第20回 個人投資家向けIRセミナー

城口洋平氏(以下、城口):ご参加いただいているみなさま、本日はENECHANGEのためにお時間を割いていただき、本当にありがとうございます。土曜日の昼間で、最初から参加している方は長時間となり、しかも私たちが最後という順番になっていますので、「もう疲れたよ」と思っている方がほとんどかと思いますが、ご飯を食べながらでも大丈夫ですから、ぜひ気軽に流し聞いていただければと思っています。

あらためまして、ENECHANGE株式会社代表取締役CEOの城口洋平と申します。当社はIRに大変力を入れており、特に、いわゆる機関投資家および個人投資家に向けて、海外も含め、できるだけ公平かつ平等に情報を発信することに力を入れているつもりです。プレスリリースや開示は、原則として日本語と同時に英語のものを開示しています。

今日これからお話しする内容に関しても、すでにWeb等にいくつか掲載されており、ログミーの書き起こしもあります。もし、今日の機会をもって私たちに興味を持っていただけたなら、あわせて読んでいただけると、さらに理解が深まると思います。

今日は土曜日の昼ということで、あまり難しい話ばかりしても、みなさまもおもしろくないと思いますので、私も基本的にはスーツにネクタイで出るようにしているのですが、今日はENECHANGE Tシャツです。個人投資家のみなさまに楽しんでもらいながら、わかりやすくご説明して、「ENECHANGEっておもしろい会社だな」と思ってもらえるようにがんばっていきたいと思っています。そのため少しラフにお話ししますので、その点をご了承いただければ幸いです。

プレゼンテーションに入る前に、だいたいすべてのスライドの上部に2行から3行ほどの文章があり、そこに伝えたいメッセージを書いていますので、あわせて読んでもらえると幸いです。私のプレゼンテーションではあえてそこを読むことはせず、スライドに書かれていない、どうしてもみなさまに知ってほしい内容を中心にご説明しますので、その点をあわせてご留意いただければと思います。それでは、プレゼンテーションを始めたいと思います。

会社概要:カンパニーハイライト

カンパニーハイライトです。当社は昨年の12月に上場した、まだまだ上場1年生の会社です。2015年に創業し、創業から5年で上場、今は6年目となります。私たちはもともとイギリスからスタートした会社ですが、現在は日本を中心に100名弱の社員で会社を運営しています。

世界的潮流:カンパニーハイライト

私たちはエネルギー業界で事業を展開していますが、今「脱炭素」を目にしない日はないと思います。私がターゲティングされているだけかもしれませんが、日経新聞のアプリのプッシュ通知で毎日のように「脱炭素がなんとかだ」と表示されます。

まさに脱炭素が世界中のトレンドになっているわけですが、「脱炭素って一体なんだ」と言いますと、要は炭素を脱しなければいけないということで、炭素を排出しないようになるというのが1つの大きな構造です。

20世紀は、基本的には石油を中心とした産業革命により、世界中の経済が発展してきました。つまり「炭素革命」でした。炭素を出すようになったために、これだけ世界が発展したにもかかわらず、21世紀になって急に脱炭素と言われるという、大きな変革が起きています。

スライド右の円グラフにあるとおり、CO2排出量の93パーセント、つまりほとんどすべてが、いわゆるエネルギー起源と言われています。エネルギー業界のどこから出ているのか、もう少し詳しく見ていくと、基本的には電力・ガス・ガソリンから出ています。

当社の対象市場:カンパニーハイライト

電力・ガス・ガソリンについては、大変おもしろいことに電力市場だけ伸びています。ガス・ガソリンは、オール電化や電気自動車によってどんどん縮んでいきますが、電力だけは伸びています。スライド左の線グラフを見ると、新型コロナウイルスの影響で直近は下がっているように見えますが、基本的には電力市場はずっと伸びています。

そのため、今の電力市場は13兆円ですが、20兆円になると言われています。これだけ超巨大な産業が、さらに50パーセント伸びるということは、おそらく他の業界を見渡してもまったくないと思います。それくらい、産業界の中でも、電力産業はめちゃくちゃおもしろいということをご理解いただけるのではないでしょうか?

