グループ概要

髙野美香氏(以下、髙野):本日は土曜日でお休みの方も多いと思いますが、ご視聴いただきましてありがとうございます。私はウルトラファブリックス・ホールディングスの取締役経営企画部長の髙野と申します。本日はよろしくお願いします。

ログミーFinance個人投資家向けIRセミナーは2回目となりますが、当社の名前を初めて聞く方も多いと思いますので、まずは当社のことを多くの方に知っていただくことを目的としてご説明します。

グループの概要です。私どもは、合成皮革の製造・販売を100パーセント専業で行っています。製品については後ほどご説明します。売上高は約196億円、従業員数は319名で、日本と海外でだいたい2対1の比率になっています。

ホールディングスの傘下には、製造・販売を手掛ける第一化成と、販売とマーケティングを手掛けるUltrafabrics Inc.がいずれも100パーセント子会社として加わっています。

グループ概要

髙野:グローバルで主要な拠点についてご説明します。日本においては、ホールディングスと第一化成の本社が八王子にあります。研究所も八王子にあります。ほとんどすべての製品は、日本にある2ヶ所の工場、埼玉事業所と群馬工場で製造され、欧米を中心に販売されます。

スライドの地図では、ニューヨークに製品が集められるかたちになっていますが、今まさにカリフォルニアに倉庫を移しているところです。スライドとは異なり、実際は大西洋ではなく太平洋を越えていくため、西海岸に着いて、そこから北米大陸中に配送していくほうが効率的だろうということで、カリフォルニアに倉庫を移している最中です。

グループ沿革

髙野:グループの沿革についてご説明します。ホールディングスの前身である第一化成は1966年に設立され、今年で57年になります。販売会社であるUltrafabrics, LLCは1999年に設立され、その時に第一化成が15パーセント出資し、持分法適用会社になっています。

第一化成の製品をUltrafabrics, LLCが北米において独占的に販売する関係でしたが、第一化成はアジアや日本国内において、中国や韓国の廉価な製品に押され、次第にUltrafabrics, LLC向け、つまり北米向けの売上高の比率が高くなっていきました。

一方で、Ultrafabrics, LLCにおいても、第一化成製品の売上高に占める構成比が高くなってきていたため、成長を追求する点でも、また効率という面でも、相互に垂直統合し一体運営をしたほうが良いのではないかということで、2017年に現在のかたちに経営統合しました。

増井麻里子氏(以下、増井):1999年にUltrafabrics, LLCが設立されたということですが、この会社はもともとマーケティングと販売のみを行っていたのでしょうか? それとも製造や研究部門があったのか教えてください。

髙野:販売とマーケティングを行っていた会社です。今も経営に携わっていますが、設立者であるクレイ・ローゼンバーグとダニエル・ベッカーの2人は、もともと別の会社で合成皮革を取り扱うビジネスをしていました。

その会社では合成皮革はコア事業ではないということで、撤退することが決まったのですが、2人はビジネスの将来性を感じ、MBOをして独立し、Ultrafabrics, LLCを設立しました。そのため、当初から販売とマーケティングの会社で、研究開発部門のようなものは持っていませんでした。

増井:現在、御社では第一化成製品のみを扱っているのでしょうか?

髙野:95パーセントくらいと説明するのが適当かと思います。私どもの製品は比較的、高単価なものが多いのですが、ユーザーからすると、手触りや柔らかさをすべての面で要求しているわけではなく、「この部分についてはもう少し安価なものでも良い」といういろいろなニーズがあります。

そのため、残りの5パーセントほどについては、廉価な商品を品ぞろえとして持っておき、全体としてご提案できることがメリットだと感じています。一部、低単価な製品を他社から仕入れるかたちになりますが、第一化成の製品を中心に販売しています。

グループ経営理念

髙野:グループ経営理念についてです。経営統合から3年が経過した2020年にあらためて議論し、それぞれの子会社の経営理念や創業の理念は尊重しつつ、グループとしての一体感を醸成するため、スライドに掲げたグループ経営理念を策定しました。その中で、サスティナビリティの重視も重要な経営課題として挙げています。

