2020年 春のIR祭り

近藤季洋氏(以下、近藤):日本ファルコムの近藤です。よろしくお願いいたします。それでは、さっそく日本ファルコムの紹介をさせていただきたいと思います。

会社概要

簡単に会社の概要とお話ししますと、設立が2001年11月です。創業が1981年ですので、今年で39年目を迎えます。所在地が東京都立川市で、代表者が私、近藤です。

事業内容としては、ゲームソフトの開発と販売、音楽ソフトの制作と販売、ライセンス事業という3本の柱で成り立っています。上場市場が東京証券取引所マザーズで、従業員数が2020年2月末時点で60名という規模です。

ゲームソフトの開発・販売

事業内容の具体的な説明を行います。まずは、ゲームソフトの開発と販売についてですが、こちらが主力の事業です。弊社はゲーム業界のなかで39年ということで、けっこう最古参の部類に入ります。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):ファミコンなどの時期ですよね?

近藤:そうですね。そのころからロールプレイングゲーム(RPG)をずっと作り続けており、RPGの制作がとても得意な会社ですので、RPGを中心としたゲームコンテンツ、ゲームソフトウェアの企画、開発および販売を行っています。

特徴についてです。ゲーム業界の会社はけっこう外注で商品を作ることが多いのですが、弊社は60名という規模で、社内できっちり作り込むというところで、質の高いコンテンツを作り出しており、その開発力が弊社の一番の強みとなっています。

音楽ソフトの制作・販売

2つ目の事業内容は、音楽ソフトの制作・販売についてです。「ゲーム会社で音楽?」と思われる方もいらっしゃるかもしれないですが、ゲームを作るときに、ゲーム内のBGMが同時に制作され、そのBGMに非常に力を入れています。BGMのファンがいることでも知られています。

そのようなBGMなどの音楽や映像コンテンツの制作の他、オフィシャルのバンドがあります。「ファルコムjdkバンド」という音楽のバンドチームで、年間を通じてバンドのライブイベントを開催しています。

それから、ゲームの主題歌やBGMのアレンジCDの発売、定期的なライブやイベントを開催していますが、ユーザーの囲い込み、ファン層へのファンサービス的なものとして捉えていただければと思います。39年間ゲームを作り続けていたため、楽曲は4,955曲もあります。

これらの曲を「iTunes」「Amazon」「Spotify」「Google Play」などの配信サービスに提供しています。またゲームメーカーとして、おそらく一番早かったのではないかと思うのですが、ハイレゾの配信も行っています。

坂本:昔の音楽もハイレゾになっていたりするのですか?

近藤:そうですね、昔のものもけっこう音源を録り直して、ハイレゾ仕様にして販売しています。そのような音楽関係の収益、ライブ等の各種イベントによる販促相乗効果も期待できると考えています。

ライセンス事業

ライセンス事業になります。弊社はゲームを制作する過程で、音楽だけでなく、キャラクターのイラストなどのコンテンツを他のプラットフォームで商品化することで使用料をいただく事業も展開しています。

具体的には、弊社は「PlayStation」ですが、例えば任天堂のゲーム機など、他の家庭用ゲーム機への移植などを行っています。それから、「PlayStation 4」用に作ったゲームでも、世界観、キャラクター、ストーリーなどを、ブラウザゲームやスマホアプリといった、他のプラットフォームにゲームとして売り出すことも多くなっています。

また、海外向けの翻訳版もありますし、攻略本やコミック、フィギュアやTシャツなどのグッズにも転用することで、少人数でリスクを抑えながら、弊社のゲームコンテンツを幅広く展開して、高い経営効率と高水準の利益率を実現しています。

軌跡シリーズ

実際に、どういうゲームを制作、販売しているのかをご紹介します。まず、こちらは『軌跡』シリーズと呼ばれているものです。『英雄伝説 空の軌跡』『英雄伝説 零の軌跡』『英雄伝説 閃の軌跡』など、すべて『軌跡』がつくシリーズになります。

こちらはストーリーに重点を置いたRPGとして、多くのユーザーの方から高い評価をいただいています。とくに「ストーリーがいいから遊びたい」というお客さまが多いタイトルになります。

