登壇者のご紹介

石川剛生氏(以下、石川):H.U.グループホールディングスIVD担当執行役の石川剛生でございます。どうぞよろしくお願いいたします。ただいまより、臨床検査薬(IVD)事業のプレゼンを始めます。

最初に私から、2021年に発表したIVD事業の戦略と進捗の概況についてご説明します。続いて、富士レビオ・ホールディングス取締役、グローバルCDMOビジネスの責任者であるモンテ・ウィルツィからCDMOビジネスについてご説明します。

最後に、富士レビオ常務取締役・研究開発担当の青柳克己から、アルツハイマーおよび超・高感度検出に関する研究開発戦略と進捗についてご説明します。

業績の推移(2019年度~2021年度)

IVD事業の戦略の進捗状況についてご説明します。2019年度から2021年度までのIVD事業業績の推移をスライドに記載しています。スライドの左側が売上高、右側が営業利益の推移です。

売上高については、青色の部分がベースの事業で、灰色の部分がCOVID製品の売上高です。2020年度はCOVIDによって青色のベース事業の売上高が少し落ちましたが、2021年度には回復し、2019年度と比較してもしっかり成長していることがわかります。

営業利益についても着実に伸びており、全体としては、COVID製品の業績貢献は非常に大きいですが、ベース事業も伸びているところが重要な点だと思います。そのような中で、我々が進めているグローバル戦略はしっかり機能していると考えています。

ベース事業主要KPIの進捗状況・達成見込み(サマリー)

ベース事業における主要KPIのサマリーをご説明します。スライド左側は、CDMOの試薬製造におけるのべ受託項目数の推移です。右側はアルツハイマー/NEUROの「ルミパルス」における脳脊髄液項目と血液項目を合わせた数です。

2021年度に発表したKPIについては、2021年度だけでなく2022年度もしっかりと期待どおりの成長を遂げていき、短期および中期のベース事業の成長に貢献すると考えています。

新・グローバル戦略の進捗状況

当社のグローバル戦略には、スライドに記載の3つの要素があります。まずは「コンテンツの開発・製品化(R&D)」です。他社が保有していないONLY ONEの、あるいは他社と比べ性能的に優れているNO.1のものを作ることが我々の原点であり、そのための研究開発を進めています。このコンテンツの開発・製品化が競争力の源泉であると考えています。

それらの製品について、国内を中心にお客さまに採用していただくことが「価値の実証」です。そのために我々は「ルミパルス/エスプライン」という自社製品のプラットフォームを活用し、国内でしっかり実績を作っています。

診断薬の世界は日本の約10倍という大規模なグローバル市場であり、その市場においての規模を拡大していきます。そのためのCDMOビジネスで、今我々はパートナーシップの拡大に取り組んでいます。そこで得たキャッシュを含めて、継続的にR&Dに投資を続け、これを回るかたちにするのが戦略の大きなポイントです。

この戦略に基づいた2022年の上期の進捗をご説明します。最大の成果は、ADx NeuroSciencesおよびFluxusの買収です。2010年にInnogeneticsを買収して以来、12年ぶりの買収となります。

さらに、ペプチドリーム社から技術のライセンスを取得しました。我々の成長ストーリーに基づいて「コンテンツの開発・製品化」を戦略的に伸ばしていく上で、買収や技術のライセンス化は非常に大きな成果であると考えています。

「価値の実証」については、ルミパルス向け高感度試薬「iTACTシリーズ」を国内で上市しています。また、2022年度末に向けて、アルツハイマーの血液検査試薬も日本とベルギーのチームで開発を進めており、順調に進んでいます。

CDMOビジネス事業については、新規案件の獲得と同時に、日本・米国・欧州の3拠点で製品開発および製品キャパシティの拡大をしっかり進めようと考えています。

M&A(2件)の戦略的意義

先ほどお話しした2件の買収について、意義や戦略的な意味をご説明します。ADx NeuroSciencesは、ベルギーに所在し、10年以上アルツハイマー病領域の診断薬ビジネスに特化してきた会社です。

我々は3年前からヨーロッパで彼らと共同研究等を進めてきました。したがって、彼らの実力についてはよく理解しています。彼らは製薬企業との強いパイプがあることが特徴であり、当社グループに入ることは多くの意義があります。

