個人投資家向けIRセミナー 〜with バフェット・コード&IR Agents

バフェット・コード氏(以下、バフェット・コード):本日は、まず今回の趣旨について私からご説明します。機関投資家面談というものが日々行われていますが、これは何かと言いますと、機関投資家が上場企業を1on1で取材する機会です。

個人投資家はその場所に入ることはなかなか難しいですし、そもそも個人投資家が上場企業の方々とお話しする機会もあまりないということで、今回は、機関投資家出身でIR Agents代表の関本さんをお呼びして、機関投資家面談を再現するようなかたちで、ココナラを深堀りするという趣旨になっています。なかなかチャレンジングな企画ですが、取材に応じていただきありがとうございます。

鈴木歩氏(以下、鈴木):こちらこそありがとうございます。

IR Agents:よろしくお願いします。実は僕も「ココナラ」を使ってイラスト制作などを頼んだことがあります。スキルに特化したECという市場や事業において、どのような課題感をお持ちなのか、どのようなビジョンから始まった事業なのか、そのようなところからおうかがいさせてください。

鈴木:今、日本だけではなく世界において平均寿命が伸びており、「人生100年時代」と呼ばれる中にあって、我々は「一人ひとりが『自分のストーリー』を生きていく世の中をつくる」というビジョンを掲げています。

一人ひとりが自由に自分らしいストーリーを生きていくためには、個人の制約がより少ない状態で、他の個人や社会とつながっていける世の中がよいと考えています。スコープとしては、スキル、知識、経験を可視化してマッチングするプラットフォームという器を通じて、個人をエンパワーメントする、個人と社会がつながって世の中を作っていく、そのような発想でビジネスを行っています。

IR Agents:確かに、使いながら、個人とやり取りすることがけっこう多いプラットフォームだと思いました。

社長就任のタイミング

IR Agents:もともとは、創業者であり現会長の南さんが社長を務めており、上場の1年くらい前に鈴木さんに引き継がれたと認識していますが、これはなぜでしょうか? 正直なところ、創業者がずっと社長でいてほしいと思う投資家の方もいると思います。どのような思惑のもとで引き継ぎがあったのか、おうかがいさせてください。

鈴木:私は、ココナラの創業から4年後の2016年に入社したのですが、その1年後くらいに取締役COOに就任し、その時から事業全般を任せてもらっていました。プロダクト責任者、マーケティング担当者など、さまざまな業務の責任者を務める中で、南から社長を引き継ぐ話をもらっていました。

それを「上場してから体制が変わりました」と急に伝えて投資家のみなさまを驚かせるよりも、上場の手前のタイミングで「これから10年間は代表2人の体制で事業運営していく」ということを真摯に説明したほうがよいという話をして、そのようなタイミングの発表になりました。

IR Agents:だから上場の1年前に発表されていたのですね。「PR TIMES」でプレスリリース記事を拝見したものの、体制変更の背景がわからなかったのでおうかがいしました。

鈴木:上場前のタイミングは珍しいですよね。「これから2人で進めていこう」という体制を取るのであれば、上場の手前でそうと伝えるコミュニケーションがあったほうが真摯だと判断しました。

IR Agents:創業者とCOOとで進めていくイメージだったのですね。

オンラインスキルシェア市場の拡大

IR Agents:事業を展開する市場や競合などについて、あらためておうかがいしたいと思います。まず、日本のスキルシェア市場に関して、これまでになかった「個人が輝く場」についてどのように捉えているのか、市場はどのくらい大きいのかというところのご説明をお願いします。

鈴木:自社調べではありますが、これからの10年間で、個人や中小企業を通じて役務提供のやり取りがなされるところの規模感はおよそ18兆円と考えています。このうち、例えばモノで言いますと、オンライン化、言わばEC化率は現時点で8パーセントくらい進んでいます。

それがスキルであったとして、10年後におよそ8パーセントから10パーセントがオンライン化していると考えた場合、1.6兆円の市場規模になります。我々は現時点でECのスキルマーケットとして、また、そのパイオニアとして事業運営している中で、5年から10年で1.6兆円というマーケットの数十パーセントを狙いにいきたいと考えています。

IR Agents:そもそも、まだオンライン化が進んでいないのはなぜかということについてですが、単純に認知度が低いのか、それとも他に課題があるのかなど、どのようにお考えでしょうか?

鈴木:兎にも角にも、まず「オンラインで知らない人に何かをお願いする」という価値観が日本に根づいていないのだと思います。知っている人と「face to face」でやり取りするのが一番安心、安全だという考え方があるのです。

そこを、僕らがパイオニアとして「オンラインでも安心、安全で便利だよ」と布教していくことが必要だと思っています。実際にそうだと思っていますし、だからこそビジネスを行っています。

IR Agents:コロナ禍という状況もあって、オンライン化の話がけっこう増えてきており、今後もオンライン化はどんどん進んでいくと個人的には思っています。

バフェット・コード:オンライン化のところの10パーセントという数字は、何か先行事例があるのでしょうか? 例えば、海外でそれくらいの数字の推移があるなど、具体的な目線を知りたいです。

鈴木:モノのEC化率としては、おそらく海外は優に20パーセントを超えており、日本は比較的遅れているため、現時点で約8パーセントです。しかし、我々がこのマーケット規模を見るに、10年後であればスキルのマーケットプレイスも8パーセントに近い比率に達するのではと考えています。

競合他社との差別化

IR Agents:海外の事例を受けておうかがいします。米国の「Fiverr」社がEC型のスキルシェアサービスを展開していますが、こちらを意識されていたり、真似したりというようなことはありましたか?