シリーズ全体でも、現在で累計450万本を超えており、『軌跡』シリーズについては、累計の販売本数が180万本を突破している、今、最も勢いのあるタイトルとなっています。先ほども申し上げましたが、内容としては長編小説を読むように展開する物語で、そこに徹底的にこだわり抜かれた作品性を持っています。

ストーリーRPGというと、かつては日本国内が中心だったのですが、最近は北米やアジアなど各地域でもこのようなジャンルのゲームがあることを認知いただいており、海外のゲームユーザーからも非常に支持いただいているタイトルになります。

イースシリーズ

『イース』というシリーズもあります。『ファイナルファンタジー』や『ドラゴンクエスト』と同じくらい古いタイトルで、30年以上続く弊社の代表作の1つとなっています。

坂本:懐かしいですね。子どものころに遊びました。

近藤:ありがとうございます。それくらい歴史のあるタイトルなのですが、特徴としては、とにかくロングセラーということです。ゲームというと、最初にバッと売れて、その後、徐々に逓減していくものですが、発売から時間が経ってもリピートが続いていて、他のタイトルよりも長く売れ続ける傾向にあります。

1987年にシリーズ第1作を発売して、そこから本当にいろいろなプラットフォームで展開しています。また、とてもワールドワイドな作品です。アクションRPGなのですが、アクションは海外でも非常に人気のあるジャンルですので、その意味でも幅広いユーザーの方から常に高い評価を受けています。

八木:賞なども受賞されているのですよね?

近藤:2012年に『イース セルセタの樹海』が「PlayStation Awards」のユーザーズチョイス賞を獲得しました。これはユーザーからご投票いただいた上位のタイトルの賞になります。また『イースⅧ -Lacrimosa of DANA-』についても、同じく「PlayStation Awards」のユーザーズチョイス賞をいただいています。

東亰ザナドゥ

『東亰ザナドゥ』というタイトルです。弊社の場合、歴史があって、どうしてもシリーズものがけっこう続くのですが、『イース』シリーズももう9作出ていますし、『軌跡』シリーズも14作まで出ています。

この『東亰ザナドゥ』は、完全に新規IPとして立ち上げたタイトルになります。現代を舞台にしたアクションRPGになります。そのような新規IPは、ゲーム業界のなかでは最初はなかなか認知されづらく、受け入れてもらいにくい部分もあります。そのような逆風のなかでも、「日本ゲーム大賞」や「ファミ通アワード」といった賞をいただいています。

発売週においては、全機種のゲームソフトの週間売上ランキング1位を記録しています。アニメのような雰囲気のある内容のため、わりとアジアや北米、欧州においても好評をいただいています。

会社沿革

ファルコムの会社としての特徴と、「ゲーム会社としてどういうところに強みがあるのか」をご説明します。

最初に、弊社の沿革を簡単に紹介させていただきたいと思います。昭和56年の創業から今年で39年、来年で40周年を迎えます。一貫してゲームソフトウェア開発を行っており、私自身が開発の出身ということもあるのですが、わりとクリエイター志向の強い会社だと思います。

ソフトウェアの開発を自分たちで行うということで、すべて自分たちで見ることに重きを置いています。創業以来、『ザナドゥ』『ソーサリアン』『ドラゴンスレイヤー』、それから先ほど説明した『イース』を発売してきましたが、おそらく80年代からゲームを楽しんでいた方は、タイトルくらいは聞いたことがあるのではないかと思います。そのようなユーザーの記憶に残るコンテンツを作り出してきています。

1988年には、オリジナルのレコードレーベル「ファルコムレーベル」を起ち上げました。これはキングレコードとのタイアップで実現したのですが、おそらくゲーム会社でレコードレーベルを立ち上げた最初の例だと思います。そのような意味で、音楽業界でゲームミュージックが今、ある程度の地位があるかと思うのですが、そこを大きく向上させる一翼を担わせていただいたと思っています。

そして、2003年12月に東京証券取引所マザーズに上場しています。2004年6月には、今一番の主力となっている『軌跡』シリーズの第1作目『英雄伝説 空の軌跡FC』を発売しました。

