25.8期3Q業績及び進捗率(前回予想比:2024年10月11日公表)

中川祥太氏:株式会社キャスター代表取締役の中川です。それでは、2025年8月期の業績予想をご説明します。

まず、第3四半期の業績およびその進捗率についてお話しします。売上高の進捗率は68.4パーセントです。その他の数字については、スライドをご覧いただければと思います。

2025年8月期 通期業績予想修正(2025年6月26日開示)の背景

2025年8月期の通期業績予想の修正について先日発表しましたので、その背景についてお話しします。

スライドに記載のとおり、稼働社数は過去最高を更新しました。これは非常にありがたい結果です。しかし、当社が鋭意進めていた提携効果や、それに伴う販管費の削減などの進捗が想定を下回ったため、通期業績予想を下方修正しています。

主な要因の分析はスライドに記載のとおりです。特に顕著な要因として、ARPUは通常の業績において最も大きく影響していると考えています。利益面では、先ほどお伝えした提携効果などが最も大きな要因だと考えており、我々としては、そこに対して対策をしていくことになります。

2025年8月期 通期業績予想修正(2025年6月26日開示)の内容

通期業績予想の修正内容について、先ほど触れたARPU(顧客平均単価)は、まず結論として、第3四半期累計では28万3,000円で着地しています。

ARPUの四半期推移については、後ほどグラフで詳しく示しますが、これまで下がっていく傾向が見られました。しかしながら、足元ではアップセルが非常に順調に進んでおり、第4四半期累計では30万円へ回復することを予想しています。

第3四半期まで減少傾向にありましたが、そこから回復し、再度上昇していくと予想しています。

業績ハイライト

では、2025年8月期第3四半期の決算実績について、詳しく説明を進めます。

ハイライトです。上期の先行投資などの負担があったため、第3四半期は数字が改善したものの、赤字が継続する結果となりました。具体的な数値については、スライドをご確認ください。

良い点としては、稼働社数が先ほどお伝えしたように過去最高を記録している点です。しかし、特に期待していた専門領域については、提携効果の遅れなどにより、従来の成長ペースにとどまった結果となりました。

利益に関しては、CACの効率化は順調に進んでいるものの、それを上回る獲得には至っていない状況です。それ以外の要因として、「EC-Consulting」やAI関連の「LUVO」といった新規領域への投資も、軽微ながら影響を与えています。

四半期業績推移(売上高)

こちらは稼働社数です。お伝えしているとおり、稼働社数は順調に増加しており、その増加の状況は非常にポジティブであると考えています。ただし、この部分の加速がまだ十分ではなく、今期の課題になったと感じています。

稼働社数の四半期推移

稼働社数については、先ほどお伝えしたとおり、過去最高の数字となっています。

四半期業績推移(営業利益)

四半期の業績推移についてです。営業利益に関しては、売上に応じたコストコントロール等を実施し、赤字幅は縮小に向かっています。今後も原価の最適化を継続しながら、成長投資の選択と集中を従来どおり進めていく予定です。

営業利益増減要因

営業利益の増減要因の分析です。こちらは先ほどお伝えした内容と大きく変わりませんので、ご覧いただければと思います。

四半期業績概要(セグメント別 売上高)

セグメント別の売上高についてです。我々の主力事業であるBPaaS事業は、アップセルの効果は限定的ながら、専門領域のサービスが堅調に推移しており、順調に進展していると考えています。

その他の事業領域では、子会社の連結化と「EC-Consulting」の運用代行サービスが売上高に寄与しているとお考えください。

セグメント別業績概要(BPaaS事業)

BPaaS事業については、特に低ロットサービスの拡大が進んでいます。そのため、ARPUの回復はこれからあらためて進めていく段階ですが、その目的に向けて、第4四半期にかけてサービスのラインナップの見直しと広告のアロケーションの調整を実施します。

これらは現時点でも進行中であり、今後も続けていく予定です。これにより、客単価には調整がかかっていくとご理解いただければと思います。

売上高の増加については、稼働社数が伸びている「My Assistant」の順調な拡大が主な要因です。採用領域の大型案件の解約などの要因によりまだ全体としては概ね横ばいとなっていますが、現状は低ロット領域の拡大が進んでいるとご理解いただければと思います。

利益面については記載のとおりで、いったん持ち直しに向かっているとお考えいただければと思います。

セグメント別業績概要(その他事業)

その他事業のセグメントです。派遣・紹介事業等は概ね横ばいで堅調に推移していると考えています。また、2025年4月8日に設立した「CASTER TECH VIETNAM」は、第4四半期よりP/Lの連結化を行う予定のため、現時点では業績には含まれていません。

