目次

髙橋良典氏(以下、髙橋):新コスモス電機株式会社、代表取締役社長の髙橋良典です。本日は当社のIRセミナーに参加いただき、ありがとうございます。本日はスライドの目次に沿って進めます。

事業内容

髙橋:当社についてご説明します。当社は1960年に設立した会社で、今年65周年を迎えます。みなさまのご支援のもと、ここまで到達することができました。

本社は大阪市にあり、ガスセンサ、ガス警報器の開発、製造、販売、さらにメンテナンスまでをトータルで行っています。また、グループ会社のフィガロ技研ではガスセンサを販売しています。

沿革

髙橋:当社は1960年の設立前に2度の倒産を経験しています。朝鮮戦争が始まり、それに続く神武景気の際に大型投資したものの、失敗しました。

前身の会社では、テレビやラジオのボリュームを調整するボリュームコントロールを製造していましたが、設立から間もない頃に、その製造過程での失敗からガスセンサの開発に着手することになりました。

それから60年余り、ガスセンサをコア技術とし、ガス警報器やガス検知器を主力製品として売上を伸ばしてきました。

当社は、スライドにある家庭用LPガス警報器を世界で初めて開発しました。現在も国内でトップシェアを維持しています。家庭用ガス警報器「ぴこぴこ」や「みはり」という名前は、関西を中心によく知られており、ご存じの方もいらっしゃるかもしれません。

直近の連結売上高は421億円となり、当社グループとして初めて400億円を突破しました。

新コスモス電機グループの基本となる考え方

髙橋:新コスモス電機グループの基本となる考え方です。なんといっても「世界中のガス事故をなくす」ことです。これは設立当初から掲げている当社の大きな目標の1つでもあります。

「安全・安心・快適な環境創りに貢献」することです。時代とともにニーズは常に変化しています。その変化に対応しながら、みなさまの生活や職場に変わらぬ安全、安心、快適を常に提供できる会社でありたいと考えています。

企業として一番大切な「多様な人材が活躍でき、多様なアイデアや経験を活かすことができる土壌づくり」を推進していきます。

当社のコア技術であるセンシング技術を極めることで、これらの3つの考え方を実現し、世界中に貢献したいと考えています。

世界でたくさん起きているガス事故をなくす

髙橋:「世界中のガス事故をなくす」について補足説明します。近年、日本の家庭でのガス漏れによる事故死はほぼゼロ件で推移しています。ただし、産業の分野では、ガス爆発、一酸化炭素中毒、酸欠による被害が発生しています。

さらに世界では、開発途上国だけでなく、アメリカ、欧州などの先進国でも、日本の10倍から20倍以上の事故で多くの命が奪われています。

当社が持つセンシング技術で、ガス事故をなくすための活動をスピーディに実施し、世界中の人の命を救いたいと考えています。

事業内容:セグメント別売上高比率

髙橋:当社グループの事業について、セグメントごとに説明します。2025年3月期の連結売上高421億5,300万円のうち、スライドの円グラフ右側にある「家庭用ガス警報器関連」は売上高217億3,500万円、全体に占める割合は51.5パーセントでした。

円グラフ左上にある「業務用携帯型ガス検知器関連」は売上高64億円、全体に占める割合は15.2パーセント、左下にある「工業用定置式ガス検知警報器関連」は売上高119億9,300万円、全体に占める割合は28.5パーセントでした。

業務用携帯型と工業用定置式は、どちらもいわゆる産業用ガス検知警報器となります。年によって多少の変動はあるものの、当社の売上は家庭用と産業用がほぼ半々の割合となっています。

日本国内で、家庭用と産業用、両方のガス警報器を手がけているメーカーは当社のみです。同じガス警報器といっても、家庭用と産業用の現場では使用環境も警報器に求められるスペックもまったく異なります。そのような幅広いニーズに応えられる技術力があるからこそ、家庭用から産業用まで手がけることができると自負しています。

産業用製品が景気の影響を受けやすい一方で、家庭用製品は交換周期が決まっているため、比較的業績も安定しています。常にある一定の安定した業績を上げられる点が、当社の強みの1つであると考えています。