我々は、ずっとパソコン主体で事業を行ってきたのですが、2011年9月くらいから「PlayStation」「PlayStation Portable」など、いわゆるコンシューマーゲーム機に主戦場を移しました。そこで『英雄伝説 零の軌跡』『英雄伝説 碧の軌跡』といった『軌跡』シリーズもパソコンからコンシューマーに移り、「日本ゲーム大賞」のフューチャー部門や優秀賞といった賞をいただいています。ここは弊社にとって、大きなターニングポイントだったと思っています。

2014年9月には『英雄伝説 閃の軌跡Ⅱ』を発売しました。ちょうどアジアで本格的に展開を始めた時期で、『英雄伝説 閃の軌跡Ⅱ』から、日本とアジアで同時発売を試しています。2018年12月には『軌跡』シリーズの販売本数が400万本を突破しましたが、やはりアジアで展開したことが販売本数の押し上げにもつながっています。

この10年は、弊社にとって、海外市場に対して大きく意識を変えないといけないと思うに至る時期でした。

業績推移

弊社の過去6年間の業績をまとめたグラフをご覧ください。表を見ていただければご理解いただけるかと思うのですが、ゲーム会社ですので、その期にどのようなタイトルを発売したかによって、売上や利益は大きく変動があります。

しかし、基本的には営業利益率40パーセントから60パーセント近くまでを達成しており、ご覧のとおり高水準を維持しています。

財務状況推移

自己資本比率については、近年、90パーセント前後で、現預金に関しても第1四半期末の時点で58億円ほどになります。有利子負債はなく、自己資本比率は高いため、「ちょっと固いのではないか」というご指摘をいただくこともあるのですが、ゲーム業界自体が非常に変動の大きなマーケットということもありまして、2年から3年もすれば、ガラッと変わってしまうということもあります。

そのような環境においては、今後の経営の自由度は非常に大きく、そうした動向の速さを考えると弊社にとっては強みだと考えています。

ファルコムの強み

以上のことからファルコムの強みを総括します。まず、オリジナルコンテンツを制作する開発力です。弊社が得意とするRPGは、主人公を操作して冒険や物語を進めていくゲームなのですが、いろいろなジャンルがあるなかで、制作工程としてはRPGの制作は非常に複雑な工程が必要になります。そのようなことからも、RPGというジャンル自体が事実上の参入障壁ということもあります。

長年のノウハウを持っている弊社としては、戦場としては得意とするところです。それから、今年で39年目迎えていますので、業界の老舗として熱心な固定ファンの方が多く、リピーターも非常に多いです。「ファルコムのゲームだから買います」と言ってくれる方がたくさんいらっしゃって、その方々に支えられているブランド力が1つの強みとなっています。

またユーザーロイヤリティは、今申し上げたとおりです。そして、効率的な経営による高い利益率ということで、先ほど社員数が60名と紹介したのですが、他社でRPGをどれくらいの規模で作るかというと、だいたい100名以上のスタッフを抱えて作るジャンルになります。しかし、弊社の場合は管理部門を含めて60名です。

八木:かなり少数精鋭ですね。

近藤:そうですね。そして、だいたい1年おきに必ず新作を1本出しています。そのようなノウハウを持っている会社は日本にほとんどないため、そこは弊社の一番の強みとなっています。

坂本:RPGを作る難しさ、工程の複雑さでいうと、どのあたりが一番難しいのですか? 

近藤:まず、たくさんのキャラクターを登場させないといけないことです。また、物語の部分が非常に重要になります。

坂本:キャラクターも作るだけではなく、物語に合わせてきちんと筋を通していかなければいけないですからね。途中でおかしくないかなどをチェックしたりといったところでしょうか。

近藤:そうですね。どのキャラクターも成長するシステムがあり、ゲームとしてではなくドラマと言いますか、映画的なシーンみたいなものも要求されるため、「アニメを作る+ゲーム性」といったものを全部投入していかなければゲームとして成り立ちません。

八木:新作を出すペースとしては、かなり早いのでしょうか?

