率や求職者数は、どのくらいだったはずだと認識していますか?
笹井:どのような転職意向の方が入ってこなかったのか、入ってきた後に我々のキャリアアドバイザーがどのように支援できたかなど、さまざまな要素が絡みます。そのため、社内でも合意した数字はございませんが、ご質問にできる限り誠実かつ懸命に答えるとすると、売上ベースで数億円の下のほうという感覚ではないかと思っています。
質問者:数億円というと、5億円まではいかないイメージでしょうか?
笹井:そのような感じです。
質問者:では、不具合がなければ、医療福祉紹介事業の売上収益は前年同期比10パーセント増ほどになっていてもおかしくなかっただろうという感触なのですね。
笹井:はい、おっしゃるとおりです。
質疑応答:広告出稿における不具合の影響範囲について
質問者:広告出稿における不具合に対してすでに対策していて、第2四半期に影響が残るものの下期にはリカバリーされると理解しました。いつからいつ頃までこのような問題があり、現在はバックトゥノーマルなのか、あるいはバックトゥノーマルに至る過程は見えているが今はノーマルではないのかなど、もう少し解像度を上げて教えてください。
笹井:3月に不具合が判明し、求職者の流入が止まっていることがわかりました。当然ながら、当該企業ともさまざまなやり取りをしましたが、やはり3月の一定期間は止まっていました。
介護職は他の職種に比べて比較的転職のリードタイムが短いため、3月の純契約に効いただろうと思っています。当然ながら、4月から5月にも影響が及びます。したがって、一定期間流入しなかったことが3月から5月頃までの売上に影響するかと思っています。
実は今後の成長を見越し、ランディングページを新しいものにちょうど変えるタイミングで古いページに対して不具合が起こりました。現在は完全に新しいページに切り替えている上に、業者との確認の中で新しいページはまったく問題がないという認識を得ているため、今後、同じような問題が起こる確率はほとんどないだろうと思っています。したがって、今年の後半にかけてリカバリーすることが可能だとコメントしました。
質問者:先ほどご回答いただいた「数億円の下のほう」という影響は、あくまで3月までに出た影響の話ですか?
笹井:はい、そうです。
質問者:では、4月や5月頃に同様の影響が出るかもしれず、当然ながら第1四半期よりも第2四半期への影響が大きくても仕方がないという感じですか?
笹井:ご認識のとおりです。
質疑応答:広告出稿における不具合の発生率について
質問者:医療福祉事業に取り組んで長いと思いますが、このような不具合は珍しいことなのでしょうか? あまり珍しくないのでしょうか? 少し定性的な話ですが、重要度がわからないため教えてください。
笹井:珍しいか珍しくないかと言えば、珍しいと思います。一時的な何かがあったから起こってしまったというよりは、ランディングページに問題があったり、それがなんらかのかたちで見過ごされてきたりと、過去からさまざまなことがあった中で、たまたまこの段階で出てきてしまったのだと思います。
したがって、これからも我々のみならず業界として頻繁に起こるような事態ではないと思っていますし、きちんとページを作っていけば、本来このようなことは起こらないだろうと思っています。
質疑応答:計画に対する販管費の進捗について
質問者:経費について、販管費は計画どおり使ったとのことでした。前年同期67億円から77億円と、YoYでちょうど10億円増えています。もともと通年で40億円程度増える計画だったと思うのですが、四半期あたり10億円の増加であれば計画どおりとはいえ、御社が成長過程にあることを考えると、予定よりも使っているのではないかと不安に思ってしまいます。販管費がYoY10億円増というのは、本当に上振れてはいないと理解してよろしいですか?
井上:はい、計画どおりですので、上振れや下振れはほとんどありません。唯一あるとすると、先ほど笹井からご説明した、3月に広告出稿ができなかった分の広告費が多少使えなかったことが実態としてあるため、今後はその部分は投資をしていくことになると思います。
質疑応答:計画に対する第1四半期の実績差異の考え方について
質問者:第1四半期の実績について、売上が未達で、営業利益及び損失の金額は予定どおりとうかがった気がするのですが、それが正しいのかもう一度確認させてください。医療福祉紹介事業の売上が計画を下回ったとのことですので、営業損失も想定より大きかったという認識が普通だと思うのですが、いかがでしょうか?
