2021年9月期第2四半期決算説明会
佐久間亮輔氏(以下、佐久間):ただいまより、株式会社Amazia、2021年9月期第2四半期決算説明会を開始いたします。代表取締役社長の佐久間亮輔です。よろしくお願いします。
まず最初に、昨日、当社の第2四半期決算および今期の通期業績予想の下方修正を発表させていただきました。その内容を受けて、本日、株価が大きく下落してしまい、株主のみなさまには大変ご心配、ご迷惑をおかけしてしまっていることを大変申し訳なく思っています。
本日は、現状とその要因および業績計画の前提と、今後の経営方針についても説明させていただきたいと思います。
それでは、お手元の資料に沿って説明を開始します。まず最初に、上期業績状況と業績予想の修正のサマリー、経営方針について報告した後、詳細な説明をさせていただきます。説明の中で重複する部分が出てくるかと存じますが、ご了承いただけましたら幸いです。
業績達成状況
お手元の資料4ページをご覧ください。業績達成状況ですが、積極的な広告宣伝によりMAUは計画どおりに推移しました。一方で、計画策定時よりも海賊版サイトが拡大した影響および広告新規枠の閲覧回数が想定を下回った結果、課金収益・広告収益の各KPIが計画未達となりました。
数字としては、第2四半期累計期間で、売上高が36億4,600万円、営業利益が4億2,400万円となっており、計画に対する達成率は売上高が86.6パーセント、営業利益が76.4パーセントに留まっています。計画比における各KPIサマリーですが、お話ししたとおり、MAUについてはほぼ計画どおりに推移しています。
しかしながら、新規枠の広告閲覧回数が伸びず、1日当たり広告収益が計画を大きく下回って推移したこと、また利用日数、決済率、課金ARPPUは、海賊版サイトの影響などもあり、計画を若干下回り推移した結果となっており、業績予想を修正しました。
その理由としては、海賊版サイトが中長期で存続する可能性があり、存続した場合であっても利益を出し、規模を拡大していくためにどのようにしたらよいか検討した結果、当下期については「マンガBANG!」の収益モデルの見直し時期とするべきであるという判断に至りました。
業績予想の修正_Summary
5ページの、業績予想の修正サマリーをご覧ください。こちらの修正後計画については、売上高68億3,200万円、営業利益1億7,000万円の業績予想となっています。当初計画との差異は、売上高で22億3,600万円、営業利益で7億3,000万円の減少となっていることを深くお詫び申し上げます。
当期間においては、これまで効率を重視した広告費の投下戦略をとっていましたが、下期においては、将来の成長ドライバーであるMAUの増加を重視して、広告獲得件数を重視した広告投下戦略に変更します。これが最大の要因となり、一時的な赤字を計上する予定になっています。
経営方針
6ページで、経営方針についてご説明いたします。まず第一に「マンガBANG!」の収益モデルの再構築を挙げています。今回の修正発表に先立つ4月26日に、Appleがリリースした「iOS14.5」というバージョンから、通称「ATT」と呼ばれる個人情報に配慮した情報の取り扱い制度が導入されています。
これにより、従来「Facebook」などで行われてきたターゲティング広告についての扱いが大きく変わっており、それに最適な広告配信構成の再構築が必要な状況があります。また、従前から利用が急拡大している海賊版サイトに対抗する手段として、海賊版サイトの利用率が低いと思われる高年齢層に対する取り組みを行います。
また、海賊版サイトの影響を受けづらいオリジナル作品や、出版社との協業による先行配信、つまりリアルタイムに配信できる作品を強化していくことにより、利用日数・決済率の向上を目指していきます。
1つ目に、当下期においては、この「マンガBANG!」の収益モデルの再構築に重点的に取り組んでいきたいと思っています。2つ目として、先ほどのお話とつながりますが、オリジナル作品の制作体制強化にも重点的に取り組みたいと思っています。海賊版サイトが一番影響するのは、完結した人気作品ですので、弊社としては、今までの「マンガBANG!」の強みである完結した人気作品は継続して作品配信を続けますが、一方で、オリジナル作品のリアルタイム配信に取り組んでいく必要があるだろうと考えています。