当社のポジショニング:カンパニーハイライト

その上で、電力業界とはどのようなものかと言いますと、すごくざっくり分けると電気を「つくって」「送って」「売る」という3つの役割に分かれます。東京電力などのいわゆる電力会社は、基本的には全部行っています。

一方で、例えばJーPOWERやレノバとなどの会社は、スライド左に示すように発電だけです。電気に参入した東京ガスやENEOS、もしくはグリムスのようなベンチャーは、だいたい小売を手がけています。

ENECHANGEはどれでもありません。基本的にはテクノロジープロバイダ、つまりそのようなエネルギー会社に対するテクノロジーサービスの提供に特化するのが、ENECHANGEの役割です。このような発電も小売もしない、テクノロジーに特化したエネルギー会社は、ENECHANGEが初めてかつ唯一の上場企業になっています。

当社の事業領域:カンパニーハイライト

一体どのような変化がエネルギー業界で起きているのかと言いますと、「エネルギーの4D」と世界的に言われています。「自由化」はいわゆる電力自由化・ガス自由化で、「デジタル化」はどんどんDXを進めていかないと、「こんな古い業界では駄目ですよ」ということです。

「脱炭素化」はもちろん再エネですが、再エネをただつくるだけではなく、それを消費者が選択することが重要です。私たちのサービスにおいても、「再エネの電気がよい」と思う人がそれを買えることが、1つの大きなポイントになっています。

最後に「分散化」ですが、今後どんどん太陽光、蓄電池、電気自動車が普及していき、ただ電気を送電線から買うのではなくて、自分で電気を「つくって」「ためて」「送る」ことができるようになります。まさにそのようなことが「分散化」です。

ENECHANGEはエネルギーに特化していますので、この4つの「D」すべてに垂直型で取り組んでいくというのが戦略になっています。

成長戦略:カンパニーハイライト

1つ目の「D」はプラットフォーム事業、残りの3つの「D」はデータ事業に区分しています。なぜ2つに区分しているのかと言いますと、成長の時間軸が違うからです。1個目の「D」、すなわち自由化に関しては、すでに制度改革が完了しているため、あとで数字もお見せしますが、今はもう「爆伸び」「イケイケドンドンひたすら伸ばせ」という状況です。30パーセント以上の成長が目標と言っていますが、30パーセントと言わず40パーセント、50パーセントでも売上を伸ばしていこうという状態です。

一方で残りのデータ事業、つまりデジタル化・脱炭素化・分散化はもう少し時間がかかります。本格的にエンジンがかかってくるのは、いろいろな制度改革が完了する2024年くらいのタイミングだと思っています。それまでも伸びますが、少し緩めの10パーセントから20パーセントの成長で、2024年頃からまた爆伸びしていければと思っています。

中長期的成長の考え方:カンパニーハイライト

当社は2015年に創業し、設立5年で上場しました。現在6年目で、第2フェーズというかたちで、売上拡大フェーズと位置付けています。これはどういうことかと言いますと、この期間にとりあえず売上100億円を目指します。

売上100億円までいかなければ小さすぎて、そのような吹けば飛ぶような売上では世の中を変えられないため、まずは売上100億円を目指したいと思っています。この段階では、利益はそこまで気にしません。もちろん会社が潰れては駄目ですが、財務が健全性を保てる限り積極的に再投資して、売上を早く100億円までもっていくことを最優先にしようと考えています。

そのため、この間は基本的に利益はそこまで出てこないとご理解ください。一方で、2027年を目安としていますが、売上高100億円に達したら利益を出します。どれくらい出るのかは後ほどいろいろとご説明しますが、ざっくり言いますと30パーセントは堅いと自信を持っています。

営業利益率30パーセント、要するに100億円売上が出れば30億円くらいの利益を出し、そこからはみなさまに配当していくという、そのような期待をもって見ていただければと思います。

当社のミッション:カンパニーハイライト

なぜENECHANGEを設立したのか、簡単にご紹介します。みなさまに思い出してもらいたいのですが、10年前に東日本大震災がありました。あの時に初めて、原発やエネルギー問題の重要性、闇の深さ、問題の大きさに気づいたと思います。私もあの時に初めて気づいた1人でした。

その後、イギリスのケンブリッジ大学に修士・博士でエネルギー工学を研究しに行きました。海外の先行するエネルギーの未来を研究者として勉強した上で、「学んだことを活かして日本のエネルギー問題を変えたい」「3.11で始まった大きな日本のエネルギー問題に、人生をかけて取り組んでいきたい」と思い、ENECHANGEをつくりました。そのため、私にとってエネルギー分野はまさにライフワークです。

当然、ENECHANGEの上場で終わりではなく、またスタートでもなく、脱炭素社会を日本において実現することが、私がこの会社を通じて取り組んでいきたいミッションです。まだまだ10年、20年、30年という時間軸で取り組んでいかなければいけない仕事だと思っています。そのような意味で、できれば長期的な目線で見ていただけると大変ありがたいです。

エグゼクティブ・サマリー

エグゼクティブ・サマリーというかたちで、どのような会社なのかあらためてご紹介します。まず私たちの市場ですが、日本の電力市場は世界最大のエネルギー自由化市場です。日本より大きい市場はアメリカと中国しかありませんが、アメリカと中国の電力自由化は完全ではありませんので、そのような意味では日本は世界最大です。

