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青木淳一氏(以下、青木):みなさま、本日はお忙しい中ご出席賜りまして、誠にありがとうございます。室町ケミカル代表取締役社長の青木と申します。よろしくお願いいたします。ただいまから、2023年5月期第2四半期の当社決算概要についてご説明させていただきます。

本日のご説明の流れとしては、簡単に当社についてご紹介したあと、第2四半期決算概要、業績予想、各事業の開発状況についてご説明します。

会社概要

まず、会社概要について簡単にご説明します。当社は1917年1月に売薬の製造販売を目的として創立しました。戦時に一時廃業しましたが、1947年に再設立し、創立から100年以上、設立から70年以上経過した会社です。

一昨年の2021年2月に上場し、現在は東証スタンダード市場に上場しています。本社は福岡県大牟田市にあり、従業員数は197名です。拠点は本社以外に東京・大阪・埼玉・茨城にあります。

事業セグメント

事業セグメントについてです。当社は、医薬品事業・健康食品事業・化学品事業の3つの事業で構成されています。売上構成比率は、医薬品事業が51.3パーセント、健康食品事業が14.5パーセント、化学品事業が34.2パーセントとなっています。

それぞれの事業内容として、医薬品事業では医薬品の有効成分となる原薬を主に取り扱っており、ジェネリック薬用が大半を占めています。

健康食品事業では、ゼリータイプの健康食品の企画・製造を行っており、スライド下部に掲載している写真のような、スティックゼリーの製品が中心になります。OEM・ODMを中心として、主な販売先は健康食品メーカーや企画会社、通販会社です。最近では、製薬会社や食品会社からの引き合いも徐々に増えてきています。

化学品事業は売上の約8割が液体処理に関するものです。イオン交換樹脂や分離膜をお客さまの目的に合わせて選定し、販売しています。このほかに、使用後のイオン交換樹脂・分離膜の再生や、装置の設計販売、当社設備を使用した二次加工などを行っており、多岐にわたる分野へ幅広く販売しています。

当社3事業の特徴

それぞれの事業の特徴についてご説明します。医薬品事業は、商社機能とメーカー機能を併せ持ち、輸入・製造・加工・分析とトータルサービスを提供できることが強みです。

仕入先からそのまま自社試験を行い販売するケースもあれば、自社工場で合成や加工を行い販売するケースもあり、お客さまの要求に合わせたさまざまな対応が可能です。双方の機能を活かし、より良い製品・サービスを提供できるように引き続き努めていきます。

健康食品事業では、主にスティックゼリータイプの健康食品を製造しています。スティックゼリーの健康食品は、おやつ感覚でおいしく摂取できることが魅力の1つです。

例えば、健康・美容成分には味や匂いが強く、食べづらいものがあります。当社はそれらを包み隠す「マスキング技術」でおいしい製品に仕上げる能力をお客さまから評価していただいています。

化学品事業は、液体処理がメインになります。液体処理で汎用的なのものは、不純物の入っていない水である「純水」の製造用途ですが、当社はそれ以外に排水の処理や薬品の精製など、特殊な用途にも対応できる技術を持っており、付加価値の高い分野へ力を入れています。

パーパスと経営理念

当社のパーパス、いわゆる存在意義についてです。スライドに記載のとおり、「健康」と「環境」をテーマに、社会貢献していく会社であり続けたいと強く思っています。

医薬品事業および健康食品事業で健康を、化学品事業で環境を、健康・環境分野で社会の抱える問題に向き合い、それらを解決することで、経済的・社会的価値を向上して継続的に成長していきたいと思っています。

当社の経営理念については、スライド下部に記載のとおりです。

損益計算書

ここからは、2023年5月期第2四半期の決算についてご説明します。最初に、損益計算書です。結論として、当第2四半期累計期間は前年同期と比較して増収減益となりました。

売上高は31億2,100万円、前年同期比11.2パーセントの増加です。医薬品事業の輸入原薬が好調に推移した点が主因となっています。また、製品・商品の売上構成の変化や原材料費などの上昇により、売上原価も上昇しています。販売費、一般管理費については前年同期比で増加していますが、売上強化策の一環として期初の計画どおりに進行中です。

