質疑応答:商品の寿命について

司会者:かぶ1000さん、ありがとうございました。この講義を通して、何か質問がある人がいたら、質問してくれたらいいなと思います。

質問者:先ほど、商品とかの寿命に関してのお話をされていたと思います。それぞれのものの寿命を知ることで、プロダクト・ライフサイクルみたいな部分に思考を移していけるとか、そういうことなんですかね? 

かぶ1000氏(以下、かぶ1000):そうですね。例えば、商品の寿命がわかると、買い替えがそろそろ起きるんじゃないかと予測することもできますよね。ゲームの本体とかって、ある程度時間が経ったら新商品がどんどんどんどんできてくるじゃないですか。

そういうのと一緒で、スマホもそうですが、技術革新によって商品が出るパターンがあったり、あとは寿命が来たから買い替えが起こるとか、車とかもそうかもしれないですよね。新たな需要は起きないかもしれないけれど買い替えが起きるとか、いろいろあると思うんですよ。

新しい商品は、まだ誰も持っていないから、みんな買うじゃないですか。だけど、ある程度行き渡っちゃったら、もう次は買い替えでしかないので、そういう時に商品の寿命がすごく大事じゃないかなと思うんですよね。

そういうことを知っておくと、企業の先行きも含めて業績予想もできるんじゃないかなと私は思っています。

例えばそれがわかってくると、今度は逆にリサイクル業界のことにつながってきます。要するに、中古品として市場に出たりする時に、今度はリユース品の市場はどうなのかということまでに波及していくので、いろいろデータがつながってくるからおもしろいんですね。新しい商品が売れたら、今度は手放す人が出てくる。

例えば1つ例を言うと、スノーピークという会社が、MBOを発表したのですが(※2024年7月に上場廃止)、業績がすごく悪くなっちゃったんです。あれはね、悪くなると予測できたんですよ。

なんで予測できたかというと、リサイクルショップに行くと、キャンプがブームだった頃の売る人が殺到していて、リサイクルショップがキャンプの物で溢れちゃっているんですよね。もうみんないらなくなって売ってしまった、もうブームで終わっちゃったみたいな感じがわかってきたりするんですよね。

そういうところへ行くと、商品の寿命とか、ブームとか、そういうものがいろいろ見えてきます。企業業績と直結してくるので、「あ、やっぱりそうだったか」と、要するにデータと現地の検証ができる。商品の寿命もいろいろ考えておくとわかりやすいんじゃないかなと私は思います。

質疑応答:割高・割安の判断方法について

質問者:先ほど投資をする際の五感について話をされていた際に、例えば「4,000円の価値がある企業の株を2,000円で買えたら」というバリュー投資の話があったと思います。その割高・割安の判断をどのようにしているのかだったり、用いる指標だったり、購入しようとなる経緯について、少しエピソードを交えて教えていただけたらうれしいです。

かぶ1000:やはりPBRはまず見ますね。

PBRというのは、その会社の純資産に対して株価がどういう水準かというところです。PBR1倍がいわゆる会社の純資産とほぼ同じだよという評価なのですが、それが1を大きく下回っていると、割安じゃないかなというのを1つ判断できます。

もちろんその会社の資産の中でも価値があるもの・ないものがあると思います。例えば、いくらPBRが低くても、持っている資産が商品の在庫だったりすると、在庫って残っているものだから売れるとは限らないわけです。そうすると、果たしてきちんと価値があるかというのはわかりません。

一方で、例えば上場企業の株を持っていたり、東京の一等地に土地を持っている企業の場合だと、それって価値がきちんとついているものだから、きちんと評価されるべきだよねとなる。ここから先はちょっと難しいのですが、会社の中の資産をしっかり分析するんです。

例えば、500円で売っている弁当に半額のシールが貼ってあったとするじゃないですか。「半額だから安いな」と思って買っても、中のお弁当が腐っていたらダメですよね。そうじゃなくて、腐っていないかまず確認して、その中に自分が食べたいものが入っているかどうかを見るのも大事だと思うんですよ。

例えば、いくら半額でも、ご飯しか入っていないお弁当だったら、たぶん誰も買わないと思うんですよね。そうじゃなくて、おかずがきちんと入っているかどうかとか、そういうこともしっかり見るのが必要だと思うんですよ。

株もまったく一緒で、自分がどういうものを評価するかは、たぶん人それぞれだと思うんですよ。配当を重視する人がいたり、会社の成長を重視する人がいたり、いろいろあると思いますが、僕はどちらかと言うと会社の資産を評価するので、そういう意味では、どういうお弁当の中身が入っているかというのをしっかり事前に調べることができるんですよね。それを調べた上で、この値段だったら買ってもいいんじゃないか、逆に損はないんじゃないかということを見極めるのがすごく大事なんです。

