主要決算数値
坂本修一氏(以下、坂本):坂本でございます。本日はお忙しい中、旭化成の決算説明会にお越しいただき、誠にありがとうございます。
最初に今回の第3四半期決算の概要を申し上げます。
この10-12月期は、各事業ともに堅調な需要に支えらえ、為替が円安方向に振れたこともあり、当社の業績も順調に推移いたしました。
一方で第3四半期累計の業績としましては、主に上期に円高の影響を受けたことなどにより、売上高、営業利益、経常利益は前年同期比で下回りましたが、四半期純利益は政策保有株式の売却を進めたことや税金費用の減少などにより、第3四半期累計としては、過去最高の水準となりました。
今年度の通期予想につきましては、中間予想に対して、それぞれの項目で上方修正しており、当期純利益は過去最高を更新する着地になると見ております。
それでは資料に沿って、2016年度第3四半期累計の業績についてご説明申し上げます。4ページをご覧ください。
売上高は、1兆3,568億円で対前年同期比915億円の減収。営業利益は、1,141億円で125億円、9.9パーセントの減益となりました。
各事業での拡販やコストダウンを進めましたが、円高の影響や2015年8月末に買収したPolyporeの連結化の影響、退職給付費用の増加、薬価改定の影響などが減益の主な要因となっております。
次に、経常利益は、持分法投資損益、為替差損益が改善しましたが、5パーセントの減益となりました。
ただし、10-12月期の実績につきましては、営業利益、経常利益ともに前年同期比で増益に転じております。
第3四半期累計の親会社株式に帰属する四半期純利益は、897億円で25パーセントの増益となりました。
第2四半期に引き続き、第3四半期累計も過去最高の四半期純利益となりました。
10-12月期におきましても、政策保有株式の見直しによる一部株式の売却を進めたこと、4月からスタートしている事業持株会社制への移行にともないまして、繰延税金資産の回収可能性を第1四半期に見直したことなどにより、増益となっております。
連結貸借対照表の概況はご覧のとおりです。
総資産、自己資本は四半期純利益の計上や、投資有価証券の時価評価の影響で増加しています。有利子負債の残高は、第4四半期の資金需要を見ながら調達を行った結果、12月末では増加していますが、D/Eレシオは自己資本の増加により、0.02ポイント下がり、0.41となりました。
連結損益計算書
続いて、5ページです。第3四半期累計の連結損益計算書について、ご説明いたします。
売上高は対前年同期で6.3パーセント減少となりました。売上総利益は4,282億円で、売上高比率は31.6パーセントと1.3ポイント改善しております。これは主にケミカル事業を中心に原燃料価格の下落により売上原価率が改善したことによるものです。
販管費は3,140億円で対前年同期で27億円増えております。退職給付費用の増加やのれん償却費の増加が主な要因です。結果として営業利益は1,141億円となり、売上高営業利益率は8.4パーセントとなりました。
営業外損益は前年同期と比較して、持分法投資損益や為替差損益がプラスとなり63億円改善しております。持分法投資損益に関しましては、タイのPTT旭ケミカルの損益が改善しております。
前年同期は厳しい事業環境にありましたが、当期はAN(アクリロニトリル)、MMA(メタクリル酸メチル)市況が順調に推移いたしました。
特別損益は30億円の益となっており、その結果、税前利益が1,214億円となりました。2016年4月より事業持株会社となったことに伴って、税効果会計基準にしたがって繰延税金資産の回収可能性を見直した結果、法人税等が減収しており法人税等を考慮した親会社株主に帰属する四半期純利益が897億円となり、対前年同期で25パ―セント増益となりました。
特別損益
続いて6ページで特別損益についてご説明いたします。
第3四半期累計の特別利益は99億円で、対前年同期97億円の益となりました。第1四半期および第3四半期に政策保有株式の見直しによる投資有価証券売却益を計上いたしました。特別損失は69億円で対前年同期48億円の改善となりました。
2015年度にはクリティカルケア事業で訴訟和解金を計上したことや、Polypore買収後に一部の経営幹部の退任に伴う特別退職金を計上しましたが、今年度はそのような損失がなかったことが主な要因です。