1つは、「ルミパルス」の開発を促進できます。その中で、もともと富士レビオが持っていた抗体だけではなく、ADx NeuroSciencesが持っている抗体を含めてベストのものを用いた高い性能の試薬を作れることが大きなプラスになる要素です。

さらに、富士レビオが持っていない抗体をADx NeuroSciencesは持っており、それを使った項目数のラインアップが拡大できることも、非常に大きな意義であると考えています。

また、試薬がグローバルファーマ(製薬企業)でどのように使われ、治療薬に結びつくかも我々の戦略的においては重要です。グローバルファーマとの関係を十分に持っていることは非常に大きな効果があると考えています。

さらに、CDMO案件については短期的に多くのお話をいただいていますので、パイプラインを拡大できます。そして、この領域で継続的に新しいものを生み続けるためには、世界トップレベルの人材を獲得できることは大きなメリットです。

スライド右側のFluxusはシリコンバレーに所在し、超・高感度検出に関するコア技術の専門集団です。彼らとは2017年から共同研究を行っており、しっかりコラボレーションできている状態で今回の買収が成立しました。

新しいビジネスチャンスが常にあるというシリコンバレーの特徴や文化に基づくスピリットも強みです。そのような会社が我々の傘下に入ることにより、いくつか大きな意義が生まれます。

1つは、この5年間で開発してきたものの製品化です。2024年3月までに上市するために製品開発を加速すると同時に、技術や要素をインハウスに取り込みます。これは中期的なCDMO案件となると信じており、技術だけでなく、対応する試薬を含めた将来性の高いビジネスとして、自社製品を作ると同時にCDMO案件の提案も進めていきます。

さらに、シリコンバレーにおいてR&D拠点を獲得することは大きな意義があり、エコシステムの中に入り、その中で良い人材を獲得できたということは、将来的に大きなプラスになると考えています。

成長を加速:グローバル組織

この買収も含めて、富士レビオのグローバル化はかなり促進されました。スライド左側の図はベース事業における売上高の国内外の比率で、6割以上が海外です。また、人員数についても合計1,400名のうち5割以上が海外であり、やはりグローバルな事業展開を進めることが大事だと感じています。

成長を加速:グローバル組織の拡大および運営体制

スライドの組織図のとおり、富士レビオ・ホールディングスの下に富士レビオ、アメリカのFujirebio Diagnostics、ベルギーのFujirebio EuropeおよびADx NeuroSciences、さらにFluxusと子会社があります。

ポイントとなるのは、個社の壁を越えてグループとして最適な判断をし、戦略的なアクションをとることで、このようなマトリックスでR&Dをグローバル化していきます。

また、我々は3つのコア成長領域があると考えています。グローバルのCDMO、グローバルのアルツハイマー/NEURO、国内ルミパルスについては、個社の壁を超えて横串を刺してリードしていく体制を、ADx買収後の2022年7月から開始しました。

この体制を確立することで、コア成長領域をしっかりと伸ばしつつ、グローバルな成果につながると確信しています。

成長を加速:グローバル運営体制の強化・加速

スライドの写真は、2022年10月に行われたグローバル会議の様子です。この会議は、2ヶ月に1度、対面で我々と子会社のCEOが集まって戦略的な議論をしています。私は、グローバル経営が定着しないと、グローバルでの持続的成長はできないと固く信じており、それを実践することにフォーカスしています。

スライド右側に記載しているように、過去の学びも含めて、日本側のトップダウンだけではグローバルに機能させるのは難しく、また戦略に対するバイ・インもなくてはいけません。さらに国内外の一体感が非常に大事です。そのような意味で、2020年からの戦略の転換および2022年7月からの組織の転換において、大きな変化がありました。

1点目は、今ある戦略は、例えばCDMOやアルツハイマー/NEUROの戦略はすべてボトムアップ型で、このメンバーでしっかり話した上で納得感を持って作ったということです。

2点目は、施策をしっかり進めていくにはNON-JAPANESEのリーダーが牽引するべきと考え、グローバル事業については米国FDIのCEOであるMonte WiltseとヨーロッパFREのCEOであるChristiaan De Wildeが担っていることです。