それを実現することによって、「マンガBANG!」ならではの付加価値を上げることが可能で、電子書籍での外販や、単行本の発売やIP展開といった収益の重層化が行えます。これまでも取り組んできてはいるのですが、オリジナルマンガの制作体制の拡大を急ピッチで進めていこうというのが、当下期の重点項目の2番目となります。
3つ目については、当社は「マンガBANG!」を、海賊版サイトがあったとしても安定して成長し、利益を挙げられるサービスに作りあげていくことに注力するわけではありますが、マンガアプリ単独に依存する事業ポートフォリオ状況は望ましくないと考えているため、この下期は、この状況から抜け出すための新規事業やM&Aの積極化に取り組んでいきたいと考えています。
2021年9⽉期 第2四半期(会計期間) 業績概要
サマリーを終了して、第2四半期累計期間を含めた業績の数字報告に移ります。8ページをご覧ください。2021年9月期第2四半期(会計期間)業績概要となります。第2四半期単独で見ると、海賊版サイトの拡大および競争環境の激化がありましたが、一定の利益水準は確保することができました。
具体的には売上高17億5,600万円、営業利益1億4,100万円となっており、前年同期比で売上高は1,600万円、営業利益は9,100万円の減少となっています。こちらの要因ですが、スライド下部に記載のとおり、海賊版サイトや競争激化の影響を受けましたが、MAUで見ると前年同期比で4.3パーセント増加しています。課金収益KPIや広告収益KPIは前年度を下回っています。結果として微減で落ち着いている状況になります。
一方で、営業利益の減少幅が大きくなっていますが、これは前年よりも積極的な広告宣伝を行ったためです。売上高広告宣伝費率が前年よりも1.2ポイントほど高い21.1パーセントに増加しているため、営業利益率が悪化したという結果となっています。
業績推移 売上⾼/営業利益
9ページでは業績推移、売上高・営業利益についてご説明します。大変残念ではありますが、海賊版サイトの利用者拡大がさらに進んでおり、2四半期連続でのマイナス成長、売上高は当第1四半期比でマイナス7.1パーセントという結果となっています。ただし、足元では当該影響の下げ止まり基調も見受けられるというのが、当社の認識となっています。
2021年9⽉期 第2四半期(累計期間)業績概要
10ページでは、第2四半期(累計期間)業績概要についてご説明します。市場環境が悪化する中ではありますが、上半期業績としては過去最高の売上高を更新しています。
売上高は前年の34億1,400万円に対し本年は36億4,600万円で、2億3,200万円の増収という結果となっています。営業利益は前年5億2,800万円に対し4億2,400万円で、マイナス1億400万円という結果となっています。
この理由についても、第2四半期単独についてのご説明と重複する部分もありますが、MAUは前年との比較で16.9パーセント増加し、課金収益KPIや広告収益KPIは低調に推移しています。広告宣伝費率が高まったことが営業利益率の悪化につながっているのも同様です。
2020年9期2Q⽐ 営業利益増減分析
11ページでは第2四半期(累積)比の営業利益増減分析についてご説明します。前年の5億2,800万円から、増収による増加、限界利益率の悪化、一番大きなものとして広告宣伝費があり、当期においては4億2,400万円という着地となっています。
修正後業績予想
それでは、業績予想の詳細な説明に戻りたいと思います。13ページをご覧ください。先ほどお話ししたとおり、修正後計画では、売上については68億3,200万円となっています。外部環境が悪化している中でも利益を出しながら、MAUを増加することに取り組みたいとは思っているものの、今の足元の状況では困難です。
この見直し時期に改善を行いながらも、獲得についてはMAUをできる限り増加させていく方針をとっているという結論となっています。
