2018年度 第1四半期 トピックス
川邊健太郎氏:こんにちは。新体制として最初の四半期である、2018年度第1四半期決算発表の内容を説明させていただきます。よろしくお願いいたします。
まず、第1四半期の主なトピックスを3つにまとめております。
1つ目に、検索連動型広告の売上収益が、前年同四半期比で2桁成長を達成いたしました。
2つ目に、「今年度、力を入れてやっていく」と申し上げておりました、モバイルペイメント事業の拡大に向けて、(ソフトバンクとの)ジョイントベンチャーの座組みの詳細を、本日(2018年7月27日)発表させていただきました。
3つ目に、企業価値の向上に向けて、資本提携および自社株買いの実施を発表させていただきました。
とくにこういった内容が、トピックスとして挙げられる四半期だったと考えております。
売上収益
ここから、それぞれにつきまして、詳細にご説明させていただきます。
まず、売上収益でございます。こちらは、前年同四半期9.0パーセント増の2,318億円となりました。
決済手数料の計上方針を変更
こちら(のスライド)なんですけれども、実は決済手数料の計上方法を変更しております。簡単に言うとネットしたということなので、利益には影響はないんですけれども、一部を変更しています。
計上方針の影響を除いた場合の売上収益
実は、この(決済手数料の計上方針の)変更を行わない場合の、前のやり方での計算方法で言いますと、(売上収益は)2桁成長。(前年同四半期比で)11パーセント増の売上だったということであります。
新体制としましては、「未来を大いに創っていく。そのためには、必要な投資もしていく」と、前回の決算発表、そして(2018年5月23日の)IR Dayでもご説明させていただいております。
当然(その投資を)やったからには、まず最初に手前のKPIが上がり、そのあと中間的な1つの成果である売上のトップラインが上がり、そして最後利益になっていくという構造ですので、売上のトップラインを2桁にしていけたというのが、まず第1四半期としては良かったなと考えております。
営業利益
営業利益でございます。これは、前年同四半期で8.9パーセント減の475億円となっております。
営業利益の増減要因
こちらについては、詳細にご説明を申し上げたいと考えておりますので、10ページ目で滝チャートにしてございます。
昨年度(2017年度)の第1四半期は、522億円の営業利益がございました。このときは一時的な増減要因として、アスクルの(物流センター火災による)保険金の受け取りがございましたので、そういったものを差し引くと、今期(2017年度第1四半期)の営業利益は482億円となります。
この482億円に対して、今まで行った投資等が成果を生んだ増益、あるいは逆に、既存事業の中で、これまでずっと行ってきているeコマース系の販管費の増加。そのほか、一時的な増益との影響を差し引きいたしまして、487億円の営業利益になります。
そして最後に、前回の決算発表のときにご説明させていただきました、今年度(2018年度)から行う追加の投資。「3つのNo.1」に対するチャレンジとして今年度投資させていただく300億円の、第1四半期分の費用が、メディア関連で5億円と、コマース関連で6億円。これらを費用として使いましたので、それらを差し引いて、475億円になったということであります。
とくにみなさんは、(スライドの)右側のほうが注目の点だとは考えております。「追加の投資費用の300億円を、ちゃんと使えているの?」というところに関しましては、(今回は)年度の中での最初の四半期ですので、まだ、いわゆる企画をすることが多いので(実際に投下する段階にはないため)額で言うと、こういった金額になっていました。ただこれは、一応予算的に言うと、だいたい想定どおりの執行だったかなと考えております。
したがいまして、費用としましては、第2四半期……とくに下期に、だんだんと投資の金額が大きくなってきます。今のところは、通期の営業利益のガイダンスに変更の予定はございません。
セグメント別業績
それ(業績)をセグメント別で見たときの、売上収益と営業利益の内訳でございます。
ざくっと特徴を申し上げますと、メディア事業は、売上・利益ともに、堅調な成長でした。
次に、コマース事業に関しましては、売上は順調に伸びました。利益の半分は、アスクル関係の出たり入ったり。そしてもう半分は、eコマースの取扱高が伸びていることに関しての費用が増えたことにより、減益が起きたということでございます。