また、我々が今とっている戦略については、海外子会社・国内子会社も含めて丁寧に説明するということで、わくわく感や刺激のある施策を進めています。

このようなかたちで事業運営も進めつつ、戦略は先ほど述べたとおりとおりです。それでは、今日はCDMOについて、モンテからご説明させていただければと思います。

モンテ・ウィルツィ氏(以下、モンテ):みなさま、こんにちは。モンテ・ウィルツィと申します。Fujirebio Diagnosticsの社長兼CEOを務めています。

本日の私のミッションは、CDMOビジネスについてみなさまにご説明し、どのようなビジネスなのかを理解していただくことです。加えて、ビジネスの進捗状況のアップデートを行いたいと思います。

CDMO戦略の経緯・背景について

スライドのグラフに、2002年以降のFDIのビジネスを示しています。こちらのビジネスは、もともとはほとんどが抗体事業でした。ここで重要な点は、2002年に私たちがパートナーのアッセイのためのCDMOとしてのビジネスを始めた際に、それらの収益が上がるまで3年ほどのタイムラグがあったことです。つまり、製品を上市してから収益を得るまでに、それだけの時間がかかったということです。

2002年に3つのプロジェクトから始まりました。そして、2004年、2005年に上市され、そこから収益が上がり、また次のプロジェクトを始めていきました。石川からご説明したとおり、ここから良い循環が生まれてきました。

事業の成長に取り組み、2005年、2006年、2007年と新たな新製品が出て、複合的な効果が出てくるわけです。これが、私たちのCAGRがマーケットの4パーセントから5パーセントよりも高い理由です。それらのプロジェクトの開始から収益が上がるまでには3年から4年かかるものの、このようなかたちで良い循環が生まれていくのです。

CDMO戦略およびアフターコロナの業界動向

私たちは2020年に戦略を変えました。FDIのビジネスについて、2020年以前はCDMOビジネスを富士レビオ・ホールディングスの中で、オンコロジーのポートフォリオをメインに行ってきました。アメリカ、およびスウェーデン・ヨーテボリのサイトがメインになっていました。

しかし、私たちは2020年に戦略を拡大し、富士レビオ・ホールディングス全体としてビジネスを行うようにしたのです。この戦略を組織全体に展開したことによって、知財やノウハウをそれぞれ活用することができるようになりました。

さらに、Fujirebio Diagnosticsだけではなく、すべての法人をCDMOのパイプラインに入れることができるようになったのです。それにより、これまでみなさまにご説明したiTACTやレニン・アルドステロンなどの技術を、すべて包括できるようになりました。これらのアッセイを開発するためのパートナーとの契約も進んでいます。

富士レビオ・ホールディングスの中のポートフォリオを強化することができたわけです。過去20年かけて構築してきたFujirebio Diagnosticsのビジネスモデルを使いながら、それらを推進することができました。

CDMOの種類および特徴

CDMOについて、私たちがどのように考えているかをご説明します。製薬ビジネスとは少し異なるところがあります。私たちにとっての鍵は、技術が自分たちのものであることです。パートナーの技術を製造するだけでなく、パートナーに対してコア技術を提供すると同時に、製造のためのサービスも提供しているかたちです。

私たちのビジネスのコアは抗体です。これが私たちの基盤であり、それがすべての免疫測定におけるコアになります。抗体の供給ビジネスは、私たちのビジネスのすべての鍵となっています。

そして、試薬の製造があります。試薬には中間材と完成品という2つの観点があり、中間材は、抗体の追加的な処理プロセスを含みます。完成品に対しては、お客さまが自分たちのラベルを貼っているかたちです。

このスライドの中で、私たちがポートフォリオを拡大することができてきたとお話ししました。拡大のみにとどまらず、パートナー数も増やすことができました。2020年以前の試薬に関するパートナーは3社のみでしたが、現在では7社のパートナーがいます。3年でそれだけパートナーを増やせたのです。抗体の供給は私たちの強みでした。そして、グローバルの診断薬の企業ほぼすべてがパートナーとなっており、私たちはなんらかのかたちで抗体を提供しています。

もう1つの主要な点は、私たちのビジネスが継続的であるということです。つまりパートナーは、私たちと一度関係を築けば、私たちの製品から離れにくくなるということです。要は、パートナーが私たちから切り替えたいと考えた場合、さまざまなハードルがあるということです。さまざまな異なる抗体でアッセイを再開発しなければならず、その上規制のあるアメリカ、中国、日本においては再度申請しなければいけないというハードルです。

