投信工房でポートフォリオを組むなら…
窪田朋一郎氏(以下、窪田):ここから先は、実際に松井証券の「投信工房」を使った場合に、どのようなポートフォリオを組まれるかをお伺いしていきます。
まずは吊ら男さんです。先ほど、吊ら男さんのポートフォリオは日本株3、先進国株4、新興国株3ということでお話しいただきました。
実際に投信工房を使って組み立ていただいたのはこのようなかたちです。ほぼ同じ内容ですかね。
吊られた男氏(以下、吊ら男):そうですね。今、私がやっている投資が、もともと低コストなインデックスファンドをずっと持っていましょうという方針です。
投信工房も安いインデックスファンドがずらっと並んでいるので、今いいと思っている投資を継続していくということで、基本的に同じポートフォリオになっています。
投信工房のロボアドバイザーの診断をやってみたら、リスク許容度は5段階中の上から2番目「やや積極型」になりました。債券などのさまざまな資産に分散して投資するもので、私の株全力のポートフォリオに比べると、安全度が高いものになったかなと思います。
ただ、私のほうも全部株式と言っていますけど「現金をある程度持っておく」ので、ロボアドが勧めるポートフォリオで分散投資してリスクをコントロールするパターンと、そんなにリスクは変わらないだろうと思います。
「実際に中身は何を買うの?」ということですが、投信工房で買うのであれば、国内株はニッセイTOPIXインデックスファンド。先進国株は同じくニッセイの外国株式インデックスファンドです。新興国株は、たわらノーロード新興国株式です。
こちらも選んでいる理由はシンプルで、信託報酬がほぼ最低水準ということです。
これとまったく同じでなくてもいいのですが、ニッセイの<購入・換金手数料なし>とたわらノーロード、あとは最近出てきた「eMAXIS Slim(イーマクシス スリム)」のどれかを買っておけば、まず間違いないかなと思っています。
ポイントは3つの資産区分に分散していくことと、やはりコストにこだわっているところです。コストはすごく意識したほうがいいと思っています。もし私が投信工房で投資するなら、このようなかたちになります。
窪田:信託報酬に着目してお話しいただいたのですが、信託報酬は最近値下がりしているんですか?
吊ら男:そうですね。全体的にも値下がりしています。例えば今で言うと、ニッセイTOPIXは約0.2パーセントの信託報酬です。しかし、私が投資を始めた2007年当時だと、一番安くても約0.45パーセントで、倍以上していたような気がします。
今はもう外国株も0.216パーセントと書いてあるんですけど、私が2007年に「安っ!」と思って買ったのは0.84パーセントで、4倍していました。
新興国株にいたってはインデックスファンドなんかなくて、アクティブファンドで信託報酬2パーセントぐらいかかるようなものを一生懸命買っていました。それから比べると、ずいぶん安くなったなというのが感想です。
窪田:これだけ信託報酬が下がってくると、「コスト負け」を意識する必要がだいぶ薄れてきたと言えそうですね。
吊ら男:そうですね。コストはもうこれを買っていればほとんど0に近いと考えていいと思います。
暴落時に備えた資産分配法
窪田:ありがとうございます。では続いてASKさんにお伺いしたいと思います。投信工房でポートフォリオを組み立てる場合、先進国株が40パーセント、新興国株が30パーセント、先進国債券が30パーセントと設定されていますね。先ほどお話しいただいたものとは違うようですが、こちらはどのような意図で設定されているのでしょうか?
ASK氏(以下、ASK):先ほど「メイン口座では積立投資をしていません」と言ったのですが、個人型確定拠出年金「iDeCo」では積み立てをしています。個人事業主なので毎月6万8,000円を積み立てているという状態です。
今回は、積立投資という前提で考えまして、実際に自分がiDeCoでやっている配分比率で回答するほうが誠意があるかなと思ったので、このような比率にしております。
先進国債券30パーセントは、iDeCoでの預金部分の代替ということで選択しています。
やはりマーケットを15年間見ていて思うことは、暴落時にリスク資産に突っ込んでいける現金を持っているやつが最終的にはパフォーマンスが高いだろうと感じています。そのためにiDeCoでも30パーセントを預金にしています。
最近はちょっとめんどくさいなと思ってきたので、先進国株60パーセント、新興国株40パーセントに変えてもいいかなとも思っているんですけどね。商品は単純に、各資産区分から一番信託報酬が低いものを選びました。
窪田:先進国株がニッセイ外国株式インデックスファンドとeMAXIS Slim先進国株式インデックスの2つに分かれていますが、どのような意図で分けているのでしょうか?