以上が、売上収益と営業利益に関しての説明でございました。
月間ログインユーザーID数
ここから、事業セグメントごとの詳細について、説明をさせていただきます。
まず、メディア事業でございます。メディア事業ですけれども、これまでもいろいろなKPIを用いて、事業の説明をしてまいりました。古くは、PC時代にページビューというKPIを用いてました。
そして、宮坂(学氏の)体制を通じてずっと使ってきた指標は、デイリーユニークブラウザ(DUB)です。そして、宮坂体制の後半……とくにアプリにシフトしたときから、アプリのDAUというものも使って、説明をしてまいりました。
新体制としては、「データの会社になる」「データドリブン企業になる」というのを、強く打ち出していますので、そういった指標の中から、とくにデータドリブン化において重要な指標を取り出して、メディア事業においても説明をしていきたいなと考えております。
その指標は、いろいろと議論した結果、やはり「月間のログイン済のユーザーID数が、どう成長していっているのか」というのが、データドリブンに対して、いちばん重要だと考えました。そのため、これは今までも開示してきたKPIの数値ではありますけども、私が最初にメディア事業に関して説明するときは、このKPIを用いて、ご説明を申し上げたいなと思います。
これはもう言わずもがなですが、ログイン済のIDにすべてのデータが紐付きます。個人の特定をするとか、あるいはサービスの効率をよくすることも、すべてはログインユーザーIDのデータを用いて行うことですので、これが重要だと考えています。
その月間のログインユーザーID数ですけれども、6月の比較で申し上げますと、前年同月(2017年6月)比で12パーセント増の、4,433万ログインユーザーID数となっております。
ログインユーザー利用時間
そして、こちらは初めて開示させていただく情報でございますけれども、「ログインしているユーザーが作り出す滞在時間は、どれぐらいなのか?」というのが、このログインユーザー利用時間でございます。
メディア事業ですので、ユーザー数×滞在時間が、メディアパワー。そしてそのユーザーはログインされている(ユーザーを指す)べきというのが、今の我々の最新の考えです。
このログインユーザー利用時間ですけれども、とくにスマホ(経由)の部分が、前年同四半期で22パーセント増と、堅調に伸びております。
動画視聴時間
その滞在時間が伸びる理由はいくつかあるわけですけれども、その理由の主たるものは、コンテンツの動画化になるわけです。そのコンテンツの動画化に関しまして、Yahoo!上における動画の視聴時間は、前年同四半期比で2倍となっております。
「Yahoo!ニュース」動画視聴回数
その動画について、もう1つ説明をさせていただきます。なにか事件・事故・災害があったときに、Yahoo!にユーザーがきてくださるというのは、おかげさまで今も、引き続き起きている事象です。今までは(サイトに)きて、だいたいテキストのニュースを見るというのが、ユーザーの一般的な習慣だったわけですけれども。
我々も昨年度(2017年度)からやっていた動画への投資の中で、リアルタイムの24時間ニュースについて、番組を2つほど提供しております。
そういったコンテンツを使って、有事の際にも、今はなるべく動画を観ていただくようなかたちにしていきました。その結果、この(2018年度第1)四半期の中でも(2018年)6月18日に大阪府北部地震が発生した際には、その24時間の動画配信ニュースが、通常時に比べて3倍以上観られたという結果が出ております。
したがいまして、Yahoo!の中でのユーザーのコンテンツ消費が、かなり動画になってきているというのが、こういうところからもわかります。
「Yahoo!知恵袋」のサービス改善にAIを活用
(新体制で注力する事項の)もう1つは、データドリブン化についてです。さまざまな要素(を持っています)。「データやAIを用いて、なにかしていない機能はない」というぐらい、Yahoo!はデータとAIを用いているわけですけれども。
とくに顕著だった実例として、この四半期で言いますと、「Yahoo!知恵袋」のサービス改善に、データとAIを用いたというものが挙げられます。
自社開発しております、「kukai」というスーパーコンピュータを活用しまして、約6億件の「Yahoo!知恵袋」のコンテンツである、QとAを解析いたします。その結果、よくないコンテンツに関しては削除したりですとか、非常に参考になるコンテンツに関しては、よりフィーチャーを強めたりですとか、そういった作業を行うわけですけども。
