2024年4月期 第4四半期決算
田角陸氏(以下、田角):みなさま、本日はお集まりいただき、ありがとうございます。ANYCOLOR株式会社代表取締役CEOの田角です。それではまず、2024年4月期第4四半期および通期の業績について、取締役CFOの釣井からご報告します。
釣井慎也氏(以下、釣井):取締役CFOの釣井です。私より業績についてご説明します。
第4四半期の業績は、売上高が87億2,200万円、営業利益が33億2,100万円で着地しました。前年同期比では売上高・利益ともに大きく成長できており、特に売上高はコマースの領域が強かったです。
中身としては、2月に開催した「にじさんじ」の周年グッズの販売や4月に開催した人気VTuberのイベント関連グッズ、音楽CDなどがよく売れた四半期となりました。
通期の売上高は319億9,600万円、営業利益は123億6,200万円となり、当初の期初業績予想からはやや割った数字となっています。
第4四半期は、期末付近によく売れるグッズを発売できたことで売上が伸びましたが、最後のほうに売ったグッズは一部受注で積み上がり、発送の関係で第4四半期に計上できなかった部分がありました。また、「NIJISANJI EN」関連のグッズおよびプロモーションが期初の想定より割り込んだところがあり、期初業績予想をやや割った数字となりました。
直接変動費の変動費率は44.8パーセントとなり、前四半期や前年度同期比で良い水準だったと思っています。背景としては、コマースとイベントの原価率の改善がありました。コマースは、2月および4月から開始している販売商品の売値の見直しや、発注先の選定などを丁寧にしっかりと行った結果、製造原価率を適切にコントロールできたと思っています。
イベントは、第3四半期に「にじさんじフェス」を行いました。フェス形式というやや特殊な形態のイベントで、収益性が悪かったところもありますが、第4四半期に行った音楽イベントは利益率も含めてしっかりと良い結果が残せたと考えています。
売上高推移(四半期)
領域別にご説明します。まずライブストリーミングの領域です。第3四半期に「にじさんじフェス」の関係でSuperChatが大きかった反動減が一部あり、足元ではやや数字が落ち込んでいますが、これまでと遜色ない水準だと考えています。
コマースは、先ほどお伝えしたとおり、第4四半期に国内の「にじさんじ」のグッズ関連全般がよく売れました。
イベントは、第4四半期に「ChroNoiR(クロノワール)」「ROF-MAO(ロフマオ)」といった国内の「にじさんじ」の主要人気VTuberユニットに関連するライブイベントを開催しました。いずれも良い結果を残せたと考えています。
プロモーションも同様に、過去最大となりました。第4四半期に大型の案件があったわけではありませんが、案件数の伸びに牽引されてプロモーションの数字も高くなっています。
グループ別では国内の「にじさんじ」の勢いが引き続き堅調であると考えています。上位のVTuberユニットを中心として、高い伸びを継続しています。来期以降も国内の「にじさんじ」の人気層を中心にしっかりとした成長を作っていきたいと考えています。
営業利益推移(四半期)
コスト面についてご説明します。直接変動費率は、先ほどお伝えしたとおり、44.8パーセントと良い結果だったと思っています。引き続き、このような水準を継続していきたいと思います。
他の項目としては、決算賞与を第4四半期に一括で計上しており、2億円強の決算賞与を支払っています。また、今秋からスタジオの新設を予定しており、すでにそれに伴う関連費用が発生してきている結果、オフィス関連費用が増加しています。
加えて、一過性の販促費を第4四半期に計上した結果、その他原価・販管費が前四半期と比較して絶対額が大きく増加しましたが、売上高の増加によって適切に吸収できたと考えています。
結果として、営業利益率は38.1パーセントとなりました。決算賞与の関係で第4四半期は利益率が悪い傾向にありますが、その中では良い数字だったと考えています。
VTuber数およびANYCOLOR IDの推移
VTuber数とANYCOLOR IDの推移です。VTuber数は、第4四半期に国内の「にじさんじ」において3名のデビューと2名の卒業、「NIJISANJI EN」では2名の卒業がありました。
デビューに関しては、「3SKM」という3名のVTuberがデビューしています。我々は、デビュー時にウェルカムグッズとして新人VTuberのグッズを出すことを慣例としています。ウェルカムグッズの売れ行きを見ると、直近の数年でデビューしたVTuberと比較しても非常に良い結果が出ており、今後の活躍や貢献がとても期待できると考えています。
従業員数の推移
従業員数の推移です。第4四半期の4月に新卒採用で10名程度を迎え入れたことで、大きく増加しました。