各KPIの前提条件をページの下部に記載しています。MAUに関しては、2021年9月期第2四半期末、つまり3月末から増加に転じることを計画しています。
また、広告収益に関しての1日当たり広告収益単価ですが、ATT導入によるiOSの単価悪化を約30パーセント程度見込んだものになっており、マイナス要因になっています。利用日数、課金ARPUの決済率、ARPPUについては、第2四半期の水準で推移するという想定を入れています。
現状、海賊版サイトについては過去最大規模になったと言われており、そちらが継続し、かつiOSに関しては、ATTへの対応による広告単価が30パーセント程度減少する可能性がある前提で作られた計画になっています。
業績予想の修正要因
業績予想の修正要因を14ページに記載しています。大きな要因は、当然ですが「マンガBANG!」の売上減少、利益減少です。「マンガBANG!」で見ると、売上高はマイナス15億7,200万円、営業利益で6億4,700万円のマイナスになります。
「Palfe」についても「マンガBANG!」と同じく海賊版サイトの影響は大きく、売上高で1億300万円です。広告出稿を少し抑えているため、利益に関しては大きな差は出ていません。
その他、主にオリジナルマンガ制作については、外販が開始され、収益化が見込まれる状況になってきており、規模は小さいですが、営業利益の4,800万円増加という計画比になっています。
主な増減要因をまとめます。まず、海賊版サイトの影響による課金ARPUの下落影響を考慮して、第2四半期の実績を第3四半期と第4四半期に適用しています。また、ATT導入に伴うiOS単価の減少を30パーセント程度見込んでいるということです。
MAUの増加を第一優先とし、広告費総額は当初計画比で維持程度とし、売上高に占める割合では過去最高になります。下期は更に積極的に広告費を投下していく方針になっています。
マンガBANG!の広告ARPU・課金ARPU推移と計画
これまで事業計画発表時に開示している広告ARPU指数・課金ARPU指数について、今回、修正計画を発表しましたので、開示しました。第1四半期、第2四半期の広告ARPU・課金ARPUは、217から202に下落し、課金ARPUに関しては、156から149に下落しています。
海賊版サイトの影響を受けつつある状況の中で、この下期の課金ARPUは、海賊版サイトの影響の下げ止まり基調も勘案して第2四半期から微減で、広告ARPUに関しては、ATT導入による影響を強く見積もっているというのが状況です。
ATT導入による影響が、第3四半期と第4四半期で異なっているのは、4月26日から開始されたATT導入の影響をフルに受けることになる第4四半期に比べて、第3四半期はフルには影響を受けていないことが要因です。
経営方針_海賊版サイトに対する対策方針
あらためて、海賊版サイトに関する状況を説明したいと思います。海賊版サイトは2020年10月以降に急激に拡大し、その後も増加傾向が続いています。左下のグラフをご覧ください。青い線グラフで示した海賊版3サイトのアクセス数は、2020年9月期の第2四半期、つまり弊社で言う1月、2月、3月に、アクセス数が四半期合計で4億5,000万回に達しているというデータが取られています。
当社の売上との相関で見ても、2020年9月期第4四半期を境目に売上減少に転じており、海賊版サイトのトラフィック数がしきい値を超えたところから、弊社への影響は強く出ているという相関性があると判断できると思います。
また、海賊版サイトについては、Webの電子書籍サイトとマンガアプリでは、大きく影響が異なっていることが取り上げられるようになってきており、そちらについてもあらためて説明させていただきたいと思います。前提条件に記載していますが、マンガアプリは、Web電子書籍サービスよりも海賊版の影響が大きくなる傾向にあると考えています。
まず、無料漫画の閲覧が目的であるマンガアプリと、購入が目的であるWeb電子書籍との、利用目的の違いがあります。また、完結済みの人気作品をフリーミアムモデルで提供しているマンガアプリと、新作も含めた電子書籍を通常に販売しているWeb電子書籍では、作品ジャンルも異なります。
