2017年3月期決算総括と2018年以降の展望
司会者:この時間はスパークス・グループの2017年3月期決算の総括、そして2018年以降の展望について代表取締役社長でCEOの阿部とともにお伝えしていきます。どうぞよろしくお願いいたします。では阿部社長、まず2017年3月期の総括からお願いします。
阿部修平氏(以下、阿部):よろしくお願いします。スパークス・グループの阿部修平です。2017年3月期、まずは期初目標としていたグループの預かり資産残高(AUM)2,000億の増加が達成できなかったということについて、株主のみなさんにお詫びを申し上げたいと思います。
さらに、AUM全体が平均運用資産残高(平残)で2016年3月期比でマイナスで終わってしまったことについては、私どもも非常に残念であると同時に、期待していただいた多くの株主のみなさんの期待を裏切り、まずもって、お詫びをすることから私の話としたいと思います。
AUMというのは私たちの将来を示唆する最も重要な指標ですが、AUMになかなか見えてこない、中身。本当の地力が、ついてきてるということを私は、はっきりと確信しています。
AUMがどんどん増えていくという姿こそが、本来、株主のみなさんに見ていただかなければいけないことですが、その達成ができない中でも、私たちの力は確実に強くなっており、収益力は確実に高まっていることを、今日、みなさんにご説明申し上げればと思っています。
司会者:AUMは減ったが、営業利益では若干の増益となったところにポイントがあるということですね。
阿部:そのとおりです。本来AUMが減ることは、一般企業で言うと、売上高が減って利益が減ることになります。
それがスパークスの場合は、より収益性が高い、非常に安定性のある日本でのAUMが増える一方、韓国等の収益性があまり高くないAUMが減ったことで、AUM全体の収益力が大きく改善しました。
司会者:韓国のAUMは平残では4割近く減って、アジア全域部門では約3割減っています。しかし手数料率の高い日本では、平残が増えたことで、全体の利益率が上昇しました。
阿部:ここでぜひ見ていただきたいのは、日本のAUMが2017年3月末時点で8,000億円を超えてきていることです。
これは2016年3月期末との比較で10パーセントの上昇です。平残で言うと、13.3パーセントの増加です。これが全体のAUMが減っていく中で収益力が改善したことの最も大きな理由です。
スパークスは、日本のアセットの収益力が韓国やその他地域の収益力を大きく上回っています。今期から私は、韓国の収益力を日本並みに引き上げて成長力を加速させたいと思っています。
ただ、成長のエンジンは、引き続き日本の資産を増やし、日本の投資家のために役立つことです。日本はじめ全ての地域で本当に役立つ投資会社になりたいです。
連結決算 四半期ごとの利益の推移
司会者:では、次のスライドです。四半期ごとの利益推移を見ますと、全四半期において、前年同期比でプラスになりました。
阿部:四半期ごとに見ても、収益力が確実に改善しているというのは、このグラフで見ていただけるとおりです。
収益をとにかく上げるということと並行して、企業で言えば売上高であるAUMを大きくし株主のみなさんに、スパークスの将来に確信を持っていただきたいです。
成長実現のための4本柱 2017年3月末AUMの内訳
司会者:それでは続いて、2018年3月期以降のビジネス展望をご説明いたします。まずは主要の4事業の事業ポートフォリオをご覧いただきます。
阿部:私たちは事業をこの4つの柱で定義しています。
1つは、日本の株式投資。この分野のお客様は、海外、国内にもいらっしゃいます。投資信託、年金、金融機関、基金、国家ファンド等形態はさまざまです。AUMの内訳は、海外65パーセント国内35パーセントとなっており、海外からの資金が多いです。
そこがスパークスの強みであり、ユニークさです。日本株の中では、いくつか戦略別にファンドが分かれています。
同じようなモデルを今、2本目の柱のアジアに移管しようとしています。これは今始まったことではなくて、センター・オブ・エイジアン・インテリジェンス(Center of Asian Intelligence)つまり、スパークスがアジアの投資インテリジェンスの中核をなす会社になるという構想の元、2005年から企業買収などを通じ実践してきました。
