本日の説明内容

丸井武士氏(以下、丸井):サクサホールディングスの丸井でございます。本日は、弊社説明会にご参加いただきまして、誠にありがとうございます。それでは、2022年3月期決算および中期経営計画の進捗報告を始めさせていただきます。

本日の説明内容として、2022年3月期連結業績概要を小林取締役から、中期経営計画進捗報告および2023年3月期連結業績予想見送りについては代表取締役社長の私よりご説明させていただきます。それでは小林取締役、よろしくお願いします。

1-1 連結損益計算書

小林俊夫氏(以下、小林):2022年3月期決算についてご説明します。

まず、P/Lの概要ですが、スライドの赤枠が2022年3月期の実績で、売上高は308億円と前年度に比べ大幅な減収となりました。営業利益はプラス1億円と前年度に比べ大幅な減益となりましたが、辛うじて黒字を確保しました。

当期純利益はプラス12億円、経常利益はプラス5億円、また特別利益として政策保有株式の売却益を計上しています。さらに、税金で繰延税金資産を計上し、こちらが経常益としてマイナスの税金となることに伴い、当期純利益はプラス12億円となり前年度赤字から大幅な黒字転換となりました。配当については30円で、前年度と同額を安定的に継続配当する予定です。

1-2 連結売上高の主な増減内訳

連結売上高の主な増減内訳についてです。前期は366億円でしたが、2022年3月期に導入されている新会計基準では324億円となります。今期はそこから基盤事業でマイナス13億円、成長事業でマイナス3億円の減収となり、結果として308億円の売上高となりました。

減収となっていますが、現状として需要はあるものの、とにかく物が作れないという状態です。部品が入らないために物が作れず、物が出荷できないため売上が立てられません。これは今までとは違う状況での減収となっています。

1-3 連結売上高の事業別増減内訳

こちらは事業別の売上高増減内訳です。スライドの赤枠が新収益基準ベースでの比較で、実質的にマイナス16億円の減収となっています。そのうち、緑色の「基盤事業」でマイナス13億円、中でも一番上のボタン電話装置がマイナス21億円の減収になっています。基幹部品である半導体や電源などが入らず、物が出せなかったために大幅減となりました。

一方、アミューズメントはプラス9億円で前年比増収となっていますが、実は需要自体はもっとあります。しかし、こちらも部品不足で、ここまでしか出せなかったという状況です。

オレンジ色の「成長事業」はマイナス3億円となりましたが、本来はもっと伸ばさないといけない分野です。ビジュアルソリューションにおいてもカメラが入らなかったり、ITビジネスでもネットワークセキュリティ装置はDXで追い風を想定しておりましたが、物が出せずに減収という状況です。

1-4 連結営業利益の主な増減内訳

続いて、営業利益の増減内訳について、スライドのチャートを左からご説明します。2021年3月期は23億円で、そこからまず新収益基準の影響でマイナス2億円となっています。こちらは何年かにわたり一括計上していた保守サービスが期間按分したことによるもので、会計基準の変更のあった今年度だけの問題です。

売上高減少でのマイナス6億円は、先ほどご説明した実質16億円の減収に対し、粗利が3割くらいあるため、その影響によるものです。販売機種構成のマイナス4億円については、トータルとして16億円の減収で、特にボタン電話装置がマイナス21億円の減収とお伝えしたように、利益率の高い主力製品のボタン電話が大幅に売上減となり、構成差でもマイナスとなりました。

材料費については、物が入ってきても部品が高騰しているために材料費増加でマイナス10億となっています。一方、在庫評価益は、直近の高くなっている仕入れ価格で在庫を評価したことにより、在庫評価益が計上されプラス2億円となっています。ただし、こちらはバランスシートでは、棚卸の増加になってきます。

内部統制費用増加のマイナス2億円については、第1四半期で発生した、前年度の監査費用が中心となります。以上の結果、辛うじてプラス1億円ということで黒字を確保しました。

1-5 連結貸借対照表

続いて、バランスシートについてです。総資産は369億円となり、目立つものとして流動資産がプラス9億円と大きく増加しています。こちらも棚卸でプラス13億円です。部品についても、100個部品が必要な内、例えば99個部品が入ってきても1個欠品があると、物が作れず製品としても売れないため、その他の部品は在庫として膨らみ、棚卸残高増加となっています。そのため、棚卸が増えてキャッシュも出ていくという結果になっています。