株の中には本当におもしろいパターンがあって、例えばお弁当を250円で売っていたとして、実はすごく高級な入れ物を使っていたとかで、その入れ物の価値が500円することもあるんですよ。そういうところまでしっかり見られるようになると、最悪お弁当は食べられなくても入れ物を売れば元が取れるよねみたいなこともあるわけです。

株も一緒で、会社が持っている資産を売るだけで元が取れちゃうような会社もいっぱいあるんですよ。そういうのはやはり調べなきゃわかりません。

そういうのを調べた上で、「これは絶対自分は元は取れそうだな」、あるいは「これは損する確率が低いな」というものを選んで投資するんです。

そういうものに投資をしていれば、損する確率が低く、儲かる確率のほうが高くなるから、いわゆるローリスクミドルリターンになるんですよね。

株で大事なのは、いかにリスクを抑えるかで、やはりリスクを抑えることを重視することによって、なるべく多くのお金を株に投資できるというメリットがあります。そういうことを突き詰めていくと、割安な会社の株に買ったほうが一番リスク・リターンは合っているんじゃないかなと思っています。

質疑応答:売るタイミングについて

質問者:もし、今の株価に対して、企業の価値はもう少し上だろうと思った時に、「自分はこの額になったら売る」みたいなものは決めていらっしゃるのかなというのと、もし決めていらっしゃるとしたら、どのように決めているんだろうと思い、お聞きしたいです。

かぶ1000:そういう質問をしてくるのは、すばらしいと思います。あのね、これは本当に難しいんですよ。僕の場合は、すごく単純に考えています。

どう単純に考えているかというと、例えば今ポーカーをやっていて手札を5枚持っています。ストレートの手を作るのか、フラッシュにするのか、ロイヤルストレートフラッシュなのか、2ペアとかフルハウス、いろいろあるじゃないですか。その中で手札を1枚切って、1枚引くわけですよね。

私も同じことを株でやっているんですよ。「どっちが得なんだろう」「どっちを持つべきなんだろう」と自分が持っている株と自分が持っていない株を常に見比べています。いくらで売るというよりも、今自分の持っている株よりももっといい株があった時に入れ替えする。

例えばポーカーだと、次に引くカードが何のカードか見えないから、リスクじゃないですか。でも、株の場合は見えているんですよ。例えば自分が「3」の手札を持っていて、「4」の手札が市場で売っているのであれば、「3」の手札を売って「4」の手札に替えたほうが強くなるじゃないですか。一応、全体の中ではね。そういうことを常にやるんですよ。

だから、いくらになったら売るというよりも、より自分が持っているものよりいい会社の株がないかを常に探すわけです。

例えば先ほどのお弁当の話ですが、例えば最初に500円のものが250円になっているお弁当を買おうと思ってかごに入れます。だけど、スーパーを歩いている中で、600円のお弁当が200円で売っていたら、「あ、こっちのほうが得だな」と、500円のお弁当を返しに行って、こっちのお弁当を買えるじゃないですか。

2個買っちゃうのも手ですが、そういうふうに入れ替えるじゃないですか。より得なものに入れ替えていっているという感じですかね。なので、いくらになったら売るとか、いつになったら売るというのは、僕はあまり考えないんですよ。

株をどんどん自分の好みのものに入れ替えていくということをやっているので、僕の場合はいくらになったら買うとか売るというのはあまり考えていないです。

質疑応答:無形資産の測り方について

質問者:有形資産と無形資産があるとおっしゃっていたと思います。有形資産の価値はなんとなく測ることができると思いますが、無形資産はどのように測っていますか?

かぶ1000:めちゃめちゃいい質問ですね。すばらしいですね。これは本当に難しいんです。例えばコカ·コーラとかソニー(6758)とか、みんなが知っている会社がありますよね。

ブランド価値は何で決めるかというと、広告費の累積です。世界中の人がこの企業のことを知っているとなったら、その企業は優位性がかなり持つことができるじゃないですか。

そのためには何をするべきかと考えた時に、例えばいいサービスを提供するというのも大事なのですが、やはり一番は広告だと思うんです。Metaとか、ほとんど広告費がメインの会社じゃないですか。広告費で利益を取っている会社なのですが、やはり広告はすごく大事な要素で、その累積の広告費を商標権の価値として置き換えていくというのは、すごく腑に落ちるパターンです。

例えば、ソニーの商標権の価値は約4兆円ぐらいあると言われているんですよ。極端な話、Samsungが作ったテレビかもしれないけれど、「SONY」というシールを貼るだけで、「あ、これソニーだからいいんじゃないか」とみんな思って買ってしまう。

ソニーという名前とブランドの価値を知っているから、みんなそうなると思うのですが、それは広告費をかけてきたからであって、それがだいたい4兆円ぐらいの価値と言われているんですよね。