これにより、主な影響としては利益面が挙げられます。今後プラスに作用すると思いますが、我々としては、強化された開発環境をいかに活用するかをしっかりと考え、対応していきたいと考えています。

KPIの状況

各KPIの状況です。大きな内容は記載のとおりですが、広告のアロケーションを調整したことにより、ARPUは改善の兆しを見せています。それに伴い、MRR(月次経常収益)も改善する傾向にあるため、これを引き続き推し進めていきたいと考えています。

先ほどお伝えしましたが、2025年の第1四半期に29万6,000円だった顧客平均単価が、27万円台へと徐々に下がる傾向にありました。この要因として、低ロットの販売が加速しすぎたことが挙げられます。そのため、いったんアロケーションをやり直しました。

元に戻したことで、アップセルなどが順調に効果を発揮し、30万円程度の水準に回復すると予想しています。この点については、今後マーケットをしっかり見定めながら進めていく必要があるため、後ほどご説明します。

KPIの状況

続いて、ユニットエコノミクスです。ここは常にコントロールしながら運用しているため、大きな動きは特にありません。現在も適正水準内でコントロールできている状況だと思います。

貸借対照表

貸借対照表です。現預金の総資本比率は58.9パーセント、自己資本比率は38.5パーセントとなっています。現時点では問題のある水準ではありませんが、黒字での累積をしっかりと図っていけるようにしたいと考えています。

トピックス①(CASTER BIZ 営業代行)

2025年8月期のトピックスについてお話しします。営業活動を一括して専門チームに任せられる「CASTER BIZ 営業代行」の提供を開始しました。

従来から小規模では常に行ってきた業務領域ですが、今回は営業支援に非常に強みを持つ株式会社Wizと取り組みをスタートする運びとなりました。我々としても、この領域をサービスとしてきちんと切り出し、本格的に取り組んでいきたいと考えています。

トピックス② (育児・介護と仕事の両立支援で即戦力人材を創出)

2つ目のトピックスです。教育事業を展開しているヒューマンアカデミー社と提携し、「リモートワーク経理講座」を開講しました。もともと経理領域に関して、自社でコンテンツを提供し、人材の育成を行っていました。

ありがたいことに非常に好評をいただいていることもあり、我々としてはさらに幅広い領域で機会を提供するため、今回の提携に至りました。

トピックス③ (CASTER BIZ accounting 新プラン)

3つ目のトピックスです。税理士法人特化型の「CASTER BIZ accounting for 税理士法人」を提供開始しました。これまでも、企業向けの会計業務をアウトソーシングのかたちで提供していました。

税理士法人は一部のお客さまとして存在していましたが、最近ではそのニーズがより強くなってきています。そこで、それらにしっかりと応えられるよう業務設計を見直し、専門サービスとして提供するに至りました。

当社としては、日本の経理・税務分野には依然として多くの課題が存在すると考えており、こうした業界への一助となれるよう努めていきたいと考えています。

トピックス④(子会社グラムス/楽天×コメ兵と業務提携)

トピックスの4つ目は、子会社であるグラムスについてです。リユース市場のブランド品や中古品の買取販売の領域において業界の活性化を目指し、楽天、コメ兵、グラムスの3社で業務提携契約を締結しました。

この内容は、当社がこれまで提供してきたBPOやBPaaSの領域とは異なる分野です。リユース市場は非常に拡大している市場であり、その概要については資料を通じてご確認いただければ幸いです。

こうした市場におけるオペレーションや多様なかたちでの価値提供について、当社としてはさらなる拡大の可能性があると考えています。このような提携を通じて、業務領域を拡大していきたいと考えています。

トピックス⑤(子会社グラムス/生成AIを活用した新機能をリリース)

5つ目のトピックスです。こちらもグラムス社に関してです。モデル手配やレタッチが不要とスライドに記載していますが、AIを活用し、商品画像からモデル着用画像を生成する「バーチャル・トライオン」と呼ばれる領域のサービス機能を、彼らのSaaSツール内に追加しました。

みなさまも、このような技術があることをニュースなどで目にされたことがあるかもしれませんが、これを実用レベルで展開できているプレーヤーは非常に少ないのが現状です。

海外のさまざまなAIモデルを単純に活用するだけでは、業務レベルに到達していないのがほとんどです。そのため、このようにしっかりとビジネスレベルで耐えうるものとして展開できることは、彼らの技術力を確実に証明していると考えています。

もちろん、この機能だけでこのサービスが大きく拡大するわけではありませんが、さまざまな手法でこのような機能を取り入れていくことで、この分野においてグループとしての優位性をさらに確立でき、非常に効果的な一手を打てたと考えています。

トピックス⑥(子会社LUVO/新サービスのリリース予定)

6つ目のトピックスです。こちらはAI関連で、LUVO社が提供する経理および経営管理の領域に特化したAIエージェントサービスの発表です。サービス提供開始は近日中を予定しています。