結果として、営業利益は2億2,500万円で前年同期比30パーセント減、当期純利益は1億4,900万円で前年同期比43パーセント減となりました。

営業利益 増減要因(前年同期比)

営業利益の増減要因です。営業利益は前年同期比で9,700万円減少しています。減少の主な要因は、商品の増加、製品の減少による売上構成の変化と、先ほどお伝えした原材料費などの上昇に加え、健康食品事業の受注減による工場稼働率の低下で原価率が上昇したためです。

販管費については、新型コロナウイルスの感染に対する行動制限緩和に伴い、旅費交通費や特に展示会などへの積極的な展開により増加しています。ただし、現在までは期初計画どおりに推移している状況です。

営業利益 増減要因(事業別・前年同期比)

営業利益のセグメント別の増減要因です。前年同期比で見た場合、医薬品事業の売上高は増加しましたが、売上構成の変化により、営業利益の増加幅は2,200万円と若干少なくなっています。

健康食品事業は、売上減少による工場稼働率の低下で原価率が上昇し、7,500万円の減少となりました。

化学品事業は、売上構成の変化とイオン交換樹脂などの仕入価格上昇分の製品価格転嫁がまだ途中であり、その影響などで1,100万円の減少となっています。

セグメント別実績 医薬品事業

各セグメントの状況についてご説明します。まずは医薬品事業についてです。売上高は17億7,800万円、営業利益は2億8,300万円と増収増益となりました。通期の売上予想に対する進捗率は56.5パーセントです。

輸入原薬の主力である抗てんかん剤原薬をはじめ、ヘルペス感染症治療薬の原薬などの売上が堅調に推移しています。一方、受託加工品については、前年度のスポット品が消滅したことにより、売上は前年比で減少しています。

なお、輸入原薬に関しては輸出元の原材料費高騰などで仕入価格が上昇しており、この上昇分については随時販売価格への転嫁を進めています。

セグメント別実績 健康食品事業

健康食品事業についてです。売上高は3億7,700万円、営業損失は3,800万円、通期の売上予想に対する進捗率は44.4パーセントと、苦戦しています。

要因として、1点目に前年度に販売を開始したOEM新商品の受注減に加えて、想定以上に既存製品の売上が減少したことが挙げられます。2点目に、新規案件の上市は進んでいますが、既存品の減少分をカバーしきれていないという状況です。しかし、継続して引き合いはきているため、今後、受注量が見込める新商品の上市を優先的に引き続き進めていきます。

健康食品事業のプラス要因として、テレビ通販で販売している自社商品の売上は堅調に推移している点が挙げられます。

セグメント別実績 化学品事業

化学品事業についてです。売上高は9億6,500万円、営業損失は1,900万円、通期の売上予想に対する進捗率は46パーセントとなりました。概ね計画どおりの進捗となっています。

傾向として、1点目に今期は前年度のような大型装置案件をまだ受注できておらず、装置関係の売上は減少となっていますが、一方で、受託加工や装置メンテナンス等のその他の売上が増加し、これらをトータルすると前年同期並みの売上高となっています。

2点目に、引き合いや依頼件数が非常に増加してきているため、需要が見込めるイオン交換樹脂や、装置に関する開発関係費用を増強しています。このため、営業利益は減少しています。今後の予想としては、主力のイオン交換樹脂を中心に堅調に推移する見込みです。

貸借対照表

貸借対照表です。棚卸資産、売掛金増加の主たる要因は、輸入原薬の取引増加にあり、その結果、流動資産が増加しました。その他借入金については、長期借入金が増加し、短期借入金が減少しています。

自己資本比率は35.8パーセントとなり、前期末比0.8ポイントの増加となりました。

キャッシュ・フローの状況

キャッシュ・フローの状況です。現金および現金同等物の第2四半期末残高は、前年期末比で9,900万円の減少となりました。前述の輸入原薬の受注増・単価上昇により商品在庫が大きく増加し、かつ売掛金も増加したため、営業キャッシュ・フローが一時的に減少しています。