内訳としては、グッズ企画や法人営業など、足元で業容が拡大してきていることを背景とした人員増に加え、新規のVTuberプロデュースに関与するプロジェクトマネージャーやVTuberのマネージャー職種、スタジオエンジニアなどを中心に、幅広い人員を迎え入れています。
通期業績サマリー
通期業績についてご説明します。先ほどお伝えしたとおり、売上高は319億9,600万円、営業利益は123億円6,200万円、当期純利益は87億2,600万円で着地しました。
ビジネス領域別の売上高推移
領域別に見ると、引き続きコマースを中心として成長しています。また、プロモーションのBtoB領域もしっかりと伸びてきているところです。コマースとプロモーションを中心とした成長は、来期以降も継続すると考えています。
加えて、イベント領域もまだ伸びしろが大きいと考えています。今期はイベント領域もしっかりと伸ばしていきたい考えです。
四半期売上高推移
四半期の売上高推移です。先ほどお伝えしたとおり、コマースの売上寄与度が大きく、全体売上の6割程度を占めています。
コマースの売上は、いつ・どのような商品を発売するかによって変動が非常に大きくなる傾向があります。また、毎年決まった時期に決まった商品を販売しているわけではないため、明確な季節性も見られません。
2024年4月期は第1四半期と第4四半期が良い数字でしたが、第2四半期は年度平均から大きく下回り、第3四半期もそれほど良くない結果でした。一方で、2023年4月期は第3四半期が突出して良い数字となっています。
年度単位で見ても四半期のボラティリティが出やすいのが、コマース中心の収益構造となっています。
2025年4月期 業績予想
今期の業績予想です。全体としては、これまで継続してきた人気VTuberユニットのプロデュースを中心とした施策を継続していくことで、VTuberごとの収益向上や、継続的な新規デビューなどを通じた新たなファン層の獲得を通じ、成長していきたいと考えています。
領域別では、コマースを中心として、プロモーション、イベントといった領域も伸ばしていきたいと思っています。
グループ別では、国内の「にじさんじ」の伸びが引き続き堅調であり、伸びしろが非常に大きいと考えているため、国内の「にじさんじ」の人気VTuberを中心に事業成長を行っていきたいと考えています。
先ほどお伝えしたとおり、昨年は業績のボラティリティが特に顕著だったと考えています。半年以上前から今期の業績計画を立てるにあたり、コマースの販売スケジュールの平準化・適正化にしっかりと取り組んできました。今期は昨年と比較すると、業績のボラティリティは落ち着く計画となっています。
上期と下期の内訳は、スライドに掲載しているとおりです。
2025年4月期 第1四半期業績見通し
第1四半期の業績見通しは、スライドに記載のとおりです。2024年4月期第1四半期は、特にコマースにおいて非常に多くの人気施策が集中した期でした。そのため、昨年は第1四半期に偏重していましたが、今期は平準化するとともに、昨年あまり良い数字が残せていなかった第2四半期と第3四半期にさまざまな施策を移行し、施策のリバランスを行っています。
結果として、現在進行している第1四半期は、前年同期比で減収減益を見込んでいます。
スライド右側には、すでに公表済みの足元で取り組んでいる施策例を掲載しています。足元では良いスタートを切れていると考えています。
事業概要
田角:中期的な成長に向けた経営方針についてご説明します。まず簡単に事業概要をお話しします。
当社は2017年に創業し、2018年からVTuber事業として「にじさんじ」プロダクションを開始しました。スライドに掲載しているように、男性や女性のVTuberのほか、男女以外の性別のVTuberや人間以外のキャラクターを用いたVTuberなど、多種多様なVTuberが所属している国内最大級のVTuberプロダクションです。
VTuberは、「YouTube」上で生放送に加えて音楽、番組やショート動画などの配信コンテンツでファンコミュニティの醸成を行い、コマースでのグッズ販売やライブイベント、プロモーションなどを行うエコシステムを構築しています。
長期業績推移
長期の業績推移です。VTuberの黎明期である2017年に創業し、VTuber事業を開始しています。創業以来、堅調に業績を伸ばし、国内最大級のVTuberプロダクションに成長してきました。
当社のビジネスモデル
当社のビジネスモデルについてご説明します。VTuberとしてのデビューまでの流れは、1万人ほどの応募があるオーディションからVTuberの候補生をピックアップし、歌唱や演技、トーク、リアクションなどのレッスンを行います。
コンプライアンスや炎上対策なども学び、中長期的に活躍していくVTuberの輩出を目指して、半年から1年半ほどの育成期間を経て数人がデビューします。
デビュー後には、先ほどもお伝えしたライブストリーミングやSNS活動を中心に、4つの事業でビジネスモデルを展開しています。