用途別・地域別売上構成比(2022年度)

髙野:用途別・地域別の売上高構成比についてご説明します。用途別では、家具用が28パーセント、自動車用が41パーセント、航空機用が8パーセント、その他向けが23パーセントとなっています。

このように、用途が分散していることが経営の安定化につながっていると考えています。例えば、航空機に特化していると、コロナの時期などは大きな打撃を受けていたはずです。最近の業績をけん引しているのは確かに自動車ですが、特定の用途に限らずバランス良く成長させたいと考えています。

地域別では、先ほどご説明したように販売会社が欧米にあるため、販売先も欧米が中心になっています。今後、アジア向けをどのように伸ばしていくかが経営課題ですが、もうしばらくは欧米で十分に成長余地があると考えています。

増井:用途が家具用、自動車用、航空機用と、バランス良く分散されていますが、もともとは何用からスタートされたのでしょうか?

髙野:第一化成では、当初は婦人用ジャケットなどのアパレルでかなり利益を上げていた時期もありました。ただ、やはりファッショングッズでは流行に左右されるなど難しい部分がありました。そのため、だんだんと家具用が中心になっていきました。その後、自動車や航空機の比率を徐々に高めていったという経緯になります。

増井:自動車用や航空機用は参入障壁も高いと思うのですが、そのあたりはいかがでしたか?

髙野:自動車用のシートですと、何回も乗り降りをするものですので、摩耗強度などいろいろな厳しい基準があります。航空機用ですと、難燃性の部分で非常に厳しい試験を何回もクリアすることが必要になります。ほかにも、シートの形状にぴったりと貼り付けることができるようにすることも課題として考えられており、そこもクリアしたということになります。

八木ひとみ氏(以下、八木):求められる水準が高いということですね。

髙野:おっしゃるとおりです。

八木:家具用に関しても、参入障壁は高いのでしょうか?

髙野:後ほどご説明しますが、私どもの製品の強みは柔らかさや風合いの良さであり、そこは参入障壁だと思っています。加えて、色やデザイン、強い光を浴びても劣化しない耐光性などの機能性も強みであると思っています。

また、そのような製品の問題だけではなく、営業体制、配送体制とも呼ぶべき、発注を受けた後に短期間でデリバリーすることもUltrafabrics, Incの非常に大きな強みとなっています。

八木:では、具体的にどのような製品を取り扱っているのか、家具用からご説明をお願いします。

家具用

髙野:家具用は、オフィス向けや、スライド右側の写真にあるような歯科向けの椅子などのヘルスケア向けが中心になっています。そのほかは、ホテル、レストラン、大学、住宅など、幅広い場所で使用されています。

自動車用

髙野:自動車用は、当初はシフトブーツ、ギャップハイダー、それ以外の内装部分など、現在私どもがスモールパーツと呼んでいるビジネスが中心でしたが、その後、先ほどご説明したように摩耗強度などいろいろな基準をクリアし、シート用にも採用されることになりました。

今後、自動運転技術が進化していくと、居住性や快適性が要求されるようになり、私どもが強みとしている柔らかさや手触りの良さというものが、さらに求められてくるのではないかと思っています。

航空機用

髙野:航空機用は、当初はプライベートジェット向けを中心に事業展開していました。その後、民間航空機向けに対象市場を拡大しています。こちらは、自動車用に比べて収益性も高く、いったん採用されると安定的な需要が見込まれるため、私どもとしては非常に有望な市場だと考えています。

増井:摩耗した後には、再需要というかたちで御社に再度発注が来るのでしょうか?

髙野:おっしゃるとおりです。航空会社の事情、さらには懐事情にもよるのですが、2年から3年、あるいは3年から4年に1度、貼り替え需要というものがあります。

そのため、1度採用されると、一定の期間に何機分というように売上数量も見込めますし、それからまた何年か経つと、摩耗したということで張り替え需要が発生します。比較的、安定的かつ売上の見通しも立てやすいことが、私どもとして航空機を伸ばしたい理由の1つになっています。

八木:自動車用や航空機用ですと、セクター自体の伸びから業績の伸びがイメージできますが、先ほどのオフィス関連などの家具用の需要に関しては、どのようにイメージを持てばよいでしょうか?

