要約損益計算書(連結)
村岡敏行氏(以下、村岡):株式会社ブシロードの村岡と申します。本日はお忙しい中、ご参加を賜り、誠にありがとうございます。それでは2023年6月期の決算についてご説明します。
まずは、2023年6月期第4四半期の決算概要です。第4四半期は、TCG(トレーディングカードゲーム)ユニットが四半期として過去最高の売上高を達成したこともあり、売上高で136億4,600万円、営業利益が13億4,800万円となりました。
また、営業外収益として補助金を9,400万円、為替差益を2億5,400万円計上し、経常利益は18億1,300万円となりました。四半期純利益は特別損失として経常損失等を計上し、8億700万円となりました。
四半期 連結業績推移
四半期の販売管理費の推移です。この四半期は、主にスライドに記載した要因により販売管理費が増加しました。
モバイルオンラインゲームに関する減損損失について
モバイルゲームに関する減損損失についてご説明します。2023年6月期は『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』の超大型アップデート、『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル2 MIRACLE LIVE!』への投資を実施しました。
会計処理としては、モバイルゲームの開発実績があり、かつ前作の初期開発費をリクープしているIPの開発費については、リクープが期待できるため、ソフトウェアとして資産化した上で、リリース後に12ヶ月で均等償却する予定でした。
しかし、両タイトルともリリース後に、想定していた12ヶ月分の収益を見込むことができず、資産残高を一括で減損損失として認識しました。
2023年6月期 業績ハイライト
2023年6月期通期の業績ハイライトについてご説明します。2023年6月期は、売上高が487億9,900万円、営業利益が33億8,500万円、経常利益が45億300万円、当期純利益は20億5,000万円となりました。
2023年6月期 業績ハイライト
ユニット別の売上高推移になります。TCGユニットは227億1,600万円となり、前期比148パーセントと大幅な増収で、過去最高の売上高を達成することができました。
スポーツ&ヘルスケアユニットは69億7,400万円となりました。フィットネス事業が苦戦したものの、前期比125パーセントと過去最高の売上高を達成しました。
デジタルコンテンツユニットは83億6,500万円となり、前期比81パーセントと低調に推移しました。
2023年6月期業績ハイライト
各ユニット別のハイライトになります。TCGユニットは15周年を迎えた『ヴァイスシュヴァルツ』が売上高100億円超を初めて達成しました。当期から『Shadowverse EVOLVE』日本語版が通期で売上に寄与しています。また、2023年6月から英語版の展開を開始しました。
スポーツ&ヘルスケアユニットについては、「新日本プロレス」の観客動員数が回復傾向にあり、さらに配信やPPV(ペイ・パー・ビュー)などのコンテンツ売上が好調です。女子プロレス「スターダム」を運営するブシロードファイトが過去最高の営業利益を達成しています。ヘルスケア事業では「新日本プロテイン」を発売しました。一方で、運営コスト増加等の影響で減益となったフィットネスクラブ事業からは撤退しました。
デジタルコンテンツユニットについては、『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』の超大型アップデート、『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル2 MIRACLE LIVE!』のリリースと、中期的な成長を期待した投資を実施しましたが、想定した収益を達成することはできませんでした。一方で、コンソールゲームのリリース数が増加し、『カードファイト!! ヴァンガード ディアデイズ』等を発売しました。
2023年6月期 業績ハイライト
TCGの国内・海外別の売上高推移になります。TCGの売上は通期累計で前期比149パーセントと大幅な増収となっており、『Shadowverse EVOLVE』日本語版が当期から通期で寄与しています。その影響により海外売上比率は相対的に減少していますが、金額は順調に増加しています。
私からのご説明は以上となります。
中期経営計画説明
木谷高明氏(以下、木谷):中期経営計画についてご説明します。昨年度も4ヶ年計画を発表していましたが、初年度から軌道修正せざるを得なくなったため、あらためて今年も4ヶ年計画を出しています。いきなりつまずきがあり、本当にお恥ずかしい次第ですが、要因としてはデジタルコンテンツユニットにおける見込み違いが一番大きいと思っています。
