第47期決算説明
平野正則氏:みなさま、こんにちは。平和不動産リート投資法人を運営している平和不動産アセットマネジメント代表取締役 社長執行役員の平野です。みなさまには日頃より多大なるご支援をいただいており、まずはこの場をお借りして御礼申し上げます。
6月には公募増資に取り組み、多くのみなさまにご応募いただきました。重ねて御礼申し上げます。今回の公募増資により、成長資産の取得と含み益の実現を通じて投資主還元を進めることができました。ここからは、賃料増額改定による内部成長をさらに推し進めるステージです。
I 内部成長の新たな目標を設定
本決算期における賃料収入の年間成長率は、目標としていた2パーセントを上回り、2.3パーセントとなりました。これにより、金利上昇を賃上げ効果で相殺することができました。内部成長を分配金成長のエンジンとするため、賃料収入の年間成長率の目標を5パーセントと設定しました。「NEXT VISION Ⅱ+」の残り3年半の期間での達成を目指して取り組んでいきます。
私たちは目標の達成に向け、次の3つの施策を実行します。1つ目は、全テナントへの賃料増額改定依頼です。オフィスとレジデンスともに、更新期を迎えるテナントのうち特殊な事情を除き、すべてのテナントに対して賃料増額改定の申し入れを行います。
2つ目は、バリューアップ対象物件の拡大です。オフィスのセットアップオフィスやレジデンスのバリューアップ住戸の対象を拡大していきます。3つ目は、成長資産の取得です。賃料ギャップがある、もしくはバリューアップ効果の高い成長資産の取得をさらに進めていきます。
私たちは、金利上昇とインフレへの対応、もしくは低迷する投資口価格への対策として、3つの強化策を打ち出してきました。資産回転型戦略の強化と投資主還元の強化は、即効性の高い施策として効果を発揮しています。これからは、内部成長の強化が賃貸EPUの成長およびDPUの成長を牽引していきます。
オフィスについては、東京と大阪の賃貸市況が極めてタイトに推移しており、新規供給も限定的です。レジデンスでは、ファミリータイプとDINKsタイプに続き、主力とするシングルタイプの賃料上昇にも火がついています。内部成長を強く推進する環境が整ったと判断しています。
I 投資主価値の最大化に向けた取組み
私たちは資本効率を高め、投資主価値を最大化する施策として、投資主還元の強化、内部成長の強化、資産回転型戦略の強化という3つの強化を進めています。この3つの施策については、スライドにそれぞれの連続性をお示ししました。
賃料上昇が期待される物件への厳選投資と、賃料ギャップの解消により、またバリューアップ投資を通じて賃料ギャップを創出することで、内部成長に取り組んでいきます。さらに、バリューアッド手法を活用した資産回転型戦略により、含み益を実現益へと転換していきます。
これらが投資主還元につながっていきます。賃料収入成長率は年率2.3パーセントから、今回5パーセントの成長目標に改めました。バリューアップ投資に対する平均ROIは13.1パーセント、内部留保は57億円、含み益総額は655億円、含み益率は27.1パーセントです。また、16期連続の譲渡益計上実績があり、これらが19期連続増配を実現させました。
I 平和不動産リート投資法人の成長の軌跡
本決算期および来期以降の分配金についてです。2025年5月までの本決算期(第47期)の分配金は、前期より210円増額し、3,850円としました。
半年間における期当たりの分配金成長率は5.8パーセントとなりました。また、現在進行中の第48期の業績予想を100円増額し3,950円に、第49期をさらに40円増額し3,990円としました。公募増資は到達点ではなく、内部成長、資産回転型戦略、投資主還元へとつながるスタートラインです。これら3つの強化を推進することで、さらなる分配金向上を目指していきます。
I 平和不動産リート投資法人の成長
分配金の状況についてご説明します。賃貸EPUは、前期の第46期から巡行期の第49期にかけて16円増加し、0.6パーセントのプラスになると予想しています。賃料上昇は、金利上昇を上回る水準で推移する見込みです。物件譲渡による賃貸収益の減少分を、公募増資による成長資産の取得で補完していきます。 今後は、LTVを活用し、成長資産への厳選投資を進めていきます。DPUは、前期の第46期から巡行期の第49期にかけて350円増加し、9.6パーセントのプラスを予想しています。
賃貸EPUの成長に加え、41億円の譲渡益から4億9,000万円を内部留保することで将来の分配金成長を担保しつつ、31億5,000万円を各期に配分し、投資主還元の強化を図ります。なお、業績予想における賃料増額効果は保守的な水準で試算しており、5パーセント成長に向けて、これをさらに引き上げていきます。