自社開発したAIエージェントを発表するのは当社にとって初めての取り組みとなります。そのため、この分野への本格的な進出を強く推し進めていきたいと考えています。

特に、当社としてはもともと経理や財務、経営管理の領域を得意としており、それらの知見を活かしたサービスとなることが特徴です。また、豊富な実務経験に基づいてこそ提供できるサービス領域を、包括的にカバーして展開することを目指しています。

当社を取り巻く市場環境

第4四半期に向けて、今後の方向性についてお話しします。まず、当社を取り巻く市場環境についてです。

従来型の国内BPO市場は緩やかに成長しています。BPaaSやAIが関連するアウトソーシング領域においては、市場構造が大きく変化していると考えています。

まず、スライド中央に記載している「スモールロット」、つまりBPaaSの市場に関してです。こちらはすでに公表されているとおり、2025年から2032年の間に年平均成長率14.8パーセントと、非常に高い成長が見込まれる市場です。もともと高成長市場として存在していると考えていただければけっこうです。

この市場の主な対象は中小企業での導入などが中心です。ただし、この従来の市場に対して、急速にスライド右側にある「マイクロロット」と呼ばれる新たな市場が浸透し始めています。「マイクロロット」とは、月額4万円以下の市場と当社が定義しているものです。

この市場についてもCAGR(年平均成長率)は34.3パーセント、つまり年率で30パーセントを超える速度で成長すると予想されています。

当社としては、スモールロット市場を対象とするメインサービス「CASTER BIZ」を展開してきましたが、今期はそのさらに下位にあたる月額4万円以下のマイクロロット市場に向け、「My Assistant」のトライをかなり進めてきました。

その結果、すでに当社の業績にも表れていますが、この市場は非常に活発であることがわかりました。活発ではありますが、お客さまの規模が非常に小さいこと、そしてまだチャネルが安定していないという問題を抱えています。そのため、無理をせず、最大速度でどのように拡大するかが最も重要なポイントとなります。この資料はその背景を示しています。

市場環境の変化を踏まえた、今後の方向性

結論として、この変化を踏まえた今後の方向性としては、マイクロロット市場でシェアを拡大するためには、顧客獲得コストと原価の圧縮が必要です。

当社ではそこに対して、さまざまなかたちでデータを計測し、実際にサービスを提供する中で新しい技術を試し、フィジビリティを経てAIによる実現可能性が非常に高いことを確認しました。これを今後の運用フェーズに移行することが、今期から来期に向けての方向性です。

市場変化に対応するための2つの重点施策

それぞれの具体的な内容について簡単にご説明します。受注効率と生産性向上のいずれも、サービスの価値を高めて事業拡大を図ることが目的です。

左側の内容は非常にシンプルです。課題としては、低単価料金に対する最適な顧客獲得コスト(CAC)運用が挙げられます。そのため、商談不要の動線設計や、その他さまざまな顧客獲得コスト削減案を複数展開していく予定です。

右側はAIによる生産性向上です。これはみなさまもイメージがつくと思いますが、世の中全体でよく言われていることです。つまり、AIプロダクトによる業務構造の改革です。

例えば、先ほど当社が発表を宣言した「ECHO BOARD」のような、会計業務や財務業務をAIで効率化することは現実的に可能です。なぜなら、すでに実行しているからです。このようなAIの活用を通じて生産性を向上させ、スモールロットおよびマイクロロット市場におけるさらなるシェア拡大を目指していきたいと考えています。

重点施策① 商談レスの導線設計による顧客獲得コスト削減

具体的な点を簡単にご紹介します。当社ではオンラインですべてのお客さまに対応しています。コストの全体像として挙げられるのは、マーケティング費用、営業費用、オンボーディングの費用など、多岐にわたります。

これらのコストを当社ではすべて計測できており、それらをAIに置き換える取り組みを進めています。すべてを削減するかは別としても、削減可能と定義できる部分は94パーセントにのぼっています。

これをすべて削減、もしくは効率化することができれば、当然ながら顧客獲得コストは下がっていきます。コストが下がることで、お客さまに提供できる製品、商品価値、サービス価値を向上させることが可能です。その結果、サイクルをうまく回していけると考えています。

重点施策② AIプロダクトによる業務構造改革

そして2つ目です。こちらも実際に業務を行う中での話です。ビジネスの領域において、大半を占めるのはコミュニケーションコストとディレクションコストです。オペレーションと呼ばれる実際の業務を行うためのプロセスは、我々の計測データによると全体の10パーセントに過ぎません。

ほとんどがお客さまとのコミュニケーション、例えば「何をしたいですか?」「どういうふうにしたいですか?」「これで大丈夫ですか?」「確認をしましょう」「ミーティングをしましょう」といった内容にあたります。

