2017年3月期決算説明会
坂本修一氏:本日はお忙しい中、旭化成の決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。
まず2016年度決算および17年度の業績予想について、今回の特徴を3点ご説明します。
1点目は2016年度実績ですが、直近で公表した2月の予想と比較し、石油化学事業で交易条件が想定よりもよくなりました。
エレクトロニクス事業が順調に推移したことで、売上高から当期純利益までの各項目で上振れする結果となり、当期純利益は過去最高でした。
2点目は2016年度実績を踏まえ、期末配当を一株当たり4円増配の14円。年間配当を24円としました。
今後も事業の成長をとおし、継続的にキャッシュを創出し、成長投資と株主還元のバランスを見ながら安定配当かつ継続的な増配を目指していきたいと考えています。
3点目は2017年度の計画についてです。2017年度は3年間の中計の中間年として、目標達成のために重要な1年であると認識しています。
各領域をとおし、これまでの投資の成果を活かしたさらなる業績拡大を折り込み、加えて新規事業の展開に向け、布石を打っていく年と位置付けています。
為替変動や原料価格同行、あるいは地政学的リスクなど不透明な部分もありますが、中計で掲げた目標達成に向け、成長戦略を着実に実行していきたいと思います。
それでは資料に沿い、2016年度決算につきましてご説明します。
主要決算数値(1)
売上高は1兆8,830億円で前期比589億円の減収。営業利益は1,592億円で60億円の減益でした。
各事業での拡販やコストダウンを進めましたが、円高の影響、退職給付費用の増加、2016年8月末に買収したポリポアの連結化の影響、薬価改定の影響などが減益の主な要因です。
次に経常利益は1,606億円でほぼ前期並みでした。一方で、親会社株主に帰属する当期純利益は1,150億円で、25.3パーセントの増益、年間の当期純利益としては過去最高となりました。
特別損益の改善や税金費用の減少が主な要因です。連結貸借対照表の概況はご覧のとおりです。総資産、自己資本は当期純利益の計上や投資有価証券の時価評価の影響で増加しています。
有利子負債残高は借入金の返済などにより減少し、D/Eレシオは対前期末0.08ポイント下がり、0.35となりました。
主要決算数値(2)
16年度年間の配当金は、前期比4円増配の24円とさせていただきました。結果、配当性向は29.1パーセントです。ROEは過去最高の当期純利益を計上したことで、約2ポイント上昇し、10.5パーセントでした。
連結損益計算書
連結損益計算書です。売上高は1兆8,830億円で前期比3パーセントの減収でした。売上総利益は5,867億円で売上高比率は31.2パーセントと前期比で1ポイント改善しています。
主にケミカル事業を中心に原燃料価格の下落により、売上原価率が改善したことによるものです。販管費は4,275億円で前期比65億円増加しています。退職給付費用や広告宣伝費の増加が主な要因です。
結果、営業利益は1,592億円、売上高営業利益率は8.5パーセントでした。
営業外損益は持分法投資損益や為替差損益が改善し、前期比で52億円改善しています。持分法投資損益に関してはタイのPTT旭ケミカルの損益が改善しています。
2015年度は厳しい事業環境にありましたが、当期はAN・MMA市況がともに順調に推移しました。特別損益は前期比で117億円改善し、その結果税前利益が1,574億円でした。
2016年4月に事業持株会社制にしたことに伴い、繰り延べ税金資産の回収可能性を第1四半期に見直したことで、法人税等が減少しています。
法人税等を控除した親会社株主に帰属する当期純利益が1,150億円と、前期比で25.3パーセントの増益でした。
金融収支・有利子負債残高
金融収支・有利子負債残高です。金融収支は大きな増減はありません。有利子負債残高は2016年3月末と比較すると、短期借入金が2,001億円減少している一方で、長期借入金が980億円増加しています。
借入金のリファイナンスを行ったことで、長期短期のバランスが変わっています。また短期借入金などの返済を行ったことにより、有利子負債全体で前期末と比較して468億円減少しています。
特別損益
特別損益です。特別利益は101億円で前期比9億円の益となりました。2015年度より政策保有株式の見直しを継続して進めており、一部株主の売却を行っています。