今までは、コンピュータを使って、人がそういった作業をしておりました。それが6億件ですと、だいたい9ヶ月ぐらいかかっておりました。今回はこの「kukai」……AI・機械学習を用いて処理を行った結果、9ヶ月かけて行われた作業が、1日強でできるようになったということです。圧倒的な生産性の向上が、こういうところでも訪れております。
一事が万事でございますので、リソースのある限り、コンピュータパワーのある限り、あらゆるサービスや業務に、今後もこういったデータドリブンの力を適用していきたいなと考えております。
今、Yahoo!は新体制として、3つの「No.1戦略」を掲げさせていただいております。
その3つの「No.1戦略」の1つ目である、「インターネット広告売上収益No.1」について、ご説明申し上げます。
広告関連売上収益
まず、この(2018年度)第1四半期の広告関連売上収益は、前年同四半期比8パーセント増の764億円でございました。その中におけるディスプレイ広告と検索連動型広告の内訳は、こちら(のスライド)にあるとおりです。
検索連動型広告売上収益 前年同四半期比 成長率
その中で、今期(2018年度第1四半期)の最大の成果としましては、先ほど来申し上げている検索連動型広告の売上収益が、実に5年ぶりとなるんですけれども、2桁成長の13.8パーセント(増)となりました。
検索連動型広告売上収益の成長要因
もちろん、さまざまな努力をした結果、こういった成果に結び付いているわけですけれども。とくにここに掲げているような、検索連動型広告自体のデザインの変更(を行いました)。さまざまなテストを繰り返した結果、もっとも効果が高いものに切り替えました。また、さらにその広告の中に、「カテゴリ補足オプション機能」みたいな新商品も入れています。こういったものが功を奏した結果、2桁成長となりました。
なにか一過的な理由ではなくて、こういう機能の本質を改善することによって増収をつくれたということは、今期の大きな成果だったなと考えております。
スマートフォン動画広告売上収益
もう1つ、広告売上収益No.1に向けて力を入れていることは、動画広告の強化、あるいは広告の動画化ですけれども。
スマートフォン上における動画広告の売上収益が、前年同四半期と比べて約3倍になっております。
Yahoo! JAPANトップアプリで動画広告をローンチ
加えてこれは、今までのテキストの広告商品を動画に切り替えるかたちですけれども。本当の意味で、ここから売上収益を上げていくということですと、新商品を入れる必要があるわけです。これは、以前からみなさまにご指摘をいただいていたところです。
パソコンにおけるブランドパネルにあたるような商品を、今まではスマホのWeb版で実験的に提供してきましたけれども、こちらをいよいよ、もっともDAUのあるYahoo! JAPANのトップアプリに、実戦配備をしております。
こちらは(2018年)7月21日からの提供でございますので、まだ売上としては、この第1四半期には反映されていないのですけれども。第2四半期以降でこういったものを入れて、動画広告の売上を、ますます伸ばしていきたいと考えております。
コマース事業の収益推移
続きまして、コマース事業です。
まず、この最初の資料は、「コマース事業」と言っても、いろいろあると(いうことです)。非常に安定的な収益を出している事業もあれば、チャレンジをしていて、今はまだ赤字で、最終的には(収益を出すことを)お楽しみにしているような投資事業もあるということです。
「これらが混ざって表現されていると、非常に理解がしづらい」ということを、みなさまからもご指摘いただいておりましたので、今回はいったん、それぞれ(の事業が)どういうことなのかというのを(こちらのスライドで)表現しております。
つきまして、ゼロ(のライン)より上にあるグラフは、安定的に収益を出している事業。すなわち、「ヤフオク!」「プレミアム会員」「Yahoo!トラベル」等のO2Oの送客事業、そして決済金融等の事業が、(ゼロから)上に表現されております。そして、ゼロから下が「Yahoo!ショッピング」とワイジェイカードの事業です。
まず、ゼロから上のピンク色のところをご覧いただければと思います。コマース事業において、非常に安定した分厚い利益を継続的に出すことができております。
続いて、この(ゼロから)下のところに関しましては、「Yahoo!ショッピング」とワイジェイカードをチャレンジ項目として、どんどん投資をして大きくしていっているところですけれども。