そして、「この業務を誰々にやらそうか」「誰々できますか?」「できましたか?」「どうですか?」「この品質どうでしょう?」「いい感じですね」、あるいは「もうちょっと良くしたいですね」といったコミュニケーション、ディレクションコストが全体の90パーセントを占めていると考えてください。

そのため、この部分の生産性向上は非常に強く効果を発揮します。我々はすべての業務プロセスを把握しているため、実際に削減可能な範囲としては、現状で45パーセントの削減が見込めるという結果が得られています。

こうした要素を効果的に組み合わせながら、自動化を推進し、生産性向上を目指していきたいと考えています。本日のご説明は以上です。

質疑応答:アップセルの阻害要因と今後の単価改善策について

「BPaaS事業のARPUが低下したということですが、アップセルの阻害要因は何なのでしょうか? また、今後の単価改善策は来期以降にかけて何かお考えでしょうか?」とのご質問です。

こちらは資料内でお答えしたとおり、アップセルの阻害要因はほとんどありません。そのため、現在アップセルが進み、元の状態に戻りつつあるとお考えください。

なぜARPUが低下していたのかという点についてですが、新規のお客さまが100社増加した場合、このうち、特に4万円以下のマイクロロット市場のお客さま比率がかなり高くなっていたという現状があります。

この状況は、あえてその市場に注力して獲得を進めていた結果です。しかし、この獲得が進みすぎて若干オーバーシュートしたため、アロケーションを変更しました。配分を調整することで元のお客さまの配分に変わっていきますので、今回はこのような取り組みにトライしていた時期であるとご理解ください。

端的に言えば、上半期にやや取れすぎてしまった部分があり、それを修正したことで現在は元の状態に戻しています。その結果、構成比率が変化し、アップセルは自然とその影響が効いており、単価も元の水準へ戻りつつあると考えていただければ幸いです。

今後の単価改善策としては、単価だけに注目すると、高単価のお客さまに対してサービスを提供すればよいという話になりますが、一方でマイクロロット市場が非常に拡大しているという現状もあります。

したがって、当社としては、マイクロロット市場のお客さまに提供するサービスと、高ロットのお客さまに提供するサービスを明確に分け、それぞれ異なる考え方を整理した上でコミュニケーションを行う必要があると考えています。

ここで発表できる具体的な方針はありませんが、単価や市場が大きく異なるものが現在急速に立ち上がってきているため、それらを分けていく必要があるとご理解いただければと思います。

質疑応答:大型案件の解約に対する見解について

「大型案件の解約は一時的なものか、構造的な課題によるものか、どちらでしょうか?」とのご質問です。

端的に一時的なものと考えています。解約されたお客さまに関しては、前回も同様のことをお話ししましたが、先方の業績による事由であり、仕方がないと考えています。

むしろ、ありがたいことに、上場してからは大型のお客さまの構成比が増えていますので、この構成比についても考慮していく必要があると思います。どちらかというと、構成比は増加していると捉えていただければと思います。

質疑応答:資金調達の見通しについて

「現金および預金の大幅な減少について、今後の資金調達の必要性や見通しはいかがでしょうか?」とのご質問です。

一定の減少は見られますが、資金調達については基本的にエクイティでの調達をメインとして行っていく方針です。したがって、まずは現状の手元資金の中で投資可能なものにしっかりと投資を行い、再び黒字化を目指すフェーズに取り組んでいきます。

その上で、安定的な状態に到達したタイミングで、資金調達の必要性に応じて検討し実施することになるのが、基本的なストーリーと理解しています。

質疑応答:今後の営業方針と業績改善策としてのAI活用の取り組みについて

「第4四半期以降の業績改善シナリオとその策(例えばコスト削減や受注拡大施策)はあるでしょうか?」とのご質問です。

第4四半期に限らず、来期全般についてもお話しします。基本的には今期はかなり積極的に踏み込んだ年です。その中で、良かったものと悪かったものがそれぞれいくつかあり、その最終結果が今回出揃ってきています。

基本的には、踏み込んだものを元に戻すというのがもともとのシナリオです。そのため、やることはシンプルで、畳んだものや広げたものを畳むという方針になっています。現状のお客さまに対し、アップセルにも対応可能であるため、着実に取引を拡大し、黒字の状況に戻すことが目標です。

また、AIなどを含む急激な市場変化が確実に起きている中で、LUVO社での取り組みや、自分自身もほぼ毎日AIに触れ、コーディングまで実施する中で得た最前線の情報に基づき、トライを重ねています。これらの活動を通じて得た知見を会社にどう反映するかが、非常に重要なポイントであると考えています。