髙野:今は北米市場がメインなのですが、お客さまによっては1つのアイテムしかご採用いただいてないことがあります。そのため、まずは「1つではなく2つ、2つではなく3つ」というように、取り扱いの品番を増やしていただこうと考えています。

一方、欧州向けには子会社、私どもから見ると孫会社があるのですが、経営資源を割ききれていない部分もあり、欧州のビジネスにはさらなる拡大余地があると思っています。

また、先ほどはオフィス向けやヘルスケア向けが中心とお話ししましたが、大きなポテンシャルを感じているのが住宅向けです。後ほど、その他分野のご紹介でお話ししますが、クルーザー向けにおいては水に濡れたり、洋上の強い日光を浴びたりしても品質が劣化しないことが大きな強みになっており、お客さまから高評価をいただいています。

同様に住宅向けでも、アメリカだとご家庭の屋外にあるプールやベランダに家具を置くこともありますので、アウトドアの需要は数量としてもけっこうあると思っています。したがって、従来はご提案できていなかった部分に関しても、いろいろなアピールができるのではないかと思っています。

その他

髙野:その他分野には、キャンピングカー向け、クルーザー向け、トラック向けなどがあります。先ほどお伝えしたように、クルーザー向けでは、「水に濡れても劣化しない」「強い日光を浴びても大丈夫」という部分がお客さまから高く評価されています。

製品の構造

髙野:製品の構造についてお話しします。私どもは合成皮革の専業メーカーとなりますが、合成皮革というのは、スライドの図では黒い部分にあたる織物や編物などの繊維素材の上にポリウレタン樹脂を塗布したものです。

合成皮革は湿式と乾式に分けることができ、私どもは湿式の100パーセント専業メーカーです。湿式は、図で言うと2つ目の層である樹脂を塗布した後にプールのような大型の水槽に漬けると、その水の中に溶剤が溶け出します。

そうすると、その樹脂の部分に気泡の穴が残ります。それがスポンジのようになって、柔らかさや手触りの良さにつながっていきます。その上に、色や、通気性などのさまざまな機能をつけた層を貼り合わせることで、図のような4層からなる生地になっています。

このように手間暇をかけることで、いろいろなデザインや特徴を持った製品になっていきます。本日は私どもの製品からいくつかサンプルをお持ちしましたので、ぜひ触っていただき、ご覧のみなさまに感想を伝えていただければと思います。

八木:ありがとうございます。本当に、もう見た目からいろいろな種類がありますね。

髙野:今、お手元にあるものがアパレル用で、非常に柔らかいです。

八木:それに、とても軽いですね。

髙野:いろいろな体の動きにもフィットするようなかたちになっています。

増井:柔らかい上に、薄いですね。

八木:こちらは柄も付けられるのですよね?

髙野:おっしゃるとおりです。映像でどこまで模様が映し出されるかわかりませんが、お手元にあるものは家具用になります。このように模様も付けられますし、今お持ちのグレーのサンプルは、一番クッション性が感じられると思ってお持ちしました。

増井:とてもフワッとしていますし、本当に天然素材のような感じがします。

八木:自由自在に作ることができるということですね。

髙野:ありがとうございます。先ほどご説明したことが、触っていただくことで実感できたのではないかと思います。

湿式合成皮革の特長

髙野:湿式合成皮革と他のレザーとの比較についてご説明します。まずは、天然皮革(本革)との比較ですが、何と言ってもアニマルフリーということが挙げられます。身のまわりに動物の皮に由来するものを使いたくないという方は、着実に増えていると思います。そのような方に対して、私どもの製品は1つの選択肢になると思います。

そして、本革に比べると軽量ですし、お値段としても低単価です。繰り返しになりますが、デザイン性や機能性も付加できますし、メンテナンスの面でも、サッと拭いただけできれいになるところは、本革にはないメリットだと思います。