事業内容:家庭用ガス警報器関連

髙橋:各セグメントの事業について詳細をご説明します。「家庭用ガス警報器関連」のセグメントに含まれるのは、都市ガス用、LPガス用を含めた家庭用ガス警報器や住宅用火災警報器、そしてグループ会社が手がける家庭用ガス警報器向けのガスセンサです。

沿革でも話しましたが、家庭用ガス警報器は1964年に当社が世界で初めて開発しました。現在、日本国内のガス警報器のシェアで当社は44.9パーセントを占め、トップシェアを誇っています。

家庭用ガス警報器は台所でガス漏れを監視し、音声でお知らせすることで事故を防ぎます。東京ガスや大阪ガスをはじめ、全国のガス会社を通して提供されるため、みなさまのご自宅にも当社製品が使われている可能性があります。

中国や北米でも家庭用ガス警報器を販売しています。近年は北米で家庭用ガス警報器の設置義務化の動きがあり、ニーズが増加しています。

事業内容:家庭用ガス警報器関連

髙橋:住宅用火災警報器は、2011年より国内のすべての住宅で設置が義務化されました。これは火災による死者が増え続けているためです。

火災警報器の寿命はどのメーカーも約10年のため、近年、各家庭に付いている火災警報器の電池切れが増えています。センサや回路なども故障の恐れがあるため、消防庁では機器ごとの交換を推奨しています。

当社は火災警報器業界では後発でシェアも低いですが、ガス警報器のノウハウを活かした製品を開発しています。

以前より一酸化炭素検知機能付き火災警報器を開発し、販売に注力しています。建物火災のシーンで一番多いのは一酸化炭素中毒です。火災から1人でも多くの命を救うため、一酸化炭素検知機能付き火災警報器の普及拡大を目指しています。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):先ほどご説明いただいた一酸化炭素検知機能付き火災警報器は御社のみが製造している製品なのでしょうか? 先駆けて作られたといった、経緯なども教えてください。

髙橋:一酸化炭素検知機能付き火災警報器は他社でも何社かが製造しています。ただし、先駆けて作ったのは当社です。そのような経緯もあり、現在、販売に注力しているところです。

事業内容:産業用ガス警報器

高橋:産業用ガス警報器事業は、工業用定置式ガス検知警報器と業務用携帯型ガス検知器のセグメントを合わせたものです。

工業用定置式ガス検知警報器は、工場などに設置してガスを常時監視するもので、大きな工場では数百点の「ガス検知部」が設置されることもあります。また、多くの現場では、高圧ガス保安法で設置やメンテナンスについて義務化されています。特に半導体工場など毒性の強いガスを使う現場では、多くのガス検知警報器が使用されています。

業務用携帯型ガス検知器は、作業員が身につけたり、日常点検で使用したりするポータブルタイプです。

産業用製品の売上は、機器販売と製品メンテナンスでほぼ同額となっています。

独自のMEMSガスセンサをはじめとする高いガスセンサ技術力

髙橋:当社の強みについてご説明します。1つ目の強みは、ガスセンサの技術力です。ガスセンサはガスの種類や濃度等で使い分けられており、検知方式も複数あります。当社は60年以上、さまざまなガスセンサを開発してきました。特に、熱線型半導体式というガスセンサに強みがあります。

最近はMEMS技術を応用したMEMS熱線型半導体式ガスセンサに注力しています。非常に小型で、省電力かつ低コストで量産性に優れています。実用化されたMEMSメタンガスセンサは世界に類を見ない当社のオンリーワンの技術によるものです。このセンサのおかげで現在注力している北米向けの電池式メタン警報器の開発が実現しました。

MEMSガスセンサのニーズは今後もさまざまな分野で増えると見込んでおり、ラインナップ拡充に力を入れています。

坂本:御社はガスセンサの高い技術力をお持ちであるというご説明でしたが、長年にわたり開発され続けている点も含め、他社の製品と比較した際の強みや、技術力の高さについて教えてください。

高橋:従来は熱線型半導体式という基本技術を採用した警報器がほとんどでした。しかし、設置から時間が経つと埃が溜まり、100ボルト配線は見た目が良くないという声が市場から寄せられていました。

坂本:電気コードのことですね。

高橋:はい、そうです。「できれば配線をなくしてほしい」というご要望が以前からありました。

坂本:台所などに置かれることを考えると、そのようなニーズもありますよね。

高橋:おっしゃるとおりです。そのため、最も電力を消費するガスセンサを省電力化することに取り組みました。それがMEMS熱線型半導体センサです。

坂本:今後は、電源不要の製品も開発されるのでしょうか?