鈴木:創業時期はかなり近いはずです。ファイバー・インターナショナルは2010年の創業だったと思いますが、当初、我々はファイバー・インターナショナルの存在を知りませんでした。もちろん、事業を運営する中で「どうやら似た会社があるらしい」ということは認識し、その後定期的に見てはいました。確かに、我々と非常に似ているビジネスモデルで、クロスボーダー型で展開している会社と見ています。

IR Agents:もともとは知らなかったということで、同時多発的にスキルのECが発生する時代の流れだったのかもしれないですね。

鈴木:そうですね。たまたまかはわかりませんが、「ココナラ」も最初はワンコインマーケットとして、販売価格を500円に固定していたのですが、彼らも5ドルマーケットから始めています。けっこう似ているかもしれないですね。

バフェット・コード:私は500円の時代に「ココナラ」でイラストを依頼したことがあって、そのイメージが頭の中にあります。相当安かったですね。

鈴木:そうですよね。「ワンコインマーケット」というものが最初のキャッチフレーズでした。

クラウドソーシングの競合他社

IR Agents:知りませんでした。ちなみに、国内では「スキルのある個人に依頼する」観点ではクラウドソーシングのような会社も競合かと思いますが、実際に社内ではどのように見ているのでしょうか?

鈴木:扱うカテゴリーが被ることは実際にあると思います。例えば、Webサイトの制作・デザインなどは被ることがあるのですが、まず根本的にビジネスモデルが違うと考えています。商流が真逆なのです。

クラウドソーシングサービスはどちらかというと、まず案件ありきで、発注者のやりたいことがあって、そこに対して出品者が提案していくかたちだと思います。我々はEC型で、出品者が先に自身のサービスを値付けして出品したところに対して、購入者が比較検討しながら買うかたちです。

モノを買う体験と同じかたちで購入できることに加えて、価格の決定権がどちら側にあるかということも大きく違う点です。案件ありきの場合、おそらく価格の決定権は購入者側に大きく寄ると思うのですが、EC型である我々のサービスでは、出品者のほうが価格の決定権を大きく持つという特徴があります。

IR Agents:確かに冒頭のビジョンのところでも、個人が輝く、個人をエンパワーメントするというお話がありました。スタートが個人か企業か、出品者か購入者かという違いはありますが、同じ案件を扱う場合、お客さまはどのように比較して決めるものなのでしょうか?

鈴木:かなり好みに左右されると思います。いろいろある中から選ぶよりも、自分から案件を提示して、いろいろな人から依頼をもらうほうがうれしい方もいらっしゃると思います。一方で、「Amazon」のようなところでオンラインでモノを買う体験とかなり近しいかたちでスキルを購入できる「ココナラ」のほうが便利だよね、とおっしゃる方もいらっしゃいます。好きずきだと思います。

IR Agents:棲み分けと言いますか、それぞれの好みということですね。

参入障壁

IR Agents:ちなみに、中小規模のクラウドソーシングサービスの他に、例えば「Amazon」や「メルカリ」のような大規模プラットフォームが「スキルも扱います」のようになる可能性はあるのでしょうか?

鈴木:あり得るとは思いますが、捉えているスコープがそもそも大きく違うと思っています。モノは実体がありますが、役務は形がないため、出品者の情報や購入者のニーズなどをいかに可視化するかが肝となります。その観点は、モノ系をやり取りするプラットフォーム運営者が持っているわけではないと考えています。

さらに、モノは購入取引が成立したらその後、発送というフェーズに移ると思いますが、スキル提供の場合は、取引成立の後、出品者と購入者のコミュニケーションのフェーズに移ります。そこから納品に至るという意味における後工程もそうですが、そこでプラットフォームを提供するために求められるケイパビリティもまったく違います。

一概に参入しやすいかと言いますとそうではなく、持っていないケイパビリティをきちんと構築しながら進めなければいけないという意味においては、おそらく一定の参入障壁はあると思っています。

バフェット・コード:モノ系のプラットフォームはロジスティクスなどに巨額の投資を行いますが、役務やサービスのやり取りにおいてはそのようなことに費やす意味はないですね。

鈴木:我々はコミュニケーションツールのほうに投資している状態で、日本において何十万件ものサービスの取り扱いに加え、何百万件ものレビューを蓄積しています。もちろん時期やタイミングもあると思いますが、我々がここまで先行した後にキャッチアップするのは、それなりのマーケティング投資が必要です。おそらく何十億円の規模の投資では効かないですし、それも含めて難しいと思います。

「ココナラ」のコミュニケーション機能

IR Agents:先ほど、マッチングやコミュニケーションのノウハウが参入障壁になるとおっしゃっていました。コミュニケーションはチャットツールを通じて取れると思いますが、コミュニケーション機能とは具体的に何を指すのでしょうか?