加えて、本革は天然製品ですので、切り取る箇所によって色や厚みに違いが出たり、形そのものもさまざまだったりするのですが、合成皮革は工業製品として品質も均一ですし、形も成形されており取り扱いやすいことがメリットとして挙げられます。一方で、摩耗強度と耐久性の面では、やはり本革のほうが勝っているかと思います。

また、私どもの湿式合成皮革を、乾式合成皮革や塩ビ、あるいは一般的な湿式合成皮革とで比較した場合でも、繰り返しにはなりますが、風合いが柔らかく手触りが良いことが一番の特長になるかと思います。さらに、同じ厚みであれば、軽量であるということも挙げられます。

軽量であることがなぜ良いのかと言いますと、自動車や航空機のシートなどに使われた場合、運行時に消費するエネルギー量が減り、CO2の排出量が削減できるためです。自動車会社や航空会社が非常に気にされている脱炭素ニーズにも応えられるということです。

八木:EVはかなり重くなると言われていますので、車体全体の軽量化という面で魅力があるということですね。

髙野:おっしゃるとおりです。

増井:軽量ということなのですが、どの程度軽いのか、また環境へのインパクトはどれくらいあるのか教えてください。

髙野:何を比較対象にするかにもよると思いますが、私どもの製品の中で一番軽量であることを売りにしている製品との比較でお話しすると、1シートあたりだいたい3ポンド、1.4キログラムくらい軽いと試算しています。

そのシートを使用した200席弱の中型の飛行機で北米大陸を横断した場合、1フライトあたり117キログラムのCO2排出量が削減できると言っています。では、その117キログラムがどれくらいの量なのかお伝えすると、1本の杉の木が1年間に吸収するCO2の量がおよそ14キログラムと言われています。

したがって、だいたい8本の杉の木を植樹したのと同じ効果があるということになります。

増井:非常にわかりやすくイメージすることができました。加えて、低単価という部分についてもイメージをお聞きしたいと思います。本革は高額ということなのですが、それを100とした場合に、御社の製品やスライドに記載されている乾式合成皮革や塩ビの単価はどの程度になるのでしょうか?

髙野:相場によってもアップダウンしますし、また製品によってもレンジがあるのですが、本革を50から100と置いた場合、私どもの湿式合成皮革は、その下限のレンジの50から65くらいになると思います。

乾式合成皮革については、そこから1ノッチほど安い30から45くらい、塩ビになるとさらに安く、5から20くらいかなという感じです。かなり幅のある示し方になりますが、そのようにお話ししています。

増井:かなり違いがありますね。塩ビについては性能も良くなってきていると最近よく聞くのですが、脅威にはならないのでしょうか?

髙野:塩ビの性能が最近特にアップしていると言うよりも、私どもと同様に、塩ビの会社も品質改良を続けてきた結果、性能が良くなっているということだと思います。

とはいえ、私どもの製品とは手触りなどもまったく違いますし、別物であり、競合はしないと考えています。

コロナ禍後の大きなトレンドに合致

髙野:ここまでご説明してきた私どもの製品は、コロナ禍あるいはアフターコロナにおいて、世の中の大きなトレンドに合致していると考えています。その大きな流れとして、まず環境意識の高まりが挙げられます。

みなさまも身近に感じられているように、「何年かに一度の集中豪雨」といったものが最近は頻発しており、一人ひとりが気候変動の影響を大きく感じるようになっています。何か物を選ぶ時にも、少しでも環境に良いものを選んだほうがよいのではないかと、一人ひとりの行動が少しずつ変わってきていると思います。

そのような中で、車を買う時にEVを選択しようと考える方も増えてきており、自動車メーカーのEVシフトがここ2年から3年で急速に起こっています。テスラがビジネス的に成功したことに加え、既存のガソリン車のメーカーであってもEV専用のブランドを立ち上げたり、EVの比率を増やすと発表されたりしているため、先ほどお伝えした私どもの軽量素材に対するニーズは非常に高まっていると考えています。