高橋:はい。電池で駆動できる点が大きな特徴です。

世界トップレベルのガスセンサ生産能力

高橋:2つ目の強みは、世界トップレベルを誇るガスセンサの生産能力をグループ全体で持っていることです。

世界最大級のガスセンサ研究開発および製造設備であるコスモスセンサセンター、2025年に開所した淀川工場、グループ会社であるフィガロ技研の工場、これら3拠点でガスセンサの量産体制を確立しています。さらなる生産の自動化を進め、高い品質と安定供給を実現していきます。

坂本:生産を行っているのは日本のみでしょうか?

高橋:センサは日本のみで生産しています。

坂本:製品全体になると海外でも行っていますか?

高橋:海外で組み立てている部分もあります。

坂本:センサは日本製ということですね。

決算サマリー

高橋:2025年5月15日に発表した、2025年3月期決算の概要についてご説明します。前期は中期経営計画の最終年となりました。売上高は海外向けの家庭用ガス警報器や半導体業界向けの工業用定置式ガス検知警報器などが好調に推移しました。

その結果、前期比9.4パーセント増の421億5,300万円となり、当社グループとして初めて売上高400億円を突破しました。営業利益については、売上増に加え円安の影響もあり、前期比26.2パーセント増の51億5,500万円となりました。

売上高に占める海外売上高比率は46.2パーセントとなり、前期比1.2ポイント増となりました。総資産については、新工場建設や生産設備の増強などにより、前期比0.7パーセント増の672億8,800万円となりました。

自己資本比率は業績が好調に推移し、借入の返済も順調に進んでいることから、前期比4.4ポイント増の70.8パーセントとなりました。

セグメント別状況

髙橋:セグメント別の売上状況についてご説明します。「家庭用ガス警報器関連」の売上高は前期比12.7パーセント増の217億3,500万円となりました。要因としては、ニューヨーク市条例における警報器設置の義務化の影響により、北米向けの電池式メタン警報器の販売が好調に推移したことが挙げられます。

海外向けガス警報器ガスセンサ、国内向けの都市ガス用警報器の販売も堅調に推移しました。

「工業用定置式ガス検知警報器関連」の売上高は前期比6.1パーセント増の119億9,300万円となりました。要因としては、海外市場の半導体業界向けガス検知警報器の販売が好調に推移したことが挙げられます。加えて、国内市場の半導体業界および自動車業界などに向けたガス検知警報器の販売も好調に推移しました。メンテナンスサービスも堅調に推移しました。

「業務用携帯型ガス検知器関連」の売上高は前期比1.7パーセント増の64億円となりました。要因としては、国内市場の都市ガス業界および電力業界に向けたガス検知器の販売が好調に推移したことが挙げられます。メンテナンスサービスも堅調に推移しました。

以上、前期は主な3つのセグメントすべてで売上を伸ばすことができました。

営業利益率、ROE、PBR、ROICの推移

髙橋:営業利益率、ROE、PBR、ROICの推移についてです。ROEとPBRは、一般的に目安といわれている値よりも低い水準となっています。

改善に向けた取り組みとして、成長戦略への投資を通じて会社を成長させること、またDXの推進などにより生産性を高め、利益率を向上させることが必要だと考えています。こちらについては、次の中期経営計画での取り組みの中で具体的にご説明します。

定性目標

髙橋:今回の決算と同日に発表した「中期経営計画2025-2027」についてご説明します。定性目標は、「MEMSガスセンサ技術を軸にグローバルに展開し、ガス事故ゼロとカーボンニュートラル社会の実現に貢献する」です。当社グループの強みであるMEMSガスセンサ技術を軸に、世界中のガス事故をなくすために、グローバルに展開していきます。