それでも、とくに赤い色の「Yahoo!ショッピング」の事業に関しましては、赤字の額がどんどん減っていっている状況でございます。したがいまして、事業的には非常にコントローラブルになりつつあるということを、ご報告できるかなと考えております。
ワイジェイカードは、事業としては後からやり始めましたので、ワイジェイカードはまだこういった(ゼロから下の部分に)厚みがありますけれども、やがて必要な投資を終えたあと、きちんと収益事業にして(ゼロから)上のほうに計上させていくという運びにしていきたいし、それは(現時点で)一定程度コントローラブルにやれているというのが、我々の考えでございます。
「Yahoo!ショッピング」取扱高におけるショッピング広告テイクレートおよびポイント費用比率の推移
その中で、チャレンジ事業である「Yahoo!ショッピング」の事業の、最終的な収益化の大きな項目の1つに、広告があるわけですけれども。そのショッピング広告のテイクレートが、赤い折れ線グラフで表現されています。引き続き、ガイダンスに示しているような4パーセント台半ばのテイクレートを維持できております。
白い折れ線グラフは、ポイント費用(比率)です。ポイント費用は、その時の我々の投資の考え方やお客さんの購入の金額によって、増減しているわけですけれども。それとは相関せず(赤い折れ線グラフの)広告のテイクレートは一定程度で、きちんと安定しているということが、ここから言えます。
それを前提におきまして、我々が今年度(2018年度)力を入れている3つのNo.1のうちの2つ目である、「eコマース(物販)の取扱高No.1」について、ここから説明いたします。
FY18からのeコマース取扱高の定義
まず、もう一度(eコマース取扱高の)定義のおさらいになりますけれども。我々はYahoo!上でさまざまなeコマースを行っておりまして、それのすべての合算は、この(スライドの)左側にある、年間の取扱高の約2.1兆円です。
その中から物販のものだけを取り出すと、こちら(スライド上部)にございます1.8兆円というのが、現在の我々の取扱高です。この数年間でかなり力を入れてきた結果、1.8兆円となり、2兆円が間近になってきている状況です。
その中での取扱高の内訳は、ここにございます「ヤフオク!」、ショッピング事業、アスクルBtoBと、いくつかのその他の事業でございます。我々としましては、いったん物販の1.8兆円にフォーカスして、ここでまず日本でNo.1になろうというチャレンジをしております。
eコマース取扱高(物販)
その物販におけるeコマース取扱高ですけれども、この(2018年度第1)四半期は、前年同四半期比で10パーセント増の4,699億円となっております。
「Yahoo!プレミアム」会員ID数
そして、その取扱高をつくり出すコアなユーザーがいる「Yahoo!プレミアム」会員(ID数)ですけれども、従来から行っているソフトバンクとの連携が引き続き効果を出して、ついに2,000万IDを突破することができました。
おそらく、インターネット上だけのサブスクリプションサービスで2,000万人(の会員数)を超えているようなサービスは非常に少ないので、ネットオンリーでは、国内最大級の会員サービスかなと考えております。
ショッピング事業取扱高
そして、その中でも一番力を入れております「Yahoo!ショッピング」の取扱高は、前年同四半期比で25パーセント増の1,752億円に成長させることができました。
さかのぼること1年前の2017年度の第1四半期は、ソフトバンクにおける(いつでもポイントが)10倍、および「プレミアム会員」の連動が最初にスタートした四半期ですので、2016年度から2017年度にかけて、「Yahoo!ショッピング」の取扱高は、実に40パーセント伸びています。
したがいまして、40パーセント伸びたものに対して、今回(2018年度)はもう一度、取扱高を25パーセント増やすことができたということで、我々としては、「この数字は、ある程度できたかな」「いい四半期だったな」と思っています。
ショッピング広告売上収益
取扱高が(前年同四半期比で)25パーセント伸びて、広告のテイクレートは変化せず4パーセント台半ばで安定しておりますので、結果としてショッピングの広告売上収益は、前年同四半期比で28パーセント伸びまして、70億円になりました。
取扱高が25パーセント増で、広告売上収益が28パーセント増だったということで、少し広告売上収益のほうの伸び率が高くなってきたというのが、この(2018年度第1)四半期の特徴です。