このような規制・ハードルがあるため、通常のサイクルにさらに3年が上乗せされることになるわけです。このような状況が私たちにとってはメリットとなり、お客さまとの関係性を長期的に維持することができるのです。

CDMOの種類および需要の動向

ここからは、ビジネスの方向性についてご説明します。抗体の供給に関して、私たちは継続的に、お客さまとの強力な関係を持ち続けています。

大規模な診断薬の企業と継続的な関係を維持することができており、FDIの製品だけでなく、富士レビオ・ホールディングスの製品も提供しています。

試薬に関しては、2019年度以降、中間材に22項目、完成品に8項目を追加しています。これは追加的な成長であり、私たちはお客さまが望む高品質な製品を提供することができています。

グローバル拠点への設備投資①

ビジネスの成長を維持するために、世界各国の拠点に投資を行ってきました。CDMO・原料ビジネスに関連する拠点に、合計100億円以上の設備投資を行っています。

特に、ベルギーのゲント、日本の宇部市と帯広市、スウェーデンのヨーテボリに投資を行い、すでに最適化されています。ヨーテボリの建物は私たちにとって一番大きな設備投資で、ゼロから始めたものでした。2020年に新型コロナウイルス感染爆発が始まる前にオープンしました。

グローバル拠点への設備投資②

製造においても、さまざまな設備投資を行っています。完成品を提供するだけではなく、私たちのコア製品は、アッセイに用いられる抗体です。

バイオリアクターにも投資を行うことにより、抗体培養のキャパシティ拡大を行っています。計50台以上のバイオリアクターにグローバルで投資を行い、これまでの10倍以上の抗体の培養が可能になりました。

主要KPIの進捗状況・達成見込み:CDMO

ビジネスの進捗について、主要KPIをもとにご説明します。CDMOビジネスは、新規のプロジェクトをその年にどのくらい立ち上げたかという指標を採用しています。

スライド左側の表のとおり、戦略転換した2019年度末から2020年度末の間に、項目数が抜本的に増えました。技術が向上し、アルドステロンやコアに関係する抗体の展開があった年でもあり、著しい成長を成し遂げました。

2021年度末から2022年度末にかけては、新しいプロジェクトを5件追加しており、これは中期的に持続可能と考えています。また、マーケットに特化して、自社にアッセイのソリューションを持たない、地域に根付いたリージョナル・パートナーとも手を組んでいます

完全なソリューションを提供し、完成品や完成試薬、資材、機器を提供する可能性も追求できます。リージョナル・パートナーと手を組み、40項目以上の契約を交わすことができており、今後もこのような案件を増やしたいと考えています。

主要KPI(項目数)と事業成長(売上高)の連動(イメージ)

売上高がどれくらい伸びるのかは、数字で示すことはできませんが、イメージはスライドのグラフのとおりです。生産テスト数は、2019年度から2024年度までに1.5倍、2019年度から2027年度には2.5倍に増える想定です。

サマリー:今後の成長余地

グローバル・パートナーならびにリージョナル・パートナーとの連携によって、イメージしている成長を実現します。したがって、診断薬業界において、試薬CDMO市場は長期的に成長すると考えています。

私たちは20年以上、がん領域におけるCDMOを実施してきており、そのノウハウを十分に蓄積し、グローバル・パートナーが何を求めているのかもよく理解しています。そのようなパートナーに新しい技術を提供することが成功につながります。それは青柳からもご説明がありましたし、ADx社買収についても石川がお話ししたとおりで、CDMO領域は私たちのパイプラインを拡充する大きな要因となります。

ADx社を獲得したことは、中期的にアルツハイマー病領域のさらなる原動力になると考えています。また、その他のADx社の資産としても、疾患領域やパーキンソン病に関する知見があり、臨床有用性を実証する可能性があります。

Fluxus社の買収により、異なる側面での拡大が期待されます。従来のCDMOビジネスは、私たちの技術を使ってパートナーの検査システムに導入することでした。しかし、Fluxus社との案件では、新しい検出システムと試薬を提供できる機会となっています。これは中期的なCDMOビジネスの大きなパイプラインになると期待しています。