ASK:マニアックな話ですが、ニッセイさんは一度トラッキングエラーを大きく起こしたという前科があるんですけど、逆にその分、「今後は起こさないように運用をがんばるのかな?」みたいな期待があります。
信託報酬は両方とも最低水準で同じなので、ある意味「トラッキングエラーのリスク分散」の意味合いも兼ねて半々にしました。
窪田:なるほど。トラッキングエラーというのは、もともと目標にしていたインデックスのパフォーマンスに対してズレが生じてしまったということですよね。稀にそういったこともあるんですか。
ASK:そうですね。滅多に起きないのと、起きても0.5パーセントとか1パーセントなので、長期的に見たらそんなに気にすることではないのかもしれないですが、プロの投資家は気にすると思います。
インデックス投資のメリット・デメリット
窪田:ありがとうございます。続きましてybさん、投信工房でポートフォリオを組まれた際には、少し国内債券が多いように見受けられます。こちらはどのようなコンセプトで設定されているのでしょうか?
yb氏(以下、yb):国内債券が多いのは、暴落時に資産の減少を抑えるような役割がほしかったので、多めに入れています。
基本的なコンセプトは、前半のポートフォリオの紹介のところでもお話しさせていただきましたが、100引く年齢が株式の比率(の目安)なので、40パーセントぐらい国内債券を入れさせていただきました。
今回、このポートフォリオを組ませていただくにあたって、45歳、既婚、世帯年収800万円、子ども1人、金融資産1,500万円、年間積立可能額60万円の方を想定しました。私のポートフォリオと見比べていただくと、ほとんど変わらないかなと思います。
基本的に信託報酬の最も安いものをチョイスしているのですが、国内株の1パーセントをアクティブファンドにして、少し遊び心を入れてみました。アクティブファンドだと、過去のパフォーマンスが価格考慮に入るところかなと思うのですが、やはり「過去のパフォーマンスは未来のパフォーマンスを保証するものではない」というのが私の基本的なスタンスですので、「信託報酬の安さ」という視点で選ばせていただきました。
投信工房のポートフォリオ構成銘柄の相関係数
窪田:ありがとうございます。みなさまにポートフォリオをご説明いただいたところで、今後、ご自身でポートフォリオを設定される際に頭に入れておいたほうがいい数字ということで、各資産区分の相関係数についてお話しさせていただきます。
ポートフォリオを構築する上で、各資産同士がどのように相関があるのかが組み合わせる際の重要なポイントの1つです。
相関が逆に動くものを組み合わせることで、一方の株価が急落した時に、逆に価格が上がる資産を入れておくことで、リスクを圧縮することができることになります。
例えば、仮に国内株を中心においたとすると、その相関が(スライドの)赤枠で囲まれた部分になります。
青い部分は、日本の株式と同じような値動きをする傾向があるもの。赤い部分にはマイナスがついてますけど、こちらは逆に動く傾向があるものですので、仮に日本株が大きく下がった際には値上がりするような資産となっています。
これを見ると、日本株に対して、国内債券はマイナス0.27。先進国債券、こちらは為替ヘッジがあるものになりますが、マイナス0.25となっていますので、日本株の値動きと関連が少なく、リスクの低減が期待できるという考え方になります。
ロボアドバイザーは、このような過去のデータなどをもとに、各自のリスク許容度にあった最適なポートフォリオを提案してくれるサービスとなっています。
虫とり小僧さんのポートフォリオ
続いて、本日はご登壇いただけなかった、虫とり小僧さん、菟道りんたろうさん、kenzさんが組まれたポートフォリオのご紹介をさせていただきたいと思います。
まず、虫とり小僧さんです。
先進国株30パーセントと新興国株20パーセントで50パーセントとなり、ポートフォリオの中心に置かれています。先進国債券や新興国債券の一部は、為替ヘッジをつけるかたちでリスクを圧縮しています。こちらは比較的アクティブに見られますか? どうでしょうか?
