売上高30%増、営業利益20%増

孫正義氏:ソフトバンクの孫でございます。それでは早速、決算発表に移らせていただきます。

ソフトバンク創業して30年経ちましたが、今までは日本のソフトバンクが海外の会社に投資を行う立場でしたが、これからは第2のソフトバンクとして、世界のソフトバンクが日本に事業展開しているといった立場になりたいと思っています。

そういう意味で今年は大事なトランジションとなる年でございます。

連結の業績ですが売上高は順調でございます、30%伸びました。

償却前の営業利益は20%増。こちらも順調に伸びております。

会計上の営業利益は9%の減でございました。

しかし、この棒グラフで見ていただいても分かる通り、一昨年はガンホー、ウィルコムの子会社化に伴う一次益が含まれております。その当時からこれはあくまでも一次益だというふうにご説明しておりました。

一次益の部分を外して、いわゆる定常としてあがっている営業利益の増益が19%でございました。したがって、こちらも順調に業績を伸ばしております。

配当は従来通り変更はなしです。

現在のソフトバンクは2つの領域の事業を行っています。1つは通信の分野、もうひとつはインターネットの事業であります。

このインターネットの部分に関しましては100%自らがオペレーションを行うというよりは、関連会社の戦略として、我々が筆頭株主として30数%の株式を保有し形成それぞれの事業のマネージをする、あるいは戦略的なグループを形成するというオペレーションでやってまいりました。

ボーダフォンを買収して9年で営業利益は9倍に

まず通信のところですが、ボーダフォンを買収して9年が経ちました。この9年間で9倍の営業利益になりました。

この事業を買収するときには、すでに携帯電話は十分に普及している、なぜ今更買収するのだとの質問が多く寄せられましたが、私から見ればモバイルインターネットの始まりの始まりであると答えました。だから、成熟した携帯電話の会社ではなく、モバイルインターネットの会社をやるということで申し上げましたが、当時は受け入れられませんでした。ですが、今はその事業が9倍であります。順調にこちらも伸びております。それもスマホがモバイルインターネットの中心となってこの業績を実現しました。

また、周辺のプロダクト、こちらも急激に伸びております。5年で7倍となっています。

モバイルのネットワーク網といえば、ソフトバンクはつながらないことの代名詞として挙げられてきましたが、しかしこの1年半の間に急激にソフトバンクのネットは改善しました。もはや日本で毎日一番コンスタントにつながるというネットワークができたわけであります。

これは科学的に分析して、統計で出した数値でありますので、どんな調査よりもそのネットワークの状態を表しています。ソフトバンクが最近ではソフトバンクのiPhoneだからつながらないという声をみなさんも聞かなくなったのではないでしょうか?

混んでいる山手線でも、混んでいる都心でもつながると。また通信速度も全国で調査を行って、我々が他社をスピード面でも上回るといったことが毎日確認できる状況になっています。

これもほんの1年半前は信じがたいということだったわけですけれども、いまや疑う余地のないところまでネットワークは改善しております。我々の国内の通信事業は十分にその事業を継続して運営できる体制がととのったと認識しております。そこで、国内の事業はここにおります、経営のパートナーの宮内が国内の通信事業のトップとしてこれを運営していくという体制になります。

日本の事業は新ソフトバンクとして成長戦略と経営の効率化、この両輪をしっかりバランスよくやっていくということになったわけであります。

Sprintも改善の道筋が見えてきた

おかげさまで設備投資は一巡しました。国内の営業キャッシュフローはコンスタントに増大しているということになります。今までは設備投資を年間ピークで7000億円もしていると。

我々の通信の中の一番コアな製品でありますネットワークそのものが、他社に負けていたのでは話しにならないということで、ピークでは7000億も投資し、ネットワークナンバーワンというものを構築したわけですけれども、おかげさまでそれが実現できた思っておりますので、これからは設備投資は本来のレベルのところにまで下げられる、つまり3千数百億円規模のところにまで落ち着きを取り戻せるとうことになります。

したがって、償却前の営業利益から設備投資を差し引いたフリーキャッシュフローの面で、十分に経営が行なっていける。フリーキャッシュフローとして今ソフトバンクが抱えている借入金の返却等に回せる目処が立ったというわけであります。