井上:売上はほぼ計画どおりです。一部、医療福祉紹介事業において売上が足りないところがありましたが、それ以外の事業でリカバリーができました。
利益では、例えば一番大きく発生した金融費用なども計画に織り込んでいたため、事業特性による粗利の差異が若干あるものの、利益の面も計画どおりに達成できたのが第1四半期です。そのため、売上も利益も達成できています。
質疑応答:通期予想を据え置いた根拠について
質問者:御社の売上は4月が一番大きいと認識しています。そのため、3月から5月の広告出稿に影響が出たことは、年間の業績に対してかなり影響が出るかと思いますが、通期予想を据え置いた根拠をもう一度ご説明いただけますか?
笹井:影響が出たのは介護事業の領域で、それ以外の事業に関しての影響はほぼありません。我々のポートフォリオとしては介護・看護・保育のそれぞれが、事業としては同じ水準くらいに大きくなっています。介護事業への影響が大きいとはいえ、当社売上が介護に偏重しているわけではないため、多少影響は受けるものの、他の事業で補うことができると考えています。
また、介護事業に関しても今手を打ったことに加え、現在、広告費に追加投資を行うことを検討しているため、そのようなことも含めて介護事業自体も戻せるだろうと考え、通期の予想を変えていないというのが現在です。
質問者:予想は開示されていませんが、第2四半期だけ取ると、期初計画に対しては下回ると思われるものの、下期のリカバリーを見込んで年間の見通しは変わらないという理解でよろしいですか?
井上:ご理解のとおりです。第1四半期に発生した広告不具合の影響は、第1四半期及び第2四半期の売上にも効いてくると思います。また、第1四半期に使えなかった広告費を第2四半期に投下していくことになるため、コストも第2四半期にかかってきます。それを第3四半期、第4四半期で売上につなげていき、取り返していく計画です。
質疑応答:介護領域における求職者不足に対する認識について
質問者:このような状況での分析はなかなか難しいと思いますが、2023年の後半くらいからなかなか求職者が増えてこないというお話があったかと思います。それに関しては現在どのように認識していますか?
笹井:我々は特に介護領域の話をしていたと思います。特に2023年はコロナ禍明けの一時的なものがあって、レストラン業やサービス業がかなり賃上げを行ったため、一時的にそちらに流れたというのは新聞発表でも行われています。我々もやはりそこで人を取られたので、なかなか介護に人が戻ってこなかったと見立てていました。
それに比べれば、この第1四半期もそうですが、落ち着いてきたなと思っています。その時期に広告出稿の不具合があったため、我々としてはなんとも言えないものの、全体として世の中が少し落ち着いてきて、一時的に介護領域で人を集めにくい状況はずいぶん正常化してきたと思います。
質疑応答:キャリアアドバイザーの生産性改善の取り組みにおける進捗について
質問者:キャリアアドバイザーの生産性のところで、営業社員一人当たりの売上が第1四半期で2パーセント増とありました。これは本日のメイントピックになっている件で、マイナスの影響が出ていることはもちろん認識しています。
その上で、それがなければという話は難しいと思いますが、生産性を上げる活動は当然行われていると思うため、それがどのように進捗しているのかをご説明いただきたいです。数字がないので難しいと思いますが、そもそも期初に想定していた生産性の改善に向けて取り組みがうまくいっているところ、あるいはもう少しがんばらなければいけないところがあれば教えてください。
笹井:時間をかけて離職率を下げてきたことにより、スライド9ページの右下に記載しているように、在籍期間が1年以上のキャリアアドバイザーが増えてきたことが一番大きいと思っています。それ以外の営業生産性を上げる手法としては、トレンドのAIを利用した営業支援ツールを導入し、かなり広範囲に使いこなせるようになってきましたし、トレーニングプログラムの効果が出てきたことなども合わせて成果が出ていると思っています。
ただし、特に紹介の事業においては、求職者がどれくらいいくかによっていろいろなものが一度に大きく影響するため、今回の影響がなかったらどれくらいなのかは数字がなかなか出しにくいです。その中で、我々としては主要なKPIとして、在籍期間が1年以上のキャリアアドバイザーの割合を見ています。
質疑応答:看護師のDRについて
質問者:看護師の採用についての考えを教えてください。大手競合他社の話も含めて、首都圏の看護師募集に関して、もともとはヘッドハンターモデルを使っていた病院のリテラシーが上がってきたため、作業はいろいろと多いものの、手数料が少ないDRに流れ始めていると聞きます。それによって、御社が何か失っているような感覚はあるのでしょうか?