前回の中期経営計画からの連続性を重視し、今回の中期経営計画は「展開と拡張」のための3年間と位置づけています。

前回の中期経営計画中に実施した「投資」の収益化を図る「展開」では、主に北米向け電池式メタン警報器市場の拡大に取り組みます。将来に向けた「拡張」としては、欧州におけるカーボンニュートラル市場の基盤作りや電池式LPガス警報器の開発と普及に取り組みます。

戦略体系

髙橋:戦略体系としては、当社の基本となる考え方として、冒頭に掲げた「世界中のガス事故をなくす」「安全・安心・快適な環境創りに貢献」「多様な人材が活躍でき、多様なアイデアや経験を活かすことができる土壌づくり」の3点を基本にしています。

成長戦略として、「グローバル市場におけるエリア別戦略の推進」「新製品・サービス戦略の推進」「新市場開拓のための協業体制および土台づくり」「次世代に対応したセンシング技術の確立、MEMSガスセンサの質・量の拡充」に取り組みます。

成長戦略を支える基盤戦略として、「エンジニアリングチェーン確立による技術強化」「サプライチェーンの強化」「DX推進や人的資本経営による組織体質強化」「SDGsへの取り組み(豊かな地球を子孫に残すための活動)」を実施します。

[成長戦略]グローバル市場におけるエリア別戦略の推進

髙橋:成長戦略の肝となる、グローバル市場におけるエリア別戦略の推進についてご説明します。これまで日本国内中心であったターゲット市場を北米、アジア(日本含む)、欧州の3エリアにシフトし、特に北米での成長軌道確立を目指します。

具体的な方針として、北米では、家庭用電池式メタン警報器の市場拡大、冷媒漏えい検知モジュールの普及拡大に注力します。また、欧州では、カーボンニュートラル市場の基盤作りに注力します。さらに日本を含むアジアの地域では、産業用ガス検知警報器の売上拡大や、家庭用電池式メタン、LPガス警報器の普及に注力します。

[成長戦略]北米における家庭用電池式メタン警報器の市場動向

髙橋:特に注力する北米における電池式メタン警報器の市場動向について詳しくご説明します。先ほどもお話ししたように、北米では日本と比較にならないほど、ガス漏えい事故が数多く起こっています。

北米では古いガス配管が数多く残っているため、近年、ガス漏れやそれに伴う爆発事故が増加傾向にあります。そのような中、2018年にニューヨークのエネルギー事業者であるConsolidated Edison Con Edison)社が、業界に先駆けて電池式メタン警報器の設置を開始しました。その際に採用されたのが当社のガス警報器です。

2023年3月にはペンシルベニア州のチョコレート工場でガス事故が発生し、7名が死亡、10名が負傷しました。このように爆発事故が増加していることを懸念し、2022年1月にメイン州で、2023年12月にはニューヨーク市で、家庭用ガス警報器の設置が義務化されました。

現在もイリノイ州やマサチューセッツ州など計6つの州で法令案が提出されており、法令化する可能性があります。これらすべての州で法令化が決まった場合、約2,000万世帯にガス警報器が設置されることになります。現在、日本における都市ガス警報器の設置対象世帯数はおよそ2,800万世帯であり、これに近い数の設置が見込まれます。

このように今後拡大が見込める北米の家庭用ガス警報器市場における当社の戦略について、次のスライドでご説明します。

[成長戦略]北米における家庭用電池式メタン警報器拡販の戦略

髙橋:Con Edison社が採用した当社の警報器が、北米市場における初の電池式メタン警報器です。現在、これを量産できる実績と能力を持っている会社は、世界で当社グループのみとなります。先ほど当社の強みとしてご紹介した、オンリーワンのMEMSガスセンサの技術力によるものです。

販売戦略として、ガス事業者および法令化に伴う小売店での販売を引き続き強化していきます。また、生産体制として、ニーズにしっかり対応できるよう、MEMSガスセンサの生産能力を高めていきます。

最終的には、中期経営計画の期間中に300万個以上のMEMSガスセンサを作れる体制を整えます。同時にガス警報器の組み立て工場も増産設備を整え、需要増に対応します。

昨今、アメリカの関税に非常に多くの関心が集まっています。メキシコからアメリカへ輸出する当社製品については、協定に基づき免税処置が適用されており、関税はかかっていない状況です。

