登壇者の紹介

三本幸司氏(以下、三本):それでは、ただいまより、Hmcomm株式会社の東証グロース市場上場に伴う上場記者会見を行います。

本日の出席者を紹介させていただきます。まず、代表取締役CEOの三本幸司と申します。よろしくお願いします。

伊藤かおる氏(以下、伊藤):専務取締役COOの伊藤と申します。よろしくお願いします。

木野英明氏:取締役CFOの木野と申します。よろしくお願いします。

土屋学氏:経財部の部長を務めております、土屋と申します。お願いします。

会社概要

三本:それでは、会社の概要説明に入りたいと思います。私、三本からご説明差し上げたいと思います。お手元のパワーポイントをピックアップして、ご説明したいと思っています。

5ページ目は、当社の会社概要です。「Human Machine Communication」というかたちで、人と機械との融合を会社名に込めています。

売上高は記載のとおり、総資産、従業員数も、こうなっています。

当社を一言で表現したものが、6ページに書いてあります。「人の音声と“場”の自然音を認識し、異音検知をマネタイズする『音×AI』のスペシャリスト」です。

沿革

三本:今までのプロセスをご説明したいと思います。2012年に創業をしていますが、大きな転機は、2014年に経産省の国研、産総研のベンチャー認定を受けたところから、「音」に着目した専門的な研究をスタートしています。

一番下の段が、産総研ベースの技術を利用した音声認識プロダクトです。中段が、我々独自の、音の特徴量から異常を検知するという異音検知のプロダクトです。

音声認識、異音検知、それらの分析をするAIソリューションという、3本柱で今まで進めてきました。

事業内容

三本:次のページですね。「AIソリューション」と「AIプロダクト」というかたちの事業を、今推進しています。

AIソリューションは約30パーセント、AIプロダクトは約70パーセント、AIソリューションは事業会社さんと共創、「共に創る」というかたちで、プロジェクト型の課題解決プロジェクトを遂行しています。

AIプロダクトは、AIソリューションでの課題解決成果をベースにした標準パッケージでのライセンスビジネスを主体としており、リカーリングモデルという特徴を持っています。

そのため、AIソリューションからスタートして、その成果をもってAIプロダクト化して、サブスクリプションで収益を上げていくというのが、ビジネスプロセス、ビジネスステップとなっています。

ビジネスフロー

三本:ビジネスフローは12ページ目ですね。AIプロダクトとAIソリューション、要は直販と言われる、事業会社さんと直接取引している部分が81パーセントです。AIソリューションで課題解決して、AIプロダクトで直接的に大手の事業会社さんと契約するというのが、非常に今まで多かったです。

一方、販売代理店を経由したAIソリューション、AIプロダクトの売上は、20パーセント程度になっています。

強み

三本:15ページ目は、当社の強みについて少し触れています。

「音×AI」のスペシャリストというところが、基本的には当社の強みです。当社のユニーク性であると、ご案内しています。

例えば左上の、人間の体の心臓、肺などの音、左下の畜産の動物の鳴き声、あと右上が、工場。産業音ですね。

これらの音を可視化して、分析して、人間の聴覚の代わりをするということを実現できているのが、当社の一番の強みである、「音×AI」のスペシャリストの所以であると、捉えていただきたいと思っています。

実績

三本:16ページ目と17ページ目が実績です。

先ほどお話しした養豚と、あとは浄水場での異音検知ですね。これは、ゲリラ豪雨などで排水ポンプがどんどん摩耗してきてしまうという、社会的現象でもあります。

17ページは、列車走行音ですね。そういったものの異音検知といったところで、実績を持っています。

ビジネスプロセス

三本:次は20ページ目ですね。ビジネスプロセスで表現したものです。

まず左側、AIソリューション領域は、先ほども申し上げましたが、事業会社さんとの共創プロジェクトを推進するという、共創フェーズを実行しています。

そして一番上の、プロダクト化フェーズ、自社製品開発といったところが、この共創フェーズで得た成功です。共創フェーズでのアウトプットをベースにしたプロダクト化を行い、右側の事業化、社会実装、サービス提供といったところで、ここがサブスクリプションモデルでのプロダクト化になります。

