システムトレードの特徴と戦略

田中雅大氏(以下、田中):後半はシストレ(システムトレード)の話から始めたいと思います。会場にもあまりシストレに詳しくないという方がいらっしゃると思うので、そもそもシストレってどういったものかを中原さんから説明していただきたいと思います。

中原:システムトレードは、そのまま直訳すると「機械的に取引をする」という投資手法です。感情をすべて捨てて、統計的に買ったほうがいいという結果が出たら買う。統計的に売ったほうがいいという結果が出たら売る。そこに感情の関与は一切なしというトレード法です。機械みたいなトレード法というのがざっくりとした定義です。

それだけ聞くと、「プログラミングの知識がないといけないのかな?」と思う方もいらっしゃると思うんですけど、実際にはそういうことはありません。

例えば、有名な株でいうと、トヨタの株って1年かけて上がったり下がったりしてるじゃないですか。昔のチャートのデータや株価の動きを調べてみて、「トヨタの株って何月に上がりやすかったんだろう? 3月かな、2月かな、1月かな?」を調べてみて、「1月に上がりやすかった」とわかったらそれに準じて、昔うまくいった投資法を繰り返すという感じで使うのがシステムトレードだと思っています。

田中:要するに、シストレはまず戦略を考えるということですか?

中原:そうですね。だいたい考えるのは、いつ買って、いつ売るのか、いくら分を買うのか。この3点をざっくりと決めて、利益を出しやすい買い時、売り時、銘柄分散の仕方とか、いくら分を買えばいいのかを調べて、それに準じてトレードしていくことになります。

本に書いてある「買い時・売り時」は信用しない

田中:例えば、「ゴールデンクロスで買って、デッドクロスで売る」というような戦略的なものはどのように引っ張ってくるんですか?

中原:本に書いてある知識は一切信用しないです。本に書いてあるものを実際に調べてみると、ぜんぜん利益を出してなかったりするんですよ。

それこそゴールデンクロスやデッドクロスは、世界的に有名な買い時・売り時のタイミングを決める指標だと思うんですけど、実際にそのとおりに取引してみると、案外利益が出てなかったりとか、勝率が3割とか、「ぜんぜんダメじゃん」みたいなことがしょっちゅう出てきます。

アイデアは本で勉強したことでもなんでもいいんですけど、それを鵜呑みにしないで、とりあえず調べてみるというところからスタートします。とくにこだわりは持たずに、なんでもかんでも調べます。

例えば、本に「3月は株価が上がりやすい」と書いてあったら、「本当に3月に株を買ったらどうなるんだろう?」とか。「(株を買うなら)月・火・水・木・金、どれが一番いいんだろう?」とか、いろいろ調べることですね。

田中:それって、どれくらいの種類のバックテストをするものなんですか?

中原:バックテストは過去の相場、過去の株価のデータを集めて分析することをいうんですけど。僕は1個の投資法を作り上げるのに、最低でも1,000回くらいはバックテストをします。

田中:最低1,000回。すごい数字に聞こえるんですけど……。

中原:暇人なので(笑)。忙しい方だったら10回、20回でできると思いますし、本気で取り組みたい方だったら、僕みたいに1,000回、2,000回とガツガツ分析して、いい株の買い時・売り時を見極めていくことになると思います。

「繰り返される歴史」から冷静な投資判断を

田中:システムトレードには期間的な相性はあるんですか? 相場がイレギュラーなときはちょっと相性が悪いとか。

中原:そもそもシステムトレードは、過去にうまくいった投資法を同じように使って、繰り返される歴史を使って利益を出しましょうという取引手法なんです。「歴史は繰り返す」というのが大前提です。

ですので、繰り返されないことが起きたら、あるいは過去に類を見ないようなことが起きたらうまくいかないことはあると思います。

例えば、リーマン・ショックを超えるような大暴落が来ることがあったら、多少なりとも損はするかなと思います。

田中:昨年はBrexit(ブレクジット=英国のEU離脱)があって、トランプ大統領誕生による株価の上げ下げがあって、大きなイベントが2つあったと思います。あの辺りはシステムトレードで対応できるものなんですか?