昨年度、この施策をさらに加速し内外のインテリジェンスの一体化が進みました。東京の運用調査本部のメンバーと韓国、香港のメンバーが一緒にアジアを調査し、グローバルな視点で投資機会を見つけ世界中のお客さまに提案していきます。
日本にも、アジアに投資したい投資家が必ずいるはずです。日本の投資会社の中で、最もアジアのことがわかっていると言われる会社になりたいです。
この領域は、今後3年から5年を展望すると日本以上に成長のポテンシャルがあると思っています。
3本目の柱は実物資産です。この事業は、もともと東日本大震災で福島の原発事故が起こったときに、金融業界に携わる者として、何かしなければいけないと思ったことがきっかけで始めました。
私どもは小さな会社ですが、気持ちだけでも、何かしなければいけないと思って、復興のために、現地で働く人たち向けのホテルを作りました。
部屋数でいうと、1200室以上のホテルを宮城県内の3ヶ所に作りました。それは今でも、高い稼働率を維持しながら運用されています。
当然、その時に投資をしていただいた投資家のみなさんにはリターンを還元しながら、復興にささやかであるけども、金融業者としてできることをさせていただきました。
それが始まりで、そのあとに、再生可能エネルギー発電所に投資するファンドを始めました。これも、福島の原発事故を見たのがきっかけです。
最初に東京都の官民連携インフラファンド運用事業者に選ばれたことが、非常に幸運でしたが、現在約1,400億円弱のファンドで、全国20数ヶ所の、主には太陽光発電所ですが、太陽光に限らず、風力、地熱、バイオマスといったあらゆる再生可能エネルギー発電所に投資をしています。原発一基分の新しいクリーンなエネルギーを作りたいという志のもと、事業を進めています。
それから不動産にも投資を始めました。これは中東の国家ファンドの資金を活用し投資を始めました。
当時、日本の丸の内、つまり、日本を代表する企業が入っている商業ビルの利回りが、10パーセントに近い状況でした。歴史的に考えて異常な水準にありました。
このように私がお話ししていくと、スパークスは時流に乗っているだけではないかと言われそうですが、そうではなく、投資として意味がある、価値があることを考えていったときに、こういうかたちになっていったということです。
不動産についても、少しずつ足場を固めながら進めておりまして、ここまで始めた中でスパークスらしいおもしろい試みでは、医療用ビルへの投資を始めています。
これから医療施設、病院にも積極的に投資したいです。日本の高齢化を踏まえ、世界の高齢化、さらに言えばアジアの高齢者のために、何かできることをやっていきたいという気持ちで、この投資については、さらに進めていきたいです。
4本目の柱は、未来創生投資事業です。世の中は今、テクノロジーの大転換時代です。人工知能、各種センサーをつなぐIoT。それから、センサーですね。これらは私たちの生活の中で起こっているいろいろなことを一つひとつ情報として吸い上げる仕組みです。
私はこのセンサーネットワークで、日本が誇る最大のネットワークは自動車だと思っています。自動車こそが、次世代のロボットになると。
そうだとすると、そのロボットを最も多く信頼を伴って世界に供給しているのは、日本の自動車会社。もう1歩踏み込めば、トヨタ自動車です。
ということで、数年前、「ぜひトヨタ自動車と一緒に日本の次世代産業に資するような投資ファンドをつくりたい」というお話をトヨタ自動車と三井住友銀行にしたら、賛同していただきました。
これは本当にありがたい話なのですが、2015年の11月に未来創生ファンドをスタートし、4月末時点で、AUMは365億円まできています。
現在、日本、米シリコンバレー、それから英国やイスラエルといった地域に本社をもつ企業、30社弱に投資しており、グローバルに投資するファンドになりました。
この事業は2018年以降、スパークスの大きな柱に成長していくと思っていますし、日本全体の成長を支える柱にもなると思ってます。
改めて、冒頭申し上げましたAUMが未達で、投資家のみなさんには本当に期待を裏切って申し訳ないです。
