<投信工房プレミアム企画> 俺のPFセミナー
司会者:私より、登壇者のみなさまについて簡単にご紹介をさせていただきます。
吊ら男さんは、会社員のかたわら、投資信託を使った低コストインデックス投資で資産形成を行っている投信ブロガーです。最近では『毎月10分のチェックで1000万増やす! 庶民のためのズボラ投資』という本を出版されました。
ASKさんは、2005年に独立。現在は個人事業主のかたわらインデックス投資を行っている投信ブロガーです。
ybさんは、インデックス投信を用いたこつこつ投資を継続し、年間の支出より資産運用による収入のほうが大きい、ファイナンシャル・インディペンデンスの状態まであと少しということです。
松井証券株式会社シニアマーケットアナリスト・窪田朋一郎さんは、ネット証券草創期から株式を中心に相場をウォッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しいお方です。
それでは、ここからの進行はシニアマーケットアナリストの窪田さんにお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
窪田朋一郎氏(以下、窪田):よろしくお願いします。
さっそくみなさまの投資に対するスタンスやこだわりをお伺いしていきたいと思います。まず吊ら男さんは、どのようなスタンスで投資に臨まれているのでしょうか?
吊ら男の投資スタイル
吊られた男氏(以下、吊ら男):今日ここでセミナーをやるということで、気合い入れて円グラフを描いてきました。
吊ら男:……ちなみに笑うところですよ?
(会場笑)
吊ら男:みんなExcelなどできれいに描くところを、ペイントとマウスで一生懸命手書きで描きました。
私がどのように投資しているのかは、自分のブログにも掲載していますし、本でも言っている数字なんですけど、基本的には株式だけです。ここ(スライド)に書いてあるとおり、株式だけで、日本株3、先進国株4、新興国株3という比率になっています。
「なんでそんな比率なの?」というところなんですけど、分散というのはいろんな仕方があると思っています。
このあとほかの方の説明もあって、たぶん分散度合いが違うと思うんですけど、正直に言って正解がないと思っています。なので、適度に分散できていればいいかなと思っています。
日本と先進国と新興国を1:1:1でやろうかなと思ったら、10万円がうまく割り切れない。3:4:3にすれば割り切れるということで、時価総額が多い先進国の比率を少し増やしてやっているというくらい適当です。
何を買っているかというと、投信をちゃんとやりだして10年過ぎたぐらいになりますけど、中身はころころ変わっています。
なぜ変わっているかというと、各資産区分の中で信託報酬、要は保有している間にかかるコストが低いものを買っていくようにしているからです。ここ10年でかなりコストが下がってきています。
一番初め、2007年ぐらいの時に最安だったものは、今ではもう信託報酬が高い部類に入ります。安いものが出てきて、新しく出た安いものを買って、もっと安いものが出てきて……と新しく出てきた安いインデックスファンドを買っていっています。
先月(2017年6月)時点までで言うと、ニッセイアセットマネジメントの「購入・換金手数料なし」という投資信託のTOPIXと先進国株を買っていて、新興国株はアセットマネジメントOneの「たわらノーロード」というものが安いのでそれを買っています。これは全部、松井証券さんの「投信工房」でも取り扱いがあります。
ただ、今「これが一番安いぜ」と言って、本にも「これを買ってるぜ。これが安いぜ」と書いたんですけど、また新しく安い新興国株の投資信託が出てきてしまって、「失敗したな」と思っています。今後はそちらを買うことも考えています。
株式投資のリスクコントロール
あとは「なぜ株だけで考えているのか」というところなんですけど、やはり投資するとして一番高いリターンが期待できるのは株ですね。そうすると、ずっと長期で株だけ持っているのが最終的には一番いいのではないかなと思っているのが1つ。
あとは、TOPIXやダウ、日経平均などは「上がった、下がった」というニュースを毎日聞くじゃないですか。だから値動きがわかるんですけど、債券は「上がった、下がった」というニュースを毎日聞かないからわからないんですよね。要するに、わかりにくいというのがもう1つの理由です。
日本株・先進国株・新興国株だと3つなので非常に覚えやすい。ここに債券が入ると、4個、5個、6個になって、何を買っているのかよくわからなくなります。
とくにブログで自分が何を買っているかを公開していると、5個とか6個とか書いていると面倒くさくなるので、もうシンプルに3つでいいやと思って簡単にしています。
窪田:株式ばかりで3アセットということになると、リスクが高いと考える方もいらっしゃると思います。リスクコントロールはどのようにしているんですか?