この他、投資キャッシュ・フローは、今期の主な設備投資として、基幹システムの更新を実施しています。

通期業績予想

通期業績予想についてです。結論として現時点では期初計画どおりとし、修正は行っていません。上期、下期の売上のズレについては、前倒しによる増加が若干あり、第2四半期の業績予想は修正したものの、通期としては概ね期初計画どおりに進行中です。

FY2025 数値計画(中期経営計画2025)

中期経営計画について、発表後の変更はありません。計画どおりに進行中です。

成長戦略・体制強化(中期経営計画2025)

成長戦略・体制強化についても、中期経営計画発表後の変更はありません。スライドに記載の内容で進行中です。

取り組み状況・トピックス

各事業の取り組み状況・トピックスです。医薬品事業は、国内における原薬のシェアが順調に拡大しており、8品目で国内トップシェアを獲得しています。

受託合成は新たに3品種が開発最終段階に入り、設備投資を本格化しています。まずは1品種ですが、ほかの2品種についても、近い将来、断続的に設備投資を行うことで量産体制を構築していきます。

健康食品事業は、紫外線対策を謳える機能性食品対応ゼリーの開発が完了し、近々販売申請を予定しています。また、高齢者向け経口栄養食の販売を行う企業4社に対し、ゼリーを提案し、評価していただいている最中です。

化学品事業では、高架橋度および高純度イオン交換樹脂の開発が順調に進行中です。高架橋については、複数の火力発電所への提案を進め、一部で実証実験を開始しています。高純度については、半導体などに使用する精製薬品メーカー複数社に提案し、今後はさらに拡大していく予定です。

取り組み状況・トピックス

輸入原薬に関して、新型コロナウイルス感染症の状況が変化し、海外渡航が再開されたことで、現在、インドを中心とした海外取引先との取り組みを加速しています。いくつかの原薬については量産化に向けた対応を進め、今後のサポートを本格化していきます。

特許に関しても積極的な出願を継続しています。医薬品事業では公開案件が1件、出願済み公開前案件が2件、出願準備中案件が2件あります。一部では、化学品事業も協力しながら進めている状況です。

また、健康食品事業の新規事例を少しご紹介します。スライド下部の写真は森永製菓さま向けの「パッションフルーツLaboゼリー」です。昨年10月に商品が上市され、現在順調に販売中です。こちらのようなTパウチ・ショットの案件は徐々に増加しています。前ページの施策も含め、さらなる案件獲得に注力していきます。

取り組み状況・トピックス

化学品事業の取り組みについて、いくつかご紹介します。前期より積極的かつ地道に情報発信を強化しており、その効果が徐々に出始めています。

主な取り組みとして、「イオン交換樹脂総合情報センター」というWebサイトを開設し、運営を開始しています。内容は主に過去のイオン交換樹脂の使用例や、反応メカニズム等を掲載しています。お時間がある時に、ぜひ一度閲覧いただきたいと思います。

また、今期は展示会出展、講演・学会発表などを合計で26回計画して、順調に対応しています。このような活動を行った結果、当社が今までアプローチしたことのない業界や用途(例えば日本酒の脱酸や化学合成反応用など)についてのお問い合わせが来ており、今後の展開が非常に楽しみな状況となっています。

具体的な開発開始事例の1点目は、耐熱性カチオン樹脂です。ターゲットは化学合成反応を行う会社全般で、一般的に使用されている液体触媒の代替としてイオン交換樹脂を提案しています。メリットは、液体触媒ではない個体触媒を使うことで、その後の分離を簡略化できるという点で、現在、鋭意開発進行中です。

2点目の有機フッ素化合物(PFAS)除去用イオン交換樹脂については、次のスライドで詳細をご説明します。

有機フッ素化合物(PFAS)とは

PFASは炭素とフッ素が結合した、数千種類に及ぶ有機化合物の総称で、工業用途から家庭用品まで、非常に幅広い分野の製品に使用されています。

ただし、健康への影響が懸念されており、性質上は非常に分解されにくく、環境汚染が問題となっています。欧米などでは早くから規制が強化されてきていますが、日本でも水質基準に関する省令により、2020年にPFOAとPFOSについて暫定目標値50ナノグラムパーリットルが設定されています。