近藤:他社で1作のRPGを作る場合、最低でも1年半から、長ければ4年、5年をかけるところも多いです。しかし弊社は、社員数60名で毎年1本ずつ出しているというところを考えていただけると、わかりやすいかなと思います。

ゲーム市場の状況

近藤:ゲーム市場全体としては、ワールドワイドでは拡大傾向が続いています。弊社の主戦場である「PlayStation 4」については、累計販売台数が全世界で1億600万台を突破しています。また「Nintendo Switch」については、昨年9月末までに5,248万台を販売しており、2020年も引き続きゲーム市場は拡大傾向にあると考えています。

今年以降、「PlayStation 5」などの次世代機の登場もあります。それから、日本ではまだ注目度は低いかもしれないのですが、GoogleやMicrosoftが海外を中心にストリーミングでゲームを配信することを始めています。弊社のタイトルにも配信のお願いが来ていますので、そのような動向も注視していきたいと思っています。

配当方針

弊社の配当方針についてご説明します。弊社としては、将来の事業展開と経営基盤強化のために内部留保を確保しつつ、毎期経営成績を考慮して、業績に応じて記念配当をプラスするかたちで配当を行ってきています。2019年9月期についても普通配当6円に加えて、記念配当6円のプラス12円となりました。

2020年9月期 第1四半期実績と通期業績予想

近藤:2020年9月期第1四半期の業績についてです。弊社の場合、小売店や飲食店などとは異なり、ゲームタイトルの発売やライセンスの提携状況によって業績が大きく変動します。

したがって、四半期の単純比較は難しいと思うのですが、第1四半期については売上高が4億7,700万円、営業利益が3億円、経常利益が3億200万円、当期純利益が2億900万円となりました。

2020年9月期 第1四半期 概況 ①

第1四半期の具体的な展開についてです。まずは「PlayStation 4」向けで、前期に発売したものが、『イース セルセタの樹海:改』『イースⅧ -Lacrimosa of DANA- スーパープライス』『イースⅨ –Monstrum NOX-』です。

先ほどもご説明しましたが、『イース』はロングセラーのタイトルですので、引き続き販売していきます。

2020年9月期 第1四半期 概況 ②

今期発売したものは、『英雄伝説 零の軌跡 Evolution』『英雄伝説 碧の軌跡 Evolution』です。「PlayStation Vita」のタイトルになるのですが、こちらを中国と韓国で発売しています。

また、ほとんどが海外の内容になるのですが、フランス語版と英語版の『英雄伝説 閃の軌跡Ⅲ』を、昨年10月に発売しています。その他、11月には先ほどご紹介した『イースⅨ –Monstrum NOX-』のオリジナルサウンドトラックということで、ゲームのBGMのCDを販売しています。

2020年9月期 第1四半期 概況 ③

こちらは他社との協業になるのですが、「PlayStation 4」で発売したタイトルを、このようなパートナーと組むことで、「Nintendo Switch」でも発売しています。我々は「PlayStation 4」で発売するのですが、パートナーシップを得て、海外や英語版なども幅広く展開しています。

2020年9月期 第1四半期 概況 ④

ゲーム以外の部門では、音楽ソフトの他にもグッズ展開を行っています。東京・池袋のPARCOや大阪のなんばマルイで弊社のグッズを販売する期間限定ショップを展開しています。

2020年9月期 第1四半期 概況 ⑤

また、期間限定ではなく、継続してグッズ販売もしています。スライドは、株式会社ヴィータ・ソリューションズのアクリルグッズです。アクリルでできたすごくきれいな飾り物になります。『軌跡』シリーズではこのようなキャラクターが50人ほどいるのですが、50人分をすべて作成しています。

グッズに関しては、とくに最近は中国のお客さまが多いです。グッズの展示会を行うと、外国から来てくださる方もおり、この4年から5年で大きく変わったと感じています。

2020年9月期 第1四半期 概況 ⑥

こちらのスライドは、株式会社工画堂スタジオの商品です。1つのタイトルでも、これだけ多彩なグッズが販売されています。

第1四半期の概況については、以上となります。

2020年9月期 第1四半期実績と通期業績予想

2020年9月期の見通しについてご説明します。9月期は、売上高が21億円、営業利益と経常利益が10億円、当期純利益が6億8,000万円となります。第2四半期以降は、これからご説明します。