関税に関する今後の動きは不透明ですが、当面は現在の需要増に向けて、メキシコと日本国内のどちらでも生産体制を増強する計画です。

坂本:御社の今後の成長戦略として、アメリカでの義務化の可能性における数量増と、センサについてお話しいただきました。

省電力のセンサを用いることによって、電池式の警報器を作ることができるところはあると思いますが、御社はかなり早くから取り組まれてきたかと思います。後発品と言いますか、他社製品も出てきているのか、もし出てきているのであれば御社のセンサを使っているのか、そのあたりを含めた現状を教えてください。

髙橋:電池式の家庭用メタンガス警報器を販売しているのは、当社以外にも何社かあります。ただし、それらの警報器は、我々が使っているガスセンサとは検知原理が違ったり、我々の商品よりもコストが非常に高かったりします。

いずれにしても、大量に適切なコストで供給できる状況で生産しているのは当社のみというのが現状です。

[成長戦略]半導体市場への取り組み

髙橋:世界的に拡大を続ける半導体市場への取り組みも強化していきます。昨年発売した半導体製造工場向けの新製品「PS-8」を武器に売上拡大を図ります。

これまでも実績がある日本・台湾・中国でのシェアアップに加え、実績があまりなかったアメリカ・欧州での販売拡大を目指していきます。

荒井沙織氏(以下、荒井):初歩的な質問で恐縮ですが、御社の製品は半導体製造のどのような場面で使われていて、シェアはどのくらいでしょうか?

髙橋:半導体そのものを作る時の材料として、特殊材料ガスというものがあります。微細なラインを引いて半導体を作っていくため、小さい分子レベルのガスを必要とします。ただし、このガスの毒性が非常に強いです。

具体的には、シランガス、ホスフィンガス、アルシンガスなどの、あまり馴染みのない名前のガスが多いですが、これらの使用時は必ずガス検知をして安全を確保する決まりになっています。そこに我々のガス警報器が使われています。

[成長戦略]カーボンニュートラル(水素)市場への取り組み

髙橋:さらにこの3ヶ年では、必ず訪れるカーボンニュートラル社会に向け、積極的に取り組んでいきます。当社は40年以上前から、水素検知用ガスセンサの研究開発に力を入れています。

トヨタ自動車の燃料電池自動車「MIRAI」には、当社の水素センサが採用されています。車載用として求められる厳しい条件をクリアした高い耐久性と品質、そして生産能力が評価され、採用に至りました。

現在、国内にある水素ステーションの約8割に当社のガス検知警報装置が設置されています。さらに欧州では、家庭用のエネルギーとして水素の試験利用が始まっていることから、家庭用電池式水素警報器が試験導入されています。こちらもMEMSガスセンサが使われており、現在他社にない製品となっています。

坂本:水素センサ、水素ステーションなど、水素関連でお話しいただきましたが、御社のガス警報器が水素ステーションで高いシェアを獲得できている理由を教えてください。

髙橋:一番の要因は水素用のガスセンサにあると言えます。水素に対する選択性が非常に強く、いろいろなガスが存在する現場でも水素を選択的に検知して、誤報が非常に少ないことに加え、高感度で安定的に検知できることが、他社にない当社の水素センサの特徴です。

坂本:水素は軽いため、検知は難しいのですか?

髙橋:どのガスも難しいのですが、水素は特に燃えやすい、爆発しやすいガスというのもあり、そのような意味では高感度で早く検知することが一番重要かと考えています。

「トヨタイムズ」で世界初の家庭用電池式水素警報器が紹介されました

髙橋:家庭用電池式水素警報器は、トヨタ自動車の「トヨタイムズ」でも紹介されています。燃料電池自動車に搭載される高圧水素タンクを製造している、トヨタ自動車の下山工場に設置されています。

この工場ではもともと、出荷検査等で使う水素を廃棄していたのですが、それを有効活用するために、社員食堂に水素グリルが導入されました。この安全対策として、当社の家庭用電池式水素警報器が設置されています。