共創フェーズ、プロダクト化へのコンバージョン、AIプロダクトのプロダクトの量産。これをぐるぐる回していくのが、当社の強みです。

共創フェーズの実績

三本:続いて、22ページ目にちょっと移りたいと思います。

共創フェーズというのはどういう実績があるんですか? 最初の取っ掛かりの共創フェーズ、AIソリューション領域については、どういう実績があるんですか? といったところが、22ページ目に書いてあります。

例えば安川電機さんの工場における、出荷判定ですね。これは、音で不良を見分けます。あとはBenesseさんの通販のコールセンターの自動受付。あとはJR東日本さん、JR東西さんの車両や線路などの異常を音から検知するといったものが、AIソリューション領域の実績として推進しています。

2023年12月までで共創先が29社、プロジェクト件数で49件という実績を持っています。これらをベースに、どんどんAIプロダクトにコンバージョンしていくのが、ミッションになっています。

業績の推移

三本:26ページ目は、業績の推移について触れています。

左側が売上高の推移になりますが、去年は8億円で、売上も右肩上がりに伸びてきています。

右側は経常利益ですが、2021年末に黒転をしております。こちらもいろいろな戦略的支出はあるものの、黒字を維持して推移しています。

この一定の利益を出しながら、プロダクトを創出すると。共創プロジェクトで、事業会社さんとしっかりと手を組んで、プロジェクト型を進めていくといったところが大きな特徴かなと思います。

売上高

三本:29ページ目を見ていただきたいと思います。AIソリューションとAIプロダクトの売上高についてです。

今回、ここでお示ししたのは第2四半期ですが、今年度も同じような割合で推移していくのではなかろうかと思っています。

AIプロダクトの主な取引先、AIソリューションの主な取引先は、ロゴが示すとおりです。

事業環境については、32ページ目です。AIの国内市場は伸びていくといったところと、予兆検知、異常検知の市場、音声認識をベースにしたプロダクト、コールセンターといったところの市場も、それなりに伸びていく、または維持していきます。なので、この巨大なTAMで、きちんとビジネス化していけると思っています。

成長戦略

三本:35ページ目に移りたいと思います。35ページ目は、これからの成長戦略についてです。先ほどの当社のビジネスプロセスにプロットしたものがあります。

成長戦略の1が、クロスセル、販売代理店戦略というかたちで売上を伸ばしていくこと。成長戦略の2-①が、先ほどの共創プロジェクトをどんどん増やしていくこと。まず、我々の取っかかりである共創プロジェクト数を積み上げるということです。

成長戦略の2-②が、積み上げた共創プロジェクトから、プロダクトへのコンバージョン率を上げていくというところ。

最後は、成長戦略3として、生成AIの活用をやっていきます。

1つ目の、成長戦略1のところを少しご説明したいと思います。成長戦略の1つとして、販売代理店を伸ばしていくことを実行しています。

先ほど、直販が8割、販売代理店経由が2割とお話ししましたが、その2割分を伸ばしていくということで、ここにあるCTC(伊藤忠テクノソリューションズ株式会社)さま、MSYS(丸紅情報システムズ株式会社)さま、TMJ(株式会社TMJ)さまとアライアンス契約を締結しています。これらの会社をベースに、もっと我々のプロダクトを量産していくことに取り組んでいきたいと思っています。

成長戦略のもう1つである3は、42ページ目をご覧ください。今までは、プロダクトで認識認知をして、解析、予測をするといったところが最終的なアウトプットでした。しかし、最適解を生成するといったところで、生成AIを自ら活用し、モディファイすることにより、抜本的な省力化、省人化の可能性が徐々に広がってきています。生成AIをこれからどんどん活用していくというところにも、成長戦略を練っています。

売上の成長イメージ

三本:最後に、売上の成長イメージを44ページ目に記載しました。やはりAIプロダクト、AIソリューションからAIプロダクトにコンバージョンして、ライセンスビジネス、リカーリングビジネスをどんどん拡張させるところで、中期展望においては、このAIプロダクトを伸ばしていくことがとても重要であり、これを目標にしていきたいと思っています。また、音×AIのスペシャリスト集団でNo.1カンパニーになっていくのが、当社の目標としてあります。