III NEXT VISION II+
「NEXT VISION Ⅱ+」の進捗状況です。分配金、資産規模、内部成長が順調に推移しています。懸念されていた金利上昇は賃上げ効果によって打ち消されました。
内部成長を分配金成長のエンジンとするべく、賃料収入の年間成長率目標を5パーセントに設定しました。「NEXT VISION Ⅱ+」の残り3年半の期間で、その達成に取り組んでいきます。
なお、ESGに関しては、再生エネルギー電力100パーセントに続き、GHG削減90パーセントの目標をクリアしたことをご報告します。
IV ポートフォリオの状況
外部成長、内部成長、財務についてお話しします。スライドはポートフォリオの推移を、含み損益率とNOI利回りの観点からグラフで示しています。
バリューアップ工事と賃上げによりキャッシュフローを向上させ、含み益の拡大を図ります。物件によっては売却を通じて、キャピタルゲインの獲得を目指していきます。
売却候補となる物件は、中小型のレジデンスに加え、セットアップオフィス化などによる収益向上を実現した中小型のオフィス、買主側で収益向上を織り込んでプライシングされた物件などが挙げられます。また、再開発を想定して強くプライシングされた物件も売却候補となります。
購入物件については、オフィス・レジデンスともに、賃料ギャップのある物件、もしくはバリューアップ工事等により賃料ギャップの創出が可能な成長資産を厳選して投資します。
具体的には、オフィスは東京・大阪をはじめとした全国主要都市の賃料ギャップのある物件、レジデンスは東京の築浅シングル、ファミリー、およびDINKs向けの物件で、バリューアップ効果の高い新耐震基準以降の物件を対象とします。
IV 外部成長 本決算期以降公表の取得と譲渡の概要
資産回転型戦略を中心とした物件売買の状況についてです。公募増資で取得した物件は、レジデンス6物件とオフィス2物件の合計8物件で、取得額は188億円です。これに対する鑑定評価額の合計は227億円で、鑑定評価額の82パーセントでの物件取得であり、取得時点で大きな含み益を確保してスタートしています。
また、公募増資では同時に4物件の譲渡を行い、これによる実現益は41億円となりました。さらに、公募増資後の第48期に入ってからは、東京都心の築浅レジデンス2棟の取得契約が完了しています。こちらも鑑定評価額の81パーセントで取得した物件となり、大きな含み益が生じています。
IV 外部成長 取得の概要(公募増資)①
公募増資の代表物件は、「HF目黒行人坂レジデンス」です。本物件は、JR山手線をはじめ複数路線が交差する目黒駅から徒歩4分の立地です。近隣には権之助坂商店街、目黒川、目黒雅叙園があります。少し広めのStudioタイプからファミリータイプまでの部屋がそろい、2002年築ですが、前所有者によってワークラウンジやフィットネスジムが設置されるなど、共用部のバリューアップが行われています。
専有部では、全64戸中37戸がバリューアップ済みです。バリューアップを推進するため稼働率は7割台にとどまっていますが、賃料ギャップがマイナス10.7パーセントのため、今後の成長が期待できる物件です。
「HF押上レジデンス」は平和不動産による普通借地権開発物件です。2015年にスタートしたREIT向けの開発事業で、本物件は10棟目となります。成長トレンドに合わせ、前回の「HF北千住レジデンス」からDINKsタイプを中心とした間取りとしています。
本物件は1LDK70戸、2LDK4戸で構成されています。底地権者は近隣のお寺で、同じお寺を底地権者とするもう1棟の開発が進められています。本物件は今年3月に竣工したばかりの物件で、リースアップ期間を考慮し、取得予定日を12月5日としています。なお、7月6日時点で50.7パーセントのお申し込みをいただいています。
IV 外部成長 取得の概要(公募増資)②
レジデンスについては、都心の築浅物件4件を取得しました。最寄り駅は西巣鴨が2棟、東武練馬と両国がそれぞれ1棟です。いずれの物件も2021年に新規供給されたもので、コロナ禍期間中の新規供給であるため、賃料ギャップがある状況です。
レジデンスの賃貸市況に関しては、東京都心部におけるファミリー向け物件の賃料成長が注目されています。一方で、DINKs向け物件がこれに続き、シングルタイプ物件も賃料成長が顕著になっています。
IV 外部成長 取得の概要(公募増資)③