後は我々にとって残っている大きな課題は、米国の通信企業であるSprintです。Sprintはみなさんご存知の通り、最初の思惑は、Sprintと競争相手であるT-モバイルを願わくば合併させて、米国での3強の構えをつくるという戦略的に想定したいたわけですけど、諸般の事情でそれが難しいということになっておりますので、あくまでもSprint単体で当面は経営するとなっているわけです。

そういう状況の中でマルセロを新しい筆頭の経営陣として迎え入れて、去年の半ばから経営の立て直しを図っているわけですが、おかげさまで純減、純減が続いていたユーザー数に対し、連続して純増と。最近はそれがコンスタントにいけるというところにだいぶ自信が深まってきたところです。

ネットワークもボロボロの繋がり状況だったんですけども、だいぶ改善しまして、おかげで解約率、おそらくSprint史上最悪の解約率の状況になっていたのが急激に改善し始めたといことであります。

つまりネットワークの品質面においても、大きく遅れをとっていたネットワークの品質が、いま急激に改善しつつあるということです。

したがってSprintの経営においては、特にこの1ヶ月半、私自身、毎日夜中の2時くらいまで、Sprintの次世代のネットワークの設計のところに深く私自身関わって行っておるところですけれども、だいぶ次世代の通信のネットワークについて、設計の自信が出てきたところです。実施するのはこれからですけども、Sprintはこの先改善の道筋が見えてきたというところで、自信を深めたところであります。

前回の決算発表では評価損をたてなきゃいけないとか、実質的には評価を立ててたつもりであるとかいうことをだいぶ言いましたけども、当日風邪を引いていて具合が悪いということで、だいぶ咳をしながら発表しましたけれど、おかげさまで風邪もすっかり治して自信を取り戻しているというところです。やっぱり健康第一ですね。

Sprintについては明るい兆しが見えてきたと、私は思っております。

ソフトバンクは第2のステージへ

さて、ここからがソフトバンク、今後のソフトバンク、第2のソフトバンクのステージにおける部分ですけども、インターネットの分野であります。この10年間、私自身、そしてソフトバンクの経営陣は、通信のインフラというところにほとんどの精力を使いました。

私自身の頭の使い方、時間の使い方の90数%は通信のインフラを構築するというところに集中しました。

インターネットの投資だとか、インターネットの戦略的グループ形成というのに使った時間と精力というのは、ほんの数パーセント、おそらく2、3パーセントというところです。趣味のように続けていたということですが、ここからはその通信のインフラを始める前の、インターネットに集中的な投資を行う、グループを構築していたという状況にもう一度戻し、本格的に世界のソフトバンクになる、インターネットのソフトバンクになるという展開を、もう一度加速したいというふうに思います。

その我々のインターネット戦略の中枢を担う会社がアリババであります。

アリババは去年NY市場に上場しましたので、みなさんすでにアリババの名前とその事業の内容はだいぶ認識が深まったと思いますが、昨年、ついに米国のウォルマートの取り扱い金額を上回り、また世界のウォルマートの取り扱い金額に匹敵するところにまでなっていると。今年の3月の状況でですね。

もうこのグラフを見ていただければ、時間の問題でクロスオーバーすると想像がつくと思います。

世界のeコマース企業の中で最大企業がアリババということになったわけであります。いろんな意味で最大ですが、特に純利益の面で、単に取り扱い金額が大きい、取り扱い率が大きいということではなく、純利益で6700億円を稼ぐところにまでなったわけです。これがアリババであります。

ゲームを制するものがスマホコンテンツを制する

ちょうど先日も香港でアリババの取締役会に私参加してきましたけども、次の10年のアリババについて、さまざまな意見交換をしてきたわけでありますが、非常に明るい未来がアリババにはある、と。

この規模で、なおかつ相当な伸び率を示しているのは驚異的なことだと思いますが、この10年間さらにアリババは伸び続けるさまざまな要素があると自信を深めたということであります。

したがってこのアリババを中心にですね、アジア展開、いろいろと楽しみな要素があると思います。

日本におけるヤフー・ジャパンも、これまで順調に成長しておりますが、さらにこれを加速させるための戦略を、今いろいろと練り合わせているところであります。こちらも非常に面白い将来の楽しみがあると考えております。