2020年9月期 第2四半期以降の展開 ①

第2四半期以降の展開ですが、まず据え置き型ゲーム機「PlayStation 4」向けに『英雄伝説 零の軌跡:改』と『英雄伝説 碧の軌跡:改』を、それぞれ4月、5月に発売します。

こちらについては、以前「PlayStation Portable」で販売したタイトルなのですが、その内容を「PlayStation 4」向けに作り直し、新機能を追加したうえで「PlayStation 4」の専用タイトルとして発売します。

2020年9月期 第2四半期以降の展開 ②

海外のタイトルになりますが、同じく『英雄伝説 零の軌跡:改』と『英雄伝説 碧の軌跡:改』の中国語韓国語のタイトルも発売してまいります。『イースⅨ –Monstrum NOX-』については、こちらも中国語版、韓国語版を2020年2月に発売しています。また、『イース セルセタの樹海:改』も中国版、韓国版となりますが、4月に発売します。

2020年9月期 第2四半期以降の展開 ③

第1四半期の概況でもご説明しましたが、ゲームコンテンツを使用したキャラクターグッズも、今期は定期的に発売しています。スライドは、先ほどのグッズとはまた異なるのですが、カーテンになります。また、枕カバー、タペストリーといったグッズもあり、最近では多様化が進んでいます。

ご自宅のカーテンに弊社のキャラクターをプリントしたもので、価格は高いのですが非常に好評を得ており、継続して販売しています。

2020年9月期 第2四半期以降の展開 ④

こちらは、株式会社A3の「GraffArt Shop」です。

2020年9月期 第2四半期以降の展開 ⑤

このようなかたちで、たくさんのグッズがあります。

2020年9月期 第2四半期以降の展開 ⑥

2020年9月期の目玉となるのですが、「PlayStation 4」向けに『軌跡』シリーズの最新作、『創の軌跡』を夏に発売する予定です。『軌跡』シリーズは多くの受賞歴もありますし、累計販売が450万本を突破しており、弊社にとっても期待のタイトルですので、こちらを注目いただければと思います。

基本戦略

弊社の基本戦略、経営戦略です。まとめると、この3本になるのですが、順にご説明します。

基本戦略 【安定収益】

まずは、人気シリーズによる安定収益です。今、ご説明した代表的なタイトルを定期的にリリースしています。これを定期的にリリースするのがけっこう大変なのですが、こちらによって安定した収益を得ています。

基本戦略 【マルチ展開】

弊社は「PlayStation 4」がメインなのですが、定期的にリリースしているタイトルをワールドワイドに展開します。それから、スマートフォンやパソコンのブラウザゲームに幅広く展開することで、収益の拡大を図っています。

最近、とくに大きく変わってきているのがダウンロード販売というもので、ゲームのなかでアイテム販売するといったものが伸びてきています。ゲーム制作の段階においても、そのようなことを意識しながら制作を進めていきたいと思っています。

基本戦略 【新規IPの挑戦】

そこから広がった分、シリーズに頼りきりではいけないため、新規IPということで、新しいものに取り組むところに結び付けていくのが理想としているところです。

収益拡大イメージ

最後に、収益拡大に関する方向性についてご説明します。弊社では、丁寧に作り込んだゲームが基礎となっています。これが崩れてしまって、一回見向きされなくなってしまうと、それを取り返すのは時間かけてもできないかもしれませんので、そこを崩してはいけないということで、クオリティをしっかり作り込むところがベースとなっています。

そこから、安定した販売を続けています。それを続けることでIPの認知度がアップしていきます。さきほど、たくさんのグッズをご紹介しましたが、それらは弊社から営業をかけたものはほとんどなく、周りの企業からいろいろなオファーをいただいて実現したものもあります。過去にはアニメ化されたものなどもありますが、そのような傾向が強いです。

