2020年度 第3四半期連結決算のハイライト

古田純氏:IR広報部を監修しております、取締役の古田でございます。それでは、2020年度第3四半期決算について、ご説明申し上げます。先ほど当社ホームページに開示しました、第3四半期決算説明資料に沿って説明いたします。

本資料をご覧いただいている方は、2ページ目をご覧ください。第3四半期の売上高は、食品セグメント・医薬品セグメントともに減収となった結果、グループ全体では、前年同期比5.3パーセント減の9,007億円となりました。

営業利益は、食品セグメント・医薬品セグメントともに増益となり、グループ全体では、前年同期比3.6パーセント増の832億円となりました。営業利益率につきましては、前年同期から0.8ポイント上昇し、9.2パーセントとなりました。一方、親会社株主に帰属する四半期純利益は、前年同期比5.8パーセント減の494億円となりました。

営業利益・経常利益が増益にもかかわらず純利益が減益となったのは、税金費用の増加に加えまして、KMバイオロジクスが増益となったことで、非支配株主に帰属する利益が増加したことが要因です。

食品 2020年度 第3四半期決算概要

それでは、資料3ページの食品セグメントにおける第3四半期決算の概要です。食品セグメントの売上高は、前年同期比4.8パーセント減の7,584億円となりました。プロバイオは上期に伸長、「ザバス」は期間を通じて好調に推移しましたが、菓子や業務用食品が苦戦しました。また、明治ケンコーハムなど、子会社3社の事業譲渡も影響しました。営業利益は、前年同期比4パーセント増の677億円となりました。

それでは、増減分析についてご説明いたします。売上増減に関しては、菓子事業などの減収により、30億円のマイナスとなりました。原価の変動については56億円のプラスとなっていますが、このうち、原価計上方法の変更に伴う影響が約48億円です。

第2四半期決算の時にもご説明したように、前期までは加工食品・菓子・栄養の一部の商品において、グループ会社からの仕入れ商品の原価はすべて直接原価として処理していましたが、今期より直接原価と間接原価に分けて計上することとしました。

その結果、原価の変動の項目に含まる直接原価は減少し、一方で、その他費用の変動の項目に含まれる関接原価が増加しました。従いまして、今回の経理処理変更に伴う影響額を除いた第3四半期の実質的な原価改善は、56億円から48億円を引いた8億円となります。

マーケティング費用等の変動については、41億円の増益要因となりました。拡売費や宣伝費が減少したほか、営業に関わる諸経費も減少しました。その他費用の変動については54億円の減益要因となっていますが、そのうち約48億円が、先ほどご説明した原価計上方法の変更に伴うものです。

従いまして、その他費用の変動の実質的なマイナスは、54億円から48億円を差し引いた6億円となります。この他、子会社の増益や共通費用の減少も、増益に寄与しました。

医薬品 2020年度 第3四半期決算概要

次に、資料4ページの医薬品セグメントの業績をご覧ください。医薬品セグメントの売上高は、前年同期比7.7パーセント減の1,434億円となりました。ヒト用ワクチンは増収となりましたが、薬価改定に加え、受診患者数の減少により、抗菌薬などが大幅な減収となりました。営業利益は、前年同期比1パーセント増の157億円となりました。

それでは、増減分析について説明いたします。まず、売上増減による利益への影響は、37億円のマイナスとなりました。薬価改定の影響が51億円となりました。原価の変動については、原価低減の取り組みにより、17億円ほど増益に寄与しました。

マーケティング費用等の変動については、MRの活動制限の影響やコスト削減の取り組みにより、19億円の増益要因となりました。その他費用の変動については、研究開発費などが減少し、10億円の増益要因となりました。

その他子会社損益等については、KMバイオロジクスの増益に加え、インドやインドネシアなど海外子会社の増益も寄与したことによって、44億円の増益要因となりました。

2020年度 通期連結見通し

次に、通期の見通しです。資料は5ページをご覧ください。今回、第3四半期までの業績や新型コロナウイルスの感染拡大の状況、そして現下の個人消費動向等をふまえ、売上高・営業利益ともに減額修正いたします。

売上高につきましては、期初計画から530億円減の1兆2,000億円、営業利益については、期初計画から40億円減の1,060億円としました。また、設備投資については、新型コロナウイルス感染症の影響による工期の遅れや、当初計画を若干見直したことにより、期初計画から約160億円減少する見込みです。