また、この1年半の間に、我々はスマートフォンの最大のデジタルコンテンツ、デジタルエンターテイメントはスマホのゲームであると私は申しました。ゲームを制するものがスマホのデジタルコンテンツの最大ポジションを制するということを申しましたけども実際に我々のグループでありますSupercellとガンホーが、全世界のゲームの1位と2位を毎月コンスタントにとっている状況が続いております。

驚異的なことですし、大変喜ばしいことだと思っています。

出来すぎの感もありますけれども、私としては1年半前このことをどれほどの人が想像できたか。というと、ほとんどの人はこういう風になると思ってなかったと。

実際に利益も出しておりますし、強いポジションを持っているということであります。

インドでのEコマースについて

また、インドでのEコマース。急激に伸びております。1年間で前年対比300%ということで、Snapdealが継続して伸び続けている。

こちらの会社には私と今ここにいるニケシュ・アローラ、一緒に投資の判断をし、公表し、その後のマネジメントもサポートしているわけですけども、やってよかったなと心から思っております。

また、同じようにインドにおけるUberみたいな会社ですね。Uberはご存知のように米国を中心に、今はまだ未公開企業ですけども、数兆円の上の方、1兆、2兆じゃなくてもっとはるかに大きな金額でまだ未上場の会社ですけども。

株式が投資されているという急成長中の会社ですが、それと同じビジネスモデル。しかしインドで我々が投資したときには60%のマーケットシェアだったものが80%まで伸びている。順調に急成長しているということであります。

また、インドネシアのトコペディアも、急激に伸びていると。さらに、Uberと同じモデルのGrabTaxi。こちらはインド以外のアジアで様々に展開しておりますが、これも1年間で22倍。伸び続けているということであります。

これらは我々が多く投資を行い、マネージしている我々インターネットの戦略的企業集団の一部を紹介したわけですけども、他にもたくさんこのような会社があります。非常にに喜ばしい成長を続けているという状況であります。

企業の成長が止まる30年ライフサイクル問題

我々には通信のインフラとインターネット、この二つの領域があるということですが、このテクノロジー企業。特にIT企業の問題点。問題点がないわけではありません。

共通の問題点というものをつくづく感じるわけです。

私がこの30数年間の間に見てた、業務提携してきた相手。友人の会社、そういうような会社がこの業界にいっぱいあるわけですけども、共通の問題点があります。それは、30年ライフサイクルという問題であると。

このIT業界の中で、だいたい成長率のカーブだと思ってください。成長率がですね、30年経つともうほとんど成長しなくなる。

名前を上げると相手に失礼にあたりますから、名前をあげませんけれども、皆さんが想像つくこのIT業界の大成功した会社、いくつもありますけれども、この30年の間にですね、世界を制すると思われたIT業界のトップブランドの会社が続々とピークを過ぎ、その成長が止まってきていると。

実質的な成長が止まっているというのを皆さん、思い当たるというふうに思います。これは共通のライフサイクル問題。というのがあるわけです。

なぜ30年のライフサイクル問題があるかというと、3つ問題点があります。

テクノロジーが古くなる、創業者が年を取る、ビジネスモデルが古くなる。この3つの問題点であります。

3つともキーファクターの3つの問題が30年経つと陳腐かすると。古くなる。という問題があるわけでございます。嘆いているだけではいけません。

大企業になりさがるのは最大の屈辱

では、解決策は何か? 我々ソフトバンクは30年経っても次の30年でも決して大企業になりさがりたくはないということであります。

大企業になりさがるということは、私にとっては最大の屈辱である。最大の失敗であるというふうに思うわけです。

ソフトバンクは30年経った今もベンチャラスでありたいし、輝いていたいし、伸び続けていたい。

そのための解決策は何か? というと、我々自身が革新的な起業家集団であるということになります。我々自身がですね、大企業の、サラリーマン経営の会社になりさがりたくない。

我々自身が、元気でエネルギーに満ち溢れ、野心的で、冒険的な起業家集団でありたい。ということであります。

先ほどインターネットのソフトバンクのグループ戦略を申し上げましたけども、これらは皆、ソフトバンクがほとんどのケースにおいて筆頭株主ですね。30%から40%くらいの株式を持ち、だいたい創業者の彼らがですね、10%前後の株式を持ち、ベンチャーキャピタルが5%から10%の投資をしていると。