それも、原点にあるゲーム制作の部分がしっかりしているからこそだと強く強調しておきたいと思います。弊社の紹介については以上となります。

実際に弊社が作っているゲームの内容がどのようなものか、雰囲気を感じていただきたいと思いますので、ゲームのムービーを用意してきました。そちらをご覧ください。

坂本慎太郎氏より質問

八木:それでは、質疑応答に移らせていただきます。まずは坂本さん、お願いします。

坂本:今日のプレゼンで投資家として一番心に残ったのは、利益率だと思います。売上高に対する利益率が非常に高いというお話で、これは経営効率が非常にいいということでした。これは、先ほどお話しいただいた内製化と、長年積み上げてきたブランド力と開発力があるからだと思っています。

その効率のところで、先ほどRPGについて「どういうところが難しいのか」というお話を聞いたのですが、効率的に開発を行うノウハウを教えていただきたいと思います。

近藤:技術的な部分での効率化は限界があり、個人が一生懸命スピードを上げても、上げられる限界があります。弊社としては、まずはゲームの企画部分を重視しています。

とくに最近のゲームでは映像やグラフィックを大きく売りにして押し出していく傾向が強いのですが、ゲームで評価されている部分は、音楽であったりストーリーであったりします。

グラフィックといったものは、人数もお金も非常にかかる部分で、とにかくいろいろなコストをつぎ込まなければいけない部分ですが、ストーリーや音楽は、1人でいいものを作れる可能性があるということで、弊社はそこを重視してゲームを企画しています。『軌跡』シリーズであれば、ストーリーの部分が大切ですので、その部分で他の会社に負けないものを作っています。

もちろん、グラフィックの部分もこだわるのですが、まずはゲームとして売りの部分を強く打ち出すため、ストーリーに力を入れるのであれば、どんなに人数を使ってもアイデアを出せる人間がいれば5人も必要ないわけです。そのようなことを意識しながら、ゲーム制作を40年間続けてきたところが大きいのではないかなと思います。

また、大きいのは内製の部分です。ゲーム会社は、内製で全部手掛けている会社はほとんどありません。内製化が進むと膨大なコミュニケーションコストがかなり削減されるため、その影響が大きいかなと思っています。

坂本:ストーリーについても、社内で「こっちのほうがいい」「あっちのほうがいい」といったディスカッションはかなり行いますか?

近藤:まるで喧嘩腰のような状態です。また最近は、弊社のストーリー部分を海外の方にも知っていただいていますし、スタッフも実は中国の方もいます。中国の方が『軌跡』シリーズのシナリオを書いたりもするのですが、けっこう押しの強い方で、「ストーリーを作りたい」ということで自国を出て来ているため、譲れない部分もあったりするのです。

坂本:そのあたりも強みすね。では2点目は、自己資本比率が非常に高いということについてです。

欧米も経営の効率化が行き過ぎて、これからの時代はリセッションに入ってくるとすると、けっこう厳しい会社も出てくるのではないかというお話もあります。御社の場合、この高い利益率を背景に資本を積み上げて来ています。

こちらの資本を使って「自由度を上げる」というお話をいただいたのですが、投資家としては「M&Aはあるのかな」と考えるところもあります。御社では、ずっと積み上げてきた「自社でゲームを作ります」という文化もあると思うのですが、M&Aを行うことでさらなる成長があると思う個人投資家もいらっしゃると思うので、そのあたりのお話をうかがいたいと思います。

もしM&Aをお考えであれば、どういう業態、業種にご興味があるのかを含めて教えていただければと思います。

近藤:M&Aについては、周囲からいろいろとご紹介いただく機会はとても多いです。ただし、弊社の場合は内製が進みすぎたきらいがあります。他の会社とお付き合いをさせていただくと、ゲームの開発手法でも少し変わっている部分が多いわけです。

「なぜ、そのようなかたちになったのか」という部分については、少ない人数だからというところもあります。より豪華なものを作りたいという会社とは、なかなか折り合いがつかないところもあります。

弊社が目指してきたもの、弊社が作り出す価値を、きちんと共有できる開発系の会社がいらっしゃったら、ぜひと思っています。

八木:開発系の会社ということですね。

近藤:そうですね。継続している課題だと思っています。

坂本:そうすると、グッズや音楽などは本業から若干離れ気味になってしまうため、そのあたりはあまり興味はないというところでしょうか?