加えて、祖業であるTCGにあらためて力を入れるべきだと考えリスタートしました。各事業の見直しを行って切り離すものは切り離しつつ、1年の猶予をいただいた上で、今期を新しい4ヶ年計画の初年度として、特に上半期は体制立て直しの時期に充てたいと考えています。
当社を取り巻く環境①
まず環境に関してです。みなさまもよくご存じだと思いますが、日本のアニメ市場に関しては順調に成長し続けています。
アニメ市場の中の各分野についてですが、ライブエンタメに関しては、実はまだコロナ禍以前までは回復していません。ビデオパッケージは横ばいと言いますか、やや右肩下がりの傾向で、大きく伸びているのはアニメ配信の部分です。
当社はアニメをいくつも作っていますが、海外に売るためのアニメという構造にはなっていません。ブシロードの場合は商品を売るため、ムーブメントを起こすためのアニメというものが主ですので、アニメ配信市場の規模が拡大しても当社のアニメ事業自体が伸びるというわけではありません。アニメ事業という考え方もあまりしておらず、ほぼ広告宣伝の一環として考えています。
ただし例外として、現在放送中の『BanG Dream! It‘s MyGO!!!!!』というアニメは、日本ではこれから人気が出そうという感触がありますが、一足先に中国では非常に大きな人気になっています。
アニメーションというのは作家性や作品性が強いものからエンタメ性が強いものまであると思いますが、ブシロードの場合はエンタメ性が強く、「みんなでお祭り騒ぎをしよう」という作品が多いため、フィルムそのものにそれほど値段がつくということはありません。
そのエンタメ性の部分もコロナ禍が足かせとなり、これまではお祭り騒ぎがなかなかできませんでした。しかし、そのあたりも徐々に元の軌道に戻っていると考えています。ますは当社を取り巻く環境ということで、アニメ市場についてご説明しました。
当社を取り巻く環境②
カードゲームに関してです。マーケット全体のグラフと当社TCG売上高のグラフとで年数が若干ズレていますが、2020年で見ると国内マーケット全体の市場規模は約2倍になっており、北米に関しては為替の影響もありますが約2.5倍になっています。
一方で、当社TCG売上高は2020年から比べると約3倍になっており、順調に成長していると思います。特にこの期間で伸びたのは、『ヴァイスシュヴァルツ』英語版で、これにはきっかけがあります。コロナ禍になって、日本のアニメが配信サイトで世界中から見られるようになったことで、マーケットが一気に拡大しました。
また、『Shadowverse EVOLVE』という新しいカードゲームを昨年4月に出したこともプラスに寄与しています。『ヴァイスシュヴァルツ』日本語版も、国内とアジアでかなり伸びました。
現在は、中国のカードゲーム市場やいわゆるトレーディングものが非常に伸びていますので、こちらもさらに期待できると考えています。
当社の英語版カードゲームはアメリカの比重が非常に高いです。例えば『カードファイト!! ヴァンガード』は7割、『ヴァイスシュヴァルツ』は8割です。北米というよりもアメリカのみになっていますので、ヨーロッパやその他の英語圏がまだ伸びるのではないかと思います。
当社を取り巻く環境③
モバイルゲーム市場についてです。モバイルゲームの市場自体は成長から少し横ばいに移っていると見ています。
当社を取り巻く環境④
「新日本プロレス」の売上と来場者数の推移です。残念ながら来場者数はまだ最盛期の65パーセントくらいまでしか戻っていません。その代わりに、売上は前期で過去2番目まで到達しています。今期はおそらく過去最高を目指せるのではないかと思いますが、売上の比重が変わってきています。
棒グラフの真ん中の黄色い部分、コンテンツ売上が増えています。これは、配信サービス「新日本プロレスワールド」の定額課金の売上と、その都度お金を支払って見ていただくPPV(ペイ・パー・ビュー)によるものですが、アメリカでの大会を世界中の人に見ていただいたり、日本でも他団体と開催しているものを見ていただいたりしたものを取り入れた結果、売上が上がっています。
この他にも、スポンサーの増加などの興行と商品以外のものはすべてコンテンツ売上に入りますので、内容は非常に細かいのですが、いろいろな取り組みがここにきて花開いているのではないかと思っています。
コロナ禍に入ってから、「何ができるか?」ということで、いろいろなことを試した成果が現れ始めていると考えています。今後はさらに動員数を伸ばしていけば、全体的にまた売上が増えていくのではないかと考えています。
ブシロードが掲げるミッションと戦略
ブシロードが掲げるミッションと戦略です。これは今までどおり変わっていません。IP(Intellectual Property、知的財産)を軸に、相互作用を持たせながらメディアミックスして成長していくという戦略です。