それに加えて、私たちはエネルギーテックという領域で、文字どおりオンリーワン、ナンバーワンのプレイヤーです。ビジネスモデルについては、ストック型収益を主体とするSaaS事業者であるのに加えて、大変高い売上成長率を実現しています。

スライド最後の競争力ですが、このプレゼンを聞いていただくと、「こんなことができるのは日本にはENECHANGEしかないのではないか」と言われます。実際そのとおりで、このようなことはENECHANGE以外にはできませんし、競合が出てくる気もまったくしません。なぜならそれくらいエネルギー業界は難易度が高く、こんなにもレベルが高いことをできているのは私たちだけだからです。それを今日を通じて少しずつご理解いただけたら嬉しいです。

サービス概要:プラットフォーム事業

事業は2つあり、1つ目は自由化に関するプラットフォーム事業です。簡単に言いますと電気・ガスの比較サイトで、みなさまが電気・ガスを選んで買うことができるサービスが「エネチェンジ」です。月間220万人に使われており、52社の電力・ガス会社と提携しています。圧倒的に日本ナンバーワン、オンリーワンのオンライン電気・ガス切替プラットフォームとご理解ください。

ビジネスモデル:プラットフォーム事業

ビジネスモデルはどのようになっているのか、ご説明します。ユーザーがENECHANGEに来て、電気・ガスを切り替えた場合、例えば、東京に住んでいる方が東京電力から〇〇電力に変えたとすると、まず電力会社からENECHANGEに一時報酬としてお金がもらえます。

この金額が最近どんどん上がっており、もともと2019年頃は平均3,000円くらいだったものが、2020年には5,000円くらい、約1.5倍になりました。それが実は最近、去年の第4四半期から今年の第1四半期にはさらに上がっていて、足元では1万円を超える水準になっています。

なぜこんなに上がっているのか、後ほど少しご紹介しますが、基本的には仕組みを変え、オークション形式にしたためです。「『エネチェンジ』上でより多くのお客さまを獲得したければ、一時報酬を高く出してもらうほど、広告枠ではないですが上に出しますよ」というかたちです。

正確には、お客さまにキャッシュバックを出すようにしました。一時報酬でもらったお金のうち、平均して70パーセントをキャッシュバックしており、例えば一時報酬で1万円いただいたら、お客さまに7,000円をキャッシュバックします。去年の10月くらいからですが、電力会社さまから、一時報酬を増やしてでも送客を増やしたいという要望をいただき、それによって一時報酬も競り上がっていきました。

一時報酬はお客さまへのキャッシュバック等として利用するため、その分コストも膨れ上がってしまうため、売上もコストもドンと上がることになりました。

それはそれですごいのですが、加えてストック型というかたちで、お客さまのご利用が継続する限りは無期限に、電気代の一定割合をもらい続けるモデルになっています。

無期限になったのは私たちが交渉した結果で、現在はほぼすべての電力会社が同様の条件となっており、これができているのはENECHANGEが唯一という立場になっています。

契約口数におけるシェア:プラットフォーム事業

時間がどんどんなくなってきたため、このあたりから軽く話しますが、では「ENECHANGE、どれくらい使われているの?」と言いますと、実際ぜんぜん使われていません。スライド右の線グラフにあるとおり、日本で電気を切り替えた人がENECHANGEを使っている比率は1パーセント程度、1パーセントから2パーセントの間にとどまっています。まだまだです。後ほどお見せするとおり、海外では軽く10パーセントを超え、20パーセントに届きます。逆に、今の10倍くらいは軽く成長余力があると見てください。

家庭向け・法人向け上位新電力:プラットフォーム事業

なぜENECHANGEがそれだけしか使われていないのかと言いますと、新電力の上位をよく見ると東京ガス、大阪ガス、KDDI、ソフトバンクというようなかたちで、基本的にはガス、携帯、光通信、住宅メーカー、石油会社、ガソリンスタンドがほとんどです。

彼らもENECHANGEのお客さまですので、オンラインではENECHANGEを使ってもらっていますが、切り替えのほとんどは携帯ショップなどで行われるため、オフライン・チャネルが大変強いことになっています。これは海外もだいたいそうなのですが、自然と徐々にオンラインに移ってくるため、もう少しの辛抱だと思っています。

パートナーチャネル:プラットフォーム事業

ENECHANGEはこのオンライン切替の業界で大変強い地位にあります。例えば「価格.com」は電気・ガス切り替えサービスを手がけていますが、実は、Powered by ENECHANGEというかたちで当社とのパートナー関係にあります。

パートナーとなっていたただいる会社は全国で300社以上あり、ENECHANGEというブランドを使わずに、他社と一緒に電気の切り替えを推進することもかなり強く進めています。