事業KPI

三本:事業KPIを説明させてください。AIプロダクトのアカウント数、AIソリューションのプロジェクト数がとても重要だと思っています。AIソリューションのプロジェクト数をどんどん増やしていけば、AIプロダクトにコンバージョンして、アカウント数が増えていくので、この数をどんどん増やしていく。それが、先ほどのAIプロダクトのトップラインをしっかりと伸長させていくところにつながってくると思いますので、特に重要なKPIかなと思っています。

会社の概要説明のお時間をいただいてご説明しました。

質疑応答:初値への受け止めについて

三本:それでは、質疑応答に移らせていただきたいと思います。ご質問のある方は、どうぞよろしくお願いいたします。

質問者:本日の初値への受け止めを聞かせていただけますか。

三本:昨日の衆議院選の影響もあるのかなと思いましたが、マーケットの判断なので、しっかりと受け止めてやっていきたいと思っています。

質問者:初値がけっこう高く、終値が落ちた感じですが、その動きに対して最終的にどう感じているのか、教えてもらえますか。

三本:IPO特有のマーケットの特徴なのかどうかはわかりませんが、しっかりと謙虚に受け止めて、株価が上がっていけるマーケットとの対話をこれから続けていきたいなと思っています。そのマーケットの動きが非常に重要だということを思わされた1日でした。

質問者:今後、より株価が上がっていけるような取り組みをしていきたいでよろしいですか。

三本:はい。

質疑応答:注力していく市場について

質問者:音の可視化ということで、いろいろなことが考えられると思うのですが、御社が特に期待しているというか、有力視しているものが何かありましたら。プロダクトやサービスができたらこの市場はけっこう取れるな、みたいなことがありましたら教えてください。

三本:39ページ目に、今まで注力してきた業態・業界と、直近、ターゲットにしている業態・業界について書いています。人の声も重要なのですが、産業音や物の音は、非常に可能性が大きく、市場も大きいので、これからはそちらをターゲットにしていきたいと思っています。

ほかに注力していく市場は、やはりヘルスケア、メディカル、金融などです。声紋や認証を取るセキュリティでも、我々の技術的なニーズが大きいのではないかと思っているので、そのようなところをターゲットにしていきたいと思っています。

あとは、例えば高速道路だとか、いろいろなものの社会インフラの保安保全をしていかなければいけないと思うので、そこで音のニーズも非常に大きいのかなと思っています。

例えばトンネルの打音などに代表されるような、音によって異常を検知したり、危険を予知したりなど、非破壊(検査)みたいなところが非常に当社としてもやる意味があるし、市場やビジネス規模も非常に大きいのではないかと思っています。

質疑応答:投資の予定について

質問者:今後、基本的に黒字を維持していく、安定的に維持していくということで、ここから投資をけっこう大きくして、赤字を掘る時があるかもしれないとか、そのあたりをおうかがいできますか。

三本:基本的には、利益を出して、その利益の中から再投資をしていきます。

質疑応答:グローバル展開の予定について

質問者:音声とAIで、音声を認識してそれをどうこうするという話が世の中では多い中で、御社の技術は言葉に転換するとか、認識するということに閉じない部分で、比較的いろいろ汎用性があると思います。

例えば言葉と関係なく、世界展開が比較的できやすいのかなと捉えるのですが、資料によると、そのあたりの話があまり出てきていないと思います。それは国内の需要が大きいので、海外まで手を回すのはまだ優先順位的にちょっと先になるという判断なのか、そのあたりはいかがですか。

三本:おっしゃるとおりなんですね。言葉だと国境がありますが、産業音、動物の鳴き声、人間の心臓の音などには国境がないので、しっかりとグローバルに出ていきたいと考えています。そのようなニッチな分野では、GoogleやGAFAなども音の収集をしてこないと推測していて、ぜひグローバルを考えていきたいのですが、今はまず国内でしっかりとIPOをして認知度を上げた上で、そのようなグローバルに出ていくためのパートナーなど、そういった方々とうまく巡り合って、チャンスがあれば出ていきたいなと思います。

一昨年、台湾の「COMPUTEX」で、異音検知の可能性をヒアリングをしてまいりました。そういった部分のニーズはあるんだろうなとは思うのですが、やはり海外に出ていくためには、きちんと拠点を作って出ていくとか、そういうことを考えていかなければいけないので、まずはパートナー発掘をして、しっかりやりたいなと思います。