中期経営計画改定の概要
先ほどもお伝えしたように、4ヶ年計画を策定したのですが、当社を取り巻く市場や、内部的な優劣の凸凹もあり、もう一度計画を立て直したいと思っています。
具体的には、赤字事業であるフィットネス事業から完全に撤退しました。また、モバイルゲームは非常に苦戦していますが、再構築と方針転換を実施中です。そのようなことを受け、新しい4ヶ年計画を策定しました。
中期経営戦略
新しい4ヶ年計画に関しては、4つの方針で進めていきたいと思っています。「TCG事業の強化」ということで、祖業であるTCGビジネスを最重点領域と定め、あらためて「世界No.1のTCGカンパニー」を目指します。
また、「グローバルの拡大」ということで、TCGやプロレスをはじめ、各事業を世界に広げ、グローバルな顧客を開拓します。言うのは簡単なことですが、具体例については後ほどお話ししたいと思います。
「接点の多様化」については、IP活用プラットフォームを通じたIP価値の創出とともに、継続的に新規IPを生み出す仕組みを作りつつ、お客さまとの接点をあらゆるかたちで増やしていきます。コロナ禍という制約もなくなりましたので、さらに増やしていきたいと考えています。
「組織体制の変更」については、急激な環境変化に対応しつつ、グループ全体で柔軟に対応します。非常に抽象的なことが記載されていますが、具体的には、若手や外国人、女性の抜擢をさらに進めていきたいと考えています。
TCG事業の強化
TCG事業の強化についてです。昨日(8月14日)の決算発表をうけて、「また、来年新しいTCGを出すのか」というようなお客さまのコメントが見られました。
アニメやゲームのライセンスを借りてきて作るTCGだと想像されているようでして、「出してもまた分散するだけだろう」と書かれていますが、決してそのようなものではありませんので、ぜひご期待ください。私自身、今テストプレイ等にかかわっていますが、非常におもしろいと思っています。
『ヴァイスシュヴァルツ』は、2018年、2019年には日本語版と英語版を足しても売上が35億円前後というレベルだったのですが、今期は新ブランドの『ヴァイスシュヴァルツブラウ』まで発売し、125億円というレベルまで到達しました。
3年、4年ほどで3倍になったということですが、これは世界中で日本のアニメが見られるようになったことが非常に追い風となっています。また、国内でも配信サイトでアニメが普及してきたことで、過去作品が少し動くといったこともプラスになっていると思います。
また、6月30日に『Shadowverse EVOLVE』英語版を発売しました。さらに、今後はオリジナルIPである『カードファイト!! ヴァンガード』にも、あらためて力を入れていきます。
特に、今年の年末から来年にかけて『カードファイト!! ヴァンガード』にはかなり力を入れていきたいと思っています。まだ具体的なことはお話しできないのですが、今のお客さまを大切にしつつ、過去のお客さまにも戻っていただき、かつもう一度子ども層に向けてもアプローチすることにチャレンジしたいと考えています。
具体的なことは、11月、12月頃には発表していきますのでご期待ください。また、新規TCGの発表を2024年1月に行いますので、そちらでも発表したいと考えています。
グローバル拡大①
続いて、グローバル拡大です。6月30日に発売した『Shadowverse EVOLVE』英語版のティーチングキャラバンを実施しています。アメリカが多いのですが、世界中の約300店舗で開催し、5つのイベントでも講習会を行っています。
まだ正確な数字は出ていませんが、現状では280店舗ほどと、5つくらいのイベントで開催しました。講習を受けた方の重なりはほぼなく、合計参加人数は4,500人くらいまで増えています。
国・地域は、7割くらいがアメリカです。他にはカナダ、メキシコ、オセアニア、インドネシア、フィリピン、マレーシア、シンガポール、それからイギリス、EU等で開催します。今後はさらに追加されて、最終的には300店舗以上となります。
私も、秘書と息子との3人で7月26日から8月10日まで2週間ほどイギリスへ行っていました。私はもっぱら運転手をしており、あとは店長に「商売はどう?」と聞いてまわりました。ロンドンからスタートしてグラスゴーまで行き、またロンドンまで戻るという旅程で、10日間で約3,000キロを運転しました。
14店舗を訪問してティーチングツアーを実施しながら、当社のカードゲームを扱っていない店などにも突撃訪問しつつ、有力な会社3社とミーティングを行ってきました。
SNSで「木谷は海外に行っている場合ではなく、国内で大型版権のライセンスを取りにいかなきゃ駄目だろう」などと言われましたが、イギリスで大きな版権を1つ、しっかりと取ってきました。