近藤:そういうことでもないですね。弊社は、今はゲーム制作ですが、ゆくゆくは自分たちが作り出したものを、例えばグッズだけでなくアニメであったり、またゲームのメディアもゲーム機だけでなくいろいろな広がりを見せているため、ゲームを生み出す会社ではなく、コンテンツを生み出して、それを幅広く展開する会社にしていくのが最終的な目標かなと思っています。

そこで手を取り合える企業がいらっしゃったら、前向きに考えていきたいと思っています。

坂本:次は、保有コンテンツの楽曲についてです。

制作した楽曲が4,955曲ということで、5,000曲近い数があり、これをiTunesやCDで販売した収入があると思うのですが、楽曲制作も完全に社内で行われているのでしょうか? また、自社以外に他社の楽曲を制作するということも行っているのでしょうか?

近藤:楽曲については、ほぼ内製です。歴史が長いため5,000曲近くあるのですが、「ファルコム節」と言われているように、楽曲にもファルコムらしさの傾向があります。それは、内製だからこそ、そのような文化になってきたのかなと思います。

CDにするときに、多彩な音源に編曲する場合は外注することもありますが、基本的に作曲部分については社内で行っています。

八木:すごいですよね。

近藤:社員60名のうち、サウンド担当が何名いるかと言ったら、やはり数名です。あまり大きな人数で作っているわけではないため、自分たちのゲームの楽曲制作でいっぱいいっぱいになってしまう現状があります。

また、弊社のゲームをもとに、例えば『軌跡』シリーズであればその世界観やキャラクターをもとに、他社から「他のブラウザゲームで、ゲームを作っていいですか?」というお話をいただくことがあります。

さきほどお話ししたライセンス事業になるのですが、このライセンス事業で弊社のタイトルから派生したタイトルについては、「曲がファルコムっぽくない」とユーザーの方からご意見が出たこともあります。そこでお願いされて、曲を手伝うことはあります。

坂本:バンドは社員が担当しているのですか?

近藤:バンドは基本的に個人契約を結んでおり、その時期に動けるメンバーが集まってパフォーマンスを行っています。時期によって、だいたい固定していますね。

坂本:なかなかおもしろい展開だなと思いました。それでは、コメントで寄せられた質問を見ていきましょう。

質疑応答:ゲーム制作の人員について

八木:管理部門を含めて社員が60名ということですが、実際にゲームを制作するプログラマーの人数は何人くらいいるのでしょうか、という質問です。

近藤:10名程度ですね。

坂本:それでも、何本も並行しているときもあるということですよね?

近藤:そうですね。20名もいないのは、人数としては少なくて課題だとは思うのですが、この4年から5年で、プログラマーはなかなか採用が難しくなってきたなと感じています。

坂本:ある程度一人前になるまでは、かなり時間がかかりますよね。

近藤:時間もかかりますし、またゲーム業界自体がソーシャルゲームなども含めると横に薄く広がってしまったため、人材もものすごく広い範囲に散らばっている印象があります。

坂本:人件費もけっこう高騰しているでしょうね。

近藤:そうですね。弊社も大企業との人員リソースの奪い合いになります。単純に給料というところでは厳しいものがあるため、会社としての魅力を上げていき、やりがいのある場所だというところを、もっとアピールしていきたいと思っています。

八木:社員の方には、タイトルのファンの方もいらっしゃるでしょうね。

近藤:ほとんどがそうですね。

坂本:やはり、自分が好きなものの会社で働きたいみたいなことでしょう。

近藤:私も、もともと大学生時代にファルコムのファンサイトを作っており、それがきっかけで入社しています。

坂本:そのような情熱的になれるものがある会社ですよね。

近藤:制作もそのようなところに支えられており、タイトルに感銘を受けて来ている人間がいるということは、やはりタイトルが大事ですよね。

質疑応答:新規ユーザーの取り込みについて

坂本:私も昔はたまに御社のゲームで遊んでいたのですが、ゲームはユーザーから根強い人気がある一方で、新規ユーザーが手を出しにくいというお話もありました。新しい層へのリーチということなのかなと思うのですが、新規ユーザーの取り込みについての施策を教えてください。

