シストレの戦略は3つの工程で作る

中原良太氏(以下、中原):こんにちは、株式予報の中原良太です。

今週は戦略作りで最も大事なことというテーマで、動画セミナーを始めていきたいと思います。先週に引き続き、システムトレードをやっている方向けのけっこうマニアックなお話ですので、「システムトレードはまだやったことがない」という方は、動画セミナーの中でも昔のものを見て復習したほうが、この動画を見るよりも勉強になると思いますので、その点ご了承いただければと思います。

「システムトレードをバリバリやっています」という方にとっては、非常に大事な話をしていきたいと思っていますので、ぜひ最後までご視聴いただいて、ご活用いただければと思います。

今回なぜこのテーマでお話ししようと思ったかというと、僕自身売買ルールを作ってきて、投資戦略を練って、もう5年目に入るんです。

長い期間ずっと戦略を作っていると、失敗することも少なからずあります。「ああ、あのときあの条件式を使わなきゃよかったな」とか、「なんであんなしょうもない売買ルールで運用してしまったんだろう」とか、失敗したことが多々あります。それで後悔していることもたくさんあります。そういう後悔を繰り返さないためにも、僕自身が戦略作りで失敗をしないために心がけているポイントがいくつかありますので、今日はその話をしていきたいと思います。

本講座の目的は、戦略作りの一番大事なポイントを理解して、ルール作りで失敗しないようになるということです。

システムトレーダーが失敗をするポイントは、大きくわけて2つあります。運用を始める前の失敗と、運用を始めてからの失敗です。この2種類のうち、今回は運用を始める前のポイントについてです。

システムトレーダーにとって、運用を始める前の戦略を間違えてしまうと、すべて間違えてしまうという、リスクのある運用手法があります。そこで、ルール作りを間違えないための大事なポイントというのを、今日ご紹介していきたいと思っています。

売買ルールを作るときに大事な流れは3つあります。

1つ目が個別株の値動きの傾向を調べる。ひたすら勉強して新しい着想を得るというのが、第1ステップ。

2つ目が、ルールに組み込む条件式を選ぶ。得られたアイデアをもとに、それをかたちにして売買ルールを設計していく、投資戦略を組み上げていくという作業をしていきます。

3つ目が組み込んだ条件式を微調節していく、チューニングしていく作業です。プラモデルとかを考えていただければ簡単だと思います。まず第1にパーツを手に入れる。第2にパーツを組み立てる。それで最後に色を塗っていくみたいな感じです。個別株の値動きの傾向を調べるというのは、一番大事な勉強です。その次に、勉強した結果をもとに、どういうふうに利益を狙っていくかという戦略を練る。

戦略作りで大事なのは「上流」の工程

大事なのは、上流部分の工程です。個別株の値動きの傾向を調べるのが、一番大事。

その次に、その傾向をもとにどうやって戦略を設計をしていくか。この2つ目のステップも大事。

3つ目、組み込んだ条件式を調整する。これはどうでもいいです。誰でもできます。猿でもできると思っていまして、この3番に時間を使うのは非常にもったいない。

ですから、売買ルールを作るときは1つ目・2つ目の手順にいかに時間を割いて、いかに深く相場を分析し、その分析した結果を売買ルールに反映していくかが一番大事なポイントです。ここをいかに深掘りしていくかによって、運用成績には雲泥の差が生まれると考えています。

ここで失敗しないためには、第1ステップ・第2ステップについて、とにかく徹底的に自分で調べていくというのが大事なポイントかと思います。

第1ステップの個別株の値動きの傾向を調べることについては、実は過去の動画セミナーでご紹介したことがあります。

個別株の値動きの傾向を調べるとは、どんなときに株価が上がりやすいか、下がりやすいか、どういう銘柄をどんなタイミングで仕掛けると結果が得られたのかという傾向をひたすら調べていくことです。

自分で調べるのも大事なことですが、手っ取り早く知りたいという方は、「動画セミナー第92回」で僕が知っている傾向をひとまとめにした動画があります。こちらをご活用いただくといいかと思います。