以上の要因などにより結果として特別損益は、対前年同期145億円の改善となりました。
連結貸借対照表
7ページの連結貸借対照表をご覧ください。
2016年3月末と12月末を比較すると総資産が1,289億円増加しております。主な要因は四半期純利益を897億円計上したことです。それに加えて、前期末と比較すると株高で推移していることにより、有価証券超過差額金が166億円増加しております。
また、為替についても期末日レートでは円安方向に推移したことにより、為替換算調整が83億円増加しています。負債に関して、流動負債と固定負債で大きな増減がありますが、これはPolypore買収に伴って借入れた借入金のリファイナンスを第1四半期に行ったことによるものです。
連結キャッシュ・フロー計算書
8ページをご覧ください。連結キャッシュ・フロー計算書です。
2015年度はPolypore買収に伴い、投資活動や財務活動のキャッシュ・フローによる大きな動きがありましたが、2016年度はそのような要因がありません。当第3四半期の現金及び現金同等物の期末残高は1,878億円となりました。
新セグメント別売上高・営業利益
続いて10ページをご覧ください。
今年度よりマテリアル、住宅、ヘルスケアの3つの新セグメントで決算報告をしていますが、9ヶ月累計では各セグメントにおいて、対前年同期で減収減益となりました。
事業別売上高・営業利益増減要因(1)
事業別の業績分析につきましては、13ページ以降でご説明いたします。それでは13ページをご覧ください。
4-12月の9ヶ月累計で事業別の業績をご説明いたします。繊維事業は対前年同期で減収減益となりました。再生セルロース繊維ベンベルグや、人工皮革ラムース、ナイロン66繊維レオナの販売数量が増加しましたが、競合による販売価格の下落や各製品において円高の影響などがありました。
ケミカル事業は減収増益となりました。このうち石油化学事業は減収増益となりました。国内石油化学事業の基盤強化後、スチレンモノマーの販売数量が減少しましたが、アクリロニトリルにおいて交易条件は改善しました。
なお4-12月期平均のAN市況とスプレッドの実績を申し上げますと、それぞれトン当たりAN1,215ドル、プロピレン796ドル、スプレッド418ドルとなりました。
次に、高機能ポリマーは減収減益となりました。低燃費タイヤ向け合成ゴムやエンジニアリング樹脂の販売数量が増加しましたが、各製品において円高の影響を受けました。
また、高機能マテリアルズ事業および消費財事業は減収増益とまりました。イオン交換膜などで円高の影響を受けましたが、電子材料製品やサランラップなどの消費財製品の販売が順調に推移しました。
エレクトロニクス事業は増収減益となりました。このうちセパレータ事業は増収減益となりました。各製品の販売数量が増加し、2015年度第2四半期より連結したPolyporeの業績を取り込みましたが、買収に伴うのれん償却費等を計上し円高の影響も受けました。
次に、電子部品事業も増収減益となりました。スマートフォン向けでオーディオデバイスなどの販売数量が増加しましたが、円高の影響を受けました。また、販売数量拡大に伴い、外部委託費用が売上に先行して増加しました。
住宅事業は減収減益となりました。そのうち建築請負部門は減収減益となりました。戸建て住宅ヘーベルハウスや集合住宅へーベルメゾンの引渡し棟数が減少し、広告宣伝費等の販管費が増加いたしました。
2015年度10月から今年度初めにかけて、広告宣伝活動を控えておりましたが、その影響を受けた昨年度の受注実績から、引渡し棟数は4-12月期累計で前年の5,937棟から5,769棟に168棟減少しました。
なお、4-12月期累計の請負受注金額は対前年同期で2パーセントの受注減となりました。4-6月期は広告宣伝活動を自粛していた影響が残りましたが、5月に宣伝活動を本格再開してから受注が回復してきており、7-9月期は前年並み、10-12月の受注金額は前年同期比5.5パーセントの受注増となりました。
次に不動産部門およびリフォーム部門は減収増益となりました。リフォーム部門で労務費などの販管費が増加しましたが、不動産部門の賃貸管理事業が順調に推移しました。
建材事業は減収減益となりました。断熱材ネオマフォームの販売が堅調に推移しましたが、ALC事業や基礎事業で販売数量が減少しました。
事業別売上高・営業利益増減要因(2)