ライフスタイルの変化という面でも、新型コロナウイルスが流行したことによって、家族などの少人数のグループで、キャンピングカーやクルーザーでレジャーを楽しむことが今まで以上に大きなトレンドになったと思います。また、清潔さを求めることや、いろいろなストレスが高まる中で自分の周りの環境を快適にしたいといったようなライフスタイルの変化が、私どもの製品に合致していると思います。

したがって、現代のさまざまなトレンドは、私どもの製品にとって非常に追い風になっていると考えています。

2023-2025 中期経営計画

髙野:2023年度から2025年度の中期経営計画についてご説明します。スライドのグラフは、2020年度から2022年度までの実績と2023年度から2025年度の計画を示しています。

2020年度はコロナ禍が始まった年ですので、非常に厳しいものでした。ここから順調に回復し、2022年度は売上高が約196億円、営業利益が約32億円、当期純利益が約21億円となっています。2023年度以降も順調に業績を伸ばしていくことを計画しています。

2023-2025 中期経営計画

髙野:計画の方針についてご説明します。まずは成長の複線化についてです。今の2023年度から2025年度はどうしても自動車が牽引役となっていますが、1つの分野に偏らず、家具・航空機もしっかりと営業活動に取り組み、それぞれの用途向けで成長していきます。

財務的な企業価値の向上についてですが、現在会社で大きく取り組んでいることの1つに新工場の建設があります。こちらは、生産能力を飛躍的に上げるためではなく、既存工場の老朽化したラインの入れ替えを主目的としています。そのため、新工場設立による大幅な生産能力の増加は見込んでいません。

したがって、売上や受注の増加への対応については、同様の設備を持っている協力企業にお願いし、技術指導なども実施しながらアウトソーシングのかたちで生産の拡大を考えています。

次に、サステナビリティの重視による非財務的価値の向上については、生産工程の見直しの中で新工場にも新しい設備等を導入し、排水の再利用や太陽光・水素エネルギーを活用するなど、工場自体をサステナブルプラント化したいと考えています。

製品においても、バイオ原料やリサイクル原料を使ったサステナブル製品の開発を考えています。その結果として、「Ultrafabrics」というブランドをサステナブルなブランドとして確立させていきます。

2023-2025 中期経営計画 ~用途別売上計画~

髙野:スライドのグラフは、中期経営計画における用途別の売上計画をお示ししたものです。

増井:成長の複線化については、先ほどは、家具用などもまだまだポテンシャルがあるということでしたが、販売地域の観点では、今の販売地域の中で拡大していかれるのでしょうか? それとも、アジアや日本といった地域も伸ばしていきたいと考えていらっしゃいますか?

髙野:この中期経営計画では、現行の販売地域である欧州をさらに伸ばしていこうと考えています。先ほどお伝えしたように、アジアはもう少し先の経営課題として認識しているという段階です。

増井:アジアでは革への憧れがけっこうあると聞きますが、やはり購入のマーケットがまだまだ育っていないのでしょうか?

髙野:そうですね。ただ、アジアの方も一足飛びに進んでいるようなかたちで、先進国がたどってきたスピードよりも速く、アニマルフリーや環境への配慮が浸透してきていると感じています。経済力も含め、マーケットとしてのニーズはあると思っていますが、私どもの経営資源の問題もあるため、まずは欧米でしっかりと実績を上げたいと考えています。

八木:海外の売上高比率は今後も高めていくのか、それとも現行のままというお考えでしょうか?

髙野:先ほどお示ししたように、日本向けは5パーセントくらいで、それ以外はすべて海外向けになります。ただし、日本向けとしているところも、国内商社を通して海外で使われていることが多く、製品のほとんどは海外向けというかたちです。日本でこのようにお話しながら、なかなか触っていただけないことは残念に思っています。

2023-2025 中期経営計画 ~業績目標~

髙野:スライドは、先ほどのグラフを数値に落としたものになります。売上は、先ほどのグラフのように年率平均で14パーセントの伸びを考えています。売上総利益率は3年間で7.5ポイント低下することになっていますが、これは先ほどご説明したように、アウトソーシングの推進や、2025年に稼働する新工場の減価償却費が増加することなどが要因になっています。