オークション関連取扱高
続きまして、「ヤフオク!」です。
先日、IR Dayのときに、「ヤフオク!」に関しての危機感と、これから対応していこうと思う(という)宣言をさせていただきました。その宣言に合わせて、これまで「ヤフオク!」は「オークション関連取扱高」ということで、こちらの(スライドの)左側にあります、さまざまなオークションに関連するもの、あるいは中古の取引をしているものをすべて入れて、それの「成長性」というもので開示させていただいておりました。
ですが(2018年度第1四半期からは)いったんその関連のもの(「Yahoo!チケット」関連以下)を別のカテゴリに移しまして、我々は(取扱高を)「ヤフオク!」に純化して見ていきますし、みなさんにもお伝えして、コミュニケーションしていきたいと考えております。
「ヤフオク!」取扱高
「ヤフオク!」に純化したかたちでの取扱高は、(2018年度第1)四半期で2,176億円、前年同四半期比で言いますと、0.6パーセント増となりました。いったん、ほぼフラットになっております。
これに関しましては、IR Day(での宣言)に引き続きまして、強い危機感を持っております。この分野はまだまだ伸ばせると思っておりますので、「ヤフオク!」の本来的な価値をもう一度見直すこと。あるいは「スマホファースト」といいますか、スマホに合ったUXに変えていくということ。そのほかにもさまざまな取り組みを行うことによって、これをどんどん、再成長させていきたいと考えております。
以上が、eコマース取扱高No.1に向けた、今四半期の取り組みでした。
3つのNo.1へのチャレンジの3つ目は、「モバイルペイメント取扱高No.1」でございます。こちらに関しても、ご説明申し上げます。
3社連合でスマートフォン決済サービスを提供
以前から、このモバイルペイメントの取り組みに関して、「ソフトバンクとジョイントベンチャーをつくって取り組んでいく」ということをプレスリリースさせていただいておりましたけれども、その座組みの詳細について、本日(2018年7月27日)リリースをさせていただいております。
PayPay株式会社ということで、サービス名も「PayPay」になると思いますけれども。PayPay株式会社に、ヤフーが50パーセント、ソフトバンクが50パーセント入れて、事業子会社化しております。この事業子会社に対してPaytm社の技術を提供して、日本においてモバイルペイメントを大いに普及させていこうという座組みで、我々としても注力をして、やっていきたいと考えております。
本事業における我々の強み
我々が、PayPayから行うモバイルペイメントですけれども、「なぜこれが国内No.1になれるのか?」という、我々なりの理由・考え方ですけれども、主に4点あると思っています。
1つ目は、やはりソフトバンクとのグループシナジーがあることです。今もeコマースは、ソフトバンクとの連携によって、どんどん取扱高を伸ばしておりますけども、やはりここにおいても、ソフトバンクは重要なパートナーであります。1点目は、加盟店店舗を拡大していく上での営業力がございます。2点目は、通信キャリアであるソフトバンクを中心にした、国内のたくさんのユーザー基盤がございます。こういったものが、PayPayとも連動できると思っています。
そして2つ目は、インターネット上の決済手段としては、「Yahoo!ウォレット」が4,000万超の口座でございまして、おそらくこれは、国内最大級の決済手段の1つだと思っています。なので、この4,000万ユーザーが無理なくシームレスに、リアルの決済でもこれを使えるようにしていくことが、我々がNo.1になれる、重要な理由の1つと思っております。
そして3つ目は、「モバイルペイメント」「キャッシュレス化」と言っても、ただそれを提供すれば、日本においてそうなっていくかと言うと、決してそういうことではないと思います。さまざまな使い方の提案を、サービス込みでユーザーに提示していかないと、それはなし得ないので。
ヤフーあるいはソフトバンクにおいて、ネット・リアルを問わず、100個以上のさまざまなサービス・事業を我々はやっておりますから、その100個以上のすべてのサービスにPayPayを対応させることによって、お客さんにその(PayPayを)使う必然性を作っていきたいと考えております。
加えまして、モバイルペイメントが使えるリアルのお店の対象先としては、例えばクレジットカードあるいは非接触型のモバイルペイメントの決済手段よりも、より多くの店舗に対応させいきたいし、できると思っています。