売上の構成比は、ライブストリーミングが16パーセント、コマースが59パーセント、イベントが6パーセント、プロモーションが18パーセントです。
各ビジネスモデルの四半期変動について
先ほど釣井からお伝えしたとおり、四半期の変動は一定程度あります。
スライドに四半期単位での売上高の変動推移を記載しています。ライブストリーミングやプロモーションは季節性が一部ありますが、安定的に推移しています。コマースやイベントは、先ほど釣井からお伝えしたとおり、施策の有無や偏り、起用するVTuberなどに応じて四半期で大きく変動することがあります。
短期的な売上変動以上に、VTuber一人ひとりの成長を通して継続的に伸びていく収益基盤の拡大を行っていくことで、長期的に成長していきたいと考えています。
当社が属するマーケットの環境(1)
当社が属するマーケットの環境です。当社はVTuber市場に属しています。スライド左側の棒グラフをご覧ください。国内のVTuber市場規模の予測として、2023年度で800億円ほどあると言われています。
スライド右側の棒グラフは、世界のバーチャルアイドル・VTuberの市場規模予測です。2023年は10億8,270万ドルと言われており、2029年は約4倍の40億4,433万ドルまで市場が成長していくというレポートが出ています。
VTuber市場は非常に大きな成長が期待されていると認識しています。当社としても、市場を牽引していくようなかたちで事業を展開していきたいと考えています。
当社が属するマーケットの環境(2)
VTuber市場が成長する中で、売上シェアを見ると、スライド左側の円グラフのとおり、当社ともう1社で半分以上を占めています。
その背景については、右側に記載しています。当社の「にじさんじ」のファンコミュニティがあるからこそ、既存のVTuberも新人としてデビューするVTuberも、より人気になりやすく、より自分の望む活動がしやすいと思っています。
基盤的な観点では、VTuberはリアルタイムなモーションキャプチャーを行うため、VTuberならではの技術やスタジオ、配信機材が多く存在します。このような高品質なVTuberコンテンツを提供できる環境も、大手のVTuber企業に集中が見られる背景としてあると考えています。
これまで数多くのエンターテインメント企業がVTuber市場に参入してきましたが、2社で市場のシェアを半分以上占めている状況になっています。このことからも、当社のような大手VTuberプロダクションが既存のコミュニティを通して優位性を発揮しやすい市場であると考えています。
当社の特徴(1) 多様なファンベース
当社の特徴の1つ目として、多様なファンベースについてご説明します。多種多様なVTuberが所属しているからこそ、若年層・Z世代を中心に、性別や年齢層の幅広いファンベースを構築しています。
スライド左側の円グラフは、グッズ購入者の性別の割合です。特に購買層において女性のファン層が多いところが、当社ならではの特徴です。
当社の特徴(2) 幅広いVTuberに収益が分散
2つ目の特徴として、幅広いVTuberに収益が分散しています。スライド左側の円グラフは、デビュー年度別の収益貢献度です。デビュー年度ごとにVTuberがどれくらい収益に貢献しているかを示しています。
昔から所属しているVTuberも、最近デビューしたVTuberも、デビュータイミングにかかわらず、それぞれのVTuberが一定の割合で収益貢献しています。
スライド右側のグラフは、VTuber当たりの収益貢献を示しています。トップ10のVTuberで全体の約30パーセント、トップ30で約50パーセントほどです。
他のエンターテインメントの領域であるゲームやアニメ、または他のタレント事務所などと比較しても、1つのコンテンツや1人のタレントに大きく依存した収益状況というよりは、VTuber一人ひとりが幅広く収益に貢献しています。
このように幅広いVTuberに収益が分散していることで、より持続的かつ安定的に成長できる体制になっていると思っています。
中期経営目標
ここからは、中長期的な成長に向けての戦略についてお話しします。2024年4月期は、売上高は319億9,600万円、営業利益は123億6,200万円で着地しました。
中長期の目標として、3年後の2027年4月期においては、売上高600億円、営業利益240億円で増収増益を目指していきます。年平均成長率は、売上高で23パーセント、営業利益で25パーセントを目標として取り組んでいきます。
中期経営目標における主要方針
このような目標を達成していくための主要な方針についてです。所属するVTuberの数と所属しているVTuber1人当たりの収益は、それぞれ年平均成長率10パーセントから15パーセントを継続していきたいと考えています。