現在、私たちの生産能力を拡大し、その成長を十分に取り込むことができるような体制を整えつつあります。また、新規のプロジェクトを獲得することが、富士レビオ・ホールディングスのCDMOビジネスで期待できます。

次に研究開発について、青柳よりご説明します。

IVD新・グローバル戦略におけるR&Dの役割

青柳克己氏(以下、青柳):富士レビオ研究開発担当の青柳でございます。R&Dの進捗状況と、アルツハイマー、超・高感度検出技術を中心に今後の方向性についてご説明します。

IVDグローバル戦略におけるR&Dの役割、使命は、コンテンツの開発・製品化であり、ONLY ONE/NO.1のコンテンツを継続的に作っていくことだと考えています。コンテンツ開発の基本方針は「より正確な検査、より広い臨床応用性、より正しい臨床診断に貢献する」ということで、こちらに基づいて開発を進めています。

IVD R&Dの基本戦略:ストーリー

スライドの図について、縦軸は高感度化・高精度化の追求、横軸は項目領域の拡大です。我々は、今までがんや感染症などパイオニアとして、これまでさまざまな試薬を開発してきました。また、高血圧を含めた生活習慣病やTDM、そして2022年度にグループに入ったADx NeuroSciences、Fujirebio Europeを中心としたアルツハイマー関連の検査項目を開発し、強化していきます。

先ほどもお話ししましたが、「iTACT法」という効果的な検体前処理法を用いて免疫測定法の阻害を受けることのない測定試薬を開発し、「HBcrAg」「サイログロブリン」「タクロリムス」といった製品のラインアップを継続的に進めています。

そしてFluxusの超・高感度検出技術を用いて、がんや感染症、アルツハイマーも含めたさまざまな臨床領域において、さらに臨床的性能を有する製品群を開発したいと考えています。

しかし、抗体ベースの技術には一定の限界があります。特殊な抗体をきちんと作るには、年単位での時間を要します。それを補うためにぺプチドリーム社からライセンスを受け、抗体ペースに代わる「環状ペプチド」という新しいバインダーを開発する技術を身につけたいと考えています。

新しいバインダーを用いることによって原料・ツールの開発および抗体ではなかなか難しいものの開発のスピードアップに期待するとともに、我々の製品の幅が広がり、さまざまな社会貢献やヘルスケアへの貢献ができると考えています。

IVD R&Dのコア技術

3つの戦略のまとめです。戦略①の高感度化の追求では、「iTACT法」で特許を取得した製品を含めた製品ラインアップの充実を進めていきます。また、Fluxusの一分子検出法を用いた超・高感度プラットフォームの開発およびそれに付随した試薬・検査薬の開発の強化を進めていきます。

戦略②の項目領域の拡大では、先ほどユニークな抗体を用いた「低分子サンドイッチ法」をアルドステロンを例にご説明しましたが、こちらのラインアップとしてビタミンDや他の項目についても開発を継続しています。

また、ADx NeuroSciencesの保有する原料と臨床治験を最大限に活用し、アルツハイマー病/NEURO領域にしっかり製品供給し、アルツハイマー関係のヘルスケアに貢献していく予定です。

戦略③の抗体ベース技術の補完では、ペプチドリーム社のコア技術の診断薬への適用を早期に実現することを目指します。こちらは抗体技術の補完という意味で、さまざまな新規バイオマーカーの実用化や現状の開発に足りないものを補うことに加えて、より安定した原料の生産、サプライチェーン構築などの実現を目指していきたいと思います。

アルツハイマー:当社の基本戦略および進捗

特に注力したいアルツハイマー関係と、超・高感度測定技術についてご説明します。スライドは、当社のアルツハイマー領域の基本戦略および進捗です。1995年より、脳脊髄液のマニュアル検査用の試薬を開発し提案してきました。FREが富士レビオグループの一員となった後は、脳脊髄液検査の自動化・IVD化を進めています。現在、計4項目が主要国におけるIVD承認としてFDA、CEマーク、PMDAを取得しています。

続いて、CSF検査に加え、血液検査のラインアップを拡充します。現在「ルミパルス」向け項目の開発を加速していますが、上市済みはスライドに記載の3項目です。加えて、2022年度末までに3項目以上上市したいと考えています。