ただ、地力は本当についてきています。未来を本当に期待していただく中身がどんどんどんどん強くなっています。そう申し上げても、負け越している大関みたいなもので、なかなか横綱にはなれないことも自覚しています。
とにかく日本を代表する運用会社の横綱になれるよう、引き続き株主のみなさんと一緒に頑張っていきたいと思います。
日本株式投資戦略 運用資産残高の状況
司会者:では、事業別に見ていきます。日本株式投資戦略です。
日本株式長期厳選投資戦略や、日本株式環境・クリーンテック投資戦略のように、残高が伸びているものもあれば、ロング・ショート投資戦略のように大きく残高が減ってるものもあります。この日本株の戦を、お願いします。
阿部:スパークスはさまざまな世界を代表する評価機関から、毎年毎年、定量的・定性的に高い評価をいただいています。
過去4年間、毎年、日本株式部門で最優秀の投資会社であると言ってくださっているところもあります。
特定のファンドに限らず、スパークスの日本株式運用調査部門が、日本で最優良だということを、1年でなく何年も言っていただいてるということで、ミシュランの三ツ星を連続でいただいてる会社だと自負しています。
外部の世界的な評価会社が言ってくださっているのですが、それが投資家に訴求できない、マーケティングが弱いと言われても仕方がない状況です。そこで、あらゆる投資戦略で「いい投資」をすることを、まず一義的に考えることが、益々大事だと思っています。
スパークスが最もエッジを効かせられる領域。例えばロング・ショートです。ロング・ショートは、いわゆるヘッジ運用ですが、スパークスが日本では、最初に始めた会社と言っても過言ではありません。
ただ、現状では、競争力、運用規模で、後発の運用会社に遅れをとっています。この20年にわたるヘッジ運用の私どもの実績を、何とか世界の投資家にもう一度評価していただけるようにしなければいけないというのが、日本株でいうと、私が取り組んでる今一番大きなテーマです。
これは私自身が運用の現場への関わりを再び深めていくことだと思っています。スパークスも、全体で約1兆円、日本株で言うと約8,000億円を運用する会社になりました。
となると、どうしても機関投資家的なメンタリティが運用者の中に出てきてしまいます。できるだけ損失を出さないことが投資の目的になってしまうんです。
それが機関投資家のメンタリティであると、ひと言でいえるのですが、もう一度、儲ける投資をするためのファイティング・スピリットを醸成することが大事です。
そこで、ロング・ショート運用の最初に始めたファンドについては、今、私が直接陣頭指揮をとって運用しています。少しずつ成果が出てきています。スパークスの運用者たちは、日本のどこに出してもトップクラスです。
私たちはそういうトップの運用者がレイヤーになっている会社です。1人だけすぐれた人がいるのではなくて、何人もそういうプロが育っています。そういうプロと一緒に、もう一度、儲ける。投資のリターンを出していくスピリットを醸成することに取り組んでおります。
それから、この中で言うと、環境・クリーンテック投資や株主責任投資で、スチュワードシップに関連した投資も進めています。
プレスリリース
司会者:スチュワードシップに関連して、今期に入り、帝国繊維株式会社に資本効率の改善を要請しました。この理由をお願いいたします。
阿部:スパークスは、3年ほど前に、スチュワードシップファンドによる投資を再開しました。2003年にアメリカのカルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)と一緒にバリュー・クリエーション・ファンドというファンドを始めました。
これは日本の株主として、企業と一緒に企業価値を上げていくという、あまりこの言葉を使いたくないのですが、いわゆるリレーショナル、もしくはアクティビスト投資と色分けされている投資領域です。
つまり株主が株主として、企業と一緒に価値を高めていくという、当然株主がやることをやるということです。その投資をカルパースと一緒に始めたのが始まりです。
ただ、日本の株式市場が非常に低迷したので、カルパースは資金を引き揚げ、スパークスは、この投資を取りやめました。