さすがに3,000キロも運転しているチームはないと思いますが、アメリカへ行ったチームは通常でも1,500キロぐらいは運転しているはずです。このように世界中を回って、現地で直接ティーチングを行っています。
このようなTCGの会社は他になく、また複数の言語で複数のタイトルを立ち上げたことがある会社も、実はほとんどありません。
「カードゲームの講習でもなければ、絶対にこんな街には来ない」というような街へも行きます。イギリスでも地方に行くと、完全に白人しかいないような街などがあるわけです。
中には「ヴァンガードがお店の売上一番です」という濃いファンも居ます。そのような人たちとも親交を温めています。彼らは、「この街に来てくれた」ということをおそらく一生忘れないと思います。当社は、そのような地道な「どぶ板営業」を世界中で行う会社だとお考えください。
スライド右側は、今お話ししたような内容とは逆の話題で、ブシロードの大会・イベント参加アプリ「ブシナビ」についてです。
ブシロードの大会・イベント参加に関しては、こちらのアプリを採用しています。会員登録者数は5万人を突破しました。英語版も1ヶ月ほど前に立ち上げたのですが、いきなり1万人くらいの登録があり、現在では合わせて6万人まで増加しています。来年の5月末までに合わせて10万人とすることが当面の目標です。
このアプリによって、会員の方たちに「こんな大会がありますよ」「こんな商品が出ますよ」といったことをお知らせできます。また、事前に登録を受けているため、何人参加するかを把握することもできます。もちろんお店さまのほうでも情報がわかるため、ショップも非常に使い方に慣れてきており、非常に有用に使われています。
また、自分のデッキを登録したり、対戦成績や過去の記録等をすべて保存したりすることができるため、本当にさまざまな使い方が可能です。このようなサービスをここまで行っている会社は他にないため、登録者数が10万人を超えてくれば相当な力を発揮するのではないかと考えています。こちらもグローバルに展開していきます。
グローバル拡大②
新日本プロレスのアメリカ現地法人である「New Japan Pro-wrestling of America, Inc.」では、毎月大会を開催しています。前期は海外17大会で3万人を動員しました。
アメリカでは「NJPW STRONG」という新しいブランドとして独自展開しています。また、オセアニア地域でも「NJPW TAMASHII」という新しいブランドで展開したいというお話があり、そちらの活動もすでに始まっています。
7月には「NJPW STRONG」のブランドが後楽園ホールでイベントを行うなど、日本とアメリカとで独自に展開しながら、今後も地道に進めていくかたちです。
今後も女子プロレスの「スターダム」を含めて、アジア地域をさらに開拓しようと考えています。プロレスの競合大手である2団体がアメリカの団体であるため、地の利を活かして、やはりアジア、特に東南アジアの開拓が重要であると考えています。
最近、「スターダム」の「YouTube」チャンネルでは、1ヶ月半で約20万人の登録者が一気に増えました。大部分はインドネシアやインド、マレーシアなど、東南アジアあるいは南アジアから登録が増えています。今秋から少しずつレスラーをそれらの地域へ連れて行き、現地で興行ができるリング、あるいは団体がないのかなど、いろいろと模索している最中です。
また、アジアの6都市にて「BUSHIROAD EXPO ASIA」という国際展示会を開催しています。参加人数自体はさほど多くないのですが、香港や台北では金曜日および土曜日に開催することにしています。金曜日はBtoBメインでショップをご招待して、展示およびコミュニケーションを通して交流を図りました。香港に関しては、75店舗のショップが来場しました。そのうち、およそ半分が中国本土からの来場でした。私自身もおそらく100人くらいと記念撮影をしました。
台北でも、やはり35店舗くらいの来場がありました。どちらかというとBtoBメインで、ショップのケアをメインで考えています。現地に行った際には必ずショップを数店舗訪問して、現地の状況をしっかりと把握しつつ、交流を深めています。
今後も年内にクアラルンプール、バンコク、シンガポール、ソウルで開催し、ブシロードブランドをアジア各地に広めていきたいと考えています。
国際展示会の目的はいくつかあり、1つ目は現地のBtoBのショップおよび問屋、だいたい問屋と組んでやっているイベントなのですが、BtoBの深耕・開拓です。2つ目は現地のお客さまに対するケアです。
3つ目は、ブシロードブランドを広めることによって、その方たちが日本を訪れた時にブシロードブランドの商品を買ってもらえるわけです。アジア、特に東南アジアからのインバウンドが非常に大きくなるということで、以上3つを主な目的としています。
また、ブシロードの社員には「習うより慣れろ」という意味で、各チームから人を出してもらうことで、社員の研修になるという目的も一部あります。