ユーザー獲得費用及びLTV/CACの推移:プラットフォーム事業

コストはどこに使っているのかと言いますと、22ページ左のグラフにあるとおり、販売促進費用や販売手数料です。先ほどご説明した、一時報酬の平均70パーセントをキャッシュバックとしてお客さまに払うのが販売促進費用です。同じく70パーセントくらいをパートナーにも払いますが、これが販売手数料です。

これらがユーザー獲得とともに大きく伸びていますが、一時報酬の範囲内での支払いですので、まったく問題ない状態です。私たちは本質的には継続報酬の収益が利益の源泉のため、あまり気にせず獲得を増やし、継続報酬の対象ユーザーを増やしています。これによってLTV/CACという投資の指標も、非常に健全な水準になっています。

イギリスの事例:プラットフォーム事業

イギリスの事例をご紹介します。私たちの日本でのシェアが1パーセントから2パーセントくらいと言いましたが、イギリスの最大手は27パーセントのシェア、2番手でも15パーセントのシェアです。彼ら上位を足した合計で年間300億円売り上げています。私たちは去年10億円で、30倍もの違いがあります。

しかもイギリスの人口は日本の半分ですから、電気の使用量も半分です。そのため日本には本来600億円の市場があり、しかもイギリスのように3社から4社で分割しているのではなく、ENECHANGEがほぼ1社で独占です。海外の機関投資家と話をしていると「なぜ売上が10億円なのか」とも言われます。

「がんばれ。売上100億円くらいすぐ届くだろう」と、ちょうど昨日も海外機関投資家から叱咤激励されました。イギリスの事情がよくわかっている海外の人からすると「当然プラットフォーム事業は、売上100億円くらいになるだろう」と見てもらっている状況です。

サービス概要:データ事業

データ事業は具体的に何をしているのか、簡単にご説明すると、電力会社向けのクラウドシステム、SaaSシステムを売っています。「EMAP」「SMAP」などのさまざまな電力会社向けのシステムを東電、東ガスなどの会社にご利用いただいています。

例えば、みなさまが東京ガスのテレビCMを見て「申し込んでみようかな」と思い、スマホで「東京ガス」と検索して申し込みページを開き、フムフムと見て申し込むとします。この中にも、申し込んだ方がいらっしゃるのではないでしょうか。あれは実は「EMAP」です。

東京ガスで電気を申し込もうと思った時に出てくるページ、およびその裏の顧客管理システムは、実は全部「EMAP」というかたちで私たちが提供しているものです。20社から30社くらいの電力会社については、実はこの「EMAP」のご利用企業です。

このように、みなさまには気付かれていないかもしれませんが、日本の電力業界を支える重要なシステムの多くはENECHANGEが手がけるもので、それをしかもクラウド、SaaSで行うことにおいては、私たちは唯一の会社です。

ビジネスモデル:データ事業

ビジネスモデルはどのようになっているのかと言いますと、基本的にはSansanさまなどと一緒のSaaS型ライセンスモデルです。基本料金は月額30万円くらいからですが、それに加えてお客さまがどれくらい使ってくれているかに合わせ、月額のライセンス料がどんどん上がってくるかたちになっています。

そのようなかたちで、どんどんストック型収益が積み上がっています。一方で非ストック型収益がたまにあるのですが、それはいわゆるカスタマイズやコンサルティングなどの依頼を受けたものになります。

タイムマシン経営:データ事業

ENECHANGEがどれほどすごいのかをお話しすると、この分野で競合しているのは、例えばSIerと言われる会社およびNTT系、もしくはアクセンチュアや富士通のような会社です。彼らと何が違うかと言いますと、ENECHANGEは世界を知っています。これが一番の強みです。

なぜかというと、エネルギー業界が「脱炭素へ変われ」と言われているのは日本だけではありません。むしろもともとヨーロッパから始まった動きで、ヨーロッパおよびアメリカの電力会社は日本の電力会社よりもずっと厳しく脱炭素を要求され、変わろうとしています。

それならば、なぜ日本の会社が日本人だけで一生懸命考えなければいけないのでしょうか。明らかに、海外を見たほうが成功事例や失敗事例がたくさんあります。ENECHANGEは圧倒的な海外ネットワークを使って、海外のデジタル化の状況や脱炭素の状況、分散化の状況を一生懸命勉強し、それを日本に持ち帰っています。

「東電さん、このようにしたほうがよいのではないですか」「東ガスさん、このようにしたほうがよいのではないですか」とアドバイスをするだけではありません。それではただのコンサルティング企業です。

「僕たち、実はもうシステムまでつくっていますから、ぜひ使ってください」「これを使って、このようなことをやっていかないと駄目ですから」というように、海外事例を含めたアドバイザリーに加えて、さらにクラウド・SaaSシステムの提供までできるのが、ENECHANGEの圧倒的な強みになっていると思っています。