また、年代においても、若い世代ほどアプリを使う傾向にあり、「若い世代ほど海賊版サイトの利用率が高い」と言われていることも要因となっています。
この3要素により、マンガアプリサービスにおいて、海賊版サイトの影響がより大きくなっている状況であることを説明させていただければと思います。
その対策としては、経営方針のスライドに記載した内容と重複しますが、決済率を上げていくためのストアコーナーの販売強化と、作品ジャンルについてはオリジナル作品を強化すること、年代の部分では高年齢層の獲得に取り組んでいくことを検討しています。
海賊版サイトの動向と対策
スライドは「海賊版サイトの動向と対策」というかたちで、世間でどのような対策がされているかという内容を整理したものになります。前回報告した内容と重複する部分が多いため、一部を赤字にしています。2021年2月以降という部分ですが、「閲覧可能な状態と閲覧不可能な状態を繰り返しながらも、閉鎖には至っていない」という説明を記載しています。
こちらは主に海外のCDN(コンテンツデリバリーシステム)を使っていると言われていますが、そこでのアカウントの切り替えなどが行われており、その結果として海賊版サイトに一時接続できないという状況が2月から発生しています。前回の「漫画村」の時は接続できない状態が続いたわけですが、今回は復活してしまっています。
そのため、海賊版サイトについては、出版社や政府も含めてしっかりと動いているという認識、もしくは情報共有をいただいていますが、完全閉鎖にはなかなか至っていないというのが当社の認識となっています。
成⻑戦略の進捗状況 1/2
ここからは、従前からご説明している成長戦略の進捗状況4点になります。「マンガBANG!」の再成長というかたちで積極的なマーケティングを行うことに関しては、これまでご説明したとおりとなります。
2番目のオリジナル作品の体制強化についても、先ほどご説明したとおりではありますが、2021年4月には「マンガBANGコミックス」というオリジナルレーベルを一二三書房と共同で立ち上げており、ようやく弊社オリジナル作品の外販を本格的に開始できる体制が整ったという進捗がありました。
現在17作品ほどの制作と配信を行っており、こちらの数を30、50と増やしていきたいというのが、冒頭お話しした「オリジナルマンガ制作体制の急ピッチでの構築」というかたちになります。
成⻑戦略の進捗状況 2/2
3番目のM&Aの積極化についても、先ほどご説明したとおりのため、割愛します。4番目の「Palfe」と海外サービスについては、今回の事業計画の修正においてどのような抑制がなされたのかというところについてご説明します。
まず「Palfe」については、現在「マンガBANG!」と同じく海賊版サイトの影響を受けており、今後伸ばしていくためには大手出版社との配信許諾契約が必要になっていると認識しています。そのためにはMAUの拡大が必要になるため、今後はMAUの拡大に向けた広告投下という戦略を決定するタイミングが来ると思っています。
今までKPIの決済率や決済ARPUについては事業計画に近い数字で推移しているため、「マンガBANG!」を優先するものの、どこかのタイミングで広告投下を開始するというのが「Palfe」の戦略になります。ただし、足元では計画に比べ広告投下を抑えている状況が続いています。
海外サービスについては、ニュースサイト「Tokyo Anime News」のリリースに続き、3月31日は「Manga Flip」という英語版の弊社オリジナル作品を集めたマンガアプリをリリースすることができています。
マネタイズの方法が課金ではなく広告というかたちでのスタートを見込んではいますが、こちらのリリースにより、海外でのマネタイズ方法やマーケティング手法を模索するテストマーケティングをようやく開始したという状況になっています。
2021年9⽉期 第3四半期以降の⾒通し
2021年9月期第3四半期以降の見通しについて整理したいと思います。売上貢献要因については、積極的な広告宣伝費の投下により、ユーザー数が増加する見込みです。また、オリジナル作品の外販数が増え、収益貢献を始めると見込んでいます。「マンガBANG!」のフリーミアムコーナーにおいては、人気タイトルの継続的な配信が実現できています。