特別損失は133億円で前期比108億円の改善となりました。2015年度は医薬事業で共同販売契約終了に伴う損失を計上したことなど、特別損失を多く計上しました。
2016年度は目立った特別損失の計上はなかったため、大幅な改善でした。以上の要因などで、結果として特別損益が170億円改善しています。
連結貸借対照表
連結貸借対照表です。2016年3月末と2017年3月末を比較すると、総資産が428億円増加しました。
負債は、流動負債と固定負債で大きな増減があります。ポリポア買収に伴い、借り入れた借入金のリファイナンスを第1四半期に行ったことによるものです。
また借入金の返済を行ったことなどにより、負債は679億円減少しました。純資産は1,107億円増加しました。主な要因は当期純利益の計上などにより、利益剰余金が875億円増加したことです。
連結キャッシュ・フロー計算書、設備投資額、減価償却費、研究開発費
連結キャッシュ・フロー計算書ですが、2015年度はポリポア買収に伴い、投資活動や財務活動によるキャッシュ・フローに大きな動きがありました。
2016年度の投資活動によるキャッシュ・フローはポリポア買収のようなM&Aはなく、例年並みの数字で、フリーキャッシュ・フローは790億円の収入でした。
財務活動によるキャッシュ・フローは短期借入金の減少などで、740億円の支出となっています。結果として、現金および現金同等物の期末残高は1,441億円です。
次に設備投資額、減価償却費、研究開発費はご覧のとおりです。
セグメント別売上高・営業利益
2016年度より新たに3セグメントで決算報告をしていますが、年間比較ではマテリアルセグメントで減収増益。住宅セグメントおよびヘルスケアセグメントは減収減益でした。
事業別売上高・営業利益増減要因(1)
2015年度との比較で、事業別の業績をご説明します。繊維事業は減収減益となりました。
キュプラ繊維ベンベルグや、人工皮革ラムース、ナイロン66繊維レオナの販売数量が増加しましたが、競合により販売価格が下落し、各製品において円高の影響を受けました。
ケミカル事業は減収増益でした。このうち石油化学事業は減収増益となりました。
国内石油化学事業の基盤強化に伴い、スチレンモノマーの販売数量が減少しましたが、アクリロニトリルにおいて、交易条件が改善しました。
2016年度年間のANの市況とスプレッドの実績は、それぞれトンあたりAN1,238ドル。プロピレン826ドル。スプレッドは412ドルでした。
高機能ポリマー事業は増収減益でした。低燃費タイヤ向け合成ゴムやエンジニアリング樹脂の販売数量が増加しましたが、各製品において円高の影響を受けました。
高機能マテリアルズ事業および消費財事業は減収増益となりました。イオン交換膜などで、円高の影響を受けたものの、サランラップなどの消費材製品や電子材料製品の販売が順調に推移しました。
エレクトロニクス事業は増収減益でした。このうちセパレータ事業は増収減益でした。
各製品の販売数量が増加し、2015年度第2四半期より連結したポリポアの業績を取り込みましたが、買収に伴うのれん償却費等を計上し、円高の影響も受けました。
電子部品事業は増収増益でした。円高の影響を受けましたが、オーディオデバイスなどのスマートフォン向け電子部品の販売数量が増加しました。
住宅事業は減収減益でした。建築請負部門は2015年度の受注実績の影響を受け、戸建て住宅ヘーベルハウスや集合住宅へーベルメゾンの引渡棟数が8,442棟から、8,339棟に減少し、広告宣伝費等の販管費が増加しました。
なお、建築請負受注は2016年度上期は、広告宣伝活動を控えた影響が残りましたが、広告宣伝活動本格再開後は、下期を中心に回復し、年間では2015年度並みでした。
また住宅周辺事業はリフォーム部門で労務費の販管費などが増加しましたが、不動産部門で賃貸管理事業が順調に推移しました。
建材事業は減収減益でした。フェノールフォーム断熱ネオマフォームの販売が順調に推移したものの、ALC事業や基礎事業で販売数量が減少しました。
事業別売上高・営業利益増減要因(2)
医薬医療事業は減収減益でした。
医薬事業は骨粗鬆症治療剤テリボンや血液凝固阻止剤リコモジュリンなどの販売数量が増加しましたが、薬価改定の影響を受けるとともに、排尿障害改善剤フリバスが後発医薬品の影響を受けました。
医療事業はウイルス球除去フィルター「プラノバ」の販売数量が増加しましたが、国内の透析関連製品において、償還価格改定の影響を受け、また海外展開している事業全般で円高の影響を受けました。