次のステップは、Fluxusの技術を用いた超・高感度検出による血液検査のラインアップ拡充です。2023年度末までにRUOを開発し、アルツハイマー関連項目の検査を拡充して開発し、上市を進めていきたいと思っており、現在順調に進捗しています。

このように、ADx NeuroSciencesが持っているさまざまな材料や臨床試験にFluxusの超・高感度技術を合わせることで、アルツハイマー領域の開発活動を加速させていきたいと考えています。

アルツハイマー:ルミパルス専用試薬ラインアップ(上市済み・開発中)

ルミパルス専用試薬ラインアップの全容です。脳脊髄液項目はIVD4項目とRUO試薬というかたちでラインアップ拡充を進めています。

血液項目に関して黒字の3項目は上市済みで、青字は開発中です。この中から3項目を2022年度末までに上市する考えです。これらのRUOの試薬の中から、『Clinical Study』を通じて最終的にはIVD申請を目指して進めていきたいと考えています。

超・高感度検出:Fluxusのコア技術

超・高感度検出についてです。Fluxusの技術による新規プラットフォームの開発では、一分子検出法をベースにした研究を行い、RUO機を2023年度に上市予定です。

スライド右側の「期待される効果」のグラフのように、免疫測定法の歴史では、凝集法、ELISAという酵素免疫測定法、CLIA、CLEIAという化学発光測定法が進化し、マーケットがどんどん広がってきた実績があります。

今回、我々は超・高感度検出法を提案し、その市場が将来的にはグローバルスタンダードになるのではないかと期待しています。最初の項目としてアルツハイマーを目指し、次にがん、感染症と拡大する予定です。そして当社のプラットフォーム戦略の補完として、既存の化学発光測定法「ルミパルス」との組み合わせを想定し強化していきます。

このような超・高感度の技術、超・高感度な検査薬は中期的なCDMO戦略のパイプライン強化につながるため、グローバル供給を目指してコア技術および試薬のブラッシュアップを進めていきたいと思います。

超・高感度検出:中期的な開発戦略

超・高感度の技術を踏まえてさまざまな技術を組み合わせ、次の10年で優位性を築くためのシナリオです。

「RUO機の完成 アルツハイマー病領域」では、2023年度末を目安に当社のコンセプトを凝縮させたRUO機を完成させ、アルツハイマー3項目を上市したいと思います。その上で、ADx NeuroSciencesや富士レビオの抗体を含め、一番臨床的意義の高い組み合わせをしっかり提案していきたいと考えています。

続いて「RUO機のメニュー拡大 がん/感染症領域 他」では、他社が今まで実現できなかった新たな臨床的価値を実現することを考えています。例えば、Fluxusの超・高感度と、ペプチドリーム社の技術を用いた新しいバインダーを組み合わせることにより、がんや感染症領域における新たな価値のマーカーの開発を期待しています。

そして「IVD後継プラットフォーム “次のスタンダード”の構築」です。現在、我々の「ルミパルス」は非常に安定しており、高感度で高精度な機械ですが、Fluxusの超・高感度計を組み合わせることにより、新しいグローバルスタンダードを打ち出したいと考えています。

成果物はすべてCDMOモデルで世界中のプレイヤーに供給し、最終的には世界のヘルスケアに貢献することを目指して進めていきます。

サマリー

サマリーです。IVD R&Dは、グローバル体制の下で新しい価値を有する製品化を進めています。我々のターゲットは常にONLY ONE/NO.1です。そのための戦略として「①高感度化の追求」「②項目領域の拡大」「③抗体ベース技術の補完」を方針としてしっかり構えて進めていきたいと思います。

アルツハイマーでは、ルミパルス向けの血液項目のラインアップを拡充し、安定した性能の機器・試薬を世界に供給していこうと思います。ADx NeuroSciencesの抗体を含めたベストの抗体を用いた臨床試験を行い、試薬開発を進め、2022年度末には少なくとも3項目以上の追加を目指します。

超・高感度検出の領域では、製品化の上、新たな市場として超・高感度の世界の形成を目指しています。2023年度末までに研究用目的(RUO)で製品上市を目指し、超・高感度を必要とする項目のラインアップを拡大するとともに、コア技術・試薬を最終的にはCDMOで世界に広げていくことを考えています。