質疑応答:生成AI導入支援の収益化について

「生成AI導入支援の取り組みについて、収益化のイメージはどのようにお考えでしょうか?」とのご質問です。

この件については国全体で生成AIに関する導入を支援する補助金や、それを後押しする施策が現在大規模に進行している状況です。

私たちはもちろんこうした動きをキャッチアップし、それを下地にしたさまざまなアクションを用意しています。我々としては、どの領域にどのようなかたちで進出するのが最も当社としてレバレッジを活かせるかを見定める期間でもありました。現在、その方向性についてはLUVO社などで事業が進行しています。取り組みが進んでいると考えていただいてけっこうです。

収益化については、助成金が出る内容を見ていただければわかると思います。具体的には、研修を行うことで企業がAIに対応できるようにします。または、アプリケーションを作成して提供します。その後、作成したアプリケーションを利用してもらうなどがあります。

ただし、導入支援としては、少なくとも研修を受けてもらうこと、実際の作成支援を行うこと、またはAIエージェントを導入することが主な取り組みとなります。この点に関しては、すでにサービス提供が可能な状態になっているとご理解いただければと思います。我々としては、準備が整い次第、すべての取り組みを大規模に進めていきます。

質疑応答:株主還元に対する考え方について

「株価が伸び悩んでいますが、貴社の株主還元の考え方についてご教授ください」とのご質問です。

現時点では、株価が伸びるような数字を作っている状況ではないと認識しています。我々としては、過去に黒字を出した実績もありますし、現在はキャッシュ・フローのバランスが取れるところまでしっかりと進めた上で、獲得したリソースをどのようにマネタイズするかの取り組みを、足元で行っている状況です。

来期に向けてどの程度利益を出せるか、その利益に関して取り組んでいる内容、およびAIを含めた今後の業績拡大に関する道筋についてしっかりお伝えしたいと考えています。これらをお伝えした上で、最終的にはみなさまにご判断いただくことになるかと思います。

質疑応答:CASTER TECH VIETNAMの現状について

「海外事業の現状と課題について教えてください」というご質問です。

海外事業についてですが、おそらく「CASTER TECH VIETNAM」のことを指しているのかと思いますが、事業ではなく、システム開発拠点になります。

システム開発拠点での開発活動に伴い、P/Lに対する影響が資産として扱われるなどの影響はありますが、基本的には事業として売上が発生するわけではないとお考えいただければと思います。順調に立ち上がっており、予定外のコストがかかることはありません。

質疑応答:競合他社および市場環境におけるBPaaSおよびAI領域について

「今後の方向性の中で、競合と認識している企業を教えてください」とのご質問です。

我々にとって重要な企業が2つあります。まずは大先輩として、また、当社が追いかけなければならない、そして立ちはだかる存在となるだろう企業としては、SHIFT社です。

SHIFT社は、今回の決算発表で明確にBPaaSを掲げられました。この領域については、特に経理・労務を中心とした領域として捉えていることも発表されています。そのため、我々としてもこの分野で競り負けないよう、しっかりと事業拡大を進めていかなければならないと考えています。

また、切磋琢磨する立場としては、kubell社がBPaaSの領域に最近進出してきたことも挙げられます。こうした企業は、競合であると同時に、この領域の市場拡大に取り組むために共に向き合うプレイヤーであると捉えています。

AI領域において、「BPaaSの領域×AI」はまだあまり存在していない状況です。本当はこの分野に参入する企業が増えてほしいと考えており、そのほうが我々の経営も楽になるのですが、現時点では特に注目すべき企業は見当たらないと考えています。ただし、市場環境は数ヶ月で変化するため、積極的に情報を収集しながら、なるべく我々が先頭を走れるよう進めていく方針です。

質疑応答:会社のミッションや存在意義について

「今日のお話を伺うと、原価を最大限圧縮し秘書という人材の提供ではなくAIツールを提供していくような会社へ業態変換されているようにも聞こえました。ミッションと事業とのつながりが希薄になっているような気がするのですが、今後会社のミッションや存在意義をどのようにお考えでしょうか?」とのご質問です。

原価を圧縮するというよりは、生産性を上げていくこととなります。当社では、決算情報や従業員数をご覧いただくとおわかりになるように、従業員として抱えています。

「ここはもういらないよ」と言って単純に削減を行うことは簡単ではありませんし、そのような意図もありません。その中で何をするのかについては、生産性を向上させることです。生産性を上げるために何をするのかについては、AIツールを提供するだけでなく、それを使いこなすことが重要です。当社としてはそれらを最大限に推進していく方針であり、その姿勢を従業員にも求めていくことになるかと思います。