それはなぜならば、そういう初期コストとかが、小さなお店であれば、モバイルペイメントの場合はQRコードを1枚貼るだけで、あとはすべてサーバーサイドでシステムが担いますから、非常にエントリー費用が安く済むわけです。
そうすると、今までクレジットカードの端末とかをコストの観点から置けなかった小さなお店とかも、どんどん置けるようになっていきますから、そういったところにも対応していきたいと思っています。加えまして、そういった小さなお店に対して、決済手数料を3年間無料にして、普及を図っていきたいと考えております。
そして4つ目が、今日の発表の中核にもなりますけれども、このモバイルペイメントにおいて先行する会社である、Paytmの最新のテクノロジー・UXを使えることが、強みになっていくと思います。
まず、日本国内において突出して成功しているモバイルペイメントの会社は、我々も含めてないと捉えております。また、世界的に見ても、モバイルペイメントで大きく成功している会社は、実は世界に数社しかありません。
その世界に数社しかない1社のPaytmの最新のテクノロジーをPayPay社が活用して、それがヤフーのモバイルペイメントとしても大きく花開いていくのが、我々が勝てる理由の、もう1つの大きなものになっていくのではないかなと考えております。
Paytmの強み
そのPaytmでございますけれども、インドにおけるスマートフォンの決済のリーディングカンパニーです。彼らの最大の資産は、すでに3億人の利用者が毎日、800万店舗でモバイル決済を使っているということです。これによって、技術はどんどん研ぎ澄まされ最新のものになります。
そしてなによりも、このスマホ時代になって、UXの良し悪しで選択されるサービスが決まってしまうというぐらい、UXが重要になってきているわけですけども、(Paytmでは)その最新のUXを作っているということです。それはすなわち、我々もそれを利用できるということであります。
さらに、このPaytm社ですけども、出資者がソフトバンク・ビジョン・ファンド、アリババ・グループ、そしてアント・フィナンシャルです。とくに、アリババとアント・フィナンシャルに関して言えば、ここもまた、世界に数社しかないモバイルペイメントで成功している会社ですので、株主としてのそういうノウハウもPaytm社に入り、そのPaytm社の影響を我々が受けて、世界で最先端のモバイルペイメントを日本で提供できるのではないかと考えております。
モバイルペイメントは、以前から申し上げているとおり、その分野を立ち上げれば横展開できる、インターネット上における久しぶりの大きな戦略的な機能だと思っています。
なので、我々としては、もう1個ヤフーを創るぐらいの覚悟で、これをやりたいと思っております。私はヤフーも、思えばアメリカのヤフーのノウハウを持ってきて、タイムマシン経営で非常に成功したという認識でおりますので、このモバイルペイメントに関しましても、もちろん我々自身の国内市場にアジャストした努力もしますけれども、やはり大局で見ると、こういうPaytmのノウハウを活かしたタイムマシン経営を、ここでもう一度きっちりとやりたいと思っております。
収益化までのプロセス
そのモバイルペイメントですけれども、「これは、収益化はどうするの?」というご質問を、すでに多数いただいております。それについての考え方を(こちらのスライドに)1枚でまとめております。
まず、巨大な収益を出すためには、インフラとして日本の隅々まで、日本のかなりのユーザーにこれを使っていただくことが必要でございますので、まずは加盟店獲得、そして利用者の拡大にフォーカスをしたいと思います。そして、ここである程度No.1になれる理由は、先ほどご説明したとおりです。
それがインフラとして普及し、多くの人に使われるようになった暁には、既存事業へのインパクト・新規事業のインパクトというかたちで、我々に巨大な収益が訪れるのではないかと考えております。
まず、既存事業に関しましては、これは「もう1個ヤフーを創る覚悟でやっている」と申し上げましたけども、もう1個ヤフーができれば、当然ヤフーの既存事業である広告事業、eコマース、あるいはワイジェイカードのクレジットカード事業のすべてに、事業の拡大が訪れると考えております。
そしてもう1つは、モバイルペイメントの土台を築き、そこをきちんとユーザー基盤を持っているからこそできる、新規事業があると考えております。それは、リアルの店舗への送客のO2Oの広告事業。また、モバイルペイメントがうまくいく場合、莫大な量の決済の流通総額がございますので、そのお金の流れを活用したフィンテックのサービス。