所属するVTuberの数を成長させていくためには、VTA(バーチャル・タレント・アカデミー)の取り組みの強化や、デビュー企画、オーディション企画などでこれまでのファン層を拡大できるような企画を行っていきます。
VTuber当たりの収益の拡大という観点では、多様なコンテンツ展開に加え、ユニットプロデュースの展開や、コマース領域における生産ラインの拡大などに取り組んでいきます。
このように新しい施策や新しいラインを増やし、それぞれにおいてクオリティの高いコンテンツを提供していきますが、そこで必要になってくるのが事業基盤の強化です。まずはそのようなところに携わる従業員の増員、およびスタジオの増強に投資を行うことが主要な方針となっています。次ページからそれぞれの詳細についてご説明します。
VTuberを支える会社基盤の強化
まず、従業員の増員です。新規VTuberのプロデュースやユニットプロデュースの促進、コンテンツの増加、あるいは事業として生産ラインや企画を増やしていくために、コマース領域やプロモーション領域におけるビジネス人員の増加を考えています。
また、コンテンツのクオリティを上げ、コンテンツの数を増やしていくという観点では、デザイナーやエンジニアなどを中心に継続的に増員していきます。
これにより、先ほどお伝えしたVTuberの数と収益性への施策をそれぞれ行っていくことで成長することを基盤として考えています。
配信スタジオへの設備投資
配信スタジオへの設備投資についてです。これまでの3倍の規模に拡張することを計画して進めている状況です。スタジオは、生放送や収録コンテンツなどを作るのに必要なラインだと考えており、規模が増えることで、取り扱えるコンテンツの数が増えていきます。
それに加えて、モーションキャプチャーにおいても、レコーディング/MAにおいても、機材の導入などによってさらにハイクオリティなコンテンツを提供できるような体制を作っていきます。
VTuber事業の「にじさんじ」におけるファン層の拡大に貢献できるようなコンテンツの提供ができるスタジオ作りなどを進めている状況です。
VTA (Virtual Talent Academy) の取り組み強化
VTA(バーチャル・タレント・アカデミー)の取り組みについてです。先ほどお伝えしたとおり、毎回のオーディションで約1万人に応募していただいています。そこから年平均10パーセントから15パーセントほどの新規デビューを目指して、VTuberの候補生を年間50人から60人ほど選定しています。
そのように選定した候補生に対して、演技やボイストレーニングのレッスン、または炎上対策やコンプライアンスなどの座学も含めて、中長期で活躍できるようなVTuberのプロデュースを行うための体制を作っています。
VTuberの候補生の受け入れ人数をしっかりと拡大し、中長期で活躍できる人材の発掘をより行いやすい環境にしていくことで取り組みを強化していきます。
スライド右側に、最近取り組んでいるユニークなオーディション企画を掲載しています。マスコットライバーのオーディションでは、いわゆるファンシーキャラクターの領域で活動するVTuberを目指したい方を募集しています。
また、スーパーエリートライバーと称するオーディションは、いわゆるビジネスマンや士業の方など、これまでVTuberとしてあまりいなかったような人物像の方に取り組んでもらうための新しい企画です。これまでよりも幅広いファン層にアプローチできるような人材確保のための企画を行っています。
このような取り組みは、今挙げた2つ以外にも足元で取り組んでいます。今後もオーディション企画や新人の企画で新規のファン層にアプローチできるような人材を獲得できるように、取り組みを強化していきたいと考えています。
ユニットプロデュースの強化
ユニットプロデュースの強化です。VTuberは、基本的には個人で「YouTube」などのSNSで配信活動を行い、個人の活動を展開しています。
それに加えて、ユニットとしての活動もあります。例えば4人ユニットの活動として、音楽や番組、グッズ、イベントなどの企画を行っていくことで、個々で活動するよりも違ったファン層の獲得につながっていることが実感として得られています。
ユニットとしての活動で新しいファン層の開拓ができ、そのファン層が個人のVTuber活動に返ってくる、あるいは個人としての活動がユニットとしての活動に活きてくるというサイクルが回ってきます。これにより、VTuber一人ひとりの活動の幅や成長、ひいては収益性などにつながってくると考えています。
今後、年間1ユニットから2ユニットほどがユニットとしてのコンテンツ制作を開始できるように体制を構築し、ユニットプロデュースの強化を行っていこうと考えています。
コマースの展開強化
コマースの展開強化についてです。当社の事業は、コマースによる収益が約6割を占めています。ここの改善・拡大に取り組んでいきたいと考えています。