しかし、過去3年間で日本の状況は大きく変わりました。きっかけはアベノミクスです。コーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コードを重要視することが、政策のテーマとなりました。
この政策がテーマになったことは、それまでなかったものすごく大きな出来事です。スチュワードシップは、これから申し上げる企業の取組みに注目します。
企業が一生懸命に、よりよい業績・価値を上げていくということに取り組む。そのために、使用する資本の効率的な運用を考える。それから、ステークホルダーを意識しながら売上を配分していきます。
まずお客さん、それから、取引先です。それから従業員、お金を借りる金融機関。さらには、税金を払う、国、地方という公共的なファンクションにも、一部のステークホールディングパワーがあります。それを全部まとめて最後の残余価値を受け取るのが株主です。
ですから、株主というのはステークホルダーへの配慮が1つでも欠けると、長期的に維持できる価値を生むことを担保できないんです。どこかだけを大きく節約して、一時的な利益を出すことを株主は望んでないし、そうあるべきではありません。
長く成長し続けるかたちをどう作るかというのが、コーポレートガバナンスが言っていることであり、コーポレートガバナンスを実際に株主として、その実行を促すというのがスチュワードシップ、スチュワードというのは財産管理人という意味です。
つまり、私たちの役割は多くの投資家から委託を受けた資金を、その保全人として、会社の経営者にちゃんと私たちのこともしっかり視野に入れた長期的に反映できる形を作ってくださいと申し上げることです。
日本の場合、これまでほとんど誰も、声に出していうことをしてこなかった。ただ、これも丁寧にコミュニケーションしないと、誤解を受けて逆にマイナスに働いてしまうことがあることもよく理解しています。
企業は、そこで生まれてくる文化や歴史を背景に成り立つものです。それぞれの企業が成り立っている、もしくは成り立ってきた事情をしっかりと理解しながら、でも、誰が考えてもおかしいことについては変えていただくことを伝えなければなりません。
そういう意味でこの帝国繊維は、日本の企業の多くに共通する、株主を十分に考えてこなかったレガシーが、色濃く残っているケースです。
帝国繊維の経営者はこれまで立派な業績を上げてこられているんですが、その業績の果実が、株主に十分に還元されてないということを問題視しています。
私たちは、マイノリティーシェアホルダーで5パーセントしか株は持っていません。ただ、私たちが言っていることは誰が考えても、合理的なことです。会社の経営陣のみなさんもそう思っておられると思っています。
なぜかというと、3年間帝国繊維とスパークスはお話を続けて、みなさん私たちが、今回、提案していることについては、「それは問題だと思っております」と認識されていることを確認した上で、今回の提案をさせていただいているので、経営陣自身もそう思っている。
ですから、「思っていることについてはぜひ変えていきましょうよ」ということを世の中に訴えかけました。多くのみなさんに共感していただきたい。時間がかかっても必ずやり遂げたいと思っています。
急いではいません。時間をかけて意識の転換を促すということだから。でもこれは誰かがやらなきゃいけない。なぜかというと私たちは、声なき多くの投資家、高齢者が将来を託している年金の資金であったり、子供の将来の進学のために蓄えてきた資金を受託して運用しているからです。
一人ひとりは何も言わないけれど、日本全体で考えると、そういう人たちが報われる社会にすることこそが株式会社が果たす役割です。
そこに何とか私たちも1歩踏み込んでいきたいということです。こういった表立った活動は、スパークスらしくないといえば、らしくないです。
騒ぎを起こすことが私たちの目的ではありません。でも、当たり前のことを言って当たり前に理解していただく投資、株式投資の環境を作りたいということで、今回、要請をさせていただきました。
OneAsia 投資戦略(1)
司会者:続いてOneの投資戦略について見ていきます。SPARX TVで、日本、韓国、香港の社員の交流を頻繁にしていることやアジアでの調査活動について、ご紹介してきておりますが、この時間では、それがようやく形になってアジア版の新・国際優良アジア株ファンド(愛称:アジア厳選投資)ができるという話をまず聞かせてください。