鈴木:「ココナラ」では、すべての機能をオンラインで完結して提供していますが、例えばコミュニケーションツールとしては、テキストチャット、ビデオチャット、電話のようなツールをすべて提供しており、かつこれを役務提供するにあたって使いやすい機能にカスタマイズしていくことも行っています。けっこう独自性も高いですし、開発におけるハードルも高いとは思っています。

IR Agents:マッチングやコミュニケーションの肝になるところというのは、社内のノウハウがあってこそ可能となるのですね。

鈴木:そうですね。目に見えないものをいかに安心してフェアに取引していけるようにできるかというところは、創業以来かなり考えてきましたし、モノと比べるとマッチングの変数は多めだと思います。

モノに比べて、時間や場所だけではなく、価格についてもあってないようなものですし、オンライン提供できるものもあればオフラインでなければ提供できないものもあります。このように、いろいろな変数がある中において、けっこうやりがちなのが「何でもできます」というプラットフォームになってしまうことです。

何でも提供しているように見えてしまいつつも、購入者や出品者が迷わないように削るところは削るなど、変数を減らしてマッチングを成立させているという背景があります。

バフェット・コード:最初500円に価格を絞られたのも、そのような背景があるのですね。

鈴木:おっしゃるとおりです。

IR Agents:販売者が500円で売れるものになるし、購入者も500円とわかっているし、そうすることでコミュニケーションを取る部分の課題は絞られるということですね。すごい秘訣を聞けた気がします。

国内のシェア

IR Agents:現在、同じような事業を運営する会社がいるのかということについて、資料にもたびたび載せられていますが、「ココナラ」は国内のプラットフォームとしては今、圧倒的に大きいという理解でよいのでしょうか?

鈴木:そのとおりです。EC型であり、かつホリゾンタルと言いますか、あらゆるカテゴリーを扱っています。相談系から制作系まで、プライベート系からビジネス系まで扱っている会社の中においては、出品サービス数、レビュー数ともに抜きん出ていると思っています。

購入者と販売者のメリット

IR Agents:「ココナラ」のプラットフォームにはどのような存在価値があり、購入者と販売者をそれぞれどのように伸ばしていけばよいのかというお話ですが、まずプラットフォーム上でサービスを買う人と売る人がいて、それぞれにメリットがあって、ということだと思います。購入者と販売者のそれぞれにどのようなメリットが提供できているのかというところから、あらためておうかがいできますか?

鈴木:比較的わかりやすいのは、購入者側のメリットだと思っています。こちらのスライドに、スキルシェアのオンライン化の価値ということで4つほど挙げています。

1つ目はマッチング範囲です。今までのように対面型だった時のリーチ先は、知人や知っている会社であることが前提でしたが、我々のようなプラットフォームを使うと、何十万というデータベースの誰にでもすぐにリーチできます。

2つ目に、オンライン完結だからこそ時間と場所が関係ないということです。今までは、地方に住んでいて東京の方とマッチングできない、海外の方とマッチングできないなどの課題がありましたが、オンラインなら自由にマッチングできるようになります。

3つ目に情報という観点です。これはけっこう大事で、一般的には「face to face」のほうが安心できるということを先ほどお話ししましたが、実はオンラインのほうが安心できるところもあります。あらゆる情報がデータベースに格納されているためです。

過去の実績やレビュー数、さらに返信速度まですべてデータベースに入っており、これを丁寧に可視化することで、どのような相手とやり取りしているかが透けて見えるのです。対面で顔が見えていても、その人がどのような人かは意外とわからないものですが、データが整っているからこそ、初めて会う人が相手でも安心・安全に取引できるメリットがあります。

IR Agents:依頼をする上での透明性は、オンラインのほうがデータを網羅している分、高いというところもあるのですね。また、ダイレクトに頼むと安いのではとも個人的には思います。価格のところは、購入者にとっての価値にはなり得るのでしょうか?

鈴木:そこも大きなメリットの1つだと思います。個人と個人が直接結びつく、しかもオンラインで完結する場合、店舗費用や組織の維持費、余計な中間マージンなどは一切かかりません。

もちろん、我々は手数料をいただくビジネスモデルを取っていますが、この手数料を考慮しても、出品者にはご自身ががんばった分だけどんどん身銭が入ってきますし、購入者は通常よりも安くよいものが手に入るという「Win-Win-Win」の構造になっているのではと思います。

IR Agents:販売者の方にとっては売れる場所があればよいという意味では、さっきおっしゃっていたように「他のプラットフォームよりも大きい」ことが販売者にとっての価値なのかと、個人的には思います。このあたりについて、御社は販売者の方からはどのような評価を受けているのでしょうか?

鈴木:よい評判のベースとして「稼げる」という声もありますが、我々としては「使い勝手がよい」と言っていただけることが、プラットフォームを作っている身としてはうれしいです。サービスを出品する体験や、先ほどお伝えしたコミュニケーションの体験、納品に至るまでのすべてのプロセスが直感的で使いやすいと言っていただけるところが、1つの大きな価値だと思っています。

バフェット・コード:あえて課題感に置き直すと、例えば、今まで顧客によってチャットやDMなどさまざまな媒体を使い分ける必要があったり、連絡したのに「返信がない」などと煩わされることもなく、安心して使いやすいというところが課題解決の1つになっているということですね。

鈴木:おっしゃるとおりです。

購入者と販売者におけるボトルネック

IR Agents:今までプラットフォームビジネスを見てきて、「伸ばしていこう」となった時には、購入者と販売者のバランスが大事だと思いました。「ココナラ」は現段階で、どちらかがボトルネックになっているということはありますか?

鈴木:ボトルネックというわけではありませんが、構造としては、今はとにかく購入者を獲得していくフェーズにあります。背景からご説明すると、一番最初にプラットフォームを立ち上げる時はSKUと呼ばれる在庫、言わば出品者側が非常に重要で、当初は泥臭く進めていました。

知人一人ひとりに声がけしたり、イベントを開いて勧誘したりすることも行いました。そこが一度スモールで回り始めると、スキルの領域はモノと違って売り切れという概念がなく、実績がずっと積み上がっていくモデルであるため、売れる体験をしている出品者ほど残ってくれます。

あるタイミングからは我々が購入者だけを集めるフェーズになって、購入者を呼んでくるとプラットフォーム上で売上実績が出て、また出品者が集まってくれるというスパイラルに変わります。今はとにかく、購入者向けのマーケティングに特化しています。

IR Agents:今はまさに購入者側が大事なのですね。

バフェット・コード:TVCMが購入者に向けて作られているのも、そのような意図があるということでしょうか?