吊ら男:とりあえずカラフルだなと思いました。3つまでしか数えられない私としては「これ無理」と思いました(笑)。
(会場笑)
窪田:コモディティが入っているポートフォリオになるのですが、コモディティについて何かお考えがある方はいらっしゃいますか? ASKさん、いかがでしょうか?
ASK:個人的には、コモディティ自体がキャッシュフローを生むというものではないので、「コモディティ価格が上がっていく」という確信が自分にあれば別だと思いますけど、僕にはそのような確信がないので、ポートフォリオには入れていません。
菟道りんたろうさんのポートフォリオ
窪田:続きまして、菟道りんたろうさんのポートフォリオです。
国内株20パーセント、先進国株20パーセント、新興国株30パーセントで70パーセントですので、一段と株式の比重が高いポートフォリオとなっていますね。自身の資産内の50パーセント程度を、現金などの無リスク資産で保有することが前提とのことです。
新興国株の比率が高い理由は、長期的な視点で新興国が一番伸びるというお考えのもと、30パーセントという高い比率で設定されているとお伺いしています。
kenzさんのポートフォリオ
続きまして、kenzさんのポートフォリオです。
株式とリートのみの構成となっています。国内債券を入れなかった理由は、日銀がマイナス金利等を設定して、債券価格がそもそも割高だという理由から除外したとお伺いしています。
外国債券も除外しているのですが、為替リスクを考慮すると、リターンは国内の債券と変わらないというお考えのもと、除外しているそうです。
国内株と先進国株、新興国株の比率が1:8:1になっているのですが、こちらは世界の株式市場の時価総額に応じた比率で割り当てているというお話で、商品選択の理由はコスト重視ということです。以上がポートフォリオのご紹介でした。
「自分はどこまで損していいか」を見極める
最後に、これから投資を始める方々にひと言ずつアドバイスをいただきたいのですが、吊ら男さんは何かアドバイスはありますでしょうか?
吊ら男:ありがとうございます。これはたぶん、一番最初に言う人が有利ですよね。あとの人はネタが無くなってきちゃうから。
ASK:(笑)。
吊ら男:すいません(笑)。私からは簡単に、今日のテーマは「俺のPF」ということで、いろいろな方のポートフォリオの紹介がありましたが、みんなバラバラだということがわかったかと思います。
あくまでポートフォリオは、「俺の・私の」ということで、各自それぞれの比重でいいと思っています。ただ、私から伝えたいポイントが2つだけあります。
1つは、リスク許容度。つまり、「どこまで損していいか」ということです。
みんな「分散投資すればリスクが下がる」「長期的には儲かる」といろいろ言うんですけど、短期的には、暴落が来た瞬間は一気にガツンと、30パーセントとか40パーセントとか資産が減ることがあります。
前のリーマンショックの時には、500万円を投資していて、「250万円なくなっちゃった。残った250万円もなくなっちゃうかもしれない。もうダメだ、逃げよう」と言って損したところでやめてしまう人も実際にいました。
そうなってしまうと一番悲しいので、まずは「自分がどこまでだったら損失に耐えられるか」ということを考えていただきたいと思います。
100万円なのか、200万円なのか、500万円なのか、1,000万円なのかは人によってそれぞれ違うと思いますが、それを考えてほしいと思っています。すでに投資されている方であれば、自分がどれぐらい損していいかがある程度わかると思います。
まだ投資をされていない方にアドバイスしたいのは、頭の中で「私は200万円まで損していい」と思っても、それはあくまで頭の中のシミュレーションなんですね。
実際に50万円減った瞬間に「ヤバい!」と思うんですよ。100万円減って「これはまずい」と思って、150万円減って、「もうダメだ!」となってしまうことがあります。
やはり頭の中のシュミレーションと現実は違ったりするので、例えば、シミュレーションのときに200万円まで損していいと思っていたら、現実は100万円か150万円しか損しないようなポートフォリオを組んでおくとか、多少保守的に見積もっておいたほうがいいというのが私のアドバイスの1つです。なので、リスク許容度は大事にしましょう。
あともう1つはコストです。コストが大事です。この(登壇した)3人のポートフォリオは違っても、みんな共通で「安いものを買いましょう」となっています。