研究開発は、当社のグローバル戦略のエンジンです。常に新しい可能性にチャレンジし、他社の先を行くことで、グローバル市場における当社の優位性の確立を検討しています。

まとめ

石川:本日のプレゼンテーションのまとめです。業績は短期的にしっかり成長しています。その中でも大事なのは、ベースの事業が成長することだと考えています。ベース事業の短期・中期の成長を牽引するKPIはしっかりと成長しており、2020年から始めた戦略は確実に機能している手応えを感じています。

また、2件の買収を含め、非常にすばらしい会社が我々のグループに入りました。これを機に2022年7月からグローバル体制を大きく進化させ、グローバルリーダーシップによってコアな成長領域を伸ばす体制は定着していると考えています。

CDMOビジネスは、当社固有の原料・技術をしっかり活用し、成長を牽引することが大事です。我々がFujirebio Diagnosticsで実現してきた20年の実績を加速するかたちで手応えを得ており、キャパシティや体制は整備されていると考えています。

グローバルR&Dチームは、アルツハイマー/NEUROおよび超・高感度検出の製品化に注力しています。自社製品と同様に成果物はすべてCDMOの対象となるため、アルツハイマーのCSFあるいは血液の項目、超・高感度で作る技術、もしくは試薬についてはすべて、オープンにパートナーに供給し、提案を行っていくことを考えています。

そのような意味で、買収や技術ライセンス、これまで積み重ねてきた技術や「iTACT」のように自分たちで考えた技術も含め、組み合わせでONLY ONE/NO.1をしっかり作り上げていくというストーリーがかなり具体的になっており、技術力を強化するストーリーが構築できてきています。これが我々の持続的な成長において技術的優位性の根幹になると確信しています。

とても夢がある話であり、グローバル体制でどんどん製品化を早めることができれば、この中期においての計画達成のみならず、次の中期に向けて持続的にミッドシングルの売上高成長を実現することができます。さらに、営業利益率としても20パーセントから25パーセントの達成は可能であると考えており、しっかり実現していきます。

質疑応答:CDMOののべ受託項目数について

質問者:スライド左側の「CDMO:のべ受託項目数」について、直近のIR資料では2021年度末の47品目の内訳は、開発品目数が30品目で、製造品目数が17品目だったと思います。

売上に直結するのは製造品目のほうだと思いますので、そのような区分けが重要だと思うのですが、2022年度の52品目の内訳はどのようになっているのでしょうか? 製造品目数がこれからどのようなペースで増えていくのか、製造に30品目から40品目を落とし込めるタイミングがいつになりそうなのかを教えてください。

モンテ: まず、Dealを締結し、製造をスタートするまでにはおおむね3年程度かかるとみています。その項目がどのマーケットを対象としているかにもよりますが、例えば、それが中国であれば4年から5年かかることもあります。いずれにしても、対象となる国の規制状況や地域の事情によって若干異なってきます。

石川:補足として、先ほど製造数のグラフがありましたが、これらの項目については2023年度からオレンジの部分が少しずつ表れていたと思います。これは徐々に増えていくと思いますが、2020年度に開発を開始したものが2023年度あたりから売上として出てくると想定しています。

質疑応答:CDMOのキャパシティ拡張について

質問者:CDMOのキャパシティ拡張のためにこれまで100億円ほど投資してきていますが、今後のキャパシティ拡張のタイミングと設備投資にかかる金額について教えてください。

石川:基本的には主な設備投資は終了したと思っています。一部製造機器の不足があるかもしれませんが、現時点で今後の大きな設備投資は想定していません。

質問者:今後製造品目数が増えていくとしても、大きな追加投資は必要ないということでしょうか?

石川:必要ないと思います。

質疑応答:CDMOビジネスの進め方について

質問者:CDMOビジネスの進め方についてです。成功の秘訣は「『他社の有さない原料・技術』のポートフォリオを常に拡大する」ことであると記載されていますが、項目数の拡大をどのように進めていくのでしょうか? 