一方で、販管費は売上の伸びほどには増加しないため、営業利益率はほぼ現行水準、そしてROEも15パーセント前後で現在の水準を維持できると考えています。

配当方針

髙野:最後に、配当についてお話しします。私どもは安定した配当の継続を基本として、将来の事業展開に備えるため、内部留保の充実なども勘案して配当等を考えています。

足元では設備投資需要が継続するため、創出する利益を投資・内部留保・株主還元にバランスよく配分することを念頭に置き、配当性向は概ね30パーセントを目処としています。

2023年の配当の予想金額は31円で、これは1対2の株式分割をしているため、前年と同水準になります。

私からのご説明は以上となります。ありがとうございました。

質疑応答:高級車向けの自動車用シートについて

増井:「高級車向けに、シートベンチレーションという表面に開いた小さな穴から空気を吹き出す機能がありますが、御社の製品はこのような用法にも対応できているでしょうか? また、対応できる場合は、穴開けの加工は顧客側・貴社側のどちらで行うのかをご教示ください」というご質問です。

髙野:詳しい方ですね。かなりご専門の方だと思います。いろいろな課題はありますが、私どものほうでも対応は可能です。加工についても、将来的には自社で行いたいと思っています。

増井:御社の場合は、投資家のみなさまからのこのような質問も多い気がします。

髙野:自動車好きの方もいらっしゃるため、私がぜんぜん知らないことをおっしゃることもあり、ご質問も勉強になります。

質疑応答:第2四半期の売上の減少について

八木:「第2四半期は物流回復に伴う顧客側の在庫調整の底となった期間であるために、売上が大きく減少したものだと理解しています。この影響による4月から6月の売上の減少が、何億円から何億円くらいなのか、会社としての推定値を教えてください」というご質問です。

髙野:どのようにお答えしたらよいか難しいのですが、5億円前後かと思います。カテゴリーによっては上振れた部分もありますので、足し引きが合わない部分もありますが、そのような在庫調整の影響は5億円くらいだったのではないかと見ています。

質疑応答:競合他社のメキシコにおける合成皮革の生産体制強化について

増井:「住江織物などの、同業もしくは似た業種が、メキシコにおける合成皮革の生産体制を強化するというニュースを目にします。このあたりの他社との協力や競争の状況、御社の傘下企業の生産への関わりを教えてください」というご質問です。

髙野:先ほど中期経営計画の中の方針としてお話ししたとおり、今後の生産の拡大については、協力企業にアウトソーシングというかたちで依頼していく分が増えていきます。この中期経営計画の中では、国内の企業に依頼することを念頭に置いていますが、今後は私どものお客さまがいらっしゃる場所の近く、つまり海外での生産を増やしていかなくてはならないと考えています。

その際に自社で工場を建設するのか、あるいはその国の中で協力企業を見つけるのか、どちらにするのかがなかなか難しいところで、今考えているところです。私どもの企業規模では自力で一から工場を立ち上げるのはなかなか難しいので、海外でパートナーとなる企業を見つけて、技術指導をしてアウトソーシングしていくということは十分に考えられるのではないかと思っています。

質疑応答:合成皮革をめぐるトレンドの変化について

八木:「資料の16ページで『コロナ禍後の大きなトレンドに合致』とお話しいただいたとおり、確かに直近ではこのような傾向がありますが、従前は天然の革を好んでいたお客さまの層が、合成皮革に関しても受け入れが進んできたなと思われたのはいつ頃でしょうか?」というご質問です。

髙野:タイミングをお答えするのはなかなか難しいのですが、やはり高級な自動車だとまだ本革がモデルになっていると思います。ただし、オプションとして、「このようなシンセティックレザーもありますよ」「アニマルフリーを志向される方にはこのようなオプションを選んでいただけますよ」ということを、ここ数年で自動車メーカーでも考えていただけるようになったと思います。

八木:そのほかにも、「アニマルフリーを求める業界ごとの特徴はあるのでしょうか? 今まで考えていなかった業界からのコンタクトなど、お話しできる範囲で教えてください」というご質問をいただいていますが、いかがでしょうか?