純資産は、プラス6億円の236億円で、自己資本比率は約64パーセントです。

1-6 フリー・キャッシュフローの状況

キャッシュフローです。営業キャッシュフローはマイナス10億7,500万円、内訳としては棚卸資産の増加が13億800万円となり、先ほどの部材の積み上げと欠品の部材待ちとなっています。ただ、これはキャッシュアウトとして出ていくため、大きくマイナスになっています。

一方、投資キャッシュフローはプラス2億1,400万円です。通常は投資でマイナスになりますが政策保有株式の売却益として、6億円のキャッシュインがありプラスとなっています。営業と投資を合わせたフリー・キャッシュフローは、マイナス8億6,100万円になっています。ただ、現預金の残高については期末で69億円あり、手元資金として十分に確保されている状況です。

簡単ではありますが、決算の概要は以上です。引き続き中計の進捗状況について、丸井よりご説明します。

2-1 中期経営計画

丸井:それでは、中期経営計画の進捗についてご説明します。2021年から2023年までの中期経営計画では企業価値の向上を実現するために、「事業を変える。」「財務を変える。」「ガバナンスを変える。」という3つの変革戦略を行っています。それぞれの取り組み状況についてご説明します。

2-2 中期経営計画進捗

事業戦略については、基盤事業の収益維持や成長事業の収益拡大を掲げた取り組みを行っていますが、半導体不足による部品の入手難、部品調達価格の高騰により、両事業ともに収益減となっています。アライアンス・M&A戦略については17の案件を検討しており、現在案件を絞り込みながら検討し続けています。

財務戦略については、政策保有株式の原則売却、および保有不動産の流動化・収益化を進めています。財務レバレッジに関しては、先ほどもご説明した調達価格問題の対策に注力しているため、成長投資を一部見合わせています。また、ガバナンス戦略については、コーポレートガバナンス改革、およびグループ企業の再編を行っています。

2-3 事業戦略 振り返り

昨年度の取り組み状況を踏まえた上で、今年度の取り組みについてご説明します。まず、事業戦略の振り返りです。基盤事業については、注力しているボタン電話装置・アミューズメント事業において、半導体不足による部品入手難、部品調達価格の高騰による原価の高騰により、減収減益の結果となっています。

成長事業に関しても、注力しているUTMなどのITビジネスおよびビジュアルソリューションの半導体不足による部品入手難、部品調達価格の高騰による原価高騰となり、減収減益の結果となっています。両事業ともに、部品調達体制のさらなる強化を実施し、製品供給体制を正常化させることで、収益の回復を図ることが最重要課題となっています。

2-4 事業戦略 振り返り

現状を踏まえ、今年度の取り組みについてご説明します。基盤事業の再構築による収益拡大、成長事業の収益拡大に努めていき、これを実行するために3つの施策を行っていきます。まず、最重要課題への2つの対策として、部品調達体制の構築と、価格転嫁による原価率の適正化を行います。

部品調達体制については、昨年度設置した部品調達改革プロジェクトを本部に発展させ、調達と生産・開発の連携を強化します。調達部品状況に合わせたリアルタイムな生産計画への反映を行うことで生産の効率化を図り、汎用品への代替品の切り替えと設計に着手し、早期商品化を図ります。そのほか、大手電機メーカーとの連携を強化することで、共同調達・共同設計を行っていきます。

価格転嫁に関しては、OEMパートナーへ高騰した部材の補填をお願いしたいと思います。また、製品の売価アップを行っていきます。次に、事業価値向上に向けた活動として、顧客基盤深耕強化、付加価値サービス提案によるシェア回復の2つの施策を行います。

顧客基盤については顧客ごとに深耕計画を策定し、個別にヒアリング、ニーズの深掘りを行って対応していくことで、パートナーのシェアを回復したいと思います。

付加価値サービスについては、例えばボタン電話装置と、スマートフォンを連携することで、働き方改革に活用出来る音声コミュニケーションサービスを提供します。情報セキュリティに関しては、セキュリティアプライアンス機器に、サイバー攻撃に対応した「メール攻撃訓練サービス」などを付加することで、企業活動に安心して取り組めるサービスを提供していきます。

最後に、事業成長に向けた投資として、M&Aを含む成長投資、ソリューション提供の強化の2つの施策を行います。M&Aについては、サクサグループとシナジー効果を出せる企業に投資していきます。ソリューションについては、多様なパートナーとのアライアンスにより、あらゆる顧客ニーズに対応できるソリューションを強化していきます。次に、本事業成長に向けて核となる付加価値サービスとソリューションについてご説明します。