鈴木:おっしゃるとおりです。

バフェット・コード:「メルカリ」では、「出品しやすいよ」という出品者への訴求が多いですが、そことは少し違うということですね。

鈴木:おそらく宅配系のところも、出品者と言いますか、供給側への訴求が多いと思うのですが、我々は購入者に特化して訴求しています。

IR Agents:売り切れがないということも盲点でした。1回売った販売者さんが「他のプラットフォームを使ってみようかな」となって、そちらの使い勝手がよくて移ってしまうことなどはあるのですか?

鈴木:対面ではない分、ユーザーがあてにするのはレビューの評価になります。そうなると、評価が貯まっているプラットフォームほど活躍しやすく、アピールもしやすいです。新しいプラットフォームに移ると、そのマーケットプレイスにおいては新参者になり、レビュー0件のところから始めなければいけません。そのため、すでに評価が集まっているところでそのまま続けようということになります。

バフェット・コード:「Amazon」でも、レビューの評価が低いと売上も低いということがよくありますね。

購入者増加のための手段

IR Agents:あらためて、購入者をどのように増やしているのかというお話ですが、増やす手段は営業活動なのか、オーガニックに入ってくるのかなど、そのあたりはどのような分析をされているのでしょうか?

鈴木:基本的に、大部分はオーガニックで、検索してくれた方が自動的にユーザーとして入ってきます。次いで、コンスタントに獲得してきているのがオンライン広告で、これが全体の2割くらいです。

ここで安定的かつ大きくユーザーを獲得できるのですが、我々はまだこれから何千億円規模という市場と対峙していくと思っており、トップライン成長のためには短期勝負で時間を買うような覚悟で、TVCMも含めて複合的に施策を打っていくイメージです。

検索からの流入

IR Agents:検索からの流入について、インターネットサービス運営会社においてよく聞くこととして、「検索のアルゴリズムが変わった結果、リードが取れなくなった」というものがあるのですが、このあたりを御社はどのようにケアしているのか、また、獲得数を左右する要因としての大小を教えていただけますか?

鈴木:特定のビッグワード経由に頼っている場合は、それなりに変動のリスクがあると思うのですが、CGM(Consumer Generated Media)のようにユーザーが出品登録してくれる1つ1つのコンテンツ自体がロングテールSEOのもとになり、ひいては我々の価値の源泉にもなります。何十万件と出品されている数多くのサービスそのものがSEOになるため、ボラティリティが起きづらいということはあると思います。

IR Agents:プラットフォームとして拡大すればするほどロングテールが広がって、安定して検索上位に行きやすくなりますね。

バフェット・コード:一生懸命プロフィールを書いたり、「このようなものを出品しています」というアピールをしたり、出品者の方がプロフを充実させることでキーワードや共起語の含有率や網羅性が挙がって、SEO上でも評価されやすいという状態ですね。

鈴木:おっしゃるとおりです。

IR Agents:購入者など、サービスを利用してくれる人を集めるために、営業して説明して、というプロセスをとっている企業もいると思いますが、そのようなことは御社としては必要ないというお考えですか?

鈴木:今のモデルにおいては必要ないと考えています。EC型であることを強みとしてスケーラブルな戦略をとっている考えです。やはりモノと違ってかたちが見えづらい分、初めてサイトに訪れた時の使い方や、その時々にどのようなアクションをすればよいのかということが、どれだけわかるかが大事だと思っています。

何度もお伝えしているEC型は、先にサービスがたくさん出品されており、ポチッポチッと比較検討しながら選んでいくと購入できるという体験です。そのような意味においては、とにかくマーケティングが必要です。

オーガニックマーケティングでも、オンライン広告でも、TVCMでも、サイトに1回連れてくることができれば勝手にオンボーディングされて、ユーザーが使い始めてくれます。ですので、しばらくはその戦略で進めようと思っています。

IR Agents:確かに、カテゴリーを選んで、価格、レビュー数がよいところで絞ることができるため、逆に言いますと、先ほどのような変数をしっかりと明らかにしているからこそ可能なところがありますよね。

鈴木:そのとおりです。

広告の使い方

IR Agents:広告などを使っているというお話でしたが、その使い方やユニットエコノミクスなどはモニタリングしているのか、数字がどれくらいなのかは教えていただけますか?

鈴木:具体的な数字はお伝えできるものとできないものがありますが、Web広告についてはLTVをしっかり出した上で、回収期間は半年くらいという中で行っています。

TVCMについてはもちろん多額の投資を行っているため、通常の広告よりは効率が落ちます。ただし、こちらも3年というやや長めの期間で見た際には回収できると計算して、モニタリングしながら行っている状態です。

IR Agents:「TVCMの費用を3年かけて回収する」というところですが、「どうせなら効率のよいほうに集中すればよいのに」と思ってしまいます。これはアプローチできる層が違うのでしょうか?