質疑応答:グローバル展開の時期について

質問者:グローバル展開は中長期的な成長戦略の一部に含まれているのかどうか、もしグローバル展開するのであれば、いつぐらいを想定されているのか教えてください。

三本:個人的には、やはり5年以内にはグローバルに対して、しっかりと何か布石を打ちたいなと思います。

グローバルに出るためには、グローバル人材の採用だとか、グローバルのどこの拠点に、どういうパートナーさんとしっかりと出城を作るのかとか、そういうことを考えていく必要があります。安易にグローバル進出です、産業音には国境がないんですみたいなことを、今まではなかなか大きく言えなかったので、しっかりとそういう筋書きを作った上で、発表していければなと思います。

質問者:5年以内のグローバル進出を、今、会社として中長期的な戦略を描いている?

三本:すみません、会社ではなくて個人としてです。

質疑応答:強化していきたい領域について

質問者:先ほど、有力視されている分野がけっこうたくさんあるとお話ししていましたが、産業音の部分で、今後、特に成長戦略として、ここを特に強化していきたいという領域があれば教えてください。

三本:もちろん、今、安川電機さんでやっている工場の不良品検査は、東欧でも製品判定、不良品判定を、まだまだやっているので、まずはそういう産業機器メーカーさんが直近のターゲットになるかなと思います。

質問者:要するに製造業ですか。

三本:製造業ですね。

質疑応答:競争優位性について

質問者:産業音の部分で、競合と比べて御社の優位性はどういうところにあるんですか?

三本:産業音の場合、周りの環境音、ノイズも非常に多いんですね。ノイズも含めた中で、しっかり音響モデルを作れるというところが1つ当社の大きな特徴かなと思っています。

ノイズを、信号処理やマイクのデバイスから分離をして、そのターゲットとなる音を集音して、モデルを作っていくという手法はあるのですが、私たちは周辺環境音も含めて、モデリングして、クラスタリングして、ターゲットの音の特徴量の変位をしっかりと抽出できます。それが1つ大きな特徴かなと思います。

質問者:要するにノイズも考慮した上でのモデル作りができる、ここの技術的な部分が競合他社はできていないということですか?

三本:産業音だとか、そういった大量なデータを、集音・収集をしているという企業が、今あまりないので、競合他社では今はできていないと思います。

伊藤かおる氏(以下、伊藤):少し補足させていただくと、他社さんは、1個1個のユースケースに対して、個別に開発をされたプロダクトを提供されているところが多いのですが、弊社の異音検知はプラットフォームというかたちでご提供していて、そのプラットフォームの中にある異音検知をするいろいろな手法を元に、いろいろなAIモデルを作る基礎の部分があって、そこで学習をしたモデルをプラスチューニングしてご提供しているんですね。

異音検知の世界は、量的にも、まだ走りというか、始まったばかりというところがあると思っていて、こういうプラットフォームで提供しているベンダーさんは、まだ弊社以外に他に聞いたことがないというのが、もう1つの弊社の特徴なのかなと思っています。

質疑応答:プラットフォームについて

質問者:プラットフォームというのは具体的に、さまざまな産業音が収録されているプラットフォームですか?

伊藤:最終検査用として私たちは「エディション」と呼んでいるのですが、1つの不良品検査に対して、製造業のみなさんにお使いいただくようなものとか、あとはヘルスケアだと、養豚での豚の咳を検知するようなものは、それ用のエディションを作って、それをプラットフォームで展開しています。

ソフトウェアとさまざまな産業音が含まれていて、それを統合的にプラットフォームという言い方をしています。

質疑応答:グローバル展開以外の中期成長戦略について

質問者:中長期の成長戦略でグローバル展開以外に考えているものはありますか?

三本:やはり規模の拡大ですかね。現状のAIソリューション、AIプロダクトの規模を拡大していくための1つとして、まずグローバル展開を模索しているので、さまざまな業態・業界に拡張していくことが中長期戦略になっています。

質疑応答:目標とする社員数について

質問者:今、御社の社員は50人ぐらいですかね。規模を拡大するために、5年後は何人ぐらいを目標としているか、具体的な目標はありますか?

三本:5年だから、だいたい100名弱ぐらいですかね。