中原:あのくらいだったら対応できると思います。あれはむしろ利益になるんじゃないかな。

田中:押し目買いが機能するってことですか?

中原:僕は勝手に「突発的な暴落」と呼んでいるんですけど。1日相場が上がってきたなかで、一瞬だけストンと落ちてまた元に戻るという、突然予期せぬ事態が起きたときの暴落って過去にも何回かあるんですね。

そういうときに利益を出した投資法がいくつかあるので、同じように使っていったら、同じように利益を出していくだろうと思います。

田中:システムトレードに寿命はないんですか?

中原:寿命は正直あって、2つのパターンがあります。

例えば、「相場が暴落したときに株を買ってやろう」という投資法があったとして、過去に利益を出していて、これからも使おうと思っているとします。

しかし、それがみんなに知られすぎてしまった場合。みんなが同じことをやろうとすると、自分が株を買う前に株価が上がってしまうのが1つ目のパターンです。

もう1つは、世の中が変わりすぎてしまった場合だと思っています。例えば、1990〜2000年頃のインターネット証券がなかったときの相場と、2000年以降のインターネット証券が台頭して、いろいろな技術進歩があったあとの相場ではやっぱり傾向が変わります。

なので、僕は新しいものを作り続けて、常に時代に対応できるようにいろいろな相場を分析しています。

複雑なテクニカル指標は使わない

田中:相場にちょっと変化があったときを見て、そこで上がるんじゃないか、下がるんじゃないかなという、変化点を見るということですかね。

中原:まあ特別なことはなにもやらないんですよ。僕は本当に世の中で言われている複雑なテクニカル指標が大嫌いで(笑)。

例えば、一目均衡表とか、RSIとか、ADXとか、よくわからない横文字が並んだ指標がたくさんありますが、チャートを見ようと思ったら、Yahoo!ファイナンスとかでいろいろ検索できるじゃないですか。

「計算式がわからない」「でもみんな使ってるから、とりあえず使っておこう」みたいな指標は使っても意味がないと思っています。

むしろチャートを開けばどんな投資家でも目にするもの。前日比とか、あとは売買代金とか、出来高とか。どんなページに行ってもそれぐらいは表示されています。

あとはメジャーなものでいうと、25日の移動平均線とか、75日の移動平均線とか。どんな投資家でも見ざるを得ない指標というのは、みんなが判断材料として使っているはずなので。そういう指標を使ってシンプルに、みんなと同じ視点で考えることが大事だと思っています。

田中:その出来高や売買代金を見て、「みんなはこういう考え方をしているだろうな」と予測するということですか?

中原:そうですね。そのうえで実際にバックテストをして、その株価を引っ張ってきて、「前日比が10パーセント下がった」「今日で株が1割引になった」というバーゲンセールのような株があったとしたら、「そういう株を買ったらどうなるんだろう」とか、「1ヶ月保有したら利益を出せたのか、それとも1週間でよかったのか」とかいろいろ調べてみるという感じです。

田中:逆に読みにくい、流動性が低いものは相性が悪かったりするんですか?

中原:どうだろう……。確かに流動性の低いものは相性が悪いんですけど、読みにくいことが理由ではないですね。

システムトレードは、一発でドカーンと利益を出す投資法じゃないんですよ。雑誌を見ると「10倍株を見つけよう」みたいなものがあると思うんですけど、システムトレードではそれはできません。

そういうことができない代わりに、1パーセントとか2パーセントとか3パーセントとか、小さな利益をコツコツ、回数をこなして利益を積み重ねていくというタイプのものです。

なので出来高が薄いと、自分の注文で株価が変わってしまうんですよ。だから利益が出せなくなってしまう。

田中:ある程度のまとまった注文や出来高があるものじゃないと……。

中原:そうですね。流動性の高い株じゃないと、システムトレードは使えません。

システムトレードと相性のいい株の見分け方

田中:目安として、だいたいどれぐらいの出来高を見てますか?