2つ目、売買ルールに組み込む条件式を選ぶには、傾向を押さえた後でどうすれば利益を出せるのか、どうすれば損を抑えられるのかという具合に、買い時・売り時についてひたすら考えていきます。資金管理とかもそうですね。自分に合った売買ルールを設計していきます。この話を今日は深掘りしていこうかなと思っています。

3つ目の、組み込んだ条件式のパラメータを微調整して成績を改善するというのも非常に大事なポイントなんですけれども、これはあまり手間を掛けないでもいいかなと思っているポイントです。

参考までに(お伝えすると)、「動画セミナー第72回 期待値マップの使い方」を参照していただくことで、売買ルールを微調節する、パラメータをチューニングしていく、ということがうまくできるようになると思います。

それで本題なんですけれども、今日、主にお話ししていきたいのが手順2です。条件式を選んで売買ルールを設定していくということについて、いろいろとお話をしていきます。

1つの目的に対して複数のアプローチを試すべき

売買ルールを作るときには、条件式を選びます。

どうやって銘柄を選ぶのか、そのために適した条件式は何か、適したスクリーニングの条件は何かということを考えていくわけなんです。条件式を選ぶときにすごく大事なポイントは、1つの目的に対して、複数のアプローチを試してみるということです。

選択肢はいろいろあるんです。例えば急落した株を買いたいというときに、何日くらいで急落を定義すればいいのか。どういうパラメータを使えばいいのか。どういう条件式を組み合わせて、急落株を定義していこうかという具合です。

どれを選ぶのが最善なのかを、徹底的に吟味していって、一番いいと考えられる条件式を選ぶのが、非常に大事なポイントです。1つの目的に対して、複数のアプローチを試してみる。

1つだけ試してみて「ああ、まあ良かったからこれでいいや」というんじゃもったいない。「これがいいのはわかった、でも代わりに何か使えないだろうか」「他の手段は何かないだろうか」とひたすら幅広く手広く調べていって、その中で最善のものを選ぶというのが大事なポイントかと思います。

ですから、売買ルール・投資戦略を設計していくときが、僕は一番頭を使うところです。とにかくいろいろアイデアを出して、全部片っ端から調べて、うまくいったものを採用するということをしています。

この設計をうまくできないと、売買ルールをどんなに調節してもうまくいきませんし、調節だけでうまくした売買ルールは「カーブフィッティング」と呼ばれる、過剰に最適化した売買ルールになってしまい、再現性が非常に低くなる傾向があります。要するに、過去の成績はいいけど、実際に利益を出せるかと言われると疑問なんです。

そういう売買ルールに仕上がってしまいますので、条件式を調節して利益を出せるようになると考えるよりも、利益を出せる条件式を選ぶ。この、上流工程の部分、調節する前の段階からもう徹底的に吟味しなきゃいけないと考えています。

例えば急落株・急騰株を定義したい場合に、どんな選択肢があると思いますか? 僕はいろいろと考えているんですけれども、だいたい以下のようなパターンを分析しています。

例えば前日比が大きく上昇している・大きく下落していることだとか、大きな陽線、大きな陰線が表れていることだとか。

あとは株価位置といって、類似しているテクニカル指標だとWilliams’ Percent Range指標、「W%R」と書かれているものです。この指標を使って、株価が短期で高値圏にある・安値圏にある、その上でどれだけの変動幅があったかを組み合わせて定義していきます。

あるいは移動平均乖離率が何パーセント以上・以下とか、あとはボラティリティが何パーセント以上・以下とか、こういったことを定義することによって、急落株や急騰株が定義できるんじゃないかと考えています。

ここで大事なポイントが1つありまして、1つの目的を達成するために、使える条件式は1つだけじゃないということです。

例えば急落株・急騰株を定義したいときには、複数の条件式を組み合わせることによって、それを定義することも可能なわけです。急落株を定義したいときに、株価位置何パーセント以下、そして株価変動率が何パーセント以上を組み合わせて定義したって構わないわけです。このように複数のものを組み合わせて、株式の値動きを定義していけばいくほど、自分の狙ったとおりの銘柄を選べるようになります。