いろいろな価値の測り方がもちろんあるんですけど、1つには広告費の累積と考えている人がいます。いろいろ自分なりに調べていくのはすごく大事な要素だと僕も思うので、そういうことに疑問に思うのは、僕はすごく大事なことだと思う。すばらしいと思う。

それ以外の答えがわかったら、あとでこっそりかぶ1000さんに教えてください(笑)。僕も無形資産の価値を勉強している最中なのでね。

ただ、先ほども言ったように、特許権や著作権に関してはやはり期限があります。薬の場合、特許が切れてジェネリックになることによって、価値が一気に下がっちゃうじゃないですか。

そういうものと、特許とかの期限はないけれど、徐々に徐々には違うものがマーケットのシェアを取っていった結果、ブランド価値が落ちていくというパターンもあります。

いろいろなパターンがあって、無形資産の価値をどう計算するかは、すごく難しいところです。僕は、その広告費の累積というのが1つと、期限があるものはそれを残りの年数で割ってみるとか、そういうふうに分析しています。

みなさんもいろいろ計算してみてください。新しいデータがわかったら、先生を通じて私にこっそりと教えてもらえればと(笑)。よろしくお願いします。

質疑応答:2024年に注目する業界について

質問者:かぶ1000さんはどのような企業を投資先に向いているとお考えでしょうか? もう1つ。2024年に注目する業界なども教えていただけると幸いです。

かぶ1000:私は、テーマとかこういう企業ってあまり決めていないです。日常生活でのバーゲンセールとかアウトレットとかが大好きなんですよ。

そういう意味で、いかに安く買うかをすごく重視しているので、企業としては、いわゆるみなさんが好きな「キラキラグロース系」ではなくて、ブームも去っちゃって、もうあまりキラキラ感はない会社かもしれないけれど、きちんと利益を出している企業にけっこう注目しているんですよね。

利益の成長はそこまで見込めないかもしれないけれど、毎年必ず利益を出す企業を重視します。2024年に注目する業界として半導体と言っている人がいると思いますが、私が唯一見ているとするならば、やはり物流の問題ですかね。

2024年に物流はけっこう大きく変わるんじゃないかと言われていて、これは人手不足とかもあるのですが、どうしても日本が今直面しているのってやはり労働者不足だとか、生産性を上げるとか、そういうところになってきます。

そうなってくると、物流系や倉庫などがけっこう大きく変わる可能性があって、おもしろいかなと僕は思っています。そういうところって、けっこう株価の評価も低いところが多いので、業界としては物流系、企業としては、キラキラグロースよりも、地味かもしれないけど確実に利益をあげてくる企業。製造業であったり、あと不動産で言うと賃貸業をやっている会社。毎月必ず家賃が入ってくるみたいなところに重きを置いている感じです。

あと、財務内容がいい会社を見ています。これから金利が上がってくる可能性が高くて、資本コストが上がってくると、企業の利益が減ってしまうので、そういうところで借り入れをしなくても自分の資金でやっていける会社だと、何か不況や災害が起こった時にも強いのかなと思っています。

質疑応答:株価が上がらない企業の特徴について

質問者:長い期間投資を行われてきたかぶ1000さんが投資した企業の中で、PERやPBRなどがいい企業でも株価が上がらなかった企業に、どのような特徴があったのかおうかがいしたいです。

かぶ1000:これはけっこう難しい視点なんですけど、傾向としてはやはりオーナー企業が多いですね。オーナー企業というのは、経営者自体が株をたくさん持っている企業のことを言うのですが、要するに会社というのは、株を多く持っている人に権限があるわけです。自分が社長であり自分が大株主だと、結局外部の人の圧力がかからないんですよ。

例えばPBRが低い会社は、PBRを上げるために株主還元しなさい、積極的な姿勢をとりなさいとなっているのですが、結局そういうのも守らなくてよかったりするわけです。

また、東証以外の市況、例えば名古屋証券取引所とか地方市場に上場している銘柄は、「PBR1倍にしなさい」とかがないんですよ。取引所が言っていないので、やはりそういうところの会社はあまり上がっていないところが多いです。

結局、外部圧力がかかりにくいところは、どちらかと言うと株価も上がりにくいのかなという気はします。

一方で、オーナー企業はいいところもあるんですよ。結局、自分自身も利害関係者になってくるので、無茶なことはできないんですよね。自分がオーナーであり株主であれば、自分が損することはやりたくないじゃないですか。なので、無茶な経営は絶対やらないんですよ。堅実な経営をする会社が多いんです。だから失敗するリスクは低いんですよね。

失敗するリスクが少ないところはいいところですが、悪い意味では外部からの圧力がかからないからなかなか変わらない。そういう特徴があるかなと思います。

質疑応答:投資と投機の違いについて

質問者:投資と投機の違いを、目的がその資産の「生産性」なのか、「価格変動」なのかの違いだと考えているのですが、かぶ1000さんの考える投資と投機の違いはなんですか?