2020年度 通期連結見通し セグメント別

次に、資料6ページは、セグメント別の修正計画です。食品セグメントの通期見込みについては、売上高は期初計画から314億円減の1兆100億円、営業利益は同20億円減の910億円に修正いたします。医薬品セグメントの通期見込みについて、売上高は期初計画から208億円減の1,915億円、営業利益は同20億円減の160億円に修正いたします。

食品 2020年度 事業別計画 発酵デイリー

ここからは、事業別に第3四半期までの概況と、通期の見込みをご説明いたします。資料は7ページをご覧ください。まず、食品セグメントの発酵デイリー事業です。第3四半期累計の売上高は、上期に好調に推移したプロバイオが増収となりましたが、牛乳類やデザート類で終売した商品の影響などにより、全体では前期並みとなりました。

営業利益は、販促費の効率的な支出や工場閉鎖による減価償却費などの減少により、増益となりました。通期の見通しについては、ヨーグルトやプロバイオなどは期初計画からは減収となるものの、「ザバスミルク」や「おいしい牛乳」などが好調に推移していることから、売上高・営業利益ともに期初計画を達成する見込みです。

食品 2020年度 事業別計画 加工食品

次に、資料8ページの加工食品事業です。第3四半期累計の売上高については、前年同期並みとなりました。チーズやアイスクリーム、バターなどの家庭用商品は好調ですが、業務用商品は、第1四半期から回復基調ながらも、累計では減収となりました。営業利益については、物流費や減価償却費などの増加により、減益となりました。

通期計画に関しては、売上高は期初計画並みと見ています。営業利益については、業務用乳製品原料の販促費用増加などを見込んでいるので、減益となる見込みです。

食品 2020年度 事業別計画 菓子

それでは、資料9ページの菓子事業です。第3四半期累計の売上高は、68億円の減収。営業利益についても、47億円の大幅な減益となりました。チョコレートは、チョコスナックや健康志向チョコレートが好調で、第3四半期では前年並みに回復してきたものの、グミやガムは期間を通じて大幅な減収となりました。

営業利益は減収による影響が大きく、大幅な減益となりました。通期計画は第3四半期までの業績を反映し、売上高・営業利益ともに期初計画から大きくマイナスとなる見込みです。

食品 2020年度 事業別計画 栄養

次に、資料10ページの栄養事業です。第3四半期累計の売上高は、「ザバス」が好調に推移し全体では増収となりましたが、スポーツイベントの減少などにより「ヴァーム」が苦戦。乳児用ミルクも、インバウンド需要の減少により減収となりました。営業利益については、「ザバス」新工場の減価償却費負担が重く、減益となりました。

通期の計画については、「ザバス」が期初計画から大きく増収することによって、売上高・営業利益ともに期初計画を上回る見込みです。

食品 2020年度 事業別計画 海外

それでは、資料11ページの海外事業をご覧ください。第3四半期累計の売上高は、前年同期を上回りました。ここでは、中国の事業を、業績を中心にお話しします。アイスクリーム事業は、期間を通じて好調に推移しました。牛乳・ヨーグルト事業では、市販用牛乳は増収。一方、業務用は徐々に回復しているものの、累計では減収となりました。

菓子事業は、店頭における市販用は好調でしたが、婚礼市場向けが低迷して減収となりました。中国以外のエリアでは、米国の子会社が巣ごもり需要を取り込んで、堅調に推移しています。海外事業の営業利益は、エリアや事業ごとに好不調はあるものの、全体としては前期並みとなりました。

通期の計画については、売上高・営業利益ともに期初計画には届かない見込みです。特に、中国の牛乳・ヨーグルト事業や菓子事業は、回復基調ながら上期の減収をカバーするまでには至らないと見ています。

医薬品 2020年度 事業別計画 国内・KMバイオ

ここからは、医薬品セグメントとなります。資料は12ページをご覧ください。まず、第3四半期累計の実績についてです。国内事業は、薬価改定や受診抑制の影響により、減収減益となりました。ヒト用ワクチンは増収となったものの、抗うつ薬の「リフレックス」など高利益品の減収により、品種構成が悪化したことが影響しました。