鈴木:獲得できるボリュームに限界があり、Web広告に数億円を投下しても取りきれなくなってしまうため、どこかでCPAが高騰してしまいます。ですので、高騰する手前でオンライン広告の予算はとどめ、その次にTVCMに移っていくかたちです。

「ココナラ」の知名度

IR Agents:知名度はまだまだ低いのでしょうか? 投資家側からは、(銘柄として)「ココナラ」をよく知っている方は多く見受けられると思っているのですが、どのような状況ですか?

鈴木:2017年からTVCMを始め、今年で4回目くらいになるため、少しずつ認知度は高まっているとは思いますが、我々が調べたところによると、それでもまだ20パーセント程度の水準です。認知度は80パーセント程度までは広告宣伝を行えば行うほど上がっていくという情報もありますので、まだまだ伸びしろは大きいと思っています。

目標のユニークユーザー数

IR Agents:伸ばし方などをおうかがいしましたが、ユニークユーザーなどはどれくらいまで伸ばしたいのかなど、目標がありましたら教えてください。

鈴木:具体的にお伝えできないところも多いですが、我々は1.6兆円という規模の市場を狙っており、その数十パーセントのシェアを獲得すると考えると、数千億円の流通額を狙えます。そのように考えると、今は240万人程度の会員登録者数が1,000万人を超えるレベルまでは避けて通れないと言いますか、狙っていかなければいけない規模感だと思っています。

IR Agents:そのようなところも含めて、TVCMのマス広告やWeb広告などを適宜打って伸ばしていきたいということですね。

鈴木:おっしゃるとおりです。

制作・ビジネス系の一人当たりの購入額の伸び

IR Agents:開示されている資料を見ると、toBの制作・ビジネス系と、toCの相談・プライベート系の2つのカテゴリーに分けられているようです。投資家の注目点は伸びが著しいtoBだと思っていますので、先にtoBについておうかがいしたいと思います。

購入UUは知名度に伴って伸びていますが、購入単価も非常に伸びています。このあたりはどのような構造で伸びているのかを教えてください。

鈴木:プロダクト上の工夫が1つあり、年々、最低価格を引き上げています。もともとは単価を上げる目的というより、出品者保護のために行っていました。みなさまが疲弊するような価格でのマッチングではいけないため、市場の相場などを見ながら少しずつ価格を上げていく中で単価が上がっていきました。

また、我々はマーケティング投資において、ROIがよいと言いますか、LTVの高いお客さまを獲得することに比重を置いています。ですので、年度があとになるにつれて、購入いただく単価や年間の利用額が多いユーザーが流入してくるようになったということもあります。

IR Agents:ユーザーがお金を払ってくれるようになり、1回当たりの単価を引き上げてくれるようになったということですね。

鈴木:そのとおりです。

IR Agents:単価を上げすぎると購入者が嫌がるのではないのかとも思いますが、いくらまで上げられるのかという予測はあるのでしょうか?

鈴木:この夏で廃止した法人アカウントでは、中堅から大企業の方々が使っていた時の取引の単価が2万円くらいでした。今は単価がどんどん引き上がっているとは言え、6,000円から8,000円くらいですので、法人アカウントの2万円という単価に比べるとだいぶ少ない状況です。

また、いろいろな制作会社に制作をお願いすると数百万円かかることが非常に多いですが、我々のところでは数十万円から高くても100万円でできます。

IR Agents:すごいですね。

鈴木:相場よりはまだまだ安いため、これから上昇の余地しかないとも思います。

IR Agents:「1回当たり6,000円から8,000円」とお話がありましたが、資料では一人当たりの購入額が年間3万円くらいと記載されています。これは1回6,000円で、一人当たり5回買うということですか?

鈴木:おっしゃるとおりです。

IR Agents:頻度はあまり変わっていないのでしょうか?

鈴木:頻度は年を経てもあまり変わらないと言いますか、安定しています。どちらかと言いますと、1回当たりのショットの単価がどんどん引き上がっているところから一人当たりの購入額が増加しています。

IR Agents:では、「法人アカウントのように、2万円を5回購入してもらって2桁万円を目指せたらいいな」ということは投資家たちから期待されるところですね。

鈴木:そうですね。本当に余地はあると思っています。ただし、我々は短期的にはあまり単価というKPIを追っていません。それは制作系が伸びた時に自然に上がっていくためです。

どちらかと言いますと、我々はまず規模を取っていきたいと思っています。日本においてスキルのやり取りをオンラインで行うという文化を根付かせたいと考えているため、取引数を増やしたいと考えています。そのため、ご利用いただけるユーザー数を増やすことにかなり重きを置いています。

バフェット・コード:頻度ではなく、数を増やしていくことを重要視しているということですか?

鈴木:そのとおりです。頻度というよりユーザーの数です。購入回数を増やしたり単価を増やしていくことはどのフェーズでもできるため、もっと手前の、会員登録してくださる方、アクティブで使ってくださるユーザーの数を増やしていくことに一番重きを置いています。

販売者の増やし方

IR Agents:14ページを見ると、購入者は30万人を超えていますが、サービスを売っている人は5万人から6万人しかいません。サービスが売り切れないことで販売者の数はネックにならないとおっしゃっていましたが、今後販売者は自然と拡大していくのか、それとも販売者についても何か課題感があるのかを教えてください。

鈴木:今のところ大きな課題感はありません。出品者でも購入者でも個人をエンパワーメントし、その人たちのストーリーを応援するという観点において、一部局地的に売上を上げてほしいという思想もありません。

ユーザーにフェアに売れる場や価値の提供をしていきたいと思っているため、サービスの表示順など効果の差配を適切にするためのアルゴリズムのようなものは常に考えています。

IR Agents:売れている人は実力がある人だと思うのですが、そうではない人を上に表示すると購入者の満足度が下がったりしないのだろうかと思います。そのあたりはどのように調整しているのでしょうか?