業界特化型SaaSプロダクト:データ事業

先ほど「EMAP」「SMAP」という2つのプロダクトを紹介しましたが、実はさらに10個くらいのプロダクトの準備をしています。「プロダクトをそんなにたくさん展開しているのか?」「もうちょっと絞ったほうがよいのではないか?」と言われることもありますが、よく考えてください。

例えば、大変評価の高いfreeeは、会計ソフトの「freee」の印象がありますが、実際はワークフローや経費精算など、いろいろな事業を展開しています。それが全部お互いにシームレスで連携するため、私たちもfreeeのユーザーですが、「便利だから全部freeeのサービスを使おう」ということになっています。

まさにそのような感じで、電力会社に対しても、「EMAP」を使ってスマホで電気を申し込めるということしかしなければ、そこだけの会社にしかなりません。「僕たち、再エネも蓄電池の管理も、お客さまの分析も手伝います。さらに発電計画を立てるのも手伝います。僕たちに全部任せてください。この1個1個すべてが横でつながるので」というように、総合的なサービスを提供しないと、電力会社の中の深いところに入っていけません。

2021Q1実績①:データ事業

デジタル化に向けて、スマホで電気を申し込める「EMAP」とスマートメーターのデータ解析の「SMAP」、脱炭素化に向けて、再エネの証書を売る「GreenCart」を提供しています。

2021Q1実績②:データ事業

分散化に向けて、蓄電池を分析・運用する「KIWI」の提供を発表しており、さらに今年中に発表する予定ですが、電気自動車の充電インフラにも参入する予定です。このように、「エネルギー業界の新しい変革は全部ENECHANGEがやってやる」というくらいのつもりで取り組んでいます。

海外事例:データ事業

海外事例を簡単にご紹介します。海外の投資家と話をすると、「君たちのやっていることはOpowerね」と言われます。「Opower」というのは、実は海外では有名な会社で、2014年にニューヨーク証券取引所に上場して、一時期は時価総額1,000億円を超えていたような会社です。その後、オラクルが約585億円で買収しています。

最近はシリコンバレーで同じようなユニコーン企業が出てきています。時価総額1,000億円以上と言われているUplightという会社なども、同じような事業を展開しています。

電力会社にサービスを提供しているため、顧客数はせいぜい100社程度です。私たちは41社で、「少ないじゃないか」と思われるかもしれませんが、もう少しがんばればすぐに60社から70社くらいには増えていきますので、同じようなかたちです。

そして売上高を見てもらうと、お客さまが電力会社しかいないので、100万円や200万円の商売をしても仕方がありません。平均1億円くらいを、彼らは売り上げています。私たちも、今はお客さまを増やすことに注力していますが、今後はどんどんARPUを上げていって、いろいろなプロダクトを提供することで、1社から1億円くらいもらえるようにしていきます。

このデータ事業は「日本でも50億円から100億円くらいにはすぐいくよね」と、海外の投資家から叱咤激励を受けていますので、がんばっていきたいと思っています。

業績サマリー:2021年12月期 第1四半期連結業績

業績について簡単にご紹介します。第1四半期の売上高は前期比56パーセントと伸びました。伸びたということで、もともと赤字の予想だったのですが、黒字になってしまいました。なぜかと言いますと、先ほどお話ししたとおり、プラットフォーム事業が大幅に伸びたからです。

予想に対する進捗率:2021年12月期 第1四半期連結業績

これにより、通期予想を上方修正しました。期初の売上高想定は23億円だったのですが、先週26億円に修正しました。それに対しても進捗率25.3パーセントと、十分な数字になっています。

特に海外の投資家によく言われるのが、「ENECHANGEはポテンシャルがあるのに、なぜこんなに株価がパッとしないのだ?」ということです。 これを聞いていただいている日本のみなさまに、ぜひ、もう少し長い目で株価を見てもらいたいと思っています。業績は大変調子がよいため、いつか株価もついてくるとは思っていますが、業績にはかなり自信があるということをあらためてご紹介します。

数字のところは、説明は割愛します。おそらくどの数値を見ても「とてもいいじゃないか」と思ってもらえるのではないかと思っています。

主要KPI(プラットフォーム事業)の推移:2021年12月期 第1四半期連結業績

KPIについてだけ少し補足的に説明すると、プラットフォーム事業の売上のところですが、このスライドは「ユーザー数×ARPU」というかたちになっています。ユーザー数はかなり伸びていますが、ARPUは大幅増加しています。