阿部:アジアの投資を日本の投資家にお届けすることがこれまでどこの会社にもできてないとスパークスは考えています。
日本の会社がアジアの投資を投資信託として商品化する場合、多くは、アジアにある運用会社に日本で委託した資金を再委託するというのが基本的なパターンです。私はそれでは、本当に投資家には伝わらないと思うんです。
やはり投資というのは現場でやってる人の声を直接届けるということなんです。ですから、スパークスの日本での投資のやり方とまったく同じ方法をアジアで実践します。つまり1社1社訪ねて歩いて経営者の声を聞くということです。
それをこの1年間準備し、私自身が陣頭指揮をとって、私どもの運用調査のメンバー、それは東京も韓国も香港も入って戦略を決めて、アジアのどこに投資の機会、リターンの源泉があるのかを見極めた上で、1社1社会社を訪ねポートフォリオを作って、5月末に実際、日本の公募投資信託として、投資を始める運びになりました。
これは最初から巨大なファンドができることにはならないかもしれませんが、投資信託として、1年間準備をして、やってきたことが結実したという意味では、私としては、非常に大きな1歩です。
冒頭申し上げた内容。私たちの底力がついてきていることを1つ私が実感している大きなアチーブメントです。
司会者:その他韓国では、ロング・ショートファンドが設定されたりもしているわけですが、スパークスが日本で経験してきたことを考えれば、アジアをこれから調査するときに、圧倒的アドバンテージがあると、スパークスでは考えています。なぜでしょうか。
阿部:私たちの流儀はバリュー投資家、バリューインベスターと言われている投資家です。流派はバリューインベスティングです。
バリューインベスティングは、「将来のことはわからない」というのがベースです。わかることをベースにしてやろう、ただ将来のことをしっかり見据えてやっていくところに一番大きなリターンの源泉があります。
なぜかというと、そこの価値の裁定の領域が、最もダイナミックだからです。ピータードラッカーは、こう言ってるんです。「将来の予測をしても無駄だ」と。ピータードラッカーもバリューインベスターと同じことを言っています。
ただ、ピータードラッカーはさらに、「すでに起こってしまった将来を探すことが本当の価値だ」と言っています。まさにそれがスパークスが実践してきたことです。
つまり、私たちはすでに起こってしまった未来が本当の未来にどういう影響を与えるのかを考えてきた会社です。それを考えると、アジアには日本ですでに起こってしまった未来がたくさんあります。それを投資というかたちに落とし込んでいきたいと考えます。
韓国はまさに、日本が経験したことをこれから本当にリアルタイムにライブで、経験する国だと思っています。
OneAsia投資戦略(2)
司会者:おもしろいグラフを見つけてきたのでご紹介しておきましょうか。これは韓国の公的機関が発表している今後の年金資金の流出入予測ということなのですが、ここからだんだん純流入が増えていくということですね。
阿部:これは年金規模の過去約20年間の推移をまとめ、将来については予測しているグラフです。2000年の初頭、韓国の年金は、ほとんど意味がない規模でした。
グラフの左側ですね。それが、アジア経済危機以降、大きく成長して、ここからさらに成長していきます。それも加速度的にです。
というのは高齢化するからです。日本が経験したこととまったく同じことです。この日本が経験したことと同じこと。つまり日本ですでに起こってしまったことが、韓国で、これから起こるんですよ。タイムマシンのように起こる。
ところが、韓国の年金を運用する機関投資家の多くは、韓国の株、それもインデックス的な運用しかこれまでしてきませんでした。
スパークスのように、アジア全体に投資をするという経験がないし、さらに言えばオルタナティブ運用してきた経験もないです。非常におもしろいと思いますね。
今回の大統領選で、新しい大統領が選ばれた。これは、日本で今言われているガバナンス改革の一種です。コーポレートガバナンスの問題が政府におよんだ。