接点の多様化
接点の多様化についてです。当社には、巡業を行っているグループが3つあります。1つは、ご存じのとおり新日本プロレスです。こちらのバスについて、よく「高速道路のサービスエリアでライオンマークを見た」などというツイートが上がったりもします。
また、「スターダム」も去年12月にバスを作りました。そのため地方巡業が非常に回りやすくなっており、細かく回れるようになったことで、地方のお客さまの入りが徐々に良くなってきています。
私は、今年のゴールデンウィークに九州のショップを問屋や若手社員と3人で、5月1日から7日まで30店舗を回りました。また、5月3日、4日には福岡で「新日本プロレス」と「スターダム」が連続で興行を行いました。そのあとは熊本、最後は鹿児島までついて行きました。
鹿児島の桜島アリーナという場所で試合があったのですが、鹿児島からフェリーで渡り、またフェリーで帰ってきました。鹿児島市内に泊まったのですが、帰りのフェリーの中は、ほとんどが「新日本プロレス」「スターダム」の興行を見に行ったお客さまでした。
その際、70歳くらいの男性が、取引先との会話に横から入ってきました。私が関係者だとはわからないわけですので、いろいろ語り出し、途中で「いや、死ぬまでに1度『スターダム』を見たかったんだよね」とおっしゃっていました。
どのようにして「スターダム」を知ったかということが気になったため、「あ、そうなんですか。ところでどうやってお知りになったのですか?」と尋ねると、「『YouTube』で偶然見たんだよ」と答えられました。
今では、やはりお年寄りの間でもスマートテレビが普及して、おすすめに偶然上がってきたものを目にする、というケースが非常に多くなってきているようです。
お年寄りは、スマホでは「YouTube」を見ないと思います。スマートテレビでしか見ないでしょうし、「YouTube」も全体の2割はスマートテレビから見られているため、ずっと「YouTube」に力を入れてきて良かったなと感じました。「知ってはいるけど、見たことはない」という方が全国各地にいますので、このような巡業は大事だと思っています。
もう1つは、「劇団飛行船」です。「劇団飛行船」は地方で興行を行いつつ、幼稚園で着ぐるみの公演を行うなど、全国各地を回っています。
昨今のドライバー不足や物流費の高騰などを考慮すると、エンタメを地方に届けることが難しくなっている時代だと感じます。中都市ではあまりライブも開催されないような状況の中で、この巡業スタイルは、途中どこかしらへ寄りながら回るため、実は効率が良いのです。
そのため、この巡業スタイルは地方にエンタメを届けるという意味においては、一周回って新しいものになったのではないかと考えており、地方のお客さまの楽しみのために、今後より一層力を入れていきたいと考えています。
そして、株式会社ブシロードワークスの設立です。これまでも出版は小規模ながら行ってきましたが、今一度力を入れようということで、オリジナルIP創出を目的として設立しました。小さな規模からのオリジナルIP開発を、この会社で多数行っていきたいと考えています。
デジタルコンテンツユニット
4ヶ年計画の見直しに関して、デジタルコンテンツの見直し部分が大きいということをお話ししました。責任者の根本より、この部分に関してご説明します。
根本雄貴氏(以下、根本):ブシロード執行役員デジタルコンテンツユニット長の根本です。先ほどご説明のとおり、デジタルコンテンツユニット不調の主な要因としては、モバイルオンラインゲーム市場の競争の激化が挙げられます。
どのように競争が激化しているかというと、日本のモバイルゲームのセールスランキングを見ていただけばわかると思いますが、市場としてはグローバルなプレーヤーや技術力がある会社であれば簡単に参入できるため、国内のみならずたくさんのプレーヤーが入ってきており、競争が激化している現状です。その上で、現在事業の再構築を進めています。
まず、モバイルオンラインゲームについてですが、こちらが一番の不調要因となっています。運営中のタイトルについては、運営費の見直しおよび販管費の見直しを行い、黒字化や収益の確保をしていく方針です。また、今後黒字化が見込めないタイトルについては撤退を決断して、モバイルゲーム事業をしっかり立て直していこうと考えています。
また、コンソールゲームについては、グローバルで戦える他社IPの活用および自社IPの創出を目的としています。開発規模としては1億円ほどのミドルレンジタイトルを想定しています。
コンソールゲームについては、先行投資が発生しますが、運営費はほぼ発生せず、長期的に売れていくタイトルであるため、新規タイトルおよびアーカイブの売上で事業の安定的な収益を確保して、ポートフォリオを構築していければと思っています。ただし、当期については、開発投資の増加が見込まれる状況です。