この伸びは、先ほどお話ししたキャッシュバックの仕組みを導入したのが去年の第4四半期ですので、それを受けて伸びているものです。どこまで伸びるのかと言いますと、これは無限ではありません。キャッシュバックが、今は1万円から1万5,000円の水準になっていますが、2万円、3万円、4万円とはなっていかないと思っています。第2四半期以降も、同じ水準は維持すると思っているため、今の第1四半期のレベルくらいで、今後も推移していくと思っていただければと思います。

これだけキャッシュバックが増えていますので、一時報酬単価の上昇にともない、ARPUも上がっています。また、一時報酬からの手取りが増えた分、それを広告費に使っていけるようになります。ARPUが上がるとユーザー数が上がるというかたちで、今のユーザー数は前年同期比プラス40パーセントくらいですが、もっと加速してくるのではないかと個人的には見ています。

主要KPI(データ事業)の推移:2021年12月期 第1四半期連結業績

データ事業についても、顧客数はしっかり伸びています。「EMAP」「SMAP」という主力商品を中心に上場したこともあり、かなりしっかりと伸びていくようになっています。

補足的にご説明すると、「ARPUが下がっているのではないか?」とご心配されるかもしれませんが、あらためてよく見てもらうと、ストック型が伸びています。

先ほどお話ししたコンサルティングなどは、最近はできるだけ受けない方向にしているため、そのような非ストック型が減って、ARPUが下がっているようには見えますが、本質的にはARPUは横ばいから上がっている状況だと思っています。「39パーセントマイナスだ」とご心配いただく必要はありません。

きちんとならしてみたら少し下がっているかもしれませんが、ARPUが下がっているというよりは、顧客数がそれより伸びているため、単純に割り算すると少し減ることになるという程度で、経営的にはまったく問題ないとご理解いただければと思います。

ネットレベニューリテンション:2021年12月期 第1四半期連結業績

「今の顧客からどれだけストック型収益を上げていけるか」という指標ですが、結論として年間30パーセントくらい上げることができている状態になっていますので、まったく問題ない水準とご理解ください。

2021年度経営体制:2021年12月期業績予想

「ENECHANGEの強みってなんですか?」というと、これまでご説明したように、圧倒的に全部、いろいろなところで強いのですが、最終的には「人」だと思っています。

昭和シェル石油の元取締役会議長、レノバの元CFO、シーメンスの元日本法人社長、エプコのCFOと、海外の投資家からも「オールスター経営陣だね」「これだけエネルギー業界のオールスターがそろっているって、すばらしいね」と、ちょうど先日言われました。

なぜかと言いますと、エネルギー業界を改革していく上ではENECHANGEがナンバーワンのポジションにいることが、エネルギー業界ではある程度知られているからです。ENECHANGEの視点から見ても、常にエネルギーの未来をつくるような仕事ができている会社の方々ですから、「この会社だったら面白い」というかたちで引き受けてくださっています。当然ですが、私たちはこの方々ともとから友だちだったわけではまったくなく、上場の機会に多くの人からご推薦いただいて、ご一緒しているかたちになっています。

ENECHANGEは、エネルギー業界の中においては、すでに圧倒的なプレゼンスを持っていることを、このメンバーからもご理解いただけると思っています。ちょうど時間ですので、私からのプレゼンはいったんここで終わらせていただいて、質疑応答を受けたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

質疑応答:一時的に成長が減速する原因について

坂本慎太郎(以下、坂本):御社の成長は、かなり将来が楽しみだという話をいただいています。10ページに「2024年からの本格成長」とありますが、その前の2021年から2023年の「先行投資によるプロダクト強化」の期間に、ここまで成長が落ちるというのは、先行投資のためなのか、それとも設備や外部環境が整っていないからなのか、どちらでしょうか?

城口:2024年までは外部環境が整っていないため「やろうとしてもなにもできない」というのが、ざっくりとした状況だと思っています。わかりやすく電力自由化で例えると、電力自由化は2016年ですので、どれだけ準備をしても、2015年に売上は立ちません。2016年4月になってやっと売上が立つようになりました。

それと同じように「2022年の春からでないとなにもできない」というようなことが、2023年、2024年にもあり、その時点の制度改正を待たなければ、どれだけなにをしても絶対に売上は立ちません。エネルギー業界は規制業界のため、特にそのような面があります。

2016年の電力自由化を思い出してもらいたいのですが、2016年4月からしか売上が立たないからといって、そこから始めたのでは絶対に勝てません。私たちは2016年4月に合わせて2年前から準備して、1年前に会社をつくり、完璧な、麻雀で言うところの「リーチ」のような状態で2016年を迎えました。「よーいドン」になった瞬間に「ダンッ」と一気に勝ちにいくことができたからこそ、プラットフォーム事業で圧倒的な立場をつくれました。

データ事業も、2024年までにいろいろな制度が変わっていくのはもう決まっています。完璧な「リーチ」の状態にして、制度が変わった瞬間に「ダーン」と圧倒的ナンバーワンになれるように準備しているため、それまでは準備に対しての先行投資、すなわちプロダクト開発や体制強化に注力しているとご理解いただければと思います。

質疑応答:2027年前後の環境について

坂本:2027年に売上高100億円を目指し、その先は利益の創出が加速度的に増えていくということですが、この背景について教えてください。「2024年くらいまでに外部環境が整う」ということですが、これを受けて2027年前後の環境はどのように変化し、どのような業界になっているとお考えでしょうか?