中原:僕は最低1億円以上は見ています。ちょっと不安だった場合は10億円とか、そこそこ大きいものだけを対象にして調べることにしています。それぐらいあれば安心かなと思っています。

田中:こう言うとかなり乱暴かもしれないですけれども、小型株よりかは、それこそTOPIX100の銘柄だったり、時価総額の大きい銘柄のほうがいいんでしょうか。

中原:そうですね。大きい銘柄ほど相性がいいと思います。逆に苦手なものでいうと、最近新しくできてきた業種とか、過去の例が少ないものは難しいです。IT系とかスマートフォン関連は、最近できたばっかりだからデータが少ないんですよ。

スマホアプリの銘柄とかは、データが少ない分、昔とはちょっと違う動きをしたりするので、四苦八苦するんじゃないかなとは思います。

田中:わりとレガシーなセクターのほうが読みやすいということですね。

中原:そうですね。僕がよくあげるのは鉄道株とか、比較的株価が安定しやすいと言われているような株ですね。やっぱり昔ながらの伝統的な銘柄がシストレに向いていると思います。

僕は昔、やらかしちゃったことがあって。損をしたときに株が売れなくなってしまうことを塩漬けと言うんですけど。

投資を始めたばかりのときは、なけなしのお金を使って運用していた分、少しの損も許容できなくて、10回やったら10回勝てるぐらいの、百戦錬磨の利益を出したかったんですね。

コツコツ利益は出していたんですけど、震災が起きた時に株価がズドンと落ちちゃって、10回分の利益がたった1回の負けで全部吹き飛ばれされちゃったんです。

勝率でいうとそこそこ悪くないように見えるけど、中身を開いてみると、案外成績が悪いということがあって。そういう経験もあるので、勝率はあんまり意識しないようにしています。むしろ50パーセントぐらいあれば十分です。

田中:そういった指標ってあるんですか? 勝率ではなくて、総合成績で勝ってるという。

中原:あります。これからシステムトレードをやる方はぜひ覚えておいていただきたいんですけど、プロフィットファクターという指標です。これは過去一定期間に出た利益を損失で割る数値です。

例えば、ある投資法を1年間続けて、200万円利益を出して、100万円損失を出したとします。この場合、プロフィットファクターは200万円÷100万円で2となります。いくら途中でたくさんの利益を出しても、損失が利益より大きければプロフィットファクターは0以下となり負け越しとなります。

プロフィットファクターが1を超えている投資法は、将来勝ち越しできる可能性がある投資法となるので、僕は勝率の代わりにプロフィットファクターを意識しています。

投資分析ツールの活用法

田中:シストレに取り組むにあたって、ソフトによる違いはあるんですか? なにを使うかによってシストレの質が変わるとか。

中原:システムトレードをやっている方は、世の中で売られている20万円ぐらいする検証ソフトを使っている方が多いと思うんですけど、それを使って分析する方法が1つ。

あとは後ほどご紹介がある「トレードステーション」を使うのも1つの方法です。

ざっくりとした使い分けとしては、トレードステーションは1銘柄についてとことん深く調べたい方に向いているものだと思います。「私はトヨタが大好きだ」「トヨタで利益を出したいんだ」という方にはトレードステーションがすごくいいと思います。とにかく株価データが豊富なので。

1日単位の株価データや、日中足という1日の中の株価の動きのデータがたくさん入っているので、トレードステーションだったらそれがいいと思います。

田中:なるほど。最後にちょっと聞きたいんですけど、中原さんにゴールはあるんですか?

個人投資家の目線でいうと「10億円達成したら終わり」という方もいると思うんですけど、そういうゴールはあるんですか?