自社におけるR&Dもしかり、一方で、今回買収したADx NeuroSciencesのような、特異な領域を持った会社を積極的に買収する可能性があるか、教えてください。

石川:他社が持っていないものを常にしっかり持っておくことが事業競争力の源泉になります。今回、ADx NeuroSciencesおよびFluxusを買収したことでポートフォリオが拡大できたことはプラスの要素です。

ADx NeuroSciencesについては、今後、彼らが持っているものを製品化した上で、顧客へ提案して採用してもらわなければなりません。Fluxusについては、検出機器に加えて試薬についても組み合わせの選択肢が広がるため、可能性がある会社だと思います。

したがって、当面は新たな買収というよりも、ペプチドリーム社も含めて、獲得した技術により早期製品化を実現し、臨床的価値をしっかり示した上でさらに広げていくことで、十分にポートフォリオを拡大できると信じていますので、それを研究開発およびビジネスで行っていきたいと考えています。

質疑応答:Fluxusの強みについて

質問者:Fluxusは超・高感度検出技術を実現できているとのことですが、どのような技術に強みがあるのかを詳しく教えてください。

青柳:Fluxusは、もともと光学的な技術に非常に特化した会社です。さまざまなところとコラボレーションをされており、技術を導入しながら新たな開発を試みている会社です。

我々も長い間、Fluxusの経営者と情報交換していました。そこから共同研究が生まれ、そこで見出された検出技術がすばらしく、発想が魅力的で、実装できる可能性も非常に高いと考えています。

我々が超・高感度の世界に入るためには、その技術が必要ですので、今回グループに入っていただきました。

質疑応答:「ルミパルス」専用試薬と超・高感度検出の技術開発の関係について

質問者:「ルミパルス」専用試薬と超・高感度検出の技術開発の関係についてです。これまでどおり、「ルミパルス」専用試薬としてβアミロイドなどの項目の開発を進めつつ、Fluxusの技術を用いた超・高感度のプラットフォームにてADx NeuroSciencesの技術を用いた項目をRUO機で上市していくということでしょうか? 棲み分けなどはあるのか教えてください。

青柳:「ルミパルス」は非常に高感度かつ安定的で機器間差も少なく、再現性がよい機械だと思います。ですので、今いろいろなNEURO関係の血液マーカーの開発を進めています。

一方、超・高感度の機器を開発する中で、アルツハイマー関連の項目はより高精度に確認する必要性があります。「ルミパルス」である程度は測れるものの、さらなる超・高感度化により、より高い精度で正確な数値を出していきたいと思っています。

もう一点申しますと、現在、ターゲットの各種RUOの試薬類は、非常によい抗体を確保できているということもあり、なんとか感度を確保しています。ただし、今後アルツハイマーのさまざまな血液マーカーを使った時に、現行の化学発光では測定が難しい可能性もあります。そのため、超・高感度な新規プラットフォームを使い、次のターゲットのマーカーを開発することも視野に考えています。

棲み分けに関しては、高精度を保つということ、さらにそれらの確認に用いたり、アルツハイマー関連で超・高感度な測定が必要な新しい項目にもこの技術を使いたいと思っています。

質疑応答:IVD化について

質問者:ADx NeuroSciencesは、「pTau」などいろいろな抗体を持っているため、買収したと理解しています。

一方でFluxusは、特許を見ると半導体露光技術を使用し、高屈折率のポリマーのようなものを載せて光を集めるなどの類いの技術だと理解しています。しかし、これらは昔からIVD化されておらず、RUO機は出せてもIVD化できるのかを懸念しています。IVD化の実現に向けて、何らかの感触を感じているのでしょうか?

青柳:Fluxusの技術の詳細をお伝えすることは難しいのですが、我々は既存のほかのメーカーにおける超・高感度化についての機械あるいはシステムと比較評価した上で、同等以上の性能を実装化できるだろうと見積もった上で、超・高感度化を進めています。実装化を確信した上で、検討を進めているということです。

石川:基本的にはRUOの機械として技術を埋め合わせているわけではなく、IVD化を目指す上での技術の取得です。こちらについてはこれまでの共同研究の中で成果は出ると考え、買収をした上で開発を加速させる必要があると見ています。

ですので、繰り返しになりますが、基本的にはIVD化を目指した上での技術の取得になります。

質問者:RUOのみではビジネスとして限定的ですので、Fluxusの技術を用いた製品のIVD化はどれくらいの時間軸でできるのでしょうか?

石川:時間軸は、まずRUO機を出した上で、次にIVDの計画を具体化するかたちになります。現時点においてはまだ明確な計画はありませんので、短期の話というよりも中期の2025年以降のお話になるかと思います。