吊ら男:そうですね。確かに全資産が株式だと、ひどいときには1年でいきなり半分になったりすることもあるので、実はそのあたりは現金との比率で調整しています。
投資資金とは別に預金を持っておくようにして、投資している資産が減ってしまっても大丈夫なようにしています。全部を投資してそのなかでリスクを下げるという考え方ではなくて、そもそも投資額を7割に抑えておくということです。
そもそもの投資額を減らして、現金を手元に持っておけば現金分は絶対に残るので、そのようなかたちでリスクコントロールをしています。資産分散などをやるのもいいんですけど、これも1つの方法かなと思っているので、何かの参考になればいいと思います。
ASKの投資スタイル
窪田:ありがとうございました。では次に、ASKさんはどのように投資されているのでしょうか?
ASK氏(以下、ASK):がんばってExcelで表を作ってきました。ちょっとアートのセンスがなかったので。なぜこうなっているのかという経緯も合わせて、自分の投資の仕方をお話しできればと思います。
最初に証券口座を作ったのが2002年頃なので、投資歴はかれこれ15年ぐらいです。
リーマンショックの前までは、いろいろな個別株を売買している普通の投資家のような感じだったのですが、リーマンショックの1年前ぐらいから少し仕事が忙しかったのと、「マーケットが変だな」という感じがあったので、全部現金にして1年間何も売買しなかった時期があります。
リーマンショックが起きてからいろいろ考えた末、長期的にグローバル分散投資をして、資産を増やしていこうと思って、今のような投資のスタンスになっております。
ポートフォリオでJ-REITの割合が比較的大きいんですけど、2009年頃にJ-REITの利回りが8パーセントという時代がありました。
当時は長期的に5パーセント複利を目指そうと思っていて、「利回り8パーセントということは、もうJ-REITだけ買っていればいいんじゃないか?」という時があって、けっこう買い込みました。
証券税制の軽減税率終了に伴って10パーセントから20パーセントに税率が上がるタイミングで半分ぐらい売っているんですけど、今でもまだそれなりに残っています。
2014年(12月末)からの比較でいうと、日本株と先進国株(主にアメリカ株)を増やしているので、ほかの資産の比率が相対的に少し減っています。
日本株に関しては、今、日銀がETF(上場投資信託)を買ってくれているという極めて特異な状況があるので買っています。
これは長期でずっと持っているというよりは、どこかのタイミングで、一部は売却するかもしれないと思っています。
もう1個、変わっているのが外貨(FX)です。昔、スワップポイントが流行った時代があって、金利が高い通貨を買うということも少しやっていました。米ドル、豪ドル、南アフリカランド、トルコリラでやって、だいたい為替の損益で負けて、金利収入で勝つかどうかみたいな勝負なんですけど。
今のところは金利収入が為替差損に勝ってはいるんですけど、レバレッジ2倍とか3倍とかで絶対にロスカットにならないぐらいでやっています。
これを長期にやるのもどうかな……まあ他人にはおすすめしないんですけど、僕は一部遊びもかねてやっているという状況です。
基本的に積立投資はやっていません。年に2回、去年で言えばBrexit(ブレグジット)の時やトランプ・ショックの時だけ見計らって買いにいく。それで、基本的には買ったら長期で持ち続けます。
目標としては、20年後とか、将来的にインカムゲインでゆとりのある生活ができるようになれればいいかなと思っていて、今はいろいろ考えた末、株式を中心に投資を続けて資産を増やしていこうと思っています。
一時期、今ほど明確に(方針が)定まっていない時に、先進国債券や新興国債券を少し買ったんですけど、今では買う必要はないのかなと思っています。昔買ったものがそのまま残っているというところで、ポートフォリオに入っています。
次のページは、損をしているやつの話を聞きたくないだろうということで、一応損はしていませんよということを表現したかっただけなので、ここは飛ばしてください。
兼業投資家にオススメの資産運用法
次のページは、今お話しした内容のまとめになるんですけど、基本的な投資スタイルです。
やはり本業の仕事が忙しい中で、資産運用にどれだけの手間をかけるべきかというところがあります。
一部アクティブ投信や個別株などをやったりもしますが、基本はインデックス型の投信で長期運用しています。
窪田:ASKさんは、比較的タイミングを選んで投資されるというお話でしたが、直近ではどういったイベントの際に追加で購入されたんでしょうか?