こういったものができると思っておりますし、先行するPaytm社とかアント・フィナンシャル社も、まさにこういう新規事業を作ることによって利益を生み出しつつあるということでありますので、我々もここは、きっちりと収益化をしていきたいと考えております。
こちらの写真は、先日、PayPay社の決起集会みたいなものを行ったときの写真です。こんな雰囲気です。
実際には、開発は東京と、Paytmの本拠地があるニューデリーと、あと開発拠点があるトロントの3拠点で、インターネットを通じてコラボレーションしながら作っていっているんですけども。
一同が集まると、こういった日本人・インド人・中国人・韓国人がみんな集まって、侃々諤々やっています。「明日のモバイルペイメント、これはもう、アジア全体の汎用的なモバイルペイメントになるといいね!」という理想論を議論しながら、「日本において、ぜひキャッシュレス化をやってみよう」という志を持って、こういったメンバーでやっています。
真ん中にいる、こうやって(両手の親指を立てて)いる人が、Paytm Inc.の社長のビジャイさんです。その後ろにいる、こうやって(ビジャイ氏の肩に手を置いて)いる日本人が、今回PayPay社の社長になる中山(一郎氏)です。
あと、手前にいるインド人の人が、PayPayのCTOをやるハリンダさんです。こういったかなり国際色豊かなメンバーで、立ち上げを急ぎ、今は開発をしています。
最後に、企業価値の向上を目指して、この四半期で執り行ったことをいくつか紹介して、私の説明を終わりにしたいと思います。
自社株買いの実施を発表
企業価値向上を目指して、この(2018年度第1)四半期で行った最も大きなことは、やはり先日発表させていただきました、自社株買いの実施の発表でございます。こちらに関しては、すでにプレスリリースでかなり詳細なことをご説明申し上げているので、その説明は割愛しますけれども。一番大事な「なぜやるのか」ということに関して、この3つを改めて挙げています。
1つ目は、通信事業者であるソフトバンクとの連携が、非常に効果的になりつつあります。これは、ショッピングの取扱高を見ても、あるいは「プレミアム会員」の増加を見ても、あるいは今後やっていくモバイルペイメントの強化を見ても、やはり通信キャリアとの相性は非常にいいということです。通信事業者であるソフトバンクにヤフーの株主となってもらって、このシナジーをより良く進めたいというのが、「なぜやるのか」の1つ目です。
2つ目は、今までヤフーは、ソフトバンクグループとAltaba Inc.、すなわち旧Yahoo! Inc.とのJoint Venture Agreement(JVA)に基づいて運営されている会社でした。正直、いくつか経営の制約があったわけです。そういったものが、今回のAltaba Inc.からの株式の取得によって、すでにこのJVAは解消されていますので、経営の自由度を上げたかったということです。
そして3つ目は、資本効率を向上させていこうということと、株主還元をきちんとしていきたいということが、(自社株買いを)行った理由でございます。
これらは、理由としてはそれぞれ並列にあるわけですけれども、こういったことを行うことによって企業価値を上げ、最終的には株主還元をしていきたいなということで、実施している最中でございます。
他社との連携を強化
その他の企業価値の向上について、ご説明いたします。(こちらのスライドは)我々が最近用いているものですけれども、ユーザーアクションのグルグル図というやつです。インターネット上における、一般的なユーザーのアクションと、そのつながりを表したものですけれども。ヤフーとしては、22年間サービスをやらせていただいた蓄積で、これらのユーザーアクションのほぼすべてに、シェアを持ったサービスがあります。
したがいまして、張り方としては、今は全張りをしていて、「ユーザーの連携を強化することによって、付加価値を付けていこう」ということでありますけれども、引き続き、全部ができるものではないと考えています。とくに日本においては、スマートフォンに特化したかたちで、こういったユーザーのアクションをたくさん作り出している、いいベンチャー企業もありますので。
そういった他社との連携を強化することによって、ユーザーのアクションをヤフー上において、もっともっとグルグルしてもらいたいということも、今後強化していきます。