私からのご説明は以上です。
2024年6月期 業績予想
木谷:2024年6月期の業績予想と中期経営計画の計数目標についてご説明します。2024年6月期は、事業も業績も踊り場の年になると考えています。売上高は510億円、営業利益20億円、経常利益23億円、当期純利益は12億円を見込んでいます。
売上高に関しては、TCG、ライブエンタメ、スポーツユニットは堅調に推移するものの、デジタルコンテンツユニットの売上が減少する見込みであり、小幅な増収となる想定です。
また、利益面に関してはご説明したとおり、運営中のモバイルゲームの利益改善を図っていますが、新規ゲームの投資としての研究開発費や人件費、広告宣伝費等の費用の増加があるため、減益となる見込みです。
2024年6月期 業績予想
株主還元についてです。2024年6月期は、前年比で減益計画となっていますが、主に新規ゲームへの開発投資の増加によるものであるため、配当金は1株あたり4円50銭と据え置きを予定しています。
計数目標
4ヶ年計画として次のように目標をあらためて設定します。2027年度までに売上高1,000億円、営業利益133億円、海外売上比率40パーセントを目標にしたいと考えています。
質疑応答:中期計画期間中の新作について
質問者:新しい4ヶ年の中計期間中のTCGについてですが、新作は来期に1作品ということでよろしいでしょうか? また、モバイルゲームについては、この中計期間中に何本くらいの新作を予定していらっしゃるのか教えてください。
木谷:TCGでは、来年は新作を1作品出します。その後も新作を出す可能性はあり、再来年とは言えないまでも、2026年までには新作を出すのではないかと考えています。
根本:モバイルゲームについては現段階で本数をお答えすることはできませんが、中計期間中に新作をリリースすることは考えています。協業先もあり、かつ開発期間がまだ明確ではないため、以上をもって回答とさせてください。
質疑応答:中計の業績の伸び方について
質問者:中計では、最終年度の売上高1,000億円、営業利益133億円ということで、前回の4ヶ年計画を出された際には「この4年間は『ホップ・ステップ・ジャンプ・ジャンプ』で進む」とおっしゃっていたと思いますが、今回の計画を『ホップ・ステップ・ジャンプ・ジャンプ』のように表現すると、どのようになるとお考えでしょうか?
木谷:やはり「ホップ・ステップ・ジャンプ・ジャンプ」です。もしかすると、「ホップ・ジャンプ・ジャンプ・ジャンプ」かもしれません。
質問者:今期だけが踊り場で、来期以降は一次関数的に伸びるイメージでしょうか?
木谷:伸びについてはTCG次第と考えています。
質疑応答:新作トレーディングカードゲームによる売上貢献の大きさについて
質問者:トレーディングカードゲームについて、去年の中計では最終年度の売上高340億円とされていたものを、今回は売上高420億円とされています。現在見えているのは、来期に新しいトレーディングカードゲームを1つ出すということですが、新作による売上貢献は、420億円のうちどのくらいだと見ていらっしゃいますか?
木谷:約10パーセントから25パーセントの間です。
質問者:比較的幅がありますね。
木谷:はい。かなり大きく幅があります。
質疑応答:今期の計画におけるトレーディングカードゲームとデジタルコンテンツの数値見込みについて
質問者:2023年6月期は、TCGの売上高が227億1,600万円、デジタルコンテンツの売上高が83億6,500万円でした。主にこの2つが大部分を占めると思うのですが、今期のご計画ではどのくらいの数値を見ていらっしゃるのでしょうか?
具体的な数値がなければ、「1割超で見ている」「1割減で見ている」などの数値を教えていただけますか?
木谷:カードゲームに関しては、5パーセントから1割の増加で見ています。今期はTCGが若干踊り場だと思っているため、来期に向けての体制を整える期だと考えています。モバイルは、デジタルコンテンツという意味ではなく、モバイルだけのことでしょうか?
質問者:デジタルコンテンツ全体です。
根本:具体的なパーセントまではご説明できませんが、先ほどお話ししたとおり、今期に関しては開発費の先行投資が多くなってくる年のため、仕込みの時期になると思っています。
質問者:増収と見て良いのでしょうか?
根本:そのような観点ですと、増収の見込みではありません。
質問者:減収で、少し上がりづらいということですか?
根本:赤字の額でいえば、今期と比べるとそこまでではないというイメージです。具体的でなく、申し訳ないです。
質疑応答:上期における体制立て直しの詳細について
質問者:先ほどのプレゼンの中で「この上期は体制を立て直す」とお話がありましたが、上期に何を改善し、それに対しどのような投資をするということでしょうか?