鈴木:そこがまさに肝だと思っています。購入者にとっては販売数やレビューがよい方の表示を上げていくことがもちろんよいのですが、それだけでは「まだ『ココナラ』では売ったことがないが、ものすごくよい出品者」が埋もれうるシステムになってしまいます。

ですので、我々は販売実績がなかったとしても、登録された情報やその他のサイトでの活動のステータスで、「きっとこの人はよい出品者だ」と推定して上げていくかたちを取っています。

バフェット・コード:「TikTok」に近いかもしれないですね。

鈴木:「TikTok」は圧倒的なアルゴリズムがあると思いますが、我々もフェアで、機会のあるマーケットプレイスが注目されると考えているため、そこは磨き込んでいきたいと思います。

IR Agents:確かに販売者も購入者もうれしいのが一番よいプラットフォームかと思います。

鈴木:おっしゃるとおりです。

相談・プライベート系の伸び悩み

IR Agents:占いなどが入っている、toCの相談・プライベート系のセグメントについておうかがいします。15ページを見ると、制作・ビジネス系と違い、単価の伸びに頭打ち感があると思いました。ユニークユーザー分の伸びしか取れない印象なのか、それとも単価などにも原因があり、それが解消したら伸びる可能性があると考えているのかを教えてください。

鈴木:相談系については、日本では相場がまだあってないようなもので、オンラインで相談すること自体がごくごく一部の体験だと思っています。ですので、単価などを頭の中で考えるよりは、いかにオンラインで知らない人に相談することに抵抗を持たないような価値観を作っていけるかが重要だと考えています。そのためのブランディング・土台作りが我々の使命だと思っており、ものすごく難しい問題だと思っています。

ビジネスはオフラインで山ほど取引があるものを便利なオンラインに置き換えていくだけですが、相談についてはそのような価値観自体がまだありません。

IR Agents:兎にも角にも購入も販売もユニークユーザーを伸ばして、オンラインでスキルを取引する市場を作っていきたいということを一番に考えているところですね。

鈴木:順序はあると思っています。制作・ビジネス系は伸ばしやすいため、そこでしっかりとマーケットを育てて、「ココナラ」が認知されて信頼いただける状態になったタイミングで、「相談・プライベート系もオンラインで安心してできるんだよ」ということを啓蒙することに意味があると思います。ですので、そのような順番で進めていきたいと思っています。

テイクレートの調整

IR Agents:今まではユーザーがいて購入額があって、という流通額ベースでしたが、御社の売上高はこれに手数料率も関わります。投資家はけっこう意地汚いため、手数料率を上げると「それは全部利益ですよね」と思っている人がいます。テイクレート、いわゆる手数料率は今後上げるのか、それともユニークユーザーを増やすために下げることもあるのか、このあたりの考えを教えてください。

鈴木:上げることも下げることもあまり考えていません。ある程度一定で保っていけたらよいと思っています。長い目で見て利益を上げていく場合、シンプルに利用者を増やし、結果的に流通額が増え、そこに掛けていくテイクレートが一定でもトップラインが伸びて利益が上がっていくという構造がよいと思っています。

IR Agents:下げるほどではないが、オンライン化を考えると上げる必要もないということですね。

鈴木:そのとおりです。今からマーケットを10倍、100倍にすることを考えていく時に、利益を獲得することに重きを置いても仕方がないと思ったりもします。

バフェット・コード:テイクレートを数パーセント上げたところで、入ってくる人を増やすほうが効率はよいですよね。

鈴木:そのように思います。

IR Agents:僕ら投資家はひたすら「ARPUはいつ上昇するのですか?」「テイクレートは上げるのですか?」と言いがちですが、理解しました。

IR Agents:テイクレートが少しずつ下がっているように見えるのはミックスのことで、電話での相談からオンラインのチャットでの相談に変わっていっているため、25パーセントくらいの横ばいで安定しているという理解でよろしいですか?

鈴木:おっしゃるとおりです。テキストチャットと呼ばれる部分のやり取りが25パーセントのテイクレートで、電話相談サービスが50パーセントのテイクレートです。現在、ビジネス・制作系が伸びている中では、電話よりはテキストチャットを使用するため、ミックスの中では多少落ちているようには見えます。テキストチャットにおいての25パーセントが変わっているわけではありません。

2022年度の業績予想

IR Agents:プラットフォームビジネスとしての構造、購入者の増やし方、販売者の増やし方、単価、テイクレートについておうかがいしましたので、最近発表された決算について質問したいと思います。今回は通期決算を発表し、新年度の予想はマーケット的には「すごい赤字なの?」という反応もたまに見られます。

先ほどご説明があったとおり、まずはマス広告を使って認知度や入路を増やしていくということですが、一方で「2021年は50パーセントくらい売上が伸びているのに対して、今期は広告を使っても30パーセントから40パーセントくらいしか伸びない」という見方をしている方もいると思っています。このあたりについてどのような認識なのか教えてください。

鈴木:まず、営業利益はお話にあったとおり、十数億円のマーケティング投資を行っているためです。2021年の伸び率よりトップラインが落ちるのはどういうことなのかをご説明します。

2021年は我々の決算としては2020年9月から2021年8月になります。その期間に新型コロナウイルスが流行しました。新型コロナウイルスの影響で去年5月くらいから1回下駄を履くと言いますか、流通額がぐっと伸びたタイミングがあり、その数字をものすごく含んでいます。