現時点では暫定目標ですが、今後これらはより厳格な管理が求められてくると予想されており、PFAS除去に適したイオン交換樹脂の開発をラボ段階で開始しています。

バイオディーゼル燃料 精製装置

最後に、バイオディーゼル燃料精製装置について触れておきたいと思います。あらためて、当社開発の分離膜法と従来技術の蒸留法を比較してみた場合に、精製後の目的物の純度および収率が高く、除去に熱処理を必要としないため、安全かつランニングコストが安価で、さらに装置の価格自体も安くなる点が優位性として挙げられます。

バイオディーゼル燃料 精製装置

現在の進捗としてバスやトラックなどの運輸業界や、バイオディーゼル燃料をすでに製造している企業など、おおよそ数十社から引き合いをいただいており、随時、具体的な商談へと進めています。

ちなみにバイオディーゼル燃料は車両関連だけではなく、例えば船舶や航空機などへの使用も徐々に広まりつつあり、中長期的にこれらの業界への進出も視野に入れて推進しています。

また、今後の需要予測としては、日本国内よりもむしろ海外の需要が伸びるという調査結果が出ています。スライドにバイオディーゼル燃料製造工場の絵を記載していますが、今後、海外展開をする場合、こちらの一次精製も含めたセットで販売する必要も出てくると予想されます。

前述のとおり、一次精製が可能な会社から本装置の引き合いをいただいているのですが、一次精製でイオン交換樹脂を使用する可能性についても検討していきたいという、最終精製装置以外の技術テーマもいただいています。

今後はさまざまな開発を進める中で、そのような会社と協力して輸出していくことも含め、仕掛け作りを積極的に進めたいと考えています。

このように化学品事業はまだ広がる可能性があり、私自身も今後の成長が楽しみな事業ですので、ご注目いただければと思っています。

最後にみなさまに一言だけお伝えします。現在、新型コロナウイルス感染症拡大の第8波が来ており、感染者数が非常に増加しています。みなさまにおかれましては、くれぐれもお体ご自愛いただきますようお願いいたします。

以上で、室町ケミカル株式会社の決算説明を終了いたします。ご清聴ありがとうございました。

質疑応答:バイオディーゼル燃料精製装置の具体的な計画について

司会者:「バイオディーゼル燃料精製装置について具体的な商談が出てきているということですが、具体的に計画にどのように織り込まれているのか教えてください」というご質問です。

青木:計画上では来期以降になりますが、中期経営計画の中で、年間数件ペースで組み込んでいます。

少し話がそれるのですが、今後の課題とテーマの1つとして「時間」が挙げられます。なぜ時間かと言いますと、元の廃油にはさまざまなものが入っており、依頼者の状況によって、その中身が違ってきます。こちらを個別に追跡し、効果の検証を行っていく必要があり、ある程度の時間を要するという点が考えられます。

また、部品納期の遅延も課題です。装置関係の会社の多くは、輸入するにも今はなかなか部品が入手できず、長納期化していますので、そのような事情も若干関わってきます。

このように、「時間のかかる要素をいかに縮小していくのか」ということを当面の課題として認識しており、これらを短縮するべくさまざまなデータを取り、納期の短縮化に取り組んでいます。

また、1件あたりの売上見込みについては、装置の大小によって差はあるのですが、1件あたり数千万円くらいと見ていただければと思います。

質疑応答:健康食品事業の販売不振の要因と見通しについて

司会者:「健康食品事業の販売が不振のようですが、これはどのような要因からでしょうか? 今後も受注の減少が続く見込みなのか、対応について教えてください」というご質問です。

青木:スライド12ページでもご説明しましたが、主要因として既存のOEM製品、あるいは昨年度に立ち上げたOEM製品のお客さまの販売が思ったより伸びておらず、それをなかなかここまでカバーしきれていないということが挙げられます。

ただし、現在は「三方シール」を含めて、ある程度の数量が見込める案件等々が出てきています。当面、稼働率が低くなっていますので、数量がある程度見込めるお客さまを優先的に開発を進めています。

今後は、可能な限り近い将来に数量を挽回して稼働率を上げていき、一方では、開発関係を進めていきつつ、両方の数字を合わせて営業黒字、さらにはその上を目指して、引き続き対応していきたいと考えています。