2-5 事業戦略 振り返り(付加価値サービス提案)

まず、付加価値サービスについてです。弊社は商品のものづくりと付加価値サービスを同時に提供できる強みを持っています。この強みを活かす付加価値サービスの中核となるのが「SAXA-DXサービスプラットフォーム」です。昨年度はオフィスで働く従業員の離職防止や生産性向上を実現するメンタルヘルスケアサービス「cocoem.」の提供を開始しました。

今年度は、働き方改革に対応するテレワークの音声コミュニケーションサービスとIT人材不足の中堅中小企業が安心して企業活動に取り組める情報セキュリティサービス、オフィスの情報機器の状態を可視化するサービスを提供していきます。

2-6 事業戦略 振り返り(ソリューション提供)

ソリューション提供についてご説明します。映像機器、IoT、AIを組み合わせたソリューションを強化していきます。顧客にとって最適な提案をワンストップで対応できる強みを持っています。この強みを活かしてさまざまなパートナーとアライアンスすることにより、あらゆる顧客のニーズに対応できるソリューションを実現していきます。

昨年度は顔認証と電子錠を連携させた入退室顔認証システム「ZENESCAN PERSON」や、車のナンバープレート、車両ゲート、入退場管理システムを連携させた入退場車認証システム「ZENESCAN NUMBER」を販売開始しています。

今年度はサービスエリアや駐車場の混雑状況や空きエリアを可視化するスマートパーキングサービスや、不審物の置き去りや危険物の所持を検知する不審物検知ソリューションを提供していきます。このように人、人の行動、車、物体、建物を活用した顧客課題を解決するシステムを実現していきます。

2-7 財務戦略 振り返り

続いて、財務戦略についてお伝えします。政策保有株式の売却に関して、弊社は約50銘柄、約50億円の政策保有株式を保持していましたが、昨年度、4銘柄、6.3億円を売却しました。今後も弊社の業績や相手先の意向を踏まえながら、政策保有株式の縮減を図っていきます。

2-8 財務戦略 振り返り

保有不動産の流動化・収益化についてです。昨年度、相模原は賃貸、那須塩原・矢板は売却を前提に優先交渉先を決定しました。相模原は第1四半期を目処に優先交渉先と協定書を締結し、賃貸条件の基本合意を目指していきます。那須塩原・矢板は上期を目処に売買契約の締結を目指していきます。

相模原の不動産賃貸料は安定的な収益が見込めますので、この不動産収益の一部を配当原資とし、その上で、事業から得られた利益に加算して継続的かつ安定的な配当をしていきたいと考えています。

2-9 ガバナンス戦略 振り返り

ガバナンス戦略についてご説明します。ステークホルダーである株主、取引先、従業員に対し、利益還元を実現するためのさまざまなガバナンス改革を進めています。今年度は企業価値の向上を実現するESGの取り組みについて、サステナビリティレポートを作成し開示していきます。今後も引き続き、ステークホルダーの期待に応える企業活動を実施していきます。以上が中期経営計画の進捗報告になります。

3-1 2023年3月期 連結業績予想見送りについて

2023年3月期の連結業績予想見送りについてご説明します。半導体を中心とした部材入手難の状況は今も継続しています。本状況に伴う販売機会損失の影響、また調達価格高騰による材料費増加の影響についても見込みが立っていません。そのため、これらの影響を想定した数値を合理的に算定することが困難と判断しています。

そのため、大変申し訳ございませんが連結業績予想は未定とします。今後、開示が可能になった時点で速やかに公表します。

以上で本日の決算説明および中期経営計画の進捗報告になります。本日はご清聴、誠にありがとうございました。

質疑応答:通期予想の公表と中期経営計画の影響について

質問者:質問が2点あります。1点目は、最後にご説明いただいた連結業績予想の見送りに関してです。昨今の事情を考えると、なかなか見通しの立たない情勢が長引く見込みが高い中で、合理的な算出ができるのはいつ頃になりますか? また、どのような要素がクリアになれば2023年3月期の見込みが出せるのかを教えてください。

2点目に、御社は中期経営計画で2024年3月期までのご計画を出されていますが、この2023年3月期の見込みが立たないところを受けて、中期の計画にどのような影響があるのかをおうかがいしたいです。