2021年は新型コロナウイルスの流行前の期と比べると伸び率が50パーセントを超えていますが、2022年は1回下駄を履いた昨年との対比になるため成長率が落ちているように見えます。ただし、いったんぐっと上がったものがほぼ横ばいになったり落ちていく会社もある中で、我々は引き続き伸びています。

ですので、ベースケースで33パーセント成長の中、TVCMやプロダクトの新しい作り込みのチャレンジを通じ、もう少し上のレンジ上限まで目指していきたいと思っています。

IR Agents:「反動減は本当にないのですか?」といういやらしい質問もよくあると思いますが、まず、新型コロナウイルスの影響でぽんっと跳ね上がった背景を教えてください。オンラインでマスクがたくさん売れたなど他ではよく聞くと思うのですが、どのような背景で跳ね上がったという認識なのでしょうか? 

鈴木:特定のカテゴリーだけが跳ねたというよりは、今まで対面で知っている人にお願いするという文化だったものが、強制的に非対面・非接触にならざるを得なかったことが影響していると思います。

それがたまたまよい機会になり、我々のようなオンラインのマッチングマーケットプレイスを使ってみるきっかけになったのだと思っています。1回使ってみると「わりと便利だよね」ということで、そこから引き続き使っていただけているということだと考えています。

IR Agents:対面でできなくなってからオンラインへのシフトが加速したということでしょうか?

鈴木:そのとおりです。

IR Agents:つまり、「コロナ禍で加速したペースが巡航速度に戻ってきたよね」ということで、今回の予想の33パーセントから40パーセントになったということでしょうか?

鈴木:そのとおりです。巡航速度に戻ってきたことに加え、当たり前ですが規模が大きくなっているため、多少は成長率が減る部分もあります。

IR Agents:(パーセントでの伸びが落ちたといっても)「何十億円という取引量が増えるか分かっているのか」と思われているかもしれないですが、ありがとうございます。

広告のモニタリング

IR Agents:TVCMでコストを使うのはわかりました。知名度を伸ばしたいというのもわかります。しかし、どれくらいの効率で動いているのか、長期的に利益が見込めるのかなど、しっかりモニタリングができるとよいと思っています。このあたりの数字がまだそろっていないのはわかっているのですが、どのようにモニタリングしていくのか、どのように投資家に報告していくのかについて教えてください。

鈴木:これはTVCMでも、今まで行ってきたWeb広告でも同じです。獲得するユーザーのユニットエコノミクスを考慮しながらしっかりとLTVや獲得できているCPAを見て、その後の回収期間、ROIも見て、リーズナブルな範囲において行います。

ですので、Web広告が半年から1年での回収に対して「TVCMでは回収できません」ということではなく、数年という期間は見ますが、必ず回収できる範囲でモニタリングしながら現実的な運用を行おうと思っています。

IR Agents:最近よくお話がありますが、例えばラクスルの「ノバセル」やCARTA HOLDINGS の「テレシー」など、広告のモニタリングができるものは機能として使うのでしょうか? 

鈴木:今挙がった2社の思想と似たかたちで、独自に自社で行っています。

IR Agents:どれくらいの人に届いて、どれくらいアクセス数が増えたかなどを見るのでしょうか?

鈴木:秘伝ですので具体的にお伝えできないのですが、かなりロジカルにデータドリブンで考えて効果計測しています。

IR Agents:そのロジカルなところをベースに、3年という期間はマス広告の効果が出続けているというのが今の現状認識ですね?

鈴木:足元ではそのようになります。

今後の課題

IR Agents:コストも回っており、事業モデルもよいと思うのですが、ボトルネックや課題はないのでしょうか? 例えば人材が必要なのかなど、どのようにお考えですか?

鈴木:「ココナラ」という1つの大きなプロダクトを持っており、その使い勝手や価値提供できるフィールドの広さが我々の価値の源泉だと思っています。そこにおいては、プロダクト作り、モノ作りができる人がここから数年間はいくらでも必要だと思っているため、エンジニア、プロデューサー、ディレクターなどを中心にメンバーを増やしていきたいと思っています。

IR Agents:プロデューサーやディレクターは、御社では何を行っている方なのでしょうか?

鈴木:プロダクト開発の際、例えばリサーチや企画などの工程を行っています。プロジェクトマネジメントもです。

IR Agents:開発したい機能がたくさんあるという認識でよろしいでしょうか?

鈴木:そのとおりです。「これから10年間ですべてがそろうサービスマーケットプレイスになっていくんだ」と標榜していきたいと思っており、そこにおいては「できないことをなくす」ことを掲げていますので、あらゆる機能を多方面に、多角的に開発していこうと思っています。

具体的な機能開発の内容

バフェット・コード:機能開発についてですが、何が足りていないのかが正直つかみきれていません。もうひととおり必要な機能は揃っているように見えます。実際に購入者や出品者からは、すでに「使いやすい」という評価が届いています。「これから10年という期間をかけてまだまだ開発していかなければならない」となると、過剰開発ではないか、いったいどのような機能が必要なのか疑問に思う投資家もいると思います。1つでも具体的なものがあれば教えてください。

鈴木:では、2つ、3つご紹介したいと思います。まず1つ目ですが、マーケットプレイスにおいてはカテゴリーはものすごく重要です。現在は450個くらいのカテゴリーを持っていますが、世の中のニーズがどんどん変わっていく中で、500個や1,000個のカテゴリーを扱っていけるようにしなければなりません。そのようなたくさんのカテゴリーを出しても、ユーザーが迷わずにマッチングできる検索機能が必要になります。