髙野:今まで航空業界では、展示会などに行っても、アニマルフリーやサステナビリティといったワードがあまり見当たりませんでした。新型コロナウイルスの拡大前まではそうだったと聞いています。

しかしながら今年、当社の社長がそのような展示会に行ったところ、4年前とは様変わりして、いろいろなところでサステナビリティという言葉が見られたそうです。航空業界でも、今、急速にそのようなところに関心を高めているのではないかと思います。

八木:そのようなことを踏まえると、天然皮革は市場が縮小していると言えるのでしょうか?

髙野:市場が縮小しているかと言うと、明確にお答えするのは難しいです。例えば、発展途上国のほうではまだこれから本革を使いたいというニーズもあるかと思いますので、グローバルで見るとなかなか見えにくい部分があります。

しかしながら、原皮の価格を長期のトレンドで見ると、少しずつ右肩下がりになっている部分があり、そのようなところに需給の緩みと言いますか、価格が少しずつ下がっていることが感じられるかと思います。

質疑応答:日本の自動車メーカーとの取引について

増井:「御社の製品は、日本の自動車メーカーではどのような車種に採用されているのでしょうか?」というご質問です。

髙野:私どもの契約として、「このような企業に採用されています」とはなかなか言いにくいのですが、残念ながら、日本の自動車メーカーとの取引はありません。日本の企業はコストセンシティブで、「私どもの価格はこうですよ」と言うと、はじめから合わない場合が多いです。

八木:御社は海外と取引されているのですね。

髙野:販売会社が欧米にあるということも理由の1つだと思います。

質疑応答:取引のある航空会社について

増井:「御社の製品の、航空会社での採用先はどこでしょうか?」というご質問です。

髙野:ユナイテッド航空やアメリカン航空など、北米の会社が多いです。ただし、そればかりではなく、アジアの会社もありますし、今はJALでもヘッドレストカバーに私どもの製品を使っていただいています。先日発表された、ANAのAir JapanというフルサービスキャリアとLCCの間のブランドに関しては、私どものシート材を使っていただいています。

八木:先ほどお話がありましたが、本当にいろいろな種類の製品を作られているので、顔の周りは柔らかく、座るところはやや張りがあるなど、細かい分け方もできるのでしょうか?

髙野:使う場所によって品番を変えて、いろいろな組み合わせでご提案ができます。

八木:そこも強みの1つということですね。

質疑応答:プライム市場への上場について

増井:「スタンダード市場からプライム市場に上場することは目指していらっしゃるのでしょうか?」というご質問です。

髙野:会社としてプライム市場を目指すという話は以前からしており、いろいろな数値基準、客観的な基準はほぼクリアできているのではと思っています。今後は、ソフトな基準をどのようにクリアしていくかなど、準備をしていきたいと思っています。

増井:やはりプライム市場のほうが資金調達をしやすかったり、いろいろな投資家が海外から来たりというメリットを感じていらっしゃるのでしょうか?

髙野:そうですね。やはり、スタンダード市場の会社には投資しにくいという考えの投資家もいらっしゃると思いますし、出来高もぜんぜん違ってくると思いますので、プライム市場に上場したいと思っています。

質疑応答:人手不足の問題について

八木:「足元では人手不足という問題を抱えている会社も多いと思いますが、中途採用も含め、御社の人員の充足状況に関してはいかがしょうか?」というご質問です。

髙野:日本とアメリカとで分けてお話しします。日本については、主に工場で働いていただく方の話ですが、「楽に、いくらでも採用できる」という状態ではもちろんありません。常にいろいろなところのお話をうかがって、必要な人数を補充していきたいと考えています。周辺の工場も多い場所ですので、いろいろな工場との取り合いのような環境です。

アメリカについては、みなさまもいろいろなお話を聞かれていると思いますが、もう少し厳しいです。退職者が出たり、退職する意向があったりすると、給与面での調整をしたり、新しい人を探すリクルーティングフィーもかかるので、やはりお金がかかります。人材に関しては、当社のみならずどこの会社でも問題になっているところです。

質疑応答:有利子負債の水準について

増井:「22ページの配当方針のところで、「内部留保の充実などを勘案し」と記載されています。企業体質の強化を目指していらっしゃると思いますが、有利子負債の水準などは今後どのようにしていくのでしょうか?」というご質問です。

髙野:今日はバランスシートの資料をお持ちしていないのですが、ネットD/Eレシオは現在0.9倍となっています。それほど課題となる水準でもないと思いますし、極端にエクイティに頼っているわけでもないため、比較的ヘルシーな状態ではないかと思っています。

増井:今の水準を維持するということですね?