続きまして14ページをご覧ください。
医薬・医療事業は減収減益となりました。このうち医薬事業は減収減益となりました。骨粗鬆症治療剤テリボンや血液凝固阻止剤リコモジュリンなどの販売数量が増加しましたが、薬価改定の影響を受けました。
また、排尿障害改善剤フリバスが後発医薬品の影響を受け販売数量が減少しました。
次に、医療事業も減収減益となりました。ウイルス除去フィルタープラノバの販売数量が増加しましたが、円高の影響を受けたのとともに、国内の透析関連製品において償還価格改定の影響を受けました。
クリティカルケア概況
クリティカルケア事業につきましては、37ページのクリティカルケア概況をご覧ください。
対前年同期で円高が急速に進行したことから、円換算後の業績では、なかなか実態がみえにくいためドルベースでの業績を参考情報として記載しております。
左上のグラフをご覧いただきますと、円ベースの売上高は財務諸表の円換算において、円高にともなう影響を受けて減収となっておりますが、営業利益は円高にもかかわらず、増益となりました。
のれん等焼却後の連結営業利益は108億円となり、引き続き拡大しております。
次に資料の下にあります、参考のドルベースの業績推移をご覧いただきますと、4-12月期累計の売上高は、930ミリオンドルとなり、前年同期で77ミリオンドルの増収、10パーセント弱の伸びとなっております。
のれん焼却前の営業利益である事業利益は、193ミリオンドルとなり、20パーセント強の増益となりました。
営業活動強化にともなう販管費は引き続き増加しましたが、着用型自動除細動器「Life Vest」の業績が引き続き順調に拡大し、その他の除細動器の販売も堅調に推移しています。規模が拡大する中でも順調に成長を続けております。
当期の業績予想
続いて16ページで、2016年度の業績予想をご説明いたします。
今回見直した通期予想と、11月に発表した通期予想を比較いたしますと、売上高、営業利益、経常利益、当期純利益のすべての項目で、上方修正となりました。
11月発表の予想に対して、為替が円安方向に振れていることや、各事業での固定費の削減などにより、営業利益を80億円上方修正しました。
今回の予想の前提としては、ナフサ価格を下期38,000円/kl、年間34,725円、為替レートは下期USドル110円、年間108円としています。また2016年度の一株あたりの年間配当金は、20円を予定しております。
事業別営業利益予想
事業別の営業利益および通期予想につきましては、18ページで営業利益予想を中心にご説明いたします。
11月に発表した通期予想と比較しますと、繊維と住宅を除くすべての事業で、上方修正となっております。
繊維事業は円安による増益効果がある一方で、原料価格上昇の影響も受けており、11月予想どおりといたしました。
ケミカル事業では、石油化学事業でANが競合他社のプラントトラブルによる市況上昇で増収となったほか、高機能ポリマー、高機能マテリアルズ事業は、足元の原料価格の上昇はあるものの、円安効果により堅調に推移しております。11月公表の通期予想から35億円上方修正いたしました。
なお第4四半期のANの市況スプレッド想定は、AN1,240ドル、プロピレン925ドル、スプレッド315ドルを想定しております。
エレクトロニクス事業は30億円上方修正いたしました。
電子部品事業は、為替効果に加え、スマートフォン向けのオーディオデバイスや電子コンパスなどの需要が好調に推移することなどを見込み、上方修正いたしました。
住宅事業は、鋼材価格の上昇や円安の進行による、輸入部材等の市況悪化を折り込みました。
また、働き方改革を進めており、業務委託費用等固定費の増加もあり、下方修正といたしました。
健在事業はALC事業などが堅調に推移することなどから、5億円の上方修正となる見込みです。
医薬・医療事業は20億円の上方修正となりました。医薬事業は、テリボンやリコモジュリンの数量が着実に拡大していること、下期の固定費を見直したことから上方修正しました。医療事業でもプラノバが引き続き売上を伸ばし、円安効果と合わせて上方修正いたしました。
クリティカルケア事業は5億円上方修正しております。「Life Vest」が引き続き堅調に推移する計画であり、為替が円安で推移することを見込み、販管費の進捗がやや遅いことを折り込みました。
以上で私のご説明を終了させていただきます。