クリティカルケア事業は前期と比較して、円高が進行したことで円換算後の業績ではなかなか実態が見えにくいため、ドルベースで業績について説明します。
クリティカルケア概況
最後にクリティカルケア概況です。グラフで円ベースの売上高をご覧いただきますと、財務諸表の円換算において、円高に伴う影響を受けて、売上高が43億円の減収となっております。
下の参考の業績推移をご覧いただくと、2015年度売上高1,169ミリオンドルに対し、今年度は1,256ミリオンドルとなり、引き続き順調な成長を示しています。
着用型自動除細動器「LifeVest」の業績が引き続き順調に拡大し、その他の除細動機の販売も堅調に推移しています。
営業利益は営業活動強化に伴う販管費は引き続き増加し、円高の影響もありましたが、ドルベース、円ベースともに増益でした。のれん等償還後の連結営業利益は148億円となり、引き続き拡大しています。
事業別売上高・営業利益(海外売上高)
全体の海外売上高比率は2015年度並みでしたが、海外売上高の増減をご覧いただくと、3.4パーセントの減収でした。
円高の影響やケミカル事業で石油化学事業の基盤強化に伴い、シチレンモノマーの販売数量が減少したことなどが主な要因で海外売上高が減少しています。
当期の業績予想
続いて、2017年度の業績予想をご説明します。売上高は1兆9,900億円で前期比1,070億円の増収。営業利益は1,650億円。経常利益は1,700億円とそれぞれ増益を見込み、当期純利益は1,150億円で前年並みとなる予想です。
今回の予想の前提としては、ナフサ価格を年間キロリッターあたり4万1,000円。為替レートは年間USドル110円としています。また2017年度の一株当たり年間配当金は24円を予定しています。
セグメント別売上高・営業利益予想
セグメント別で2016年度と比較すると、マテリアル、住宅、ヘルスケア、各セグメントともに、増収増益の計画となっています。
事業別営業利益予想
事業ごとの年間の計画について、営業利益を中心にご説明します。
まず繊維事業は生産設備を増設したオムツ向けスパンボンド不織布やナイロン66繊維レオナを中心に販売数量の増加を見込み、8億円の増加の計画としました。
ケミカル事業は19億円の減益の計画です。石油化学事業は減益の計画となっています。
アクリロニトリルは、2016年度は他社トラブルによる市況上昇で利益を伸ばしましたが、2017年度は春のANメーカーの定期修理が一巡したあとに、市況が落ち着くとみています。
なおAN・プロピレンの市況前提は、それぞれトンあたりAN1,310ドル。プロピレン910ドル。スプレッド400ドルで想定しております。
また2017年度上期は岡山県水島地区において、エチレンセンターの定期修理があることなどで、減益を見込んでいます。
高機能ポリマー事業は、低燃費タイヤ向け合成ゴムの需要が堅調に推移しており、シンガポール工場の第一系列、第二系列ともに足元でフル稼働の状況で、2017年度は販売数量の増加を見込んでいます。
また合成ゴム、機能樹脂ともに、交易条件の改善を見込んでおり、前期比で増益の計画としました。高機能マテリアルズ事業。及び消費材事業は、電子材料製品を中心に販売数量を増やす見込みで、増益を計画しています。
エレクトロニクス事業は25億円増益の計画です。セパレータ事業は各製品で数量増を見込んでいます。電子部品事業はスマートフォン向け電子部品の販売が堅調に推移する計画です。
住宅事業は5億円増益の計画としました。建築請負事業では引渡棟数が増加しますが、労務費やシステム費用などの固定費の増加もあり、前期比で小幅な増益となっています。
不動産部門やリフォーム部門は前年並みの業績を見込んでいます。建材事業はフェノールフォーム断熱ネオマフォームを中心に販売数量の増加を計画していますが、原材料費などの上昇を見込んでおり、前年並みの計画としました。
医薬医療事業は9億円の増加を計画しています。医薬事業は骨粗鬆症治療剤のテリボンやリクラストの販売数量増加を見込みますが、研究開発費も増加することから、前年並みとなる見込みです。
医療事業はプラノバを中心に販売が堅調に推移することを見込み、増益を計画しています。
クリティカルケア事業は引き続き営業活動強化に伴う販管費が増加しますが、「LifeVest」を中心に着実に業績が拡大することを見込み、27億円増益の計画です。
以上で私の説明を終了させていただきます。ありがとうございました。