髙野:おっしゃるとおりです。

髙野氏からの挨拶

第2四半期決算の発表で株価が大きく下がり、投資家のみなさまにはご迷惑をおかけしています。しかしながら、中長期の成長の方針はまったく変更がありませんので、方針等をご理解いただきながら、投資の検討をしていただければと思います。本日はありがとうございました。

当日に寄せられたその他の質問と回答

当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。

<質問1>

質問:売上構成比の8パーセントが航空機用とのことですが、利益伸長に大きく貢献する航空機の構成比をさらに高めていく方向性はあるのでしょうか?

回答:航空機は収益性も高く、民間航空機向けは後発で市場規模も大きいため、注力していきたいと考えています。

<質問2>

質問:貴社のPBRは2倍以上であるにもかかわらず、なぜ割安放置されていると思われますか?

回答:第2四半期決算発表後の株価下落については、第1四半期業績が良好だったために上方修正期待が大きかったこと、また下半期の業績についても懸念を持たれた投資家が多かったためと認識しています。

<質問3>

質問:現在、北米への販売が主ということですが、工場が日本国内にあることのメリットは何でしょうか?

回答:家具向けのマーケティングでは、「日本の“匠の技”で製造された」ことを1つの特徴としています。

<質問4>

質問:みずほ銀行・きらぼし銀行・りそな銀行が大株主としていらっしゃるようですが、そのことによる事業への影響は何かあるのでしょうか?

回答:当社の運転資金および今後の設備投資を進めるにあたっても、3行のご協力は不可欠と認識しています。

<質問5>

質問:アウトソーシング企業に対しての監査体制はどうなっているのでしょうか?

回答:品質やプロセスが適切に維持されるよう、監査体制についても整備していきます。

<質問6>

質問:航空機向け商品の販売先の拡大について、中期経営計画には明記されていませんが、具体的な数字が難しいようであれば、イメージできるかたち教えてください。

回答:航空機向けの売上成長率目標については、資料に記載がありますのでご確認ください。販売先の拡大と既存の取引先における取扱量の拡大の両方で実現させたいと考えています。

<質問7>

質問:高速鉄道用途への営業と採用状況について教えてください。

回答:大変申し訳ありませんが、現段階で開示できる内容はありません。

<質問8>

質問:Ultrafibras de Méxicoという会社は名前が偶然似ているだけなのでしょうか? それとももっと深い関係があるのでしょうか?

回答:偶然似ているだけのようです。

<質問9>

質問:8月14日の第2四半期決算発表の場合、私には概ね妥当だと思える機関投資家向けの説明会で行われた説明が、短信にも決算説明補足資料にも見当たらないこと、株式分割後の値で2,500円超で自社株買いを行ったのに現在の株価では行っていないことなど、売りの仕掛けを呼んだり株式交換による買収が著しく不利になったりする状況があるように見えます。この点に関して、現状の認識と今後の方針をお聞かせください。

回答:第2四半期決算発表後に株価が大きく下落しましたが、中期的な経営方針に変更はなく、現行の中期経営計画に沿って経営を進めていきます。

<質問10>

質問:プライム市場昇格に必要とは言え、役員が売りを浴びせるような手法は株主の信頼を相応に毀損したものと思います。今後もこのようなことが発生するのかどうか、貴社の方針をご教示ください。

回答:取締役2名による当社株式の売却については、両名と意見交換しつつ、最終的な判断は株主である両名によるものです。両名は保有する株式の一部を売却しましたが、依然として大株主であり、引き続き当社取締役として、当社の企業価値の向上を目指して尽力していく所存です。