ASK:2017年は1回も買っておりません。2016年と2015年はそれぞれ2回ずつです。2015年では夏頃のチャイナショック、あとは年初に下がった時があったと覚えているんですけど、その時に買いました。
窪田:そういったニュースが入ってきた時だけでも、十分に対応できるということですね。
ASK:そうですね。その時だけ投資をして、ふだんは証券口座を見ないという感じです。
ybの投資スタイル
窪田:ありがとうございます。ybさんはいかがでしょうか?
yb氏(以下、yb):今晩は「俺のPFセミナー」ということなので、とりあえず一番最初にポートフォリオを紹介します。
私のポートフォリオはこちらに描いたとおりです。日本株式、先進国株、新興国株の3つを合わせて60パーセントになっています。
「なんで60パーセントにしてるか」というと、私は40代の前半なんですけれども、一般的に100から年齢を引いたところが株式比率(の目安)とよく言われますので、それぐらいを目安に決めています。
本当は株式の中身は世界の株式時価総額に合わせて組み合わせたいなとは思っているのですが、若干為替リスクなどもあって、日本株が多い状況になっています。
REITは5パーセントぐらい、あとは預貯金やMRFなどの流動性資産。それと国内債券、主に個人向け国債の「10年変動」がメインですけれども、そちらで35パーセントぐらいを占めていて、暴落時に資産の減少を抑えるような役割になっています。
このポートフォリオだと、リスクが約11.7パーセント、リターンが約4.0パーセント程度です。
各アセットクラスの商品選択の基準ですけれど、コスト(信託報酬)が安いこと、ファンド規模、継続性を重視してやっています。その選んだファンドに対して、自動積立の機能を利用して積立を行っています。
Passiveな投資でActiveな未来を手に入れる
このポートフォリオの運用資金のほかに、約2年半分の生活費を別途確保しています。生活防衛資金と呼んでいますけど、暴落時などに精神の安定を得るための資金として用意しています。
私は『Passiveな投資とActiveな未来』というブログを運営しているんですけど、このタイトルに投資スタンスが込められています。
Passiveな投資(インデックス投資)を通じて、高いQOL(生活の質)を保ちつつ、資産形成を行って、充実したアクティブな未来・老後を手に入れたいなと思っています。なので、投資の目的は老後の資産形成です。
高いQOLを保ちつつというところで、投資だけではなくて、資産管理も含めた資産形成を実践しています。
そのような意味で、資産形成で最も重要なエンジンは自分の所得だと思っているので、それを阻害するような投資スタイルはNGです。
できるだけほったらかすことが可能なインデックス投資、国際分散投資が適しているのではないかなと思っています。
実際には、リスク許容度からしっかりアセットアロケーションを組んでいます。各アセットクラスで十分に低いコストの商品を選択して、自動的に積み立てる仕組みを作って、定期的にポートフォリオのメンテナンスをします。
たぶん一番重要なところだと思うんですけど、ブレない投資スタンスを持って、投資し続けられるようにすることが大切かなと思います。理想としては、投資していることすら忘れられるような環境を作れれば一番いいのかなと思っています。
12年間積立投資をしてきて、こちらが現時点の状況になります。
共働きで、片方の収入だけで生活しているので、だいたい自分の収入の60パーセントぐらいを積立に回しているんですけど、このような推移になっています。
吊ら男:左端の金額すごいですよね。
yb:そうですね。もうすぐ2億円です。
窪田:すばらしいですね。このリターンを見ても、40パーセントのプラスになっていますし、元本部分だけでも相当な金額ですから、非常にうらやましいかぎりです。