KMバイオロジクスは、増収増益となりました。ヒト用ワクチンの増収効果に加えて、インフルエンザワクチンの生産性が向上したことや、棚卸評価減の金額が減少したことなどが増益に寄与しました。

次に、通期の見込みです。国内事業の売上高は、引き続き受診抑制の影響を強く受けているので、期初の計画を大幅に下回る見込みです。営業利益についても、減収の影響により、期初計画を大幅に下回る見込みです。

一方、KMバイオロジクスは、売上高は期初計画並みですが、先ほど申し上げた、インフルエンザワクチンの生産性が向上したことや棚卸評価減の金額の減少により、大幅な増益になると見ています。

医薬品 2020年度 事業別計画 海外

事業別の最後は、資料13ページの医薬品海外事業となります。第3四半期累計の売上高は、中国子会社の大幅な減収などにより、減収となりました。営業利益は、インドネシアやインドの子会社の経費削減が寄与し、増益となりました。通期の計画については、売上高は国内同様に受診抑制の影響を受け、期初計画を下回る見込みです。

経費削減は進めるものの、営業利益についても減収の影響が大きく、期初計画には届かないと見ています。

医薬品 経口抗真菌剤『イトラコナゾール錠50「MEEK」』に関して

ここで、年末からご心配をおかけしました、経口抗真菌剤「イトラコナゾール錠」に関して、お話をしておきたいと思います。資料は14ぺージをご覧ください。すでにメディア報道でご承知のとおりですが、昨年12月に、小林化工が製造・販売する「イトラコナゾール錠」の製造過程において、睡眠導入剤が混入しました。

混入が判明した直後から自主回収となり、この製品の販売会社である明治製菓ファルマも大きな影響を受けました。本件につきましては、本製剤の製造・販売会社である小林化工の、通常ではなかなか考えにくいずさんな品質管理体制に起因するものであります。

販売会社である明治製菓ファルマは、本件発生直後からすぐに対応し、製剤の出荷停止・回収、患者の危害回避について、販売会社の責任範囲を超えて事態の収拾にあたりました。発覚から5日後にはすべての処方患者を特定するに至り、患者さまの健康被害の最小化に少なからず貢献できたと思っております。

その後も今日に至るまで、厚生労働省など関係当局と連携しながら、安全情報の収集等に努めています。小林化工への行政処分が下され、明治製菓ファルマが販売している関連製品が出荷停止となりますと、今期業績への影響は、売上金額で約15億円。ただ、利益への影響は軽微と見ております。なお、この影響額は、今回の修正計画に織り込み済みです。

今後も、引き続き自社工場のみならず、現在提携している製造委託先を含む、品質管理体制のさらなる強化に取り組んでまいります。

医薬品 新型コロナウイルス感染症のワクチン開発について

もうひとつ、昨今話題となっております、新型コロナウイルスワクチンの開発状況について、ご説明いたします。資料は15ページとなります。KMバイオロジクスでは、AMEDからの研究助成を受けて、昨年5月より不活化ワクチンの開発を進めております。7月には厚生労働省の公募にも採択され、生産体制の整備にも着手しました。

現在の開発状況ですが、昨年実施した動物を使った試験では、非常によい結果が出ました。そこで、試験薬を製造中で、年度内にはヒトに投与して安全性を確かめる、臨床試験を開始する予定です。もうひとつは、アストラゼネカが開発したワクチンについてです。

これも、すでにメディアで報道されているのでご承知かと思いますが、先週5日に明治製菓ファルマとKMバイオロジクスは、それぞれアストラゼネカとワクチンの国内供給に関する業務委受託契約を締結しました。KMバイオロジクスは、新型インフルエンザ用に整備した合志事業所の設備を活用して、アストラゼネカから供給される原液を製剤化します。

一方、明治製菓ファルマは、国内におけるワクチンの保管・配送を担当し、KMバイオロジクスが製剤化する分を含め、1億2,000万回分を国内に供給する予定です。必要に応じて、明治製菓ファルマのMRが情報提供や安全性情報の収集も実施します。

このワクチンが承認されれば、一刻も早く、そして確実に日本国内に行きわたるよう、全力を挙げて取り組んでまいります。以上で、私からの説明を終わります。ご清聴ありがとうございました。