2025年2月10日の「トヨタイムズニュース」の記事や、「YouTube」チャンネルで動画もアップされていますのでぜひご覧ください。

イギリス・SGN社のグリーン水素プロジェクト「H100 Fife」に当社の世界初の家庭用電池式水素警報器が採用されました

髙橋:さらにイギリスのガス会社SGN社の水素プロジェクト「H100 Fife」に家庭用電池式水素警報器が採用されました。「H100 Fife」はスコットランドのファイフ州において、風力発電による100パーセントグリーン水素を家庭用暖房に供給する世界初の実証プロジェクトです。

以上、水素警報器に関する最近の動向でした。今後、取り組みが進む欧州を中心に、水素検知といえば新コスモス電機というイメージを持っていただけるよう、知名度アップに注力します。

[成長戦略]エリア別売上計画

髙橋:これらの取り組みを通じて、エリア別売上計画としてはスライドのグラフのとおりです。欧州は数字としてはまだわずかですが、北米・欧州での成長率を上げ、2028年3月期の売上目標である600億円以上を実現します。

定量目標

髙橋:定量目標としては、中期経営計画の最終年度に連結売上高600億円以上、海外売上高比率50パーセント以上、営業利益率12.5パーセント以上、PBR1.0、ROE8.5パーセント、ROIC8パーセントを目指します。売上高のセグメント別の内訳は、スライド右側の円グラフのとおりです。

「中期経営計画2025-2027」の投資計画と配当計画

髙橋:投資および配当の計画については、スライドのとおりです。北米向け電池式メタン警報器の生産増に約20億円投資する計画です。その他に成長戦略を支える新製品の開発、海外拠点の整備などを行い、総投資額は80億円を計画しています。

当社の株主のみなさまに対する利益還元の基本方針は、業績および配当性向等を総合的に勘案し、安定的かつ継続的な配当を行うことです。中期経営計画の期間中に配当性向30パーセントを目指し、継続的に高めていきます。現状、流動性はまだ低い状況ですが、今後流動性を上げられるよう取り組んでいきたいと考えています。

業績予想

髙橋:2026年3月期の業績予想についてご説明します。売上高は前期比13.9パーセント増の480億円、営業利益は前期比8.6パーセント増の56億円を予想しています。

売上高に関しては、「家庭用ガス警報器関連」では、北米向けの家庭用ガス警報器が引き続き好調に推移し、また半導体業界向けの工業用定置式ガス検知警報器についても堅調に推移する見込みです。

営業利益に関しては、売上が好調に推移する見込みである一方で、新工場やそれに伴う生産設備の償却が本格的にスタートすること、また原料費や物流費、加工費などが引き続き上昇する見込みであることから、売上増よりは低い割合の増加にとどまると予想しています。

大阪・関西万博会場の安全対策として当社の警報器が800点以上設置されています

髙橋:最近のトピックスをご紹介します。4月13日から開催されている「大阪・関西万博」の安全対策の一環として、当社のガス警報器が会場内に800点以上設置されています。2024年3月に発生した、建設現場でのメタンガス爆発事故を踏まえ、日本国際博覧会協会からの依頼により設置されました。

ガス警報器の設置を通じて、来場者および関係者の安全と安心を支えています。爆発事故を未然に防ぎ、万博会場の安全をサポートしています。これを機にぜひみなさま、大阪にお越しください。

配当金の推移

髙橋:配当金の推移です。2025年3月期の期末配当金は、通期業績が計画どおりに推移したことや財政状態等を総合的に勘案し、1株当たり60円としました。

2026年3月期については、記念配当を含め、1株当たり70円を予想しています。先ほどお伝えしたとおり、中期経営計画の期間中に配当性向30パーセントを目指し、継続的に高めていきます。

最後に…

髙橋:これまでお話ししたように、当社は「世界中のガス事故をなくしたい」という思いで事業活動を続けています。

ぜひ当社に関心を持っていただき、世界中のガス事故をなくす仕事を応援してください。本日はご清聴ありがとうございました。

質疑応答:配当性向目標の達成時期について

坂本:中期経営計画の期間中に配当性向30パーセントを目指すとのことですが、2027年3月期に到達するというイメージでよろしいでしょうか?

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