また、この頃にはおそらくデータ事業の成長も、今に比べるとかなり進んでいると思いますので、ここも併せて教えていただけたらと思います。

城口:2027年は6年後ですから、まあまあ中期の未来ですが、エネルギー業界はすべて「2050年の脱炭素化」というかなり長い時間軸で進んでいるため、他の業界よりもかなり中期的な先が見通せるようになっています。「2027年の売上高100億円」を目指していきますが、プラットフォーム事業で60億円から70億円くらい、データ事業で30億円から40億円くらいの規模だと考えています。

2027年はどのような未来になっているかと言いますと、プラットフォーム事業を考えても、電気の自由化が間違いなく今より浸透していると思います。自由化から10年を超えているため、イギリスのようにネットで電気を切り替えるのが当然になっていると思います。そうした状況において、プラットフォーム事業が売上高60億円から70億円という規模になっているという想定は、普通に取り組んでいけば問題ないと思っています。

データ事業も、スマートメーターの第1世代は全部2023年に終わるため、今度は第2世代となります。第1世代が終わると、さらに賢い第2世代のスマートメーターが出てきて、2027年にはもうすでに設置が始まっているでしょう。蓄電池を活用していこうということにもなっていますし、再エネなどもどんどん増えていると思いますので、「みんながグリーンな電気を買う」という未来になっていると思います。

2027年になれば電気自動車もかなり走っているため、私たちのデータ事業が、そのような新しい日本のエネルギーインフラを支える役割を果たしているのではないかと考えています。

質疑応答:JEPX価格の高騰と新電力間での切り替え需要について

坂本:プラットフォーム事業は、JEPXの価格が高騰したことにより、電力の切り替え需要があったと思いますし、一時報酬の単価もおそらく助長したと思うのですが、今後この基調は続くのでしょうか? 

潜在ニーズは継続的にあって伸びていくとは思うのですが、普通の電力会社から新電力への切り替えの方が需要がありそうですので、新電力から新電力への切り替えの需要もあるのか、あるとしたら新電力の顧客に対してどのようにアプローチしていくのか教えてください。

城口:まず、JEPXの価格の高騰は、ENECHANGEには原則としてあまり影響はありません。なぜなら、私たちは電気を売っても買ってもいないからです。他の上場企業、例えばグリムスやホープのような小売を手がけているベンチャー企業などは直接影響を受けます。

そのような企業は、安い時はその分儲かるし、高い時は赤字になるということで、ダイレクトに影響を受けますが、私たちは基本的には先ほどご説明したとおり、それについては一切影響を受けませんので、原則関係ないと思ってください。

むしろ「今年の夏も電気が足りないかも」「冬になると足りないかも」というように電気のニュースが話題になると、みなさまは「そういえば俺の電気は大丈夫かな?」と思うため、電気の切り替えが増えます。そのため、基本的に「電気のニュースを目にする」と思ったら、私たちにとってはプラスの要素のほうが大きいと思っていただければと思います。

これによってホープなども資金調達されたり、「いろいろな会社が潰れるのではないか?」「新電力がどんどん撤退したら、電力の競争がなくなって、ENECHANGEはいらなくなるのではないか?」と投資家からよく問い合わせをいただきました。そんなことは絶対にないです。

例えばですが、本当に潰れまくって日本に3社しか電力会社がない、今の携帯会社のような状況になったら、ENECHANGEはもう世の中に不要となるかもしれません。ただし、日本の電力業界が3社になるということは絶対にないです。

そもそも10社電力会社があって、さらに東電、東ガス、大ガス、東邦ガスという大手のガス会社が参入し、さらにENEOS、出光という会社も参入し、さらには住友商事、丸紅に次いで三井物産、三菱商事等の大手商社も電気に参入してきていて、これだけの大手の人たちがみんな電気に入ってきているのに、みんな撤退して3社になることなんて絶対にありません。

そのため、基本的にはどれほど減っても30社から50社くらいでしょう。今でも会社はいろいろありますが、そもそも上位100社で99パーセントのシェアを占めています。日本で電力事業を展開しているのは実質100社だと思っていますが、仮にこれが50社になっても十分です。