ご質問でも触れられたとおり、秘書という人材の提供についてですが、かつて我々を知っていただいている方の中には、オンライン秘書の会社だと認識されている方もいらっしゃいます。しかし、現在は秘書領域のサービスはそれほど多くなく、むしろ非常に少ない状況です。現在は他の領域を主力としてサービスを提供しています。ただ、マルチに展開していると思っていただいていることも、ある意味では1つの強みだと考えています。

したがって、我々としては、あらゆるAI領域を取り込み、幅広い業務サービスを提供できる企業として、今後もお客さまにサービスを提供していくことが、すべての関係者にとってハッピーなシナリオになるのではないかと考えています。

ミッションや存在意義を取り上げていただいたことは、非常にうれしく思います。当社はリモートワークを当たり前にすることを目指して設立され、リモートワークに全力で取り組んできました。

ただし、これは「我々が」や「従業員が」「クライアントが」といった話ではなく、世の中の状況が大きく変化してきています。現在もリモートワークを当たり前に行っていますし、社会全体でも当たり前として定着しています。ただ、その「当たり前」が現在では脅かされつつある状況になってきていると感じています。

したがって、この状況にどのように向き合うべきかを検討する必要があり、私たちはもう一度、存在意義やミッションを再定義しなければならないと考えています。「いつ」という点についてはお答えできませんが、市場の現状にしっかりと適応していく必要があると考えていることが回答となります。

質疑応答:マネーフォーワード社との業務連携について

「筆頭株主のマネーフォワードとは業務上の連携はありますか?」とのご質問です。

ここは発表している範囲でのお話になりますが、相互にお客さまをご紹介したり、共同でプランを開発したりといった取り組みを行っていますので、そのようなことを実施しているという回答になります。

質疑応答:マネーフォワード社およびKPMG社との連携状況について

「提携案件が想定よりうまくいっていないというお話がありました。過去発表していますマネーフォワードやKPMG関係の取り組みの状況を教えてください」とのご質問です。

マネーフォワード社とは、基本的には先ほどお話ししましたように業務上の連携を行っています。ただし、彼らのサービスをご利用されているお客さまと、そして我々の経理サービスを利用されているお客さまの客層には、かなりの違いがあります。

一定程度試して調整を進めた結果、客層が異なることが判明し、それにより、どのように連携を進めるか模索するのに時間がかかりました。「立ち上がりが遅れていってしまったな」というのが主な課題であると理解しています。

今後についてですが、市場も変化しているため、マネーフォワード社側で当社のようなお客さまが増加する可能性もありますし、当社のお客さまが徐々にマネーフォワード社の利用率を上げる可能性も考えられます。この点については、今後の状況に応じて対応していくことになるだろうと思います。

KPMG社に関しては、我々との取り組みだけではなく、先方の中でも非常に多くのAI関連の取り組みが進められています。積極的にリリースしている内容には、AIエージェントを活用した取り組みや、AIによって実現可能となった業務実行などの発信が多数見受けられます。

我々の技術だけではなく、他の技術と組み合わせてさまざまな取り組みを行っています。その結果として、現在彼らの中で稼働している当社の技術もあり、そのフィードバックを定期的にいただいています。このように監査業務などの領域において、どの技術が有効に活用されるのか、どの技術が最適なのかといった議論を継続的に深めていける関係性があるとお考えいただければと思います。

質疑応答:競合の新規参入に対する差別化について

「UPSIDERもAI経理に参入されたかと思います。競合が増えていく中でどのように新規参入に対して差別化を図っていくのでしょうか?」とのご質問です。

多くのプレイヤーが参入すると考えられます。経理を担う企業や担当者であれば、特に理解しやすいと思いますが、誰もが記帳業務だけを行っているわけではありません。当たり前のことですが、経理業務はそれだけに留まらないのです。

企業経営におけるさまざまな長い文脈の中で、月次のサイクル、四半期ごとのサイクル、年次でのサイクルを通して、コミュニケーションを図りながら綿密に進めていくことが経理業務の本質となります。

しかし、この領域をすべてAIだけで実行することが可能かと問われれば、不可能です。当社は自社の業務にAIを導入し、さらにAIエージェントを自社で開発して活用しています。これを基にどこまで自動化できるかを、実際に検証しています。

自動化できる範囲は多岐にわたりますが、知識を持った人が適切なコミュニケーションを取りながら進めない限りは、この業務を完全に代替することは不可能です。我々は何ができるのかについては、圧倒的な採用力を持っていることをご認識いただければ幸いです。

圧倒的な採用力の強さは、特に経理領域において顕著です。そのため、業務を遂行できる人材へ、より精度が高く生産性に優れた経理オペレーションシステムを提供すれば、他のプレーヤーに負ける理由がないというのが我々の基本的な考え方です。