木谷:大変前向きなお話としては、先ほどお話しした来年1月の発表会は大規模なイベントで、千数百人の取引先やお客さまを招き、最低でも4時間、長ければ6時間におよぶ長丁場になる予定です。
ここで発表する内容が、その後1年半ほど走ることになると考えており、その準備が前向きなお話の1つになると思います。
後ろ向きというよりは、後片付けのような内容も若干あります。数字的には前期で終わらせていることもありますが、この半年間で行わなければいけないこともありますし、加えて新しい経営体制についてもお話しします。
現在、根本を責任者として紹介していますが、実は彼が就任したのは4月です。去年の年末までは、退任した取締役がデジタル本部の責任者を務めていました。その後の半年弱は私が兼任し、4月から根本に引き継いでもらっているため、年末までには作品や仕込みタイトルも含めて新たな経営体制を整えていきます。
デジタルコンテンツの場合は、世の中に公開されるまでに時間がかかります。早い時期にご説明することが難しく、少し奥歯に物が挟まったような言い方になってしまいますが、デジタルコンテンツ本部自体も中身を着実に変えていっています。変革の仕方も含めて今の時代に合っているのではないかと、私自身は判断しています。
質疑応答:トレーディングカードゲームの販売規制について
質問者:TCGについて、メルカリなどでの個人間取引が非常に問題になっていますが、木谷さまから見て、規制などを必要とするリスクは感じられていますか?
木谷:メルカリの問題というよりも、例えば、最近流行のオリパ(オリジナルパック)についてのお話だと思いますが、これは行政がどう考えるか次第だと思います。
SNSにも投稿しましたが、自宅の近所にある花屋で「オリパを売り出しました」と書かれているのを見て、すぐに靴磨きの少年の話を思い出しました。若干、値上がりを目的にして広がりすぎではないかと感じてはいます。
当社としては、実需を作ることが大事だと思っています。どうやってプレーヤーを増やすかという観点で、現在は大会にも大変力を入れています。
先ほど、海外をまわったというお話をしましたが、国内でもブシロードのカードゲーム公認店を年内で900店舗から1,000店舗に増やします。また、年内に既存の900店舗すべてを回るという目標を掲げており、現在は半分にあたる約500店舗を回りました。このように、店舗と連携し、実際にカードゲームで遊ぶ実需そのものを作ることに非常に力を入れています。
一時的なブームの仮需がどこまで拡大しているのかについては、正直に言うとわかりません。したがって、実需さえ作っていれば大丈夫ではないかと思います。
もう1つは、海外にマーケットを作っておくことで、国内で売れ残った商品を外国の方が購入する場合もあるということです。当面は国内でプレーヤーや実需を作る部分と、海外を一生懸命開拓して海外の需要も作るといった、両建てではないかと思っています。
ある日突然、特に転売に対して何らかの規制がかかり、一時的なショックが起きる可能性はあります。その際、当社のカードゲームでダメージを受けるのは『ヴァイスシュヴァルツ』の一部だけで、それ以外はあまり影響を受けないと思っています。そもそも、あまり転売対象になっていないからです。
質問者:カードゲームはもともと実需で遊ばれている方が多く、値上がり目的で買っている方は御社の実需層が中心で、仮需はあまりないという認識でよいでしょうか?
木谷:例えば、『ヴァイスシュヴァルツ』では、声優さんの箔押しサインカードは値上がりが起きることから、値上がり目的で買っている人がいます。そのため「一部」という言い方をしました。
質疑応答:海外のアニメ・カード市場の今後の動向について
質問者:カードゲームのマーケットが伸びてきている要因として、日本のアニメの普及を挙げられていました。海外のアニメやTCGのマーケットは今後も伸びていくと考えていらっしゃるかについて、ご回答をお願いします。
木谷:まだ伸びると思います。なぜかというと、海外のアニメイベントを訪れると、日本のアニメファンの年齢層が若く、むしろ昔からあるアメリカのキャラクターなどのファンの年齢層のほうが高いことから、まだ伸びる可能性は高いと考えています。
質疑応答:コンシューマーゲームの開発費の指標について
質問者:ゲームの領域についておうかがいさせてください。コンシューマーのゲームの開発費が少し増えており、1億円とありますが、コンシューマーで1億円というとミドルエンドよりもローエンドの価格だと思います。具体的に何を行うことで1億円と書かれているのか教えていただけますか?
根本:ミドルレンジかローレンジかというより、だいたい1本あたりの開発費の指標を1億円前後としています。
質問者:今期に出てくるタイトルには、1億円のレンジのものが多いのでしょうか?
根本:そのあたりのレンジのものになるとご認識ください。
木谷:このお話をすると「それだけしか掛けていないのか」と言われるためあまり言いたくありませんが、そのようにお考えていただければと思います。
質問者:コンシューマーのゲームは、国内の中堅タイトルでも標準的な投資額が10億円は軽く超えている認識ですが、かなり安くできているのには何か理由があるのでしょうか?