これはなぜかというと、株は短期的にボーンと上がったりしますけど、投資信託を長期で持っていると5パーセントくらいしかリターンがありません。そんな中で、1パーセントとか2パーセントのコストを取られてしまうと、リターンがほとんど消えてしまいます。
なので、たった1パーセントとか、たった0.5パーセントとか言わないで、そのあたりの保有コストにちゃんとこだわっていかないとリターンが出ないと思っています。
このリスク許容度とコストの2点については気に留めておいていただけたらなと思います。以上です。
「投資は期待値がプラスのゲームをするから意味がある」
窪田:吊ら男さん、ありがとうございます。では続きまして、ASKさんアドバイスをお願いします。
ASK:私だけスライドがあって、少し恥ずかしい感じになってしまっているんですけど(笑)。
「長期志向によるグローバル分散投資」、いわゆるインデックス投資の自分が思うメリット・デメリットというのをこちらに書かせていただきました。今日、個々に話をする時間はないので、これはこれでお読みいただければと思います。
個人的に、投資は期待値がプラスのゲームをするから意味があるのかなと思っていまして、「長期的に経済成長をしそうだ」とかファンダメンタルズとして良いところにお金を張っていくことが大事なのかと思っています。
ポートフォリオの割合がどうかというよりも、リスク資産と投資できる現金の割合が大事かなと思っておりまして、暴落するときは、債券を除いてだいたい全部同じように下がっていくので、そこで逃げずに立ち向かって新規に投資していける余力を持っていることは大事かなと思います。
普通の人は、「どれが今儲かるんですか?」というところから入りがちなんですけど、マーケットがいつ上がるとか、下がるとかいうことは普通はわからないという前提です。
もしそれがわかるとしたら、その人はヘッジファンドのマネージャーとか、個人投資家とか利害関係がないことをやっているはずで、それを他人に語る人がいたら、詐欺師か手数料を取りたい証券マンのどちらかかなと思います。
なので、マーケット予測に依存しない投資で、期待値がプラスのゲームをすることが大事かなと思います。
「自分で中身のわかるものに投資する」
窪田:ありがとうございます。では続きまして、ybさんお願いします。
yb:私はアドバイスできるような偉い立場でもないですし、ほとんど吊ら男さんとASKさんに言われてしまったので、あまり語ることはないのですが、一番大切なことは、やはりリスク許容度をしっかり考えながら投資することかなと思います。
「どのぐらいの損失に耐えられるか」ということをパーセントで考えていると、「まあこれぐらいか」という感じがするのですが、実際の額で考えるとまた少し違ったりします。
例えば、私のポートフォリオだと、2008年の金融危機ぐらいの下落が来ると、7,000万円ぐらい含み損になります。リスク許容度はしっかり精査しながら、投資に取り組んでほしいなと思います。
あとは「自分で中身のわかるものに投資する」ということが投資の基本だと思います。
その点では、インデックスファンドはすごく仕組みがシンプルでわかりやすい投資商品になっています。その上コストが低いので、個人投資家が長期で持つにはもってこいの商品ではないかなと思います。
インデックスファンドを用いて投資活動をすると、投資活動自体もシンプルにできるので、そこもいい点です。
インデックス投資というのは、資産の多い・少ないにかかわらず同じように実施できるものだと思いますし、手間がかからないで、本業の仕事と家族を大切にできる投資法かなと思っています。
長期投資を考えているなら、いったん仕組みを作ってしまって、投資していることすら忘れてしまうような方法で運用していけたらベストかなと思います。
無理に投資を始める必要はないとは思いますけど、投信工房などを使って、リスク許容度をしっかり測って、自分で「多少のリスクを取ってもいいな」と判断できるのであれば、ポートフォリオを構築して積立投資を始めていけば良いんじゃないかなと思います。以上です。
窪田:ありがとうございます。投信工房の特徴は、ロボアドバイザーがポートフォリオを提案してくれるだけではなくて、自分自身でその中身をカスタマイズできるというところです。
ロボアドバイザーの提案をそのまま受け入れるのも1つの手ですが、今日、吊ら男さん、ASKさん、ybさんにいただいた貴重なお話を活かしたオリジナルのポートフォリオを組み立てて、ぜひすばらしいリターンをあげていただければと思います。以上でトークセッションを終了します。ありがとうございました。
(会場拍手)