費用増加要因としては、「マンガBANG!」拡大のための積極的な広告宣伝費の投下を予定しています。また一部ではありますが、マスメディア向けの広告も実施する予定です。オリジナル作品を作るにあたって、原稿料および編集担当の人件費が増加する予定となっています。
以上で第2四半期決算説明資料の説明を終了とさせていただければと思います。ありがとうございました。
質疑応答:見直し時期に関する取り組み内容の重点について
質問者1:まず、非常に大きなご決断があったものと理解しています。それにあたり中高年のユーザーを強化し、ユーザー層を大きく変えるということですが、取り組みとして非常にいろいろなことを考えていかなくてはならないと捉えています。たくさん説明いただいた中でもここが重要だという、現時点での優先順位を整理して、あらためてご説明ください。
佐久間:今回の見直し時期に関する取り組み内容は、多岐にわたっています。その中で重要性が高いものということでお伝えします。まず、こちらは主に開発および広告ネットワーク会社との交渉によるものですが、「iOS14.5」以降のATT導入に対しての最適な広告配信構成の構築を進めています。
次に、マーケティングの拡大です。獲得効率ではなく獲得件数を重視した拡大を実現するために、マーケティングチームが積極的に代理店との交渉を開始しています。
もう1つ、弊社の決済率を上げていくために、作品の併読数を上げる必要があります。いろいろな作品を読んでもらう体制を作っていくために、リニューアルというと少し大げさなのかもしれませんが、アプリのUI変更を進めており、第1弾が5月中に実施される予定となっています。もちろん、UI変更は必ずしもよい影響を生むわけではないのですが、従前と比べますと大きめのUI変更を、第1弾、第2弾と予定しています。
質疑応答:AppleとGoogleの決済手数料の負担について
質問者1:御社は、これから購買の方を中心に変えていこうとしていますが、アプリがメインのサービスになっているため、Apple税が非常に重しになるのではないかと心配しています。このような心配はあたらないのでしょうか? また、回避することが可能なのでしょうか? どのように考えているか聞かせてください。
佐久間:まず、当社サービスを購買中心にしていくという趣旨ではございません。あくまでメインサービスはフリーミアムコーナーであることは変わりませんが、従前、力を入れてこなかった、購買目的のストアコーナーにも注力していくという趣旨になります。
アプリに関しては、AppleとGoogleに対して、相変わらずそれぞれ30パーセントの決済手数料が発生しています。Googleについては、規模的には少ないのですが、1年間で1億円までは15パーセントにするという発表がされており、7月から導入されるということです。これにより、弊社では決済手数料が1,500万円ほど減ります。
それ以外にも、決済料率やアプリ内での決済の独占等について、現在、世界各地でいろいろな裁判や行政判断が行われておりますが、弊社としてはまだ、下がる前提では計画しておりません。
今後ありえるのは、AppleとGoogleが第三者の決済手段を認めるというシナリオです。クレジットカードやキャリア決済などが導入された場合、決済手数料は、おそらく10パーセントくらいの平均値になると思いますので、弊社にとっては非常にありがたい変更が実施できることになります。ただし、Apple、Googleともに明確な方針が発表されていないというのが弊社の認識で、現状は期待していません。
弊社としては、決済率をしっかり上げる仕組みや決済ARPUを伸ばす仕組み、そして、広告ARPUを上げていく仕組みを実現することにより、30パーセントのプラットフォーム手数料がかかっても、利益が出る体制は実現できるものと考えています。
質疑応答:Web電子書籍との対抗策について
質問者1:現状、買い切りを行っているところは、基本的にブラウザからの購入が多く、このようなWeb電子書籍に対してどう対抗していくのでしょうか? 今は対抗というよりも、利益を確保していくことが主題になっていると理解したほうがよいのでしょうか?