丸井:1点目の通期予想については、2023年3月期の目処がいつ頃見えるかということで、現在、商社やベンダーとリアルタイムで状況確認を行っています。その会合の中で、需給のバランスが今年度いっぱい落ち着くことはないという情報をいただいており、その中で、入手できる見込みが立っていないものに対して我々が交渉して、いつどのくらい入るのかということも話しています。

我々としては、注力しているボタン電話事業とアミューズメント事業、UTM製品の状態がある程度見込めた時点で公表できると判断しています。現在その内容を確認しており、確認でき次第、速やかに予想を公表したいと考えています。

2点目の中期経営計画への影響については、ご説明したとおり、それぞれの事業、財務、ガバナンスの戦略を進めていますが、特に事業面における影響が一番大きいと考えています。

注力している3つの商品の収益がそれなりに確保できれば、中期経営計画の見込みも予定どおり実現できるとして、我々としては収益回復に向けた調達を強化することに注力したいと考えています。

質疑応答:「SAXA-DXサービスプラットフォーム」について

質問者:「SAXA-DXサービスプラットフォーム」における2022年度から提供予定のサービスについて、いつまでにどの程度の収益を想定されていますか。

丸井:「SAXA-DXサービスプラットフォーム」ですが、本中期経営期間中にサービスを充実させたいと考えています。弊社の強みが活かせるオフィス市場、防犯、アミューズメントなどの市場で求められるサービスを創出して提供していきます。

2025年度には物と付加価値サービスとを同時に提供することで、売上目標額50億円を目指し、新たな事業の柱にしたいと考えています。

質疑応答:各事業の市場動向について

質問者:中期経営計画で、基盤事業、成長事業と表現している2つの分野に関して、今後の業界動向をどのように想定されていますか。

丸井:基盤事業と成長事業において、それぞれ注力している事業の2つずつについて、我々の考えている動向をご説明します。

まずは基盤事業です。ボタン電話装置事業の市場は微減と認識していますが、こちらはロングテールの市場ということで、事業の効率化などによるコスト削減や、バージョンアップおよびモデルチェンジを繰り返すことで、シェアの維持と収益の拡大を図っていきます。

アミューズメント事業の市場は、コロナ禍の影響もあり緩やかな減少傾向ではありましたが、パチンコ玉やメダルに触れなくてよいというスマート台への切り替え需要が非常に高まってきています。これは今年度から展開されるもので、我々としてはそこに注力することで収益拡大を図っていきたいと考えています。

次に成長事業です。注力しているUTM製品においては、コロナ禍のテレワークやサイバー攻撃への対応など、セキュリティ対策のための設備投資が急激に伸長したため、2桁成長になっています。今年度もこちらの設備投資は堅調に推移すると想定しており、引き続きシェアの回復と収益拡大を図っていきます。

映像・IoT・AIについては、国内のIT市場の成長率は約2パーセントですが、AIに関しては60パーセント以上の成長が見込まれています。そのため、我々もここに注力することで収益拡大を図っていきたいと考えています。

質疑応答:部材の調達難や価格高騰の対策について

質問者:部材調達難や価格高騰に関して、昨年度の対策の結果と、それを踏まえた今年度の対策をどのように考えているのでしょうか。

小林:部材調達難に対しては、昨年12月に「調達改革プロジェクト」を立ち上げました。まずは、とにかく部材をかき集めるのに駆けずり回ることからスタートして、その中で大手電機メーカーとの共同調達も始めたところです。3月に見込みを公表しましたが、その取り組みにより、売上は多少の上振れで着地する結果になったと思っています。

4月には「生産イノベーション本部」のプロジェクトを恒久化し、先ほどの大手メーカーとの共同調達をさらに進めるとともに、開発、調達、資材、生産の各部門と連携して、専用部品から汎用部品への切り替えなどを進め、少しでも部材調達、ひいては売上につなげていく活動を進めているところです。

質疑応答:配当原資について

質問者:不動産収益の一部を安定的な配当原資とするというご説明がありましたが、もう少し詳しく教えていただきたいです。

丸井:不動産の賃貸料により、安定的な収益が得られるということです。この安定的に得られる収益を配当原資にしたいと考えています。

弊社の配当方針である連結配当性向30パーセントを目安とすることと、この不動産収益の配当原資を合算して、配当していくかたちをとりたいと思っています。これから交渉先との協議等を行っていきますが、1株あたり約30円を目安に配当することを目指して、検討していきます。