また、それとは別に、同じ看護師の領域でもホスピスや訪問看護における看護師の人材ニーズは当然高いため、そこに今まで以上にビジネスのチャンスを見いだしている会社もあります。この2点それぞれに関して、笹井社長及びトライトとしての考え方や取り組みなどがあれば教えてください。
笹井:看護師に関しては長年携わっているため、我々としては非常に大事な市場だと位置づけています。おっしゃるとおり、メドレーなどの決算を見ても、あるいは我々が直接お客さまとお話しをしていても、大手の病院グループあるいは介護グループを中心にDRへの関心や利用が上がってきていると感じています。
そのため、我々もこの分野においてキャリアアドバイザー型だけを行っていたら、何年か先にはやはり難しくなるだろうなと考えて、DRを始めました。ちなみに我々のDR売上における看護売上は2割から3割程度と、それほど大きな数字ではないものの、既存の大手病院グループのお客さまにDRサービスをご利用いただき、看護師を採用してもらっています。
また、ホスピスや訪問看護などに関してもご指摘のとおりで、従来型の病院・クリニックに普通に勤務する以外にも、いろいろなところに看護師のニーズが増えてきたと思っています。もともと我々は介護領域で事業を展開しているため、介護施設で働く看護師の紹介も行っていました。あるいは、ぜんぜん違う分野や新しく生まれるところ、民間企業も含めてチャネルが増える領域には敏感にアンテナを張り、人材紹介の営業活動も並行して行っています。
質疑応答:DRの伸びによる紹介事業への影響について
質問者:御社がIPOの時の最初にDR事業を展開すると宣言した際に、ベースの考え方として、「DRとキャリアアドバイザーモデルはターゲットが違っており、カニバリはあまりない」とのお話でした。その部分については変わっていないと思うものの、ある程度の管理者や経験者、加えて昔の常識では、DRモデルがマッチしないのではないかと思われるところでもDRの需要が増えています。こちらに対してDRを提供することによって、DRが伸びても既存モデルにマイナスがあるのではないかという考えにはなりませんか?
笹井:DRと既存モデルは、大きなところで言うとカニバリにはならないと我々は思いますが、それが未来永劫かというと、決してそうではないと思うため、もしかしたらどこかで奪い合うタイミングが出てくるかもしれません。そのようなことがあってもいいように、我々は決してキャリアアドバイザーモデルにこだわることなく、DRモデルも積極的に展開していくために、これまで多くの投資を行ってきました。
今はまだ、特に中小規模、あるいは地方を中心にキャリアアドバイザーがお手伝いをさせていただくほうが市場規模も大きく、評価も得られるものの、我々としては決してDRが大きくなってもらうと困るということではありません。市場の動きに合わせたサービス展開をしていければと思っています。
質疑応答:借入金の返済に対する今後の考え方について
質問者:説明資料の16ページで、実効金利が半減したというご説明があります。返済期限も長くなっていますが、いわゆる長期借入金に対する今後の考え方はどうでしょうか? 比較的金利が低くなったが早めに返していくのかなど、そのあたりを教えてください。
井上:約定上は年間20億円ずつの返済になっており、返済余力があれば追加での返済も検討していきますが、現在、実効金利が1パーセントの水準なので、急いで返済しなければいけない状況ではないと思っています。ただし、この金利の水準が上がってきた場合には返済の優先順位も変わってくるかもしれません。
質問者:今はそれなりに有利子負債がありますが、特に早めに返す計画はないのでしょうか?
井上:契約上定められている金額はもちろん返済をしていきますが、金利水準が今の状況であれば、借入の返済に回すのがよいのか、将来的なM&Aに回すのがよいのか、また株主還元に回すのがよいのかなどの議論も出てくると思います。さまざまな選択肢があるため、返済が最優先だとは考えていません。
ただし、株主還元に関する考え方のところでご説明していますが、我々はEBITDAに対する純有利子負債の倍率を3倍未満にすることが一番重要なテーマだと考えています。そのため、まずはそこまで下げることに努めますが、それ以上の部分は成長投資もしくは株主還元とのバランスを見ながらの検討になると考えています。