オフィスは2物件を取得しました。「パークイースト札幌」は平和不動産が長期保有後、販売用不動産に振り替えた物件です。札幌の大通駅から徒歩2分の立地で、延床面積は1万800平方メートル、基準階面積314坪の規模となっています。30坪前後からの分割が可能です。
また、大通駅から徒歩2分という好立地にありながら、敷地内に65台分の駐車場を有しており、営業車の利用を前提とするテナント需要に対応可能です。札幌エリアの賃料は近年上昇が続いており、本物件は32.1パーセントという大きな賃料ギャップのある物件です。なお、準共有持分69パーセントの取得となります。
「京町堀スクエア」は外部から取得した物件で、平和不動産のブリッジ機能を活用し、公募増資のタイミングで取得しました。所在地は、大阪の肥後橋駅から徒歩4分、本町駅から徒歩6分です。
大阪エリアでは、大型再開発の竣工に伴い需給の軟化が懸念されていました。しかし、インバウンド需要や万博によるエリアの活性化が著しく、オフィス需要は極めてタイトな状況です。本物件は、すでに外壁、エントランス、各階水周りといった共用部がリニューアルされており、その結果、賃料ギャップが19.1パーセント発生しています。
今後は、各物件における賃料ギャップ解消による、キャッシュフローの向上に努めていきます。
IV 外部成長 取得の概要(第48期取得予定資産)
公募増資後に契約した2物件についてです。「HF曳舟レジデンスEAST」はコロナ禍期間中に供給された新規物件で、賃料ギャップが大きい物件です。「HF大森レジデンス」は2024年竣工のため、賃料ギャップはそれほど大きくありませんが、都心の築浅物件ということで、今後の成長性が期待できます。
IV 外部成長 資産回転型戦略の進展による譲渡益の獲得
物件売却については、第47期から第48期の1年間で、オフィス2物件とレジデンス2物件を売却しました。
簿価46億1,000万円、鑑定額66億9,000万円の物件を91億1,000万円で売却し、譲渡益は41億円となりました。売却価格は鑑定額比で136.1パーセント、簿価比で197.6パーセントとなります。
売却益の41億円は、投資主還元としての分配金、内部成長を促進するバリューアップ投資、サステナブルな投資主還元のための内部留保に活用します。
IV 外部成長 スポンサーの販売用不動産
平和不動産の販売用不動産についてご案内します。こちらは平和不動産の説明資料を抜粋したものです。ポートフォリオの入れ替え過程で物件売却益を獲得していく方針が打ち出されています。
IV 外部成長 競争を排除した取得戦略① - スポンサーサポートの活用による普通借地権開発
普通借地権レジデンス開発も着実に進捗しています。押上で開発中のプロジェクトは、これが11棟目となります。
IV 内部成長 オフィス運用状況
内部成長について、まずオフィスの運用状況をご説明します。本決算期の期中平均稼働率は97.8パーセント、期末稼働率は98.0パーセントとなりました。「HF岩本町ツインビル」の6区画でセットアップオフィスの導入を行った影響で稼働率が一時的に低下しましたが、申し込みを含め、すでに5区画でテナントが内定しています。
今後も賃料単価を重視した運営を進めていきます。フリーレントの水準は1.6ヶ月と大きく減少しました。これは現在のオフィスマーケットを反映していると考えます。
IV 内部成長 オフィス運用状況
賃料改定についてですが、改定額・改定率ともに大幅に増加しており、翌期以降も高水準の継続がすでに固まっています。オフィスポートフォリオ全体に対する賃料増額率は年率で2.54パーセントとなりました。また、第47期の半年間の成長率である1.55パーセントを単純に2倍すると、3.1パーセントとなります。
オフィスの成長率は、実力ベースで年率3パーセントをすでに超えていると考えています。更新テナントの40パーセントから賃料増額に同意を得られています。公募増資による取得物件により、賃料ギャップも引き続き高い水準を維持しています。
IV バリューアップ戦略 - 短期回収型(セットアップオフィス)
オフィスにおける具体的な取り組みをご紹介します。セットアップオフィスについては、「HF岩本町ツインサカエビル」「HF浜松町ビルディング」に加え、「HF岩本町ツインビル」「HF池袋ビルディング」へと対象ビルを拡大しています。
本決算期においては、「HF岩本町ツインビル」において6区画、「HF池袋ビルディング」で1区画のセットアップに取り組みました。