近藤:みなさまがイメージを持たれているより、新規ユーザーの獲得は順調にできているかなと思います。

例えば『軌跡』シリーズは15年間続いているのですが、4年から5年のスパンでけっこう大きく内容を見直しています。第1期、第2期、第3期みたいなかたちで、シーズン1、シーズン2のように考えていただければおわかりいただけると思います。

海外ドラマであれば、シーズン1、シーズン2といえば続編なのですが、弊社のタイトルはシーズン2に移ったときに、キャラクターを全部入れ替えます。同じ世界観ではあるのですが、まったく新規のゲームのようなかたちでリスタートします。

気持ちとしては我々も、「第1期は成功したが、まったく新しく別のタイトルとして、第2期を始めよう」というくらいの気持ちで取り組むため、シーズン1からシーズン2に移ったときに、新規のお客さまがけっこう増えます。

『英雄伝説 空の軌跡』というタイトルは、クラシックなものでかなり「ファルコムスタイル」なゲームでした。これが『英雄伝説 零の軌跡』というタイトルに移ったときに、「PlayStation 4」のユーザーを意識したキャラクターデザイン、世界観設定を行いました。すると、『空の軌跡』のユーザー層は30代や40代の方だったのが、20代メインに切り替わっています。

そして、『英雄伝説 零の軌跡』から『英雄伝説 閃の軌跡』に移ったのですが、今度は学生編になります。それまでは、警察官が主人公だったりするのですが、学生生活を送りながら物語を進めていきます。

『英雄伝説 零の軌跡』の世代が30代になりかけていたときに『英雄伝説 閃の奇跡』を出したのですが、これは20代前半から10代後半がメインになっています。

坂本:自分と同じような世代ということで、感情移入しやすいということですね。

近藤:このように、続けていくからには変わっていかなければいけない部分をすごく意識しています。また、ゲームをどの機械で展開するのかも重要です。パソコンをメインにゲームを制作していたときには年配の方が多かったのですが、コンシューマーゲーム機に移ると若い人たちが入ってきました。

またストリーミングやパソコンが増えてくると、ここが変わってくると思っています。そのようなことを注視しながら、プラットフォームを選択するのも重要だと思っています。

質疑応答:スマホアプリへの展開について

坂本:かなりファンの方がいて、かなりブランド力があるIPだと思うのですが、『軌跡』『イース』シリーズのスマホアプリの展開はないのでしょうか?

近藤:実は、すでに展開は行っています。ただし、我々がまだ直接スマホアプリを出していないため、もしかしたらそのようなことに関する質問かもしれないですね。

坂本:自社で作るといった可能性はありますか?

近藤:我々もチャレンジしたことがあったのですが、スマホのゲームの流れがすごく速く、作っている途中でけっこう古くなってしまったりして、逆にリリースすることがリスクにつながっていく可能性もあります。

ちょうど転換期ということもあり、そこがうまくいかなかったのですが、今後は新規IPという意味でも、チャレンジしていかなければいけない機会が来るのではないかと思っています。

質疑応答:コロナウイルスの影響について

八木:イベントなども手掛けていらっしゃるというお話でしたが、イベント自粛といった状況が続いていると思います。そのあたりで業績に影響はあるのでしょうか?

近藤:昨日(2020年3月27日)発表したのですが、4月末に予定していたバンドのライブが中止になってしまいました。確かに、イベントの売上もある程度はあるのですが、弊社は海外と国内のゲームの売上やグッズ等がメインでしたので、全体から見れば大きなインパクトはありません。

投資家のみなさまは、コロナウイルスの影響を受けて海外でのゲーム売上はどうなっているのかと気にされているかもしれません。例えば、2月に発売した『イースⅨ –Monstrum NOX-』は、中国語版も発売しているのですが、ブルーレイ版は若干売上が落ちたのですが、ダウンロード版の比率はアジア圏で上がっています。

トータルで見れば、いつもと同じくらいの売上か、逆にそれを少し超えるくらいの数字をマークしています。今のところは大きなインパクトはありませんが、今後がどうなっていくかは読みきれないため、状況をよく見ながら判断していくことになると考えています。

八木:本日はありがとうございました。