韓国企業のガバナンスは、アメリカで言うと1930年代から50年代つまりファミリーがコントロールして、株主というステークホルダーにほとんど想いを及ぼすことがない。
私たちが今、日本でやっている投資の20年くらい前のバージョンです。すでに起こってしまった未来が韓国にあります。ですから私は、韓国の株式運用にスパークスの日本と韓国が一緒に取り組むことで、ものすごく大きなリターンの価値があると思っています。
韓国では株主のみなさんのご期待に沿えない状況が続いてきましたが、ここから大きく飛躍の土台を作っていけるんじゃないかと思っています。
実物資産投資戦略(2017年3月末AUM 1,694億円)
司会者:では続きまして、実物資産の投資戦略です。こちらは大分すでにご説明させていただきましたので、今期の話をします。今期は、着々と新しい発電所の運転が始まるのが一つのポイントで、太陽光だけでなくて木質バイオマスなども今期は運転を予定しているということになりますね。
阿部:ここで1つ申し上げるとしたら、これまで1,400億円弱の資産が投資をされていて、稼動資産が増えてきたグリーンフィールド、つまり開発型投資から、ブラウンフィールド、つまりもう稼動している資産への投資にファンドを今、移行させようと思っています。
私たちがグリーンフィールド投資で作ってきた資産を私募の投信ではあるんですが、ブラウンフィールドのファンドにアセットを移していきます。ブラウンフィールドの投資で、直接資金を調達し、全国各地にある稼動資産を買っていくことを、目指します。
まずファンドを組成してブラウンフィールドファンドができるところまでは確実にいくし、これまで企業がバランスシートの中で、グリーンフィールドに投資をしてきて、稼働し始めた発電施設については、流動化したいというニーズが今すごくあるんですね。そういうニーズにもこたえながら、さらに大きくしていきたいと。
投資家には安定的なリターンを届けられると思っています。再生可能エネルギー発電所投資もおもしろい局面に入っていきます。
私はこの投資を始めたとき、日本で最大の再生可能エネルギー発電所のオーナーになりたいと考えましたが、この2、3年で、その道がはっきりと拓けてくると思います。
なかなかスパークスの株主のみなさんに実物資産投資を評価していただけないんですが、発電所のロケーション、場所がどんどん増えていくことが新しい価値を産んでいくということです。
そういう価値をみなさんに見ていただけるように、さらに大きくしていきます。とりあえずの目標は原発一基分の発電容量を持つファンドをつくっていきたいと思っています。
不動産投資戦略(2017年3月末AUM331億円)
司会者:では続いて、不動産を見ておきます。資料でご紹介いたしますのはオフィスビルのニューシティー多摩センタービルなんですが、その話でなく、冒頭阿部から申し上げた医療分野でスパークスが飛びぬけていけるのではないかという可能性の話を、ご紹介します。
阿部:医療は日本が高齢化先進国として、やれる、やっていかなければいけない最も大きな領域です。投資会社として何ができるか。
時代にどういう役割を果たすかという、志、想いが大事だと思います。そういうことを思いながら、医療関係の投資を戦略的に、実践していく形をぜひ見せていきたい。
投資のディベロッピングパイオニアとして新しい投資の考え方を常に紹介してきた会社として、この分野でも、私たちの高い専門性、先進性を、株主のみなさんにもわかっていただきたいです。
なかなか結果が出せてないところに私自身のフラストレーションは当然あるんですが、みなさんにぜひわかっていただけるように、この領域でも新しいものを作っていきたいと思っています。
未来創生事業
司会者:そして続いては未来創生事業です。
阿部:人類の発展には、新しい道具の開発が不可欠でした。ですから、ここで投資をしていることは特別なことではありません。私はよく申し上げるんですが、今世界が漂流し始めた。これは昨年から申し上げています。
新しい秩序、形を求めて今世界が動き始めている。日本も同じような状況にある。日本は言ってみれば、応仁の乱が終わって戦国時代に入って、各地の守護大名が力をつけてきてその中で、今川や、武田という大企業が力を失って、新興企業であった織田信長が一気に出てくる。