Retty(株)との戦略的パートナーシップ構築
この(2018年度第1)四半期で言いますと、1つはまず、Rettyと戦略的な資本業務提携を行っています。Rettyは、スマートフォン上においてお店を選ぶことに関して、最近急成長の会社でございます。したがいまして、今後Rettyとお店選び・予約・決済というものの課題解決を、一緒にやっていきたいなと思っています。
それはすなわち、このユーザーのアクション図……(スライドの)右上で言いますと、なにかお店を「調べる」ということでありますし、いいお店があったらそこに行きたい(「買う」)ということで予約をして、最終的には、モバイルペイメントで決済をする(「支払う」)といったユーザーアクションの増加に、これはつながると考えています。
dely(株)との戦略的パートナーシップ構築
この(2018年度第1)四半期で行いました、他社との連携の2つ目は、delyとの戦略的パートナーシップの構築でございます。delyは「Kurashiru」という動画のレシピサービスをやっていまして、やはり(Rettyと)同様に、スマートフォンで急激に利用者を伸ばしている会社であります。ここと、連携をしていきたいと。
なぜならば、食事やレシピとは(相性が)非常にいいんです。(朝・昼・晩と)1日に3回、これを使う機会があると。「Yahoo! JAPAN」は、みなさんもご存じのとおり、デイリーユースのサービスにこだわっていろいろとやってきたからこそ、今のユーザー数があるわけですので、レシピのサービスは非常に相性がいいと、前から思っていました。(そこで、コンテンツを)動画化した刹那に、delyと資本業務提携をしまして。
今後は、(スライド右上の)アクションのグルグル図で言う、なにかおいしそうなレシピや食事に「出会う」というところと、出会ったら、より詳しく「調べてみよう」というところ。そして、調べた結果、「じゃあ、今夜はこの食事を作りたい」ということになれば、その具材をeコマースで送る(「買う」)みたいなことも、将来的にやっていきたい。(そこに)つながるのではないかなと考えて、このような資本業務提携を行いました。
このようなかたちで、ベンチャーの新たなアイデアや活力も活用して、ヤフーの事業を強化していきたいと思っていますし、我々もまた、そういったベンチャー企業の拡大に力になりたい。そういったWin-Winの関係を作っていきたいなと思っていますので、今後ますます、我々はそういった元気のあるベンチャーと、資本業務提携あるいは連携をしていきたいと考えています。
ソフトバンク・ビジョン・ファンドとの連携
そして、最後になりますけれども、企業価値・事業価値を上げるための連携が、ソフトバンク・ビジョン・ファンドとの連携です。今までご説明したのが、国内の元気のあるベンチャーとの連携だったとすると、今度は世界中のユニコーン企業との連携です。
すでにソフトバンク・ビジョン・ファンドが、たくさんのユニコーン企業に投資をしています。その中から、日本の市場に相性がよさそうなもの、あるいはヤフーとの連携性が高そうなものに関しては、我々が日本の展開におけるパートナーとなって、事業開発をしていきたいと思っています。
そういった事業開発のパートナーを、ヤフーとソフトバンクKKが担うことによって、世界中のユニコーンのユニークなビジネスを、日本にこれから持ってきたいと思っています。すでにここ(のスライド)にある、ソフトバンク・ビジョン・ファンドから出資済みの世界中のユニコーンの中から、真ん中にあるPaytmと、今回のこの(2018年度第1)四半期では、技術提携をすることができました。
今後は、さまざまなおもしろい事業をやっている会社がほかにもありますから、こういったものから、日本市場でうまくいきそうなもの、そして、ヤフーの事業価値(の向上)にもつながりそうなものを選んで、大いに日本での展開を一緒にやっていきたいなと考えています。
ヤフーの新体制としましては、これまでも何度も申し上げているとおり、やはりインターネット技術を用いて、インターネット上に、あるいはリアル上に、新たな未来を創っていきたいと、強く考えています。
しかも、その創る未来は、やはりヤフーならでは……「ヤフーにしか創れない『未来』」を、オリジナリティを持って創っていきたいと考えていますので、引き続きご理解をいただければ幸いです。
少し説明が長くなってしまいましたけれども、一生懸命丁寧に説明したつもりですので、この後の質問でも、いろいろと聞いていただければと思います。ご清聴ありがとうございました。