1つ目は、製品の企画・製造ラインの拡大です。先ほどお伝えしたとおり、製品を企画・進行できる人員の拡大により、製造や企画のラインを増やしていきます。
2つ目は、適切な販売スケジュールの管理です。やはり売れる製品を企画していくためには、十分なリードタイムが必要になってくると考えています。十分なリードタイムを確保しつつ、最適な頻度で販売を行っていけるような管理を行っていくことで、機会損失を低減していきたい考えです。
3つ目は、時流に合わせた商品企画です。最近はぬいぐるみが流行しているため、当社に所属するVTuberのぬいぐるみ「にじぱぺっと」を販売し、「チェキ風カード」をより高品質な製品とするために、本物の「チェキカード」を販売しています。
このように、ファンの方にさらに求めていただけるような、トレンドに合わせたより高品質な製品を販売・企画していくことで、コマースの展開を強化していき、1人当たりの収益をさらに改善していきたいと考えています。
事業投資と株主還元の基本的な考え方
キャピタル・アロケーションのイメージについてお話しします。中期経営計画の中で、2027年4月期までに累計の営業キャッシュフロー約400億円を目標として掲げています。現時点の現預金は約160億円です。
こうした資金をどのように配分していくかですが、まずはVTuber事業への成長投資の観点で、先ほどお伝えしたとおり、人材への投資を行っていくことにより、取り扱える施策の数を増やし、クオリティの高いコンテンツを作っていくことで成長させていきます。ただし、こちらは基本的には営業費用で計上されるものであり、営業キャッシュフロー以前で計上済みです。
さらに、先ほどお話ししたスタジオへの投資、あるいは「にじさんじ」の派生事業としてアニメやゲームなどのメディアミックスの展開、その他サービスの開発への投資に30億円から50億円ほどを考えています。そして、手元現預金やM&A投資枠として約200億円を見込んでいます。
残った300億円以上は株主還元に充てていきます。基本的には自己株式取得で対応する予定です。こちらは、2024年6月13日から8月31日までの間で、市場買付によって約75億円相当の自己株式を取得することを取締役会にて決議しています。
M&Aに関する方針については、先ほどお話しした手元現預金、M&A投資枠という資金に加えて、負債などを活用していくことにより、最大で約500億円のM&A予算があると想定しています。中期経営目標の中にM&Aを織り込んでいるわけではありませんが、実際に良い案件が動く場合には検討していきたいと考えています。
VTuber事業は、キャラクターやタレントとしてのIPをプロデュースし、IPを成長、収益化させる機能を持った事業だと考えています。
M&Aの想定対象としても、エンターテインメント領域の中で、IPパイプラインを獲得できるような企業や、IPを成長させられるような機能、収益化させられるような機能を持っている会社を考えています。VTuberとのシナジーに加え、会社として取り扱えるIPの数や種類、機能の数を増やしていくことを想定しています。
長期ビジョン
最後に、長期ビジョンです。VTuberの領域は、日本のアニメ市場というところで、伝統的なテレビ、ラジオ、映画などのメディア形態から、SNSや「YouTube」などへの変化によって生まれた市場だと考えています。そのため、VTuberが目指していく領域としては、まずは国内のアニメ市場だと考えています。
また、VTuberはタレントとしての特徴とキャラクターとしての特徴の両方を持っている存在だと思っています。
そのため、例えばタレントとしてのアイドル的な活動や、アーティスト、シンガー、コメディアンのような活動なども含めて活動の幅を増やしていくことにより、VTuberをさらに好きになってくれるファン層の裾野を広げていきます。
それに加えて、先ほど派生事業としてお伝えしたところとして、キャラクターの性質を活かしたゲームやアニメなどのメディアミックスの展開により、VTuber市場、あるいはVTuberに関連する市場を拡大していくことで発展していきたいと考えています。
さらに、日本のアニメコンテンツの領域は海外での需要も非常に多くあると考えています。VTuberの海外展開にもしっかりと取り組んでいくことで、VTuber市場の拡大を目指していきます。
日本を代表するコンテンツとしてVTuberが存在するような状況を作れるように、周辺の派生領域も含めて取り組んでいきたいと思っています。会社としては、日本を代表して世界で活躍できるような企業を目指していきたい考えです。
質疑応答:事業成長に資する投資について
釣井:「中期経営計画の目標についてです。営業利益率の改善は織り込んでいない想定ですが、タレントのサポート体制やスタジオの拡充など、中長期での事業成長に資する投資は織り込んでいますか?」というご質問です。
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