新規参入者が増えること自体は歓迎しますが、基本的に人材採用で優位性を持つことが当社の強みです。それだけに頼るのでは心もとないため、AIの活用にも注力しています。現時点では最前線に立っていると認識しており、その点に関してはそれほど懸念する必要はないと考えています。

質疑応答:BPaaS事業と小規模企業の需要拡大について

「BPaaS事業は現在どのような業種、業界から引き合いが特に強いのでしょうか? 今後重点的に攻めたい顧客層があれば教えてください」とのご質問です。

まず、BPaaSと呼ばれるオンラインで段階的にBPO業務を提供しているお客さまのゾーンでは、主に100名から300名程度の企業規模がメインとなっています。

我々のデータ上でも同様の傾向が見られ、最近では500名や1,000名規模の企業も増えてきましたが、基本的には100名から300名規模の企業がボリュームゾーンとして最も多いと考えています。

業種や業界については、当社の特性も影響していると思いますが、スタートアップやITといった領域の企業との関わりが深く、そのような業界においてはありがたいことに知名度が高い状況です。そのため、これらの業界の比率は当然ながら比較的高い割合を占めています。ただ、3割から4割程度であり、全体がその業界に占められているわけではありません。

その次はどこが多いのかというと、士業の先生方やコンサルティング系の企業など、そのような業務を行っている企業が多く、小売店などにも分散しているという構造になっています。

今後、特に引き合いが強くなってきているのは、経理の分野です。この領域はもともと多くの方が煩雑に感じ、アウトソーシングしたいというニーズが高いとされています。ここをターゲットにして力を入れてきましたが、同時に先ほど触れたロットの小さなお客さま、具体的には100名から300名規模ではなく、1人から50名、100名程度の規模を対象とした取り組みも進めています。

これぐらいの規模の企業のニーズが爆発的に拡大している現状を踏まえ、我々としてはそうしたお客さまにどのように提供を進めていくかを検討しなければならない段階にきていると理解しています。

ありがたいことに、多くのお客さまから引き合いをいただいていますが、この業界はデリバリーコストとの戦いでもあります。そのため、デリバリーコストが大きくなりすぎないようバランスを保ちながら、お客さまへの提供価値を下げることのないよう、「じゃあ、どうやってやるんだっけ?」の工夫を進めていきたいと考えています。

質疑応答:AIによる顧客業務の効率化と導入可能性について

「今後のBPaaS事業におけるAI活用について、自社内の効率化という観点のAI活用が多いのか、それともAIで顧客の業務自体を代替させていくのでしょうか? もし後者の場合はAIが業務を代替させるほど実用化できるのは難しいと考えていますが、いつ頃を見据えていますでしょうか?」とのご質問です。

自社内の効率化については、多くの企業が取り組んでいるため、十分可能だと考えています。それよりも、これを実行するかどうかという次元の問題になってくるかと思いますので、ここは割愛します。

AIによる顧客業務の代替については、難しいことではありません。逆説的に言えば、自社の業務効率化にAIを活用できるのですから、顧客の業務効率化にもAIを活用できない理由はありません。いずれも人間が行う作業という点では同じです。ただし、最終的にはお客さまのニーズ次第です。

結局のところ、人間に任せるべきなのか、AIに任せるべきなのか、どちらが適しているのかは、内容次第で異なります。そのため、最初から「できる・できない」という議論をするのではなく、あくまでシンプルに、人間がこれまで行ってきた業務と同じように考えます。「どういうことをやっていますか? どういう状態にしたいですか?」を基に、関連するワークフローを正確に作成します。

業務を分解し、再構築することで対応します。「これに関してここはもうAIでやったほうが早いですよね?」に該当する部分はAIで対応すればよいですし、そのAIのワークフローを提供するサービスとして、例えば「CASTER NEO」というサービスを今行っています。このような流れで十分実現可能です。

ただし、AIで対応できない範囲も存在します。例えば、「じゃあ、こっちは組み合わせましょう」といった状況では、ワークフローが長くなりすぎる場合に、AIが処理を中断してしまうこともあります。

こうした場合、人間がメンテナンスを行い、モジュールが崩れないようにコントロールすることが非常に重要な業務になります。このような対応を通じ、AIの進化に最適にフィットしていくことが重要であると考えます。

ほとんどの企業が、AIで何ができるのかを十分に理解していないのが現状です。私自身も深夜までAIと対話しながらワークフローを構築し、実際に動かしてみることで、最新の可能性を追い続けています。しかし、それを的確にキャッチアップできている人はほとんどいません。

私が対応しているのは専門領域のみであり、すべての領域を把握するのは不可能です。このような状況が多方面で発生しているため、いかにしてこれをキャッチアップし、自身の業務を向上させるかに向き合う人を増やしていくことが必要だと考えています。