織田信長というのは、非常にリスクテイクをしながらアグレッシブであっただけではなく、種子島についた新しい道具、鉄砲を使うという戦い方で勝利をおさめました。
私はこのAI(人工知能)は、これから日本が本当に飛躍するための新しい道具だと思うんです。あらゆる産業が変わる。これは新しい産業ができるというだけではありません。
今ある産業が変わる、これはファーストリテイリングの柳井社長が言っていますよね。「Every Business is a Digital Business」すべてはデジタルの商売に変換していくんだと。
冒頭申し上げましたが、私ども本当に、未来創生ファンドを設立できたことが、幸いなことだと思っています。
こんなラッキーなことは、なかなか起こらないなと。ただトヨタ自動車と三井住友銀行と一緒に未来創生ファンドというファンドを始めることができた。
自動車という領域が当面は、AI、IoTのアプリケーションの最大領域なんですね。世界で最も信頼・尊敬されている、それから、最も多くの車両を売っている日本の会社とこの領域に投資できる会社になったことを、ぜひ、次の飛躍に生かしたいです。
これは申し上げたように新しい道具ですから、あらゆる人たちの生活を変えていきます。今投資をしている会社の中から世界を代表する会社が沢山出てくるとスパークスは考えています。
上場ということで申し上げますと、2018年から2019年くらいが始まりで、出てくると思います。もう少し卵を温めて、ひなが生まれてくると。時間がかかるかもしれないですが、一生懸命私どもの知見を育てながら強くしながら、この領域で圧倒的な投資会社になりたいです。
私どもの規模でこの領域に投資をしている会社はまだないと思っています。圧倒的な会社になっていきたいと思います。
株主還元
司会者:ここからは株主還元についてお伝えします。
阿部:これはもうバフェットが言っているとおりです。それから私どもが普段、いろんな投資をさせていただいてる企業さんが言っているとおりです。
今、使うことが、十分に決まってないキャッシュフローであれば、それは基本的に株主に還元するということです。
私どもは現金の比率が高いのですが、次の大きなステップに必ず使っていく私どもの重要なリソースになると思っています。ただ金庫にお金を貯めて数えて、ニヤニヤしているわけじゃないんです。
現金があることについては、株主のみなさまに、ぜひご信頼いただきたいです。これを使って、次の大きな飛躍に備えていきたい。一方、株主還元についてもしっかりやっていきたいと思っています。
自社株買いを含めて、株主さまに還元をさせていただいたんですが、ここから利益が伸びていく過程においては、最低でもこういう率で株主に還元ができる会社でありたいというのが私の思いです。
時間、タイミングによってはこれよりも多くなるでしょうし、もしかしたら、多少少なくなる。ただ、このぐらいの規模で株主に還元していく会社でありたいと思います。
スパークス・グループの中長期の展望
司会者:最後に、2019年7月の創業30周年を前にした、中長期の展望について阿部からお伝えいたします。
阿部:今申し上げた4領域のAUMで、2兆円を目指すということです。なかなか達成できないので、私がこういうと説得力がないということは、わかった上で言わせていただくのですが、まずはここを達成する。全力を挙げて達成する。
できていない領域、マーケティング上十分に戦略的なアプローチができてなかったなと反省することがいっぱいありますので、それを1つずつやっていく。
こんなに投資をしている会社が成長できないのはおかしいと思います。これはもうだれを責めるのでもなく、私自身の戦略をもう一度しっかり立て直して、私自身が先頭に立ってやることだと思っています。
AUMを2兆円にすると、市場の変動にかかわらず、市場はそんなによくなくても、だいたい営業利益で80億円くらい儲かる会社になります。
そこから次の10兆円の大きな構想に向かって動き出したいと思います。ですから30周年に向けて、AUM2兆円をなんとしてもやり遂げるかたちを作りたい。達成していきたいと思っています。
司会者:以上、この時間はスパークス・グループの決算総括、そして今期以降の展望について社長でCEOの阿部とともにお伝えいたしました。どうもありがとうございました。