中原:もともと僕がYahoo!ファイナンスで記事を書き始めたり、システムトレードについて登壇するようになったきっかけは、別に「お金持ちになりたい」ということではないんです。

僕にとって「お金持ちになりたい」というのはゴールじゃなくて、どちらかというとこれから損をするかもしれない人をできるだけ減らすことです。

実際に過去の相場をいろいろ調べてみて下手な銘柄に手を出すのを避けたり、そういうことが1つでも少なくなればいいかなと思っています。

田中:わかりました。ありがとうございます。

マネックス証券「トレードステーション」の紹介

山田真一郎氏(以下、山田):中原さん、田中さん、ありがとうございました。本日は、全国津々浦々から、このセミナーにご参加いただきまして、誠にありがとうございます。私、マネックス証券トレードステーション推進室の山田と申します。

おそらく今日は、システムトレードにご関心のある方が多いと思いますので、どのようなツールかを簡単にご説明させていただきたいと思います。

このトレードステーションは、システムトレードの本場と言われているアメリカで、トレードのプラットフォームとして、非常に高い評価を受けているツールです。個人投資家向けとしては最高級という評価を受けているトレーディングツールでございます。

ちなみにこのツール、アメリカでは1ヶ月いくらという費用をいただいておりますが、日本ではツール利用料は無料です。

銘柄リストの絞り込み方

トレードステーションの特徴、とくにシステムトレードに関係する部分をご案内したいと思います。トレードステーションには銘柄リストというものあり、最大2,000銘柄を表示できます。

またこの銘柄リストでは、テクニカル分析やファンダメンタルズ分析などそれぞれある条件を満たしているかの確認ができます。例えば、25日移動平均が75日移動平均を上回っているか、25日平均を5日移動平均が下回っているか、というかたちで一覧で見られますので、ある程度の戦略であれば、チャートや決算書を確認せずともその銘柄リストで絞り込みをしていただくことが可能です。

つまり、移動平均線などの条件で見ていただいて、上向きのトレードをご判断いただく。その絞り込んだなかで、トレードステーションで1銘柄ずつバックテストをしていただけますので、そちらをご活用いただければいいということになります。

システムトレードに重要なものは過去データだと思います。先ほど中原さんがおっしゃっていたように、新規で上場した銘柄は当然過去のデータが少ないわけですから、なかなか分析の対象となりません。データが少ない銘柄にも同じことが言えると思います。

例えば、トヨタ自動車はもう67年くらい上場しておりますが、ツールに入っている株価データが少ないと、過去の株価の検証もできません。ところが、トレードステーションは、日足で言うと25年、日中足でも9年分のデータがございます。

システムトレードの方は、どちらかというと日足ベースで取引される方が多いと思いますが、日中足で取引すれば、それだけ取引機会が増えますよね。

日中足でも9年分のデータがございますので、十分にご活用いただけると思います。これがトレードステーションの大きな強みでございます。

実際のトレードで差が出るツールの強み

また、日中のシステムトレードでとくに重要なのは、シグナルが出たあとに、すぐに注文を出せるかどうかです。

トレードステーションは、お客様からの注文が届いてから、その注文を処理して取引所に発注する速度が、ほかの証券会社の4倍近い速度で、これは取引において非常に重要なことでございます。

また、スクリーニング機能などで、トレードしたい銘柄を絞り込んだ上で、実際に日中の値動きや日足データを使ってバックテストしていただくと。

その中で、これはいいというデータを最適化していただいて、戦略を決めていただける。それがトレードステーションというツールの強みでございます。

バックテストでは、どういうストラテジーで収益が得られたか、実際にどういう場面でシグナルが出ているかをグラフィカルにご覧いただけます。

これはおそらく、トレードステーションだけの機能ですので、システムトレードをされる方であれば、ぜひお申し込みいただきたいなと思います。

ほかにもさまざまな特徴がございますが、システムトレードにご興味のあるみなさまということですので、とくに注目していただきたい部分をご説明させていただきました。本日は遅くまでありがとうございました。

(会場拍手)