質疑応答:マイクロロット市場の現状と今後の展望について

「顧客単価4万円以下のマイクロロットの分野において、アップセルの試みをつなげていくのがメインなのか、マイクロロットを増やしまくるのが戦略なのかは、これから動いて測っていくのでしょうか?」とのご質問です。

ここは難しい部分ではあります。贅沢を言えば、しっかりとマイクロロット市場の面を取り、そこでお取引したお客さまのアップセルが進めば、全員がハッピーになります。

そのようなことが可能になれば、あるいは少なくともこの面の部分をしっかりと押さえつつ、ここで取引をしているお客さまの情報やオペレーションプロセスなどを、高単価帯の中ロット以上のお客さまに提供できるかたちにすることで、双方にとってWin-Winとなり、生産性が全体的に向上する流れを実現できれば、非常に理想的です。

とはいえ、マイクロロット市場については、どのようなお客さまたちが、どのような業務を、どのくらいのスピード感で依頼してくるのかといった点について、まだ完全には把握できていません。最近になって急速に拡大し始めた分野ですので、不透明な部分もあります。

幸いなことに、当社は「My Assistant」というサービスを長期間にわたり運営しており、おおよその情報は把握できています。ただし、客層が常にアップデートされている状況です。

まずは、マイクロロット市場に関する客層をしっかりと見極めた上で、これ以上攻め込むことで無理が生じる状態に陥らないようにしながら、取引を拡大できる仕組みを整備していきます。そして、当たり前のことで恐縮ですが、お客さまのニーズをさらに詳しく把握することで、我々の収益性を担保しつつ、適切なサービスを提供していくことが有用なのではないかと思っています。

私自身もBPO業界は15年、IT業界でいえば20年ほど携わっていますが、現在は非常に激動でエキサイティングな状態だと感じています。この状況に向き合うのにこれ以上ない最適なタイミングであり、非常におもしろいタイミングだと思います。

質疑応答:出来高、時価総額の現状や上場廃止基準への見解について

「出来高、時価総額の現状、上場廃止基準に関してどのようにお考えでしょうか?」とのご質問です。

出来高に関しては流通量にも左右されるため一概には言えませんが、現状では少ないと考えています。時価総額もその影響を受けており、現状はあまり良い状況ではありません。上場時の価格よりは高く推移していますが、このままの水準で良いとはまったく考えていません。

上場廃止の基準については、おそらく上場廃止ではなく、2030年に向けて東証が新たに示している基準などについての話かと思いますが、それほど気にしていません。

というのも、当社はまだ上場からそれほど時間が経過していないため、これから挑戦の余地が多分にあると考えています。我々はグロース市場に属していますので、与えられた機会を最大限に活用し、多くの挑戦を通じて前進していければと思います。

上場廃止や基準を気にして挑戦を制限することや、他の市場への移行、あるいは他企業への吸収といったことは特に考えていません。時価総額を上げるためには、規模を拡大して成長率を高め、利益を出していくことが鍵だと考えています。

そこに関しては、我々もしっかりと向き合えるよう取り組んでいきます。我々としては、それ以外の行動をしていません。そのためにできることを実行することが、率直に良いことだと考えています。

質疑応答:収益率悪化の要因と対応方針について

「今回決算からマイクロロットが増えた分、収益率が悪化しているような印象も取られていますが、相関性はあるのでしょうか?」とのご質問です。

鋭いご指摘だと思います。構造上、そのとおりです。収益率が悪化しているというのは正確ではありませんが、これまでの当社の広告チャネルや営業の方法、サービス提供のデリバリーの方法自体は、構造上多少工夫はしているものの、ロットが下がっても変えていません。

これを変えないとどうなるかというと、1社あたりの獲得から回収までの期間がどうしても延びてしまいます。金額が小さいため利益率は多少高くても、これを回収するまでの期間が長くなり、時間がかかってしまいます。結果として、短期的には数字上では収益が悪化する状況になります。

それでも、その市場がしっかりと立ち上がってきたため、情報を収集し、挑戦する必要があると判断しました。そこでしっかり挑戦し、数字も計測しました。今の内容では、これ以上無理をする必要はないというのが今期の判断です。

「じゃあ、来期以降どうするんだっけ?」という点では、先ほど述べたようにAIによる解決が可能な部分もあります。「だったらもうそっちにさっさと実装しちゃおうよ」ということが、将来的にあるべき下地として重要であると考えています。

そのため、来期にどこまで織り込めるかはいったん置いておきますが、マイクロロット市場が増加した分、短期的に収益が悪化する動きになってしまいます。これを短期的にも収益が増加する動きに転換できるよう、我々としては内部のケイパビリティやKPIの変更をしっかりと進めていくのが現状です。全体の業績に与える影響については、最重要な部分の1つとして捉えています。