根本:プレイしていただくとわかる部分もありますが、お金をかけていれば遊びが非常に深くなるといった話ではないと思っています。したがって、遊びとしてしっかり出来上がっているものは作れていると考えています。
質疑応答:モバイル分野における昨年の失敗と今年の体制の立て直しについて
質問者:モバイルにおける「昨年の失敗」について、そもそもどのようなところにあったと認識されているのでしょうか? 今年の体制の立て直しとしては、運営の適正化が多く見られますが、新しいゲームなどを作る時には失敗をどのように反映されているのでしょうか?
根本:具体的な回答は控えさせていただきますが、大きな失敗の要因としては、お客さまに対して、遊びとして大きなサプライズをご用意できていなかったところに尽きると思っています。
今後のリリースに関しては、資料にも記載のとおり、まずはグローバルで戦えることや、リリースするタイトルがお客さまにしっかりと届けられて、サプライズのある遊びとしてできているものを作っていくことが重要だと思っています。
質問者:1タイトルあたりの開発費の考え方や指標はありますか?
根本:モバイルゲームについては、幅が広すぎるため、回答は控えさせていただきます。
質問者:グローバルで大ヒットしているタイトルには、100億円以上をかけて数千億円を稼ぐようなものが多いと思うのですが、そのような方向ではないという理解でよろしいでしょうか?
根本:それも物によります。すでに世の中に出ている有名なものでは100億円ほどかけていると言われているものもありますが、グローバルでしっかり戦えているタイトルでも、より開発費が低いものもあります。どのようなものを作るかによって変わるのではないかと思います。
木谷氏からのご挨拶
木谷:先ほどご質問いただいたように、モバイルゲームの開発費は、大きなものでは100億円ほどかかっていたり、コンソールゲームにおいても大型タイトルですと20億円から30億円が当たり前になっていたりします。そのような世の中で、あらためて当社としては何に力を入れるべきかと考えたところです。
例えば、カードゲームにおいて、自社内で本格的な開発チームを持っているのは、世界中で『マジック:ザ・ギャザリング』を作っているウィザーズ社(Wizards of the Coast LLC)のみです。
当社には半開発チームのようなものもありますし、過去には『フューチャーカード バディファイト』を自社で開発していました。当社もすでに開発チームを持っていると言えるかもしれませんが、今からでも、その分野における開発チームを自社内に持つ体制を構築し、競争力を非常に高めることができるのではないかと思っています。
また、複数タイトルのカードゲームを立ち上げたことがある会社自体が実はとても少なく、むしろ無いに等しいと思っています。
私自身は、このノウハウをいつも選挙活動に例えています。カードゲームの立ち上げとは、日本全国をまわって後援会を組織し、講習会を行うことと同じだと思っているためです。したがって、大事なことは「応援してあげよう」というお客さまの気持ちと、「カードゲームのプレーヤーを増やすぞ」「遊んでくれる人を増やすぞ」という、各店舗の店長や店員の方の一生懸命な気持ちです。
大規模なものは立ち上げられていないかもしれませんが、うまく一緒の流れに乗っていただけていることで『ヴァイスシュヴァルツ』が100億円の規模にまで拡大したわけですので、これが当社がカードゲームを立ち上げられている比較的大きな理由だと考えています。
開発力や運営力をさらに磨き、まずはカードゲームの領域で売上シェアをいっそう高めていくべきであると再確認した次第です。今回イギリスに行ったことで、ますますその意を強くしました。
一方で、モバイルゲームやその他のコンソールゲームについては、量や質では勝てないと思っているため、いかに差別化していくかということで、徹底的な差別化戦略を行っていきたいと考えています。
「新日本プロレス」がテクニカルにデジタルコンテンツ収入を増やしていますが、かつての輝きには戻りきれていない理由には、2018年から2019年の間に、アメリカで「AEW(オール・エリート・レスリング)」というプロレス団体が新たに誕生したことが挙げられます。「AEW」の売上高は100億円規模であり、これによって「新日本プロレス」は世界ランキング2位から3位に後退したことが大きな理由だと、私は思っています。
こうした状況を踏まえて、彼らが取っていないアジアのマーケットを開拓しながら、アメリカではひとまずやれることを辛抱強く続けるという展開かと思っています。グループ各社の社長やユニット長と話しつつ、戦略を再構築し、現在進められるものは進めている最中です。
No.1になれる分野ではNo.1になり、そうでない分野は差別化するといったメリハリを十分につけて、調整期間を経て、今期後半から着実に再成長していきたいと考えています。
本日はお忙しい中、またお暑い中お集まりいただき、誠にありがとうございました。みなさまのご期待に添えるようがんばっていきたいと思っていますので、しっかりと投資家のみなさまに伝えていただきたいと思います。ありがとうございました。