2つ目は、課金の手法についてです。これまではサービスを購入していただき、その都度ショットのプロジェクト型で行ってきましたが、今後は例えばサブスクリプションのように継続的に取引を行うモデルも必要だと思います。

また、何百万円といった大型の取引があった場合に、もう少し納期を分割してマイルストーン的に払っていく機能も必要だと考えると、課金仕様についても開発しなければいけないことがたくさんあります。

社内ではこのような方向性で5方向くらい開発しており、何百個という開発したいものがリストから消えていかない状態です。開発した分だけ開発したいことが新しく出てきています。

バフェット・コード:バフェット・コードも検索機能を一生懸命作っていますが、確かに大量のデータの中から検索した人の意図どおりのものが出てくるようにするのに苦慮しています。数が増えると指数関数的に難しくなっていくということは私も実感を持っているため、かなり大変そうだということはわかりました。

鈴木:そうですね。やりたいことは尽きないですね。

IR Agents:逆に考えると、サービスや役務の提供はどのように分割されるのか、何が必要なポイントなのかをきちんと理解して、先んじて手を打っていくかたちになるのでしょうか?

鈴木:そのとおりです。

IR Agents:個人の感想ですが、たくさんのサービスが増えるとカスタマーサクセスの人が大変そうだと思いました。

鈴木:それはそのとおりだと思います。ですので、我々は特殊かもしれませんが、カスタマーサクセスの部署は全員が正社員で、全員が同じ東京のオフィスで一緒に連携しています。プロダクトの習得の難度が高いため、ワンプレイス・ワンチームで行っています。

IR Agents:なるほど。しっかりねぎらってあげてください。

鈴木:そうですね。本当にがんばってくれていると思います。

今後の目標

IR Agents:時間も押しているため総括になります。「ユニークユーザーは1,000万人ほどを目指さなければいけないポジションだ」とお話がありましたが、最終的に行き着く先はどこまで見ているのでしょうか? 「あんなことをやりたい」「こんなことをやりたい」など、既存のベースでもよいですので、長期で見た時にどのようなことを考えているのかを教えてください。

鈴木:途中でお話ししてしまったのですが、「すべてがそろうサービスマーケットプレイス」について10年という期間を掲げています。しかし、これは数十年かけて行う大きなテーマだとも思っています。とにかく「ココナラ」に来ればすべてがそろう、すべてが叶うという状態が、ユーザーにとっては最強のUXになると思っています。

似たサービスを展開する会社がいくつもあり、その中でアカウントを使い分けながら行うのはけっこう不便だと思います。ですので、ユーザーの使い勝手のためにも我々が一強にならなければならないと思っています。「すべてがそろうサービスマーケットプレイス」として、知識・スキル・経験を扱うのであれば「日本で唯一無二である」というところまで持っていきたいと考えています。そこを通じて、購入者や出品者の人生をどこまでも応援できるようなプラットフォーム価値を磨いていきたいと思っています。

IR Agents:そのためには認知度も必要だと思います。今はイラスト・Webデザイン・相談・占いなどを主に扱っていると思いますが、カテゴリーやジャンルで足りていないものや、どのような機能が開拓できると「すべてがそろう」に辿り着けるかなど、具体的にどのように考えていますか?

鈴木:先ほどお話しした5方向の拡張のお話と被ると思いますが、ユーザーのコミュニケーションの手法の拡張や冒頭でお話ししたカテゴリーの拡張、ユーザー属性の拡張などがあります。

また、これまで、一番最初は個人のプライベート利用が中心だったところに対して、ビジネス利用を拡張していきたいと思います。今はスモールビジネスを中心に機能提供していますが、長い目で見ると中堅・大企業もきちんとカバーしていきたいと思っていますし、そのようないろいろな方面で多角的に行っていきたいと考えています。

IR Agents:御社の上場の時の成長可能性説明資料などを見て、「おもしろいことを言っているな」と思った言葉があります。確か「サービス版の『Amazon』になりたい」とおっしゃっていました。僕もまさに何か買いたいと思ったらとりあえず「Amazon」を見るのですが、それがサービスの市場でもできるようになりたいというビジョンなのかと思いました。

鈴木:おっしゃるとおりです。「Amazon」に行けば日用品はなんでも手に入るのと同じ感覚で、「スキル・知識・経験は『ココナラ』に行けばすべて手に入るよね」という世界にしていきたいと思います。

IR Agents:「サービス版の『Amazon』」という言葉は、誰が言い始めたのか、いつから言い始めたのかはわかりますか?

鈴木:いつの間にかというのもありますし、おそらく私が入社する前から「『Amazon』のような」というキャッチフレーズはあった気がします。ですので、けっこう昔からなんでもそろう世界観は意識していたのではないかと思います。

実は最近は「サービス版の『Amazon』」とは言っていません。誤解されると言いますか、どのような状態なのかがわかりづらいため、それを言い換えるかたちとして「すべてがそろうサービスマーケットプレイス」と言っています。もっとわかりやすくするために、直球な言葉にしました。

IR Agents:確かにそうですね。今後は注意していきます。

鈴木:いえ、大丈夫です。冒頭と同じお話になってしまうとは思いますが、一人ひとりが自分らしいストーリーを生きていける世の中を作っていけるように、これからも個人のエンパワーメントを中心において、会社としてできる限りの価値提供を行っていきたいと考えています。引き続き、応援のほどよろしくお願いいたします。