従業員満足度を高めたいといったニーズに加え、リモートワークからの出社を促すための移転、スタートアップ企業の成長過程における短期間の利用を想定した移転、既存オフィスから長期使用を見据えた移転、さらにはテナント工事費の高騰や工期の長期化を背景に、極力工事を伴わない早期の移転など、さまざまなニーズがセットアップオフィスをオフィス移転の一般的な選択肢の1つとしています。
さらなるセットアップ対象の拡大を検討します。
IV バリューアッド戦略 - 譲渡益最大化の事例(HF浜松町ビルディング)
「HF浜松町ビルディング」は、バリューアッド運用による実現益拡大の事例です。私たちはビルの一部である2フロアをセットアップオフィス化し、賃料アップの実績を作りました。さらに、未施工のフロアもセットアップオフィス化による賃料上昇を前提にプライシングしていただける買主さまを見つけ、大きな実現益を創出しています。
IV バリューアップ戦略 - 中長期回収型(オフィス共用部)
中長期回収型の事例についてです。オフィスのエントランスや水周りをバリューアップした後、既存テナントに賃料増額をお願いしていきます。
「HF名古屋錦ビルディング」では、2年前の購入直後から共用部リニューアルに着手しました。昨年から賃料増額協議を進めており、すでにROIで25パーセントの実績を達成しています。
IV 内部成長 レジデンス運用状況
レジデンスの状況についてです。稼働率は、期中平均稼働率が96.7パーセント、期末稼働率が96.4パーセントとなりました。ファミリータイプの稼働率が若干低下しているのは、バリューアップの推進によるものです。
IV 内部成長 レジデンス運用状況
賃料改定状況については、増額改定の傾向が広がっています。前期から通算した年間の賃料増額率は2.0パーセントで、更新テナントの56パーセントにおいて賃料増額が実現しました。
新規テナントにおけるタイプ別の賃料変化率は、ファミリータイプがプラス19.1パーセント、DINKsタイプがプラス12.5パーセント、シングルタイプがプラス4.2パーセントとなっており、シングルタイプでも賃料の上昇が顕著です。
また、マーケットの好調の影響で、礼金取得率が高い水準で推移しています。将来の賃上げにつながる賃料ギャップも拡大しています。
IV バリューアップ戦略 - 短期回収型(レジデンス専有部)
レジデンスのバリューアップは、効果が高い東京都区部のファミリー向けやDINKs向け物件を中心に実施しています。70平米前後のお部屋では、キッチン、バス、トイレなどの水周りを総額500万円程度とコストを抑えたかたちで更新し、床・壁・天井のバリューアップも行っています。
また、すでにバリューアップを行った同タイプの間取りで集中的に実施するなど、工期の短縮にも努めています。
IV 含み損益の推移
含み損益の状況についてです。含み益額は55億円増加し655億円、含み益率は27.1パーセントとなりました。資産入替を除いた鑑定上のキャッシュフローは、賃料増額改定が牽引し、前期比プラス1億1,900万円と大幅に増加しています。
IV 財務
財務についてご説明します。借入金の残存年数と金利固定化比率は前期と同水準を維持しています。公募増資により、鑑定LTVは39.0パーセントまで引き下げられました。今後は借入余力を活用し、キャッシュフローの成長が見込める物件に厳選して投資していきます。
IV サステナビリティ
ESGの取り組みについてです。「NEXT VISION Ⅱ+」の進捗状況でも触れましたが、再生エネルギー電力を100パーセント達成したのに続き、GHG削減目標の90パーセントもクリアしています。
IV サステナビリティ
社会への取り組みとして、「ピンクリボン運動」「ペットボトルキャップ回収運動」「クリアファイル回収運動」に参加しています。
また、運用会社社員への取り組みとしては、囲碁ボールやウォーキングイベントなどのスポーツイベントを実施しました。社員の健康増進を図り、投資法人のパフォーマンス向上につなげます。
V 資産運用会社 社員インタビュー
社員インタビューコーナーでは、前回のバリューアップに続き、資産回転型戦略の強化について不動産投資部長にインタビューを行っています。ぜひ、その意気込みを感じていただければと思います。
平野氏からのご挨拶
私たちは今年の初めに、投資主還元の強化、内部成長の強化、資産回転型戦略の強化という3つの方針を掲げました。この3つがしっかりと機能し、投資口価格にも明るさが見えてきています。
そして今回、賃料増額年率5パーセントという高い目標を掲げました。ここからは、Jリートの本丸ともいえる内部成長の強化により、EPU成長を生み出し、さらに分配金を押し上げていきます。
引き続き、平和不動産リート投資法人ならびに平和不動産アセットマネジメントをよろしくお願いします。