イギリスは実質的に最大で30社しかありませんが、あれだけ比較サイトが儲かるように、めちゃくちゃ競争が激しいです。日本は十分な数があるという状況だと思っています。

新電力から新電力への切り替えについては、24ページに掲載していますが、すごく行われています。今一番多いのは、東ガスやKDDI、ソフトバンクからの再切り替えです。なぜかと言いますと、おそらく今その辺を使っている人もオーディエンスにいらっしゃるかと思いますが、冷静に見てもらったら、これは本当にしっかり調べたのですが、東ガス、KDDI、ソフトバンクに電気を変えたとしても、「セット割」まで全部含めて年間3,000円くらいしか安くなっていないです。

一方で、「エネチェンジ」で見てもらうと、2万円から3万円安くなります。その上、ソフトバンクについても「エネチェンジ」ではキャッシュバックを出しているため、ソフトバンクのショップで変えるよりも、「エネチェンジ」で変えてもらったほうがよほど安いです。

「エネチェンジ」で変えたほうが、店舗などで唆されて、「ついでに変えておきますか」となるよりも絶対によいですし、1回変えたとしても、1年経てば変えられます。究極的には1年経たなくても、違約金は1,000円から2,000円くらいですので、「エネチェンジ」で1万円や2万円のキャッシュバックをもらったほうが安いです。

このようなかたちで、切り替えがどんどん増えてきていますので、そのような意味では、新電力からの切り替えは今後もまだまだ増えてくると思っています。

質疑応答:M&Aについて

高井:M&Aなどは現状考えていらっしゃいますか? お話しできる範囲で教えてください。

城口:まったく考えていません。M&Aは行わないと思います。なぜかと言いますと、日本ではENECHANGEが圧倒的なポジションで、言い方はあれですが「買うに値する会社はない」くらいに本当に思っています。

エネルギー業界は本当に参入障壁がかなり高くて、簡単にはベンチャーは入ってこられません。私たちはエネルギーテックの唯一の上場企業ですが、未上場のベンチャーまで見据えても、M&Aでプラスになるような会社はないと思っています。当然、上場企業においても、私たちと類似の会社はありません。上場、未上場含めて、私たちが現在の事業において直接的にシナジーがあるようなM&A先は、ポテンシャル競合というところも含めて、ないと思っています。

一方で海外には、私たちが学ぶに値する会社はたくさんあります。しかし、例えば今回、KIWIというイギリスの会社と提携しましたが、ではこのKIWIを買うかというと、私たちは彼らのヨーロッパでのオペレーションには興味ありません。

私たちは日本という世界最大のエネルギー業界の市場を、徹底的に独占することしか考えていません。むしろKIWIなどを買って、いきなりイギリスやフランスなどが範囲に入ってくることのほうが、逆にわけがわからなくなってしまうと思っています。彼らと組んで日本の独占だけ取れれば、僕らは十分です。

基本的には海外の会社と、適時必要なところを日本国内独占というかたちで組んで、事業を展開していこうと考えています。そのような意味で、「何十億円のM&Aをします」というような戦略はあまり考えていないとご理解いただければと思います。

質疑応答:電力会社の自動切り替えサービスについて

坂本:会場からの質問です。海外の企業で、年会費の数千円を払えば、自動的に最も安い電力会社に数ヶ月単位で切り替えるサービスがありますが、そのような新サービスは検討しているのか教えてください。御社の継続報酬が料金の2パーセントである現在と比較しても、数字的には悪くないサービスだと思いますし、既存のパートナーの基盤も活かせる方法だと思いますが、いかがでしょうか?

城口:海外の事情に大変お詳しい方からの質問だと思います。「さすがだな」と思いました。25ページのグラフにイギリスのUSwitch、MONEYSUPERMARKET、GoCoという会社を載せていますが、これらすべてで今おっしゃっていただいたようなサービスを提供しています。

基本的には2つ、つまり比較サイトというモデルと、お客さまからフィーを頂戴して最適な電力会社に変えていくというサービスの、両方を提供しています。電力会社からお金をもらうパターンと、お客さまからお金をもらうパターンの両方があります。当然、ENECHANGEもお客さまからお金をもらうパターンのサービスを準備しています。

なぜ今はないのかと言いますと、制度改正を待っています。来年の春に、電力データの自由化、FinTechと同じようなAPI開放が予定されています。お客さまにそのようなサービスを直接提供できるようになるため、改正を待って、参入していきたいと思っています。

先ほどの話とも重なりますが、変なベンチャーにその領域を取られるくらいなら、当然ですが、ENECHANGEが全部取ります。海外ではそのようなベンチャーが出てきているのですが、ENECHANGEはそこも含めて全部取りにいくつもりで準備していますので、来年のどこかで出てくるくらいのイメージを持っていただければ幸いです。ご清聴ありがとうございました。