かぶ1000:これは私が敬愛するベンジャミン・グレアムさんの本の中に書いてあります。ぜひみなさんももし興味があったら『賢明なる投資家』という、グレアムさんが書いている本を読んでほしいのですが、その中の一文にこうあるんですよ。

「投資家と投機家の違いというのは、その人が相場変動に対してどのような態度で臨むかという点である」。「投機家の関心事は、株価の変動を予測して利益を得ることであり、投資家の関心事は、適切な証券を適切な価格で取得し保有することである」。

まさに私はこれだと思っているんですよね。別に僕は投機が悪いと言っているわけじゃなくて、投機というのはやはり価格の変動をメインに投資をする、要するにサヤ取りというやつです。投資というのは、僕の場合もそうですが、長く株を保有することだと思っています。

同じ株じゃなくてもいいですよ。とにかく株を長く持つ。投機家の人だと、たぶんその雰囲気によって1回全部現金にしたり、なんなら株にしたり、たぶんそういうふうに比率を変えたりする人が多いと思います。

投資はそういうことをせずに、ずっとフルインベストメントなんですよ。相場が悪くてもよくても常に株を持っている。それはなぜかというと、株価の変動を予測して利益を得ようとしていないからです。僕の場合だと割安と思って投資しているので、適正な価格になるまでじっくり持っている。

その間、配当をもらってもいいですし、もちろんもっと割安な銘柄があったらそれに入れ替えるのもいいのですが、そういうかたちで利益を得ていくのが投資だと思っているので、そこの違いかなという気がします。

質問者:価値と価格の差を利用して儲けるのが投資家という感じで合っているでしょうか?

かぶ1000:そうです、そうです。それはバリュー投資と言うんですけどね。いろいろ手法があって、例えば超短期で株価の動向を見極めて投資するというのが投機であり、スキャルピングでありデイトレで、価値と価格のギャップに投資するのが投資だと思っています。これにも2つあって、僕の場合は、今の会社の価値と市場価値のギャップを見るやり方なんですよね。もう一方で、未来の価格と現在の価格のギャップを見て投資するのがグロース株投資です。

この会社は将来これぐらいの価値になるだろう。あるいは、これぐらいの利益が出るような会社になるだろう。これぐらいの将来価値が出るはずだから、今のこの価値だったら買えるよねというのがグロース株投資で、バリュー株投資はそうじゃなくて、今の価値です。

今現在、お財布の中に1万円入っていて、それが5,000円で売っているから買いだよねというやり方です。グロースというのは、10年後これぐらいになっているという券が入っているわけです。でもそれは10年後なので正しいかどうかわかりません。だけど、そういうものが入っているお財布を買うイメージ。

だから、現在価値と未来価格、両方ともギャップに投資しているんですよね。そういう意味で、価値と価格のギャップというのは同じ投資です。

質疑応答:企業価値の算出方法について/h2>

質問者:現在の価値を考えるとおっしゃっていて、それはおそらく資産をもとに考えるという意味だと思いますが、その資産が取り出せるのが例えば10年後だった場合は、その10年後から割り引いて現在価値を考えていますか?

かぶ1000:それもありますが、10年後その資産がどうなっているかが大事ですよね。例えば、会社の資産がポケモンカードであれば、10年後はちょっとわからないじゃないですか。でも、その会社の資産が金とか、あるいは上場している株式とか、東京の一等地の土地だったら、普通に考えて価値が下がっていくとは考えにくいですよね。

だから、持っている資産も大事で、僕は単にその資産だけじゃなくて、持っている資産が成長するかも見ています。要するに、より価値が上がる資産を多く持っているかということです。

特に今インフレで、円安になっているから、例えば海外に資産を持っている会社で考えた場合、円ベースで見ると価値は上がっていることになります。海外のものを買っていれば。

なので、どこにまず資産を持っているか、何の資産を持っているか、先行きどういう価値になるんだろうか、あるいはどれぐらいその会社が重要な資産を持っているかと、いろいろ考えた上で、今のギャッププラス将来価値とのギャップも見るわけです。

なので、私のやり方は、利益の成長よりも資産の成長を見ているという感じですかね。だから、「これはずっと持っていたほうがいい資産」と思うものをその会社がいっぱい持っているのであれば、その会社はすごくいいんじゃないかなと思います。

司会者:かぶ1000さん、ありがとうございました。

かぶ1000:いえいえ、こちらこそありがとうございました。がんばって株式投資を続けていきましょう。