ソフトバンクは30%から40%の株を持ってりゃいいわけですね。つまり筆頭株主なんです。

筆頭株主として、創業者の彼らと、野心的な起業家とパートナーとして一緒に経営を拡大していくと。一緒にビジネスモデルを革新させていく。お互いにシナジーを出し合う。

我々はベンチャーキャピタルと違って、たとえば7年間で投資した株式を回収して売却しなきゃいけない。あるいは、配当しなきゃいけない。という鎖に縛られてないわけですね。

また、我々は銀行と違ってお金を貸すと。固定された金利を得るという立場でもない。

我々は同じ野心あふれる起業家として、彼らと同じスピリッツを持ち、同じ空気を吸い、同じ息をして、同じカルチャーで、同じ目線でビジネスモデルを改革し、彼らとともに挑戦していくと。

そういうソフトバンクというのは、野心的な起業家集団そのものであるというふうに思っているわけです。

ITを革新し続ける起業家集団としてのソフトバンク

日本の多くのインターネット企業がですね、世界に展開するというのはなかなか難しい。

それは、自分が作ったビジネスモデルを他の国で、他の文化の国で言葉も違う、文化も違う、社員の顔ぶれも違うという中でですね、なかなか日本で作ったビジネスモデルを展開しにくい。

私の考え方は日本で作った独自のものを世界に持っていくというのではなくて、世界の起業家の仲間と共に成長させていく、挑戦していく。

それが私の言う、大企業になりさがらないための解決策だというふうにとらえています。

おそらくこういう形態はですね、世界でもひじょうに珍しい。我々がはじめてそういうモデルを実現させている企業集団ではないかと思っております。

ここを、これから第二のソフトバンク、世界のソフトバンク、ITを革新し続ける起業家集団としてのソフトバンクを推進し、拡大し、発展させていきたい。

それを行う上で、私はひじょうに喜ばしいことに素晴らしいパートナーにめぐり合いました。ニケシュであります。

今日ここに彼が同席しておりますけれども、5年前に知り合い、この9ヶ月近く一緒に仕事をしておりますけども、確信を得ました。

私より10歳若いわけですけども、ソフトバンク創業以来ですね、私が社長をし、CEOという立場で来ました。ニケシュに日本語でいうタイトルとして、代表取締役副社長になってもらいたいと思います。

ソフトバンクは社名も変えます。今までの「ソフトバンク株式会社」英語のタイトルでいうと「Softbank Corporation」。これをですね、「ソフトバンクグループ株式会社」「Softbank Group Corporation」、ソフトバンクグループに変わります。

ソフトバンクグループが全体の持株会社として、上場会社として、これまでどおり経営していくわけですけども、このソフトバンクグループの代表取締役副社長にニケシュになってもらいます。私は社長を継続します。

英文のタイトルでいうと、今まで私はソフトバンクのPresident & CEOというかたちで経営をしてまいりました。President & CEOが私のタイトルであります。創業以来、ずっとそのようなかたちをとってきたわけですけども、初めて、英文でいうタイトルのPresidentをニケシュに譲ります。私はChairman & CEOとして、英文のタイトルでのかたちになります。

創業以来初めて、まあ上場以来ですね、上場以来初めて、Presidentというタイトルをニケシュに譲り、彼がCOOとして。私がCEO & Chairman、彼がCOO & Presidentという立場で、一緒にソフトバンクの第2のステージに挑戦するというかたちになります。

私はこのソフトバンクをこれからさらに持続的に成長させる、そういうビジネスモデルの創出をやっていく、と。野心的な起業家集団と共にですね、みなさんご存知のようにニケシュは世界で最大のインターネット企業であるGoogleでナンバー2として実質的にGoogleの経営を取り仕切ってまいりました。

ですから、世界中にインターネット企業のほとんどのビジネスモデル、ほとんどのテクノロジー、ほとんどの主要なインターネット企業のCEOとの交流、あるいは深い関係を持っておりましたけれども、その知見と人脈と経験を元に、ソフトバンクを世界のソフトバンクにするための、次のステージを担う、私は重要な経営のパートナーを得たと、確信を得たというわけであります。

これから、さらに大きく伸ばしていきたいと思いますので、ぜひご支援を賜りたいと思います。ありがとうございました。