この点意識しながら売買ルール設計していくと、うまくいきやすいんじゃないかと思っています。

2つ目のポイントがトレンド判定の定義です。超長期間でどういうふうに値動きをしているか、上昇トレンドなのか下落トレンドなのかというのを、ざっくりと判定するための条件式なんです。これもいろんな手段があります。例えば終値が移動平均線より上か下かとか、Williams’ Percent Range指標、株価位置が50パーセント以上なのか以下なのかとか。

あとは終値とボリンジャーバンドです。ボリンジャーバンドという指標を使って、強い上昇トレンドなのか弱い下落トレンドなのかを判定することも可能です。とくに僕はこのボリンジャーバンドを、相場の値動きを判定するときなどに多用します。この条件式を使うことによって、安定性の高い売買ルールができるからです。銘柄によらず、安定した成績が達成できることが非常に多いんです。

そういった経緯もあって、僕はボリンジャーバンドが大好きです。移動平均乖離率よりもボリンジャーバンドを多用しています。

移動平均線同士の位置関係が、どちらが上でどちらが下なのかといったものを定義するのも1つの方法だと思います。

こんな具合にトレンド判定の方法は無限大にたくさんあるんです。ですから、ありとあらゆる方法を考えて、一番いいものを採用するというのがいいと思います。

他にもボリュームレシオとかRSIとか、メジャーな指標を使ってみるのも1つの方法だと思いますので、試していただくのがいいかと思います。

最後に、相場判定の定義。今が相場の環境としてはどうなのか、相場が上昇しているのか、下落しているのか、どの市場が上がっていて、どの市場が下がっているのかなどを判定するには、日経平均、TOPIX、東証二部指数、日経ジャスダック平均、ジャスダック・インデックス、マザーズ指数、NYダウ、S&Pインデックス、NASDAQなど、使える指標が山ほどあります。

これらを使って、どれが上がっているときにどういう成績が得られるのか、どれが一番自分の運用成績に大きな影響をもたらしているのかなどなどを考えて考えていくと、いい売買ルールに仕上がりやすいです。

相場状況についても、先ほどの急落・急騰とか、上昇トレンド判定とかを組み合わせて、相場判定も加味していくと、いい売買ルールができるようになると思います。

ですので、株価の値動きの傾向を調べるときにも、こういったことをひたすら徹底的に調べていくのが大事なポイントかと思います。

ということで、少し駆け足になってしまいましたが、大事なことはあらかたお伝えできたと思います。

本日のまとめ

最後に今日お話ししたことをまとめていきます。

まず戦略作りは「上流工程」が大事だというお話をしました。どんな売買ルールを作るときも、作り方を間違えてしまっては意味がない。例えば傾向が見られないところで利益を狙ってしまう。あとは、選ぶべき条件式を間違えてしまう。最初の最初で間違えてしまうと、それから先の作業全部が無駄になってしまうので、売買ルールを作るときにはとにかく上流の工程を意識します。

その上で、上流工程が正しいかどうかは徹底的に調べて、「よしいける!」と思ったところで初めて調節にかかるのが、非常に大事なポイントだと思います。傾向分析をして、条件式選びをして、調節をしていく。この中でも左側にある工程ほど大事ですので、この部分をとくに意識して、売買ルールを作成しましょう。

最後、条件式選び。今日重点的にお話ししてきましたが、大事なポイントは1つの目的に対して複数のアプローチを試してみることです。その結果、一番いいと考えられるものを選択するのが大事だと思います。

売買ルールを作るとき、システムトレードを始めたばかりのときは、どうしても調節にばかり時間を使ってしまって、それ以外のことはおざなりになってしまうんですけれども。傾向分析、条件式選びの部分にとくに意識を置いて、売買ルール作りに励んでみていただきたいと思います。

今週は以上です。最後までご視聴いただきまして、ありがとうございました。