佐久間:おっしゃるとおりで、Web電子書籍はもともとAppleやGoogleへの手数料がない分、クレジットカードもしくはキャリア決済のような10パーセント前後の決済で、利益率が高くなっています。
一方で、Webの事業者は広告収益が上げづらいため、広告収益を非常に高く取れるところが、Web電子書籍に対するマンガアプリの優位性になっており、そこを最適化できることが弊社の強みの1つです。ATTの対応で業界は大きく動いていますが、今後も広告主がアプリに出稿しようというメンタリティが変わらない限り、改善されるはずですので、弊社は、広告収益も含めた収益性で対抗していきたいと思っています。
質疑応答:オリジナル作品について
質問者1:オリジナル作品を強化していくということですが、今後ターゲットや経営方針が変わるにあたって、作品の方向性や本数などにどのような変化があるのか、具体的に教えてください。
佐久間:本数については、今は17本程度の連載となっていますが、30本、50本という倍増以上の増加を予定しています。もちろんこれが1年後すぐにできるかというとまた別の問題ですが、できるだけ早く、30本、50本の体制を作っていくという目標を持っています。そのために必要なのは編集者ということで、編集者の採用を強めていく予定です。
ジャンルについては、どちらかというと絞っていくかたちになります。Webで売れている作品のジャンルには多少限定的なところがあり、例えば、異世界転生系や恋愛系の漫画などの調子がよいため、弊社はそのようなWebで売れ行きがよいもの、特に「マンガBANG!」で売れ行きがよいジャンルにできる限り絞って展開する予定です。
そのため、いきなり「『ドラゴンボール』のようなファンタジー作品を作ろう」というよりは、「Webでしっかりと売れる作品を作っていこう」ということに近い方針になります。
質疑応答:広告新規枠の閲覧回数が想定を下回ったことについて
質問者2:4ページで「広告新規枠の閲覧回数が想定を下回った」という表現がありますが、なぜそうなったのでしょうか? なにが考えていることと違ったのか、詳しく教えてください。
佐久間:今回、期初に事業計画を作成するにあたり、当社では広告の枠を1枠増やしました。これがどのような枠かというと、当社のマンガアプリでは「30秒程度の動画CMを見ると、漫画が1話無料で読める」という仕組みがあります。
これを3コーナーあるうちのメインコーナーだけで提供していたのですが、サブコーナーにも導入したというのが、この「広告新規枠」の内容になります。メインのメダルで読むコーナーで導入していた動画CM機能が、サブのチャージで読むコーナーでも導入されたということです。
こちらについて、メインコーナーでの利用率をもとに、チャージで読むコーナーでもこれくらい使われるだろうという数を算定していました。算定方法としては、「利用者数が何十万人」と想定し、それぞれが何回使ってくれるかを掛け算し、最後に単価を掛けて売上を出しています。
そのうちの利用者数が思ったよりも伸びなかったという状況です。利用者数と回数がそれぞれ予定よりも下回ったことによって、掛け算で出される閲覧回数の合計値が計画を下回ったという結果となっています。
質問者2:メダルで読む人とチャージで読む人の、なにがどう違ったのでしょうか? 思惑が外れた原因をどう考えているのか教えてください。
佐久間:これについては複合要因です。「マンガBANG!」のメインはメダルで読む作品であったため、それに適していると思うUIにしておりました。そのため、チャージで読む作品が相対的に読まれにくいUIとなっておりましたので、チャージで読む作品の読書数が想定を下回ったことが1つの要因となります。こちらについて、お話ししたように、現在UIの変更予定でして、チャージで読む作品も読まれるような編成にしていくことで、改善していく所存です。
また、動画CM機能はチャージで読む作品の全作品で使えるものではありません。出版社との交渉によって、配信許諾契約の際に許諾をいただくものです。「動画CM機能は使わないでほしい」という出版社も一部あり、この機能を使